『何だか、嫌な予感がするんだ』




恐慌状態に陥りもはや前後不覚になった空也は乱れた息もそのままに
ひたすら手足をばたつかせる。

突然に空也を襲った謎の衝動は、彼の心に人間にはあってはならない感情を植付けた。
そしてそれを受け入れたくないと元からある人間の心は抗うが
結果としてそれは自分自身に恐怖と混乱をまねく事にしかならなかった。
何が起こったのか、そして今はどうなっているのか、と必死に考えようとした。
しかしすぐに固まりかけた思考はバラバラに崩れていく。
次第に考えようと試みる事すら出来なくなる。
後はもう、恐怖のなすがままに暴れ、やがて意識を失った。




 『空也の身体がどんどん人間離れしていってるって事は・・・・・・―――』




先程のクロウとの戦いで折れた空也の腕と裂けた肩はみるみるうちに治っていく。
巴はその間、ただそれを呆けたように眺めていた。

「うーん、治っていく様もグロいなぁ・・・」

と空也は困ったように笑った。
傷痕一つ無い体、ついさっきまで血に塗れて戦っていたとは思えない姿容だった。
名残といえば所々さけたTシャツとジーンズだけである。


「・・・空也、その・・・大丈夫?」

「うん?俺は見ての通り平気だよ」




ううん、そうじゃなくて―――・・・・・・


 『体がバケモノになったら、あとは心がバケモノになっていくんだろう』


敵の数の多さに巴のコンディションの悪さもあって防戦一方だった。間が悪いにも程がある。
クソッ!と吐き捨てるように毒づき、空也は必死でもがれた腕を復元させようと意識を集中させる。

正に腕を構築させようとした、その時

ドクン、と心臓が跳ね上がる。そして――――――・・・・・・なにかが混ざる感触。

柊空也と、それ以外のモノの意識が混ざりあう。

それは彼の心に根付き、殺せと本能に命令する
彼はそれによって新しく生まれた感情に
およそ人間が持つ感情とは思えない程怖ましい殺意に

自分が飲み込まれていく感覚を見た。



 『―――だから、これ以上空也は戦ったら駄目だ』



「あっ、イカ!?・・・・・アンタ、今どこにいるのよ」

「いやぁ、ともねえと一夏のアバンチュールを楽しもうと海岸でおっかけっこしてましたら
 いつの間にかデッドヒートとなって百億の銀河を駆け巡りそんなこんなで・・・・見知らぬ土地に」

「はぁ!?何わけわかんない事言って・・・」

「あ”〜!突然原因不明のジャミングを受けた!一時通信を中断します!」

「ちょっと・・・!!」

「明日には帰ります、それじゃあね・・・・・・・と」


携帯を切り、地面に座り込む。
ふぅ、と一息つき夜空を見上げる、空は曇っていて星は見えなかった。
しばらくそうして脱力したあと

もうちょっとましな言い訳あるだろう・・・・・・なあ空也。

ひとり頭を抱える。きっと帰ったら皆から総攻撃を受けることを請け合いだろう
とくに姉貴はやる、あいつはもう本気でくる!
それこそ「ツインテール怒髪天を突く」って感じに!
そうだ、それで皆で笑うのだろう
俺がともねえを助けて、つれて帰って、家族全員そろって笑える日々が続くのだ
いつもみんなで笑っていなければいけない。一人も欠けてはいけない。




『――――――大丈夫、お姉ちゃんが助けてあげるから』




「あなた、本当にひとりで行くつもりだった?」

「もちろん」

「腕は一本しかなくて、傷を治そうと『力』を使えば怪物化してアウト、そうでなくても徐々に怪物化してる
 おまけに腕の傷で出血多量も時間の問題」

「ははは、そうなるともう手の打ちよう無いですね」

「それでも、行くの?」

「もちろん」

「・・・・・・・はぁ、OKOK。好きにしなさい」

「はい、行ってきます」




――――――――――俺が、助けます。


          『姉、ちゃんとしようよっ!外伝』

(作者・名無しさん[2004/07/23])

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