雛「ここに来たかったのか、巴?」
巴「う、うん。あのぬいぐるみ、ここにしかないんだ・・・」
雛「ふーむ、いつまで経っても性根は子どもよな。そんな図体しておるのに」
巴「あう・・・」
雛「このましーんで掴み上げるのか。では巴よ、この小遣いで存分に励め。我は少し静かな所で待っておる」
巴「あ、ま、待って!ひ、雛乃姉さんも一緒に手伝ってよ・・・!」
雛「?我が手伝うことなぞあるのか?前の者は一人で人形を取っているぞ?」
巴「い、いろいろ横から指示出したりしてほしいんだ・・・奥行きとか分かりづらいし・・・」
雛「で、あるか。よし、そういうことなら手伝うとするか」
雛「巴!もう少し奥だ!・・・よし、もう少し・・・ああ、行き過ぎだ!」
巴「あ、あう・・・また失敗・・・」
雛「むう、往生際の悪い・・・おとなしくお縄につかぬか!よし、また我が両替をしてきてやる!」
高「・・・ふーん、巴姉さんも考えたわね」
空「どういうことだよ、姉貴?」
高「いい?まず巴姉さんが一人で人形とってたらどう思う?あんな小学生向けアニメの人形を」
空「うーん、不釣合いかも・・・」
高「で、いま両替し終わって帰ってきた雛乃姉さんが加わると・・・」
空「あ!なるほど、あれなら何も知らない人には小さい妹に人形をねだられる姉という構図だ!」
高「そういうこと。偶然二人がゲームセンターに入るの見たから来てみたけど・・・あ」
少女「ママー!あのぬいぐるみとってよー!」
ママ「どうせあなたいつもぬいぐるみ取れないでしょ。お金の無駄、帰るわよ!」
少女「じゃあママがとってよー!このお姉ちゃんこっち子のためにがんばってくれてるよー」
巴&空&高「「!!!」」
雛「・・・・」
巴「ね、姉さん・・・・」
空&高「「あーあ・・・」」
雛「・・・巴よ、我は・・・あそこのベンチで休んでおる・・・終わったら来るが良い・・・」
巴「ああ、ね、姉さん・・・姉さん・・・!」
少女「ほらー、あの子なんかお姉ちゃんにまかせてほかのとこ遊びに行っちゃったよー」
雛「・・・粛清・・・淘汰・・・」
雛「く、やはりこんな見た目では巴と並ぶと妹にしか見られんよなぁ・・・」
高「・・・なんかちょっと可哀そうね。巴姉さんも雛姉さんを気にして全然だし」
空「ちょっと励ましに行こうか?」
高「ダメね。逆効果よ。巴姉さんだってその辺感づいてるから後を追っては来ないのよ」
空「それはそうかもなぁ・・・ん?泣き声だ」
少年「ウェーン!!おかあさーん!!」
雛「どうしたというのだ?さてはお前は迷子だな?」
少年「うん・・・さっきまでここにいたのに・・・うう」
雛「これこれ、男の子が泣くでない・・・ほれ、飴をやろう!」
少年「うう・・・グス」
雛「うむ、良い子だ。では一緒にお前の母を探してやろう」
少年「本当?」
雛「当たり前であろう。・・・苦しいとき、困っているとき、人は助け合うものよ・・・」
空「俺らも手伝うよ、姉さん」
雛「おお、空也に高嶺。ちょうどいいところに来た。実は・・・」
少年「あ、お母さんだ!!」
雛「なに?」
母「あらあら、ごめんなさい。ゲームに夢中だったから少しトイレに行っても平気かと思ったら・・・」
高「なるほど、でも気をつけて下さい。ここ迷子になりやすいし・・・」
母「ホントに不注意でした。すいませんでした」
雛「うむ、子どもを一人にするのは危険であるからな、でもよかったな」
少年「うん、ありがと、お姉ちゃん!」
雛「お姉ちゃん・・・フフフ、そう我は「お姉ちゃん」であるからな!このぐらい当然の事であるぞ!」
少年「うん、バイバーイ!」
空「・・・さすがだね、雛乃姉さん。やっぱり柊家の長女は違うね、な?姉貴?」
高「へ?あ・・・そうね!やっぱり雛ねえさんには長女の風格っていうか、そんなのがあるわね!」
雛「そ、そうか・・・?・・・フフ、やはり我はみんなのお姉さんであるからな!」
巴「ね、姉さーん、ぬ、ぬいぐるみ取れたよ!そ、それで・・・その・・・あれ?空也に高嶺?」
雛「ハッハッハッ!巴よ遅かったではないか!では・・・皆で家に帰るとしようか!」
巴「え?う、うん・・・」
(作者・名無しさん[2004/03/26])