・魔法少女を襲う
・紳士だから襲わない ←

「・・・・・・っと、何を想像してるんだ。俺の馬鹿」
この状態のともねえを襲ってしまったら
俺は悪の怪人みたいにタチが悪いじゃないか。
さすがにそんなことはできない。
ここはグッと我慢だ。
ともねえがスタスタと歩き始めた。
「ちょっとまって。これからどうするつもり?」
「皆を仲良くさせるんだ」
表情から察するに、ともねえの決意は固いようだ。
ただのコスプレ気取りじゃない。皆を仲良くさせるために頑張る、というともねえの想いは本物なんだ・・・
「俺も、手伝うよ」
ともねえの後を追いかけながら、自然と協力を申し出ていた・・・まだちょっと気恥ずかしいけど。
その時だった。
キィィィン!
「あう!」「うあ!・・・こ、これは・・・!」
クロウだ!なんてタイミングで出やがる。
「近い!・・・こっち!」
ともねえが凄い速度で走り始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよともねえ!」
俺も慌てて後を追う。心の底に一抹の不安を感じながら。


海岸を走ること数分。
月明かりの下にうごめく怪しい影はすぐに見つかった。
クロウは1体。海辺から今まさに街中に侵入しようとしているところだった。
今日は夏祭り。沢山の人が夜の街を出歩いている。
その中には、当然俺達の家族もいる。
そんなところに、コイツを紛れ込ませるわけにはいかない!
「ま、待って!」
「・・・ギ?」
ともねえが律儀に声をかけたので、クロウもこちらに気づいてしまった。
こちらに向き直ったクロウをともねえが見据える。
・・・今の魔法少女の姿のともねえに、戦闘能力はあるのだろうか。
おそらく、クロウを倒せるほどの能力はないだろう。
この姿は、敵を倒すためのものではないのだから。
魔法の力で、たとえ敵であっても仲良くなれる・・・そのための姿。
だが、もし魔法が通用しなかったら・・・?
「グルルルル・・・」
クロウが低いうなり声をあげながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる・・・
ともねえは緊張した面もちでステッキを構えた。
戦うためでなく、仲良くなるために。
俺は・・・どうする?

・ともねえを守る!
・ともねえを信じる! ←


今はともねえを信じるしかない!
「ともねえ、呪文を!」
「うんっ!ミルク・クッキー・チョコプリン・ミル・・あうっ!?」
クロウが無造作に腕を振り、その一振りで起きた突風にともねえが吹き飛ばされる!
く・・・ジガのときのような防御力は今のともねえにはない。
・・・ならば!
俺は倒れているともねえとクロウの間に飛び込む。
「ともねえ!・・・俺が盾になる!!」
ブン!と振り回したクロウの腕を必死にかいくぐる。
「く、空也!?」
「ともねえ・・・!もう一度呪文を!呪文を・・・成功させるんだ!」
透子先生は理想と現実は違うと言った。確かにそうかもしれない。
だけど・・・理想を追いかけて悪いか!?大好きなともねえの理想なんだ。俺がそれを叶えてやる努力しないでどうするよ!?
「ギギッ」
クロウが腕を振り下ろしてくる・・・避けられない!
「う・・おおぉっ!!」
ガシッ!
・・・受け止めた?俺が、クロウの攻撃を?
「空也っ!?」
「大丈夫!・・・ともねえは早く呪文を!」
「・・・ミルク・クッキー・チョコプリン・ミルフィーユ・・・(中略)・・・汚れた心よピュアとなれ!パープルストライクッ!!」
俺の背後で淡い紫色の閃光が走り、光の帯がクロウを直撃する!
「・・・ギ?」
振り回されていたクロウの腕がその動きを止めた。
・・・やった、のか?・・・やがて、クロウはゆっくりと・・・その両腕を下ろした。
「や・・・やった!ともねえ、成功だよ!」
「う、うんっ!・・・空也・・・!ありがとう!」
後から駆け寄って俺に抱きついたともねえの顔は、涙に濡れていた。


