車内プレイ?


「さ、ここら辺なら大丈夫かな。 」
いつもと同じ週末の夜。
聖さまに誘われて夜の街をドライブしていたら、しばらくして突然聖さまが車を道路の端に止めた。
「大丈夫って、何がです? 」
祐巳は辺りを見渡す。そこは小さな住宅街らしく、夜なので通る車も出歩く人たちも見当たらない。
静かで薄暗く、とてもわざわざ車を止めるような場所ではない。
「何って、決まってるでしょ? 」
聖さまは悪戯っぽく笑って祐巳の頬に触れた。
その甘い感触には覚えがある。祐巳は自分の顔色が青くなっていくのが分かった。
「ま、まさか・・・。 」
「そう、そのまさか。 」
ご名答、と聖さまは楽しそうに微笑んだ。
「どどどどど 」
「どうしてって、今まで車の中でそういうことした事なかったじゃない? 」
「当たり前じゃないですか! 」
だって、普通はベッドでするでしょう。
百歩譲ってお風呂の中や玄関くらいは今まで許して来たけれど・・・。
「ごちゃごちゃ言わない。ほら、早く後部座席に移る! 」
「いやぁぁ! 」


抵抗はした。こんなに抵抗したの初めて、っていうくらい。
でも、助手席から引きずり降ろされて口を塞がれて。
「大きな声出さないで。人が来ちゃうよ? 」
と言われてしまったら、大人しくするしかないじゃない。
それでも私は構わないけど、なんて可笑しそうしