俺の名前は柊空也。突然だけど今、大変な危機に陥っている。
いつもと変わらぬ夕食の風景。だが・・・
(なんでこんなメニューにしちまったんだ・・・)
今日の夕食のメニューは鶏のから揚げ・焼きそば・マグロの刺身・たまご焼き・サラダ・ご飯・・・
以上。
見る人が見ればわかるだろう。
テーブルの上には手を伸ばした瞬間に命を落としそうな料理ばかり並んでいる。
そう、このままでは俺はご飯をオカズにご飯を食べるという荒技に挑戦しなければならない。
控えめにから揚げに手を伸ばしてみる。
「にゃっ!」
ハ ー ト ブ レ イ ク ・ シ ョ ッ ト
「ぐはあっ!」
やはりダメだった。
しかし焼きそばは姉貴が、マグロの刺身は姉様が、もう自分のものだと言わんばかりの勢いで食べている。
とてもじゃないが「ちょっと分けてよ」なんて言える雰囲気ではない。
(そういえばともねえはちゃんと食べれてるのか?)
柊家においてヒエラルキーの位が比較的低いともねえが心配になる。
見るとともねえはたまご焼きをおかずにご飯を食べている。
心なしか涙ぐんでいるように見えた。
この状況でともねえに助けを求めることは不可能だろう。というかやっちゃいけない気がする。
雛乃姉さんと海お姉ちゃんはいつの間にかちゃっかりと自分の分を取って食べている。
(くそっ!何か・・・何かないのか?!)
生野菜のサラダでご飯を食うというのも考えると自分がか弱い草食動物になったようで悲しくなってくる。
一縷の望みをかけてテーブルを見渡す。


・・・・・・あった!
テーブルの隅に煮物が置いてある。しかも誰も手をつけていないようだ。
(でも俺こんなの作ったっけ?ともねえが作ったのかな?)
どっちにしろ最悪の事態は回避できたようだ。
俺は煮物に箸を伸ばす。だがその瞬間俺のDNAが何かを訴えてきた。
(・・・危険?煮物も危険?!・・・・・海お姉ちゃんか!!)
「(・ε・)」
お姉ちゃんの方を見るとさっと視線を逸らされた。
(どうしても俺に手料理を食べさせたかったんだな・・・でもごめんよお姉ちゃん。俺はチキンなんだ・・・)
しかしこんだけ料理があって煮物にだけ誰も手をつけないとは凄いな。
さすが柊家だ。殺人料理が並べられててもなんともないぜ。
海お姉ちゃんの助けが期待できない以上今日はベジタリアン空也になるしかなさそうだ。
俺はあきらめてサラダを食うことにした。
その時だった。
「かなめ、お前の皿を見せい」
今まで静かに食事をしていた雛乃姉さんが急に口を開いた。
「やはり野菜が少ないな・・・。よし!このさらだはお前にやろう!全て食べ終えるまで席を立つことは許さんぞ」
(こ、この期に及んで何を言い出すんです雛乃姉さん!!)
「姉さん・・・鬼畜ですね」
要芽姉様・・・今日ばかりは同じ気持ちだ。
雛乃姉さん。あんた鬼畜だよ・・・。
ふう、わかったよ。俺も男だ。
炭水化物をオカズに炭水化物を食えるってところを見せてやるぜ!!
訳のわからない闘志が燃え上がってきた。


「何よイカ、辛気くさい顔しちゃって」
助け舟は突然、思わぬところからやってきた。
「そんなにアタシの焼きそばが食べたかったの?仕方ないから半分あげるわ。死ぬほど感謝しなさい!」
あ、姉貴?あの姉貴に限ってそんなバカなことが!!
「何よヘンな顔しちゃって。アタシの施しなんかうけないってこと?!」
「と、とんでもない!ありがたくいただきます!」
ああ・・・今だけはそのツインテールが後光のように輝いて見えるよ・・・。
「仕方ないにゃー。ツインテールだけにいいカッコさせるのもシャクだからわたしのから揚げも分けたげるよ」
ねぇねぇ・・・そのから揚げ、かじったあとがついてるんですけど・・・。
「はい、空也。たまご焼きひとつあげる」
ともねえ・・・どこまでいい人なんだ・・・!
「ふっ、仕方ないわね。空也、皿を貸しなさい」
姉様・・・俺の皿が野菜で埋まっていくんですが・・・。
「はい、くーや。この煮物おいしいよ〜」
「ごめんねお姉ちゃん、それは遠慮しとく・・・」
「しぼむ〜」
しぼんだ。
「うむ、柊家も安泰よの」
雛乃姉さんがお茶を淹れてくれた。
「やっぱ俺って愛されてるんだな〜」
「ギュ」
そんなことを実感してなんかちょっと嬉しくなったひとときだった。

(作者・名無しさん[2004/10/10])

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