ぴんぽ〜ん♪
「…はい?」
「我である!」
「…雛乃さん!?…ちょっ、ちょっと待って。」
ガラガラガラ…
「どうしたの?雛乃さんがうちに来るなんて、珍しい。」
「うむ。美味しそうな水羊羹が入ったので、ぽえむにも食べさせようと思ってな。」
「ありがとう。…でも今はちょっと…。」
「締め切りであろう?それくらい存じておる。邪魔はせぬゆえ、安心せい。」
「…ごめんね。上がる?」
「うむ。」

…カタ、カタタ、カタカタカタ…。
カーテンを閉め切った歩笑の部屋。キーボードを叩く音だけが静かに響く。
「ううぅううぅ…」
ばんばん。
軽く、キーを叩く音。
「ダメ、、、こんな文章じゃ…。」
ぶんぶんと大きく首を振る歩笑。
普段の歩笑からは決して想像できない取り乱し方。
眉間に寄せられた皺、真っ赤な瞳と眼の下の濃い隈が、端正な顔を痛々しく彩っている。


「…ぽえむ。」
唐突に、ずっと黙って見ていた雛乃が彼女を呼ぶ。
「…何?ちょっと今は…」
「ぽえむ、少しこちらへ来い。」
「雛乃さん?今は…」
「こちらへ来いと申しておる!」
珍しい雛乃の強い口調。
彼女は少し驚いて、自分より年上の、外見だけは小さな少女の前に歩み寄る。
「…はい。」
「ここへ頭を乗せい。」
「雛乃さんの膝の上?」
「うむ。」
膝枕、ということだろうか。黙って彼女は言われるとおりにした。
ふわ、と小さな手が瞼の上に乗せられる。暖かい手だった。
「…ぽえむ。」
「なに?」
「大丈夫だ。ぬしに出来ぬことはない。」
「…雛乃さん…?」
「大丈夫。ぽえむには才がある。力がある。我には全てお見通しだ。」
「…雛乃さん。」
「ただ、今は少し根を詰めすぎておる。それでは書けるものも書けまいよ。もう暫し、こうしておれ。」
きゅっと塞がれた瞼。なのに、微笑んでいるであろう雛乃の顔が鮮明に浮かんだ。
「…ありがとう…。」
「なぁに。これも姉の務め。気にするでない。」

「…ありがとう。」
声にならぬ声で、彼女は続ける。
「……お姉さん。」

(作者・名無しさん[2004/08/06])

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル