ピンポーン
昼食の片付けも終わって、ちょっと居間でのんびりしようかと思った矢先の突然の来訪者。玄関に行くと
「こんにちは、クーくん」
「あ、ねーたん。どうしたの?・・・ともねえならゼミの合宿で昨日からいないけど」
「うん・・・今日は、クーくんと高嶺さんにお願いがあって」
「へ?俺と・・・姉貴に?」
お願いってなんだろう。俺と姉貴というのは組み合わせとしては妙な気もする。
「ま、とにかく上がってよ。姉貴も居間にいるから」
「うん・・・お邪魔します」

「あら、歩笑じゃない。どうしたの?今執筆中で忙しいんじゃなかったっけ」
姉貴は一時、ともねえとねーたんの仲のよさに嫉妬して、ねーたんを嫌っているようなふしもあったけど
姉貴の好きな小説の作者が、実はねーたんだとわかったこととか、色々あって今では結構仲がよくなっている。
「うん、実はその今書いてる作品のことで、高嶺さんとクーくんにお願いがあって来たの」
「お願い?」
「うん。高嶺さん、去年クワガタを取りにいったことがあるって聞いたけど・・・」
クワガタ、と聞いたとたんに姉貴の表情が曇る。
「う・・・そ、その話はあまりしたくないわね。瀬芦里姉さんに、酷い目に合わされたのよ・・・」
「そ、そうなんだ・・・酷い目、って、どんな?」
「それがね・・・(中略)・・・というわけなのよ」
「それは・・・災難だったね」
「災難っていうか、人災よ・・・まったく、横暴な姉を持つと苦労するわよね」
「姉貴だって充分・・・」
「・・・何か言った?」
微笑みながら姉貴のデビルアイが光る。
「ナンデモアリマセン」
「瀬芦里姉さんの横暴さは、時として命に関わるのよね・・・そういえば、こんなことが・・・」
姉貴の愚痴がここぞとばかりに続く。
「・・・それより、クワガタの話を、しよう」


「あ、ゴメンつい・・・で、なんでクワガタの話なわけ?」
「うん。そのクワガタ取りができる場所を、教えてもらおうと思って」
「場所、かぁ・・・瀬芦里姉さんについていっただけだから、案内はできるけど道順とか説明しにくいわね・・・」
「なんでねーたんがそんなクワガタにこだわるのさ?」
「いま書いてる小説の中で、主人公が少年時代に虫取りをする場面があるんだけど・・・私、虫取りとかしたことないから」
「なるほど・・・リアリティの追求ってわけね。わかったわ、犬上詩子のファンとしては、これは協力せざるを得ないわね」
「あ・・・ありがとう、高嶺さん」
ねーたんが両手を差し出して姉貴の手をぎゅ、と握る。
「や、やーね歩笑ったら・・・お、オーバーよ、そんな・・・」
顔を赤らめながらも、姉貴は手を解こうとせず、そのまま二人で見つめ合っている
・・・放っておくとこのまま時が流れていく。というか、アブナイですよ?
「で、俺は何を協力すればいいのかな」
「ん。クーくんには、実際に虫取りのやり方を教えてもらおうと思って」
「なるほど。それぐらい、お安い御用だよ、ねーたん」
ちょっと手をねーたんのほうに向けてみたが、その手が握られることはなかった。
・・・この敗北感はナニ?。
「じゃ、準備するから、姉貴たちは・・・そうだな、靴ぐらいは歩きやすい奴用意しといて」
「・・・私、スニーカーとか持ってない・・・」
「アタシのがサイズ合えば貸してあげる。玄関、いこ」
「うん、ありがとう」
そのまま・・・手を繋いだまま、二人は居間を出て行った。
ともねえ+ねーたんに続いて、アブナイ組み合わせ2号だなぁ。

「こんなもんでいいかな・・・じゃ、そろそろ行こうか。姉貴、案内よろしく」
「ふふん、任せなさいっての」
「・・・頼もしい」
こうして、奇妙な組み合わせの3人で、いい年をして虫取りに出かけることになった。


「結構遠いな・・・姉貴、道あってるんだろうね」
「ふん・・・アタシはね、一度通った道で迷ったことはないのよ」
「でも・・・ちょっと疲れた」
「そうね・・・でも、もう少しだから、頑張って歩笑」
やがて俺達が進む細い山道は、川沿いの開けた場所に出た。
「わぁあ・・・」
「ここが、去年・・・」
「姉貴が遭難したところか」
「言うなイカッ!」
「くす・・・でも・・・いいところ」
「まあ、ね・・・川の中州でキャンプしたりとか無茶しなければ良いところだとは思うわ」
「あ・・・とんぼ」
「水場だからね・・・ほら、あっちにアゲハチョウが」
「肝心のクワガタは、後ろの森の中かしら」
「うん。クワガタとか夜行性だから、夕方ぐらいまでは待ったほうがいいね」
俺は荷物の中からジャムとリンゴを取り出す。
「クワガタとかカブトムシは、餌を使っておびき寄せてとるんだ。これがその餌」
「ふむふむ」
「匂いにつられてやってくるから、ジャムにすりおろしたリンゴとか混ぜると、匂いが強くなっていいんだよ」
「へー・・・アンタも、つまらない知識はあるのね」
「でも、参考になる」
「じゃ、アタシはちょっと休憩させてもらうわね。ちょっともう足痛くて・・・歩笑は平気?」
「う・・・私も、ちょっと休もうかな・・・」
「ああ、いいよ準備は俺がやっておくから。ねーたんも休んでてよ」
「・・・ごめんね」
一言、申し訳なさそうに謝ったねーたんが姉貴と川縁に歩いていくのを見届けて
俺は森の木立の中へと歩いていった。


適当な木を探して、少し高くなった場所に行ってみる。
急な斜面の手前で良さそうな木を見つけ、餌を塗っておく。川の方から姉貴達の声が聞こえてきた。
「ひゃー、冷たーい!」
滑り落ちないよう気を付けながら木立の合間から見れば、川っぺりの大きな岩に二人並んで腰掛けている。足を水にでもつけているんだろうな。
やがて、姉貴の側からバシャバシャと水しぶきがあがり、ねーたんの方も遅れて水しぶきがあがる。
「・・・えいっ!」
バシャッ!
「うわ!?やったね・・・お返し!」
バシャァッ!
「ひゃ!?ちょっと、アタシそんなにかけてないわよ!・・・お釣り!」
バシャーン!
・・・二人ともずぶ濡れだが、楽しそうだ。ていうか、混ざりてえ・・・
とか思っていたら
「あ?・・・あわわわ・・・ちょ・・・」
ジャブーン!
水音とともに姉貴の姿が岩の上から消える。バランスを崩して川に落ちたらしい。
まあこの辺はそう深くないし今は流れもゆるやかだから心配ないか。
「だ、大丈夫!?」
「いたた・・・ちょっとお尻打っちゃった・・・えい!」
「わ、わあ!?」
バッシャーン!
ねーたんも岩の上から姿を消す。姉貴に引きずりこまれたのだろう。
「あははははは!」「む〜・・・」
むう。なんかちょっと羨ましい。とか思っていると
バシャ、と音を立てて姉貴のワンピースが岩の上に音を立てて放り投げられる。続いて、ねーたんの服も。
・・・脱いでる?
そのうち、下着までが脱ぎ捨てられ岩の上に貼りつく。
くそう、ここからじゃよく見えねえ!
俺はコソコソとポジションを探した。


ちょっと移動しただけで、川の中まで見える場所はすぐに見つかった。
気づかれないように、息を殺して様子をうかがうと・・・
全裸の二人が、浅い水の中で仰向けにゆらゆらと浮かんでいた。
やがてねーたんが向きを変え、ゆっくりと泳いで姉貴に近づく。
姉貴が手をさしのべると、ねーたんがその手を握り
手を繋ぎ、またゆらゆらと水にたゆたう。
姉貴が手を・・・ねーたんを引き寄せる。
ねーたんは逆らわない。
姉貴が体を起こし、ねーたんも起きあがると
濡れた体を寄せ合い・・・キス、しはじめた。
腰まで透明な水につかった二人の裸の少女が
互いの肩をそっと抱き寄せるようにして口づけるその姿は
エロティックであると同時に、どこか幻想的で
触れてはいけないような空気に包まれていた。
やがて唇を離すと、そのまま相手の肩に頭を乗せて抱き合う。
・・・何か囁きあっているみたいだけどよく聞こえない。
思わず身を乗り出し・・・
ズルゥッ!
「おわぁ!?」
ズルズルドテベキズルドスン!
急な斜面を転げ落ちて・・・そこで何もわからなくなった・・・


「う・・・」
顔が冷たい。何か水をかけられているようだ。
「あ、気が付いた」
「ふう・・・まったく、心配ばかりかけさせるんだから・・・」
意識がゆっくり戻ってくる。目を開けば、姉貴とねーたんが俺の顔をのぞき込んでいた。
「大丈夫?・・・あの斜面から、落っこちてきたんだよ」
「まったく、ドジなんだから」
見ると、二人とも服は着ている。
「・・・う〜ん」
「どうしたの?・・・どこか、痛い?」
「あのさ・・・二人で、泳いだり・・・してなかった?」
「はあ?水着も持ってきてないのに、泳いだりしないわよ。頭打って変な夢でも見たんじゃないの?」
「・・・え?」
起きあがって二人を見る。
特に恥じらうような素振りは見せない。
確かに・・・よく考えれば、いくら仲がよくなったからとは言え
あそこまでするような二人じゃない・・・よな。
じゃ・・・あれは俺の妄想が生み出した・・・夢?
でも、だったらどこからが夢だったんだ?
「それより、準備の方は終わってるの?早くしないと日が暮れちゃうわよ」
「あ、ああ・・・それはもう終わってる・・・えっと、こっちだよ」
立ち上がり、森の中へ二人を案内する。
まだ日が高く、遮る者のない河原はかなり暑いのだが
「・・・くしゅん!」「・・・くしゅっ!」
何故か、俺の後ろで二人揃ってクシャミをした・・・

(作者・◆Rion/soCys氏[2004/07/11])

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