デーンデーンデーン!デデデデデーン! ぴっ。
「おう、久し振りだな。ピーナッツ」
ぷちっ。 ツーツーツー。
デーンデーンデーン!デデデデデーン!
ぴっ。
「いきなり切るんじゃない!愛する父からの電話じゃないかよう」
「何の用だよ、コノヤロウ」
「聞いたぞ。帆波ちゃん、ついに映画にまで出るそうじゃないか」
「エスパーか、アンタ」
地獄耳にもほどがある。
「いや、それの製作発表会の招待状がこっちにも届いてな。へへーん、うらやましかろう」
「マジか」
「落ち着け。当たり前だろう、これでも柊グループのトップなんだからな」
なるほど。主演女優の親戚が企業のトップ。確かに呼ばれる理由としては十分だろう。
「しっかし帆波ちゃん…なんつーの?輝きが出てきたなぁ。匂い立つエロスが……」
「やらんぞ」
「ふっ……薔薇は気高く咲いて………美しく散る」
「なんか格好いいこと言ってるつもりだろうが、要約するとスキあらばもってくぞって言ってるだけじゃないか」
「エスパーか、オマエ」
伊達に一年引き回されてないわい。
「ま、ちょうど帰国する日程と合ってるしな。出席はするぞ。オマエはウチで畳の目でも数えとれ」
ぷちっ。
……………………うっ………うわぁぁぁぁぁぁんーーーー!! だだだだだだだだだっ!
一足飛びで玄関まで辿り着き、犬神家へと飛び込む。
「ひどいよーーー!ねぇやーーー!!」
「わ、びっくり」
「あらあら、ナニゴト?空也ちゃん」
「ねぇやの製作発表会、ボク呼ばれてないよぅ〜〜〜〜!!」
「あれ、ドコから聞いたの?秘密にしといて驚かそうと思ったのに」
「かくかくしかじかでですね……」


……………………………………………
「そーなのよー。ウチの社長さんが宣伝効果もあるからぜひってねー」
うう、やっぱりか。恨むぜ、社長さん。
「歩笑ちゃんもホントは挨拶とかしないとダメなのよー?」
「う……でも……」
あ、そっか。なんと、今回の映画の原作はねーたんの小説なのだ。
「そう言えば、タイトルなんだっけ」
いかん、ど忘れしてしまった。
「もう……ちゃんと覚えててね。”踊るJR線”だよ」
なんでも鉄道業界の真実をコメディ&ドラマタッチで書いた作品だとか。
「ねーたん、やっぱり人混みはまだダメ?」
「やっぱり……ちょっと怖い…」
けっこう根深いらしい。
「ふっふっふー。空也ちゃんさえ良かったらその場で婚約発表とかしちゃおうかなーっと」
「すいません、さすがにそれはやめてください」
「え〜〜!?」
そんな事されたら全国のねぇやファンに付け狙われて外すら歩けないって。
「ぶーぶー。ならパーティ終わったら迎えに来てよー。三人でちゃんとお祝いしたいしねっ♪」
「うん、わかった」
上機嫌で犬神家を後にする。しっかしオヤジの動向はちょっと気になるな。
…………? そういえばオヤジが仕事してる姿って見た事ないな。ふむ。
いい機会だし、一日観察してみるのもいいかもしれない。弱味とかあれば今後の武器にもなるしね。

次の日。俺は成田空港にいた。
親父の来るゲートは前もって海お姉ちゃんに調べて貰ったから間違いないハズだ。
ん、あれは……… シックなベージュのスーツに身を包んだいかにも秘書って感じの女性が立っている。
あの人は確か………んなっ!?
「おー!出迎えご苦労さん!クロサキくん!」
親父が来た。しかも、横にスチュワーデスさんを二人も引き連れて。


