ぽろぴろぽよーん♪
「やった!最強の盾ゲッート!」
「…」
「…よ〜し、次はぁ、なになにぃ、『南の洞窟にひそむ竜を…』って、楽勝ぉ〜♪」
「…邪魔をしたな、ほなみ。」
「あれ?ひなのちゃん、もう行っちゃうの?もう少し見てけばいいのにー。」
「うむ、ちとな。用を思い出した。またな。」

数分後、歩笑の部屋。
「ぽえむ、我はほなみとは打ち解けられぬかもしれぬ…。」
珍しく弱気なことを口にする雛乃。
「帆波姉さん?うーん…そうだね。難しい。すごく難しいかも。」
「そうなのか?」
「姉さん、ああ見えて外ではあんまり自分を出さない。その代わり、自分の部屋=テリトリーでは好き勝手してる。」
「うむむ、底知れぬ…。」
「…姉さん、昔から優等生で、何でもよくできた。でも、誰からも嫌われたことない。」
「うむ。ほなみを嫌うのは難しいな。」
「でも、それは嘘。…姉さん、相手に合わせて立ち居振る舞いを変える。」
「そうなのか?」
「うん。私に対してすらそうだし。…だから、姉さんは要芽さんが羨ましいんだって思う。」
「かなめ、が…?」
「うん、そう。不機嫌な時は不機嫌でいられて、それでいて皆から慕われている要芽さんが羨ましいんじゃないかな。」
「…ほなみも、不憫、よな。」
「うん。そう思う。」
「うむぅ。なかなかに難しいやつよ…。」


歩笑の顔が伏せられる。
「私しか、いなかったから。こんな私しか、傍にいられなかったから…。」
ぽろぽろ、ぽろぽろ。白い頬を伝って透明な滴が落ちる。
「…クー君が沖縄に来るまで、私たち二人きりだった。いつでも、どんなときも。」
溢れ出す涙は堰を切ったようで、最早留めるべくもない。
「昔から、私が、こんなだから、姉さん、もっとしっかりしなきゃって、思っ、」
しゃくり上げる声が、慟哭に変わろうとしたその瞬間。

唐突に、ぐいと引き寄せられた、かと思うと、雛乃に抱きしめられていた。
「…あっ!?」
見上げると、雛乃が慈愛の笑みを浮かべて彼女を見つめている。
歩笑の頭を胸に抱きつつ、雛乃は囁く。優しく、優しく。
「うむ、だがな、ぽえむ。お前がいたからこそ、帆波はあんなにもまっすぐで、他人を思いやれる人間になったのであろう?」
「でも!私がもっとしっかり…」
「ぽえむはぽえむなりの優しさで、ほなみに接してきたのであろう?ならば何ひとつ卑下することはない。むしろ誇ってもいいことだ。」
「…ひなの、さん…」
「自慢の姉、なのであろう?」
「…うん。」
瞼を閉じて身を任せてみる。
自分よりも薄い雛乃の胸の感触が少し痛々しい。
が、歩笑はその少女のような胸を、誰よりも暖かいと思った。
その小さな身体からは想像も付かないほどの包容力が溢れていた。
「よしよし、いい子だ。飴をやるからもう泣きやめ。」
「…子供じゃ、ないんだけどな…。」
「まぁよい。不器用な妹と器用過ぎる姉。二人まとめてこの我が面倒を見てやろう。」
ぽんぽん、と歩笑の背を軽く撫でつつ、彼女は少し誇らしげに続けた。

「何より、我の可愛い妹たちなのだから。」

(作者・名無しさん[2004/08/10])

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