姉貴に頼まれていた少女漫画雑誌を買って帰り、部屋に向かうと
廊下の途中でねぇねぇが腕を組んで何事か考え込んでいた。
「・・・どうしたの?そんなとこで」
「あ、くうや・・・ちょっとねー」
そう言って、ねぇねぇが指さしたのは・・・
「自分の部屋じゃない。部屋がどうかしたの?」
「まあ、くうやも知っての通り、アタシの部屋は住人であるアタシをも拒む魔境と化しているわけなんだけど」
部屋のドアには雛乃姉さんの書いた立入禁止の張り紙が貼ってある。
ねぇねぇが掃除とか一切しないで散らかし放題にした結果生まれた柊家の人外魔境である。
俺も一度、ちょっとだけドアを開けそうになって謎の生物に襲撃されかけたことがある。
「・・・謎の生物とか、いるよね」
「そうなのよねー。なんでこんなことになっちゃったのか、不思議よね」
そういう環境にしたのはねぇねぇ本人なわけだがそこは突っ込まない。
「で・・・実は、どうもアタシこの中に大事な物を忘れてるらしいのよ」
「・・・大事な物?なにそれ?」
「・・・ま、とにかく大事な物なのよ。で、それをどうやって探すか考えてたんだけどね・・・」
ねぇねぇの目が俺を見て怪しく光る。
「さって、姉貴に頼まれてた漫画を届けないと・・・」
激しくイヤな予感がしたのでさりげなくその場を立ち去ろうとしたが・・・
ガッシ!
捕まっちゃっいました。
「一人で探すより、二人で探すほうが早いよね?」
「いやそれはそうだけど、ホントカンベンしてください」
「何よ、大事な姉が命がけで部屋の中の捜し物をしようというのに、弟のくうやはそれを見捨てるわけ?」
「部屋の中で捜し物をするのはいいけど、その命がけ、ってところがたまらなくイヤです」
「いいから来る!」
ずるずるずる・・・
「ィイヤアァァァァ・・・(泣」

「いい?開けるよ?」
「もう好きにしてください・・・」
俺は、ねぇねぇがどこからか出したロープを犬のように首に回され、繋がれていた。
ガチャ
まずねぇねぇが少しだけ開けたドアに首だけ突っ込む。
「・・・周辺状況、確認!問題なし!侵入開始!」
自分の部屋に侵入ですか。
忍び足で部屋に入っていくねぇねぇの後を、嫌々ながらも俺もついていく。
ついていかないと首のロープが締まってしまうのだからしかたがない。
おそるおそる部屋に入っていくと・・・
「・・・おおお!?」
部屋の中はまるで熱帯のジャングルのように、見慣れぬ木々が鬱蒼と生い茂っていた。
キキィーッ・・・グェッグエッグエッ・・・クワァーッ・・・
遠くから得体の知れない生き物の声が聞こえる。
・・・・・・・・・遠くから?
なんだか、空間の広がりがおかしいですよ?
どうして見回しても部屋の壁が見えないの?天井はどこに行ったの?
「ね、ねぇねぇ?ここ・・・家の中だよね?」
「・・・どうやら、極度の混沌が空間をねじ曲げてしまったようね」
「なんですかそれは。なんですか極度の混沌って。その混沌を生み出したのは誰ですか」
「ま、ベースになってるのがアタシの部屋である以上、何か部屋の痕跡もあるはずよ。まずそれを探しましょう!」
・・・聞いてないし。なんか妙に楽しそうだし。
「うっふっふっふ・・・・なんか、こう、野生の血が騒ぐって感じだよね〜♪」
「・・・俺の血は、騒ぐのはアレのときだけなんだけどなぁ」

探索を始めて約1時間が過ぎた。
途中巨大フクロウの襲撃や食人植物の罠があったが、なんとかくぐり抜けてはいた。今のところは。
「お、やったね、箪笥発見!」
「やれやれだね・・・捜し物ってこの箪笥に入ってるの?」
「うん、この中が一番可能性が高いの」
早速引き出しを開けて捜し物を始めるねぇねぇ。
ガタガタ・・・ごそごそ・・・
「・・・お?」
「見つかった!?」
「お気に入りだったブラ発見〜」
ぐは。
「まだ付けられるかな?あ、ショーツも見っけ」
「いや、あの・・・ここで着替えなくても」
「ん〜、ちょーっちキツイかなぁ?どう、くうや?」
「・・・それが探してたものなの?」
「にゃ?違うけど」
「・・・早く他を探してください」
「せっかちだなぁ・・・もっと状況を楽しもうよ?」
「楽しめないよ!さっきからあのデカイ鳥の羽の音がまた聞こえてきたし!足下には変な植物の蔓が蠢いてるし!」
慌てふためく俺を、ぐいっと引き寄せねぇねぇがその豊かな胸に抱きしめる。あふぅ。
「だいじょうぶ、ちゃんとお姉さんが守ってあげてるでしょ?くうやには、絶対何もさせないから安心して」
「・・・うん・・・・・・・・・でも、探すのはちゃんと探してね」
「ちぇー」

「お・・・?やった、見つかったよくうや!」
そう言ってねぇねぇが引きずり出したのは・・・
赤いハイヒールに網タイツ。白い尻尾のついた黒いボディスーツ。そしてウサギの耳がついたヘアバンド。
「・・・・・・バニーガール?」
「そう!だいぶ前だけどね、沖縄の空也の友達から、くうやがバニーガール大好きって聞いてたからさ」
団長だな・・・まあ、いいけど。
「それで当時のバイト先からパクってあったんだけど、くうやがなかなか帰ってこないからすっかり忘れちゃって・・・にゃはは」
当時のバイト先がどこだったのかは追求しないし、パクったとかいうのもこの際聞かなかったことにする。
「で・・・それが、命がけで探さなければならない大事なものだったの?」
「もちろん!だって、くうやの好きな物だもん!」
本当に嬉しそうな、大好きな物を手に入れた子供のような、屈託のない笑顔。
「・・・ねえ、どしたの?黙っちゃって・・・あ、まさか、もうバニーガール好きじゃないとか!?」
「いや、バニーガールは今でも好きだけど・・・」
「よかった〜♪・・・くうやに喜んでもらうためなら、アタシ命だって魂だって賭けちゃうからね」
「ありがと、ねぇねぇ・・・でもね・・・バニーガールの格好してなくても、俺はねぇねぇが大好きだから、ね」
「!・・・・・・えへへっ♪な、なんか照れるにゃ〜♪」
まるで初めて恋をする少女のような、そんな初々しさを見せてねぇねぇが恥じらう。
「さ、目当ての物が見つかったんならこんなところに長居は無用!」
「そうだね・・・正直、ねぇねぇのバニースタイルも早く見てみたいし」
「・・・えへへ・・・じゃ、しっかりついておいで!」
そして、なんとか謎のジャングル部屋を脱出した俺たちは・・・

http://www.candysoft.jp/ohp/product/ane2/cg/img/2sp9.jpg

こうなりましたとさ。
で、さんざんイチャイチャスッキリして部屋を出ると姉貴が・・・やべえ、すっかり忘れてた・・・
「このイカッ!!漫画買いに行くだけで何時間かかってんのよ!」
ドゲシッ!!
「ぐほぉっ!?」
くっ・・・い、いいことばかりは・・・続かないなぁ・・・
(おしまい)

(作者・名無しさん[2004/05/29])

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!