「ふふ……じゃ……これ、電話番号ね……」
「……必ず電話するよ…!」
おお……大人の会話だ。
スチュワーデスさん達が行った所でクロサキさんが声を掛ける。
「社長。お戯れはほどほどに」
「この後は12時より会食会。13時半に幹部総会。15時より新製品のコンベンション。その後は映画の発表会に出席ですね」
思い出した。クロサキさん。オヤジの第一秘書なんかをやってくれている人だ。そういえば、修行帰りの時も空港に居たよなあの人。
「あーあーもう。仕事仕事でめんどくさいなぁ………どーかね?今夜あたり。覚めないユメを見せてあげるよ、ジャスト1分で」
「仕事を今日中に全て終わらせる事が出来ましたら喜んでお付き合いさせていただきますわ」
「無理だと分かって言ってるね、キミ」
「ご想像にお任せします。表に車を回してありますのでこちらへ」
「へーいへい」
お、てことは次は会社か………先回りしなくては。
…………………
海お姉ちゃんからもらった清掃員変装セットに着替えてオヤジを待つ。
見つかったらいろいろうるさそうだし。でもなんでお姉ちゃんはこんなの持ってるんだろう?
(くーやを影ながら助ける時とかに使ってるんだよ〜)
すーはーすーはー。深呼吸なぞをしているうちにオヤジがやってきた。
「それでは社長。各方面とのブッキングがありますので一旦これで。会食会が終わった頃お迎えにあがります」
「ウム、頼んだよ」
む、意外とちゃんと社長っぽい事してるんだな………昼間のパパはちょっとちがうってヤツか?
「…………柊社長!?」
「おお……久し振りだね。美奈子君!」
受付のOLさんが声を上げる。なんだなんだ?
「いつ…日本にお戻りに……?」
「ついさっきだよ。急用の為の一時帰国だがね」
「社長……こ、今夜……あの……」
OLさんがオヤジを潤んだ目で見つめている。これはつまりアレですか。
ふっ……。


「君とはもう…終わったんだよ………私の事は忘れてくれたまえ……」
そう言ってOLさんに背を向けて歩き出すオヤジ。
「社長………」
はらはらと泣き出すOLさん。
前言撤回。 男としてはカッコいいかもしれんが人として間違ってやがる。
そのままオヤジを追って、オフィスの階へ。
「社長!」「いつ日本に……!?」
「啓子君!冴子君に真理子君!良子君!」
「あの……今夜は……」
ふっ……。
「君達とはもう…終わったんだよ………私の事は忘れてくれたまえ……」
ぼーぜん。
な……なんちゅう底知れんオヤジだ………家に帰った時は猫かぶってたのか。さすがねぇねぇの父親。
くっ………見に来てよかったぜ………ねぇやがあぶない!ここは俺が守らなくては。

そしてパーティも終わり夜も更けた頃……
「帆波ちゃんめぇ……手紙でワシを呼ぶとは……初々しいなぁ……」
オジサマへ
お話ししたいことがあります。パーティが終わったらワタシの部屋まで来てねっ♪ 1056号室です。
ほなみ
「こういう手紙を貰って断れる奴がいるだろうか!いや、いない!」
ガチャリ。
「帆波ちゃん……待たせたね……貴女の愛の狩人、参上つかまつりました」
「…………」
「どうしたのかな……緊張しているのかい? 大丈夫。優しくするから…」
「……………」
「さぁ……こっちを向いて……顔を見せておくれよ……」
くるり。
「なっ…!?」


「ふっはっはっはっは!ひっかかったな!このエロオヤジ!」
「く…空也……キサマ……!!」
「”ねぇやは守る。””アンタもぶちのめす。”両方やらないといけないのが弟のツライ所だな………
オヤジ。覚悟はいいか?俺はできてる」
「空也……ここまでやったからには覚悟は出来てるんだろうな……いさぎよく父に倒されろっ!!」
オヤジの闘気が膨れあがっていく。こ、こいつ……感情によって戦闘力がガラリと変わりやがる……
俺も負けじと南方不敗と言われたマスターワカバ直伝の構えを取る。
「行くぜ!クソ親父〜〜〜〜!!」
「殿をつけろよ!!ピーナッツ野郎!!」
「おおあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カッ!!!!!

………………
「空也ちゃん、おーそーいー」
「お料理……冷めちゃうね……」
ガラガラガラガラ……
「来た」
たったったっ………
「もう……遅いじゃないのー……ってどうしたの?そのカッコ」
「クー君……そういう趣味………あったの……?」
うぁ。着替えるの忘れてた………予定より遅れちゃったから急いで来たのがアダになったか……。
「ま、まぁ詳しい事は後でゆっくり説明するよ。ねぇやに迫る悪漢を退治してきた結果だから」
「でも、空也ちゃん。かなり似合ってるわよ?ソ・レ♪」
「うん……姉としては複雑だけど……結構いいかも……」
「お願いだからヤメテ」

(作者・愚弟氏[2004/08/04])

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