改心(?)したクロウは、それでも仲間を裏切ることは出来ないからと
人間を襲う理由やクロウの秘密とかを喋ることは拒否した。
だが、人間に対する恨みはもう忘れ、一人どこか人間の来ない山の中にでも住むと言って去っていった。
「これからも・・・魔法少女としてクロウを改心させていかないとダメみたいだね」
「うん・・・」
ともねえはまだ纏身を解いていない。心のどこかに、またこの姿になれるのかという不安があるのかもしれない。
透子先生は、こんな纏身は一度きりだって言ったけど
理想が少しでも叶うとわかったら、きっとまた魔法少女になれるはずだ。
「大丈夫だよ・・・きっとまた、魔法少女になれるさ」
「う、うん・・・でも、その度に空也を盾にするわけにはいかない」
「俺のことなら心配いらないよ。俺は、ともねえのためだったら何だって出来る!」
「あう・・・で、でも、空也傷だらけ・・・」
「え」
ともねえに言われて、改めて自分の姿を見れば確かにちょっとボロボロだ。
大きな傷こそないが、シャツは裂け、腕や肩、胸には擦り傷切り傷がそこかしこにあった。
「なぁに、かすり傷だよ。こんなもん舐めときゃ治るって」
「・・・」
ともねえはつつ、と俺に歩み寄る・・・
「・・・え?」
俺の傷に、舌を這わせている。暖かく柔らかい舌が、唾液を滑らせて傷口をなぞっていく。
ピリピリした痛みとともに、なんともいえない快感が背筋を走る。
「わ、私を守って、それで傷ついちゃったんだもん・・・これぐらい、させて・・・」
「ともねえ・・・」


俺の中にまた、ともねえを抱きたいという思いが沸き上がる。
でも、それはさっきのようなただムラムラしてムニャムニャしたいとかいうんじゃなくて
この人と愛し合いたいという、純粋な欲求だった。
なおも傷を舐め続けるともねえを抱きしめると、顔を上げさせて唇を奪う。
「んっ?・・・ん、ぅ・・・」
ほんの少しともねえは抵抗して、その後は俺に身を預けてきた。
唇を離し、ともねえと見つめ合う。
「・・・いい?」
「こ、これ以上は・・・ま、魔法少女はこういうことしちゃダメだと思う・・・」
「魔法少女だからしたいんじゃなくて、ともねえだからしたいんだよ」
「あう・・・じゃ、纏身を解いてから・・・」
「せっかくだからこのままがいいな・・・どうしてもイヤだっていうなら諦めるけど」
「・・・ずるいよ・・・そんな風に言われたら、拒めない・・・」
拒めない=拒まない=OK。
「抱くよ、ともねえ・・・」
少し小柄になったともねえの体を、そっと砂浜に横たえる。
覆い被さったともねえの体は、少し甘いような、いい匂いがした・・・

優しい交わりは夢の中の出来事のように過ぎていった。
終わってからも、しばらくは抱き合ったまま砂浜に横たわる二人。
「ちょっと・・・怖いな・・・」
「?怖い?何が?」
「あは・・・なんだか・・・どんどん私の夢が叶ってしまって・・・幸せだけど、上手く行きすぎて怖いって、あるよね」
・・・今まで苦労してきてるからなぁ、ともねえ。
「・・・私ね・・・もう一つ、叶えたい夢があるんだ・・・」
「へえ・・・俺でできることだったら、いくらでも協力するよ?」
「うん・・・空也なら・・・ううん、もう今は空也にしか叶えられない、私の夢・・・聞いてくれるかな・・・」
なんだろう・・・いや、なんだっていい。
ともねえの望みを叶える・・・それが俺にかけられた魔法なんだから・・・

(作者・◆Rion/soCys氏[2004/07/08])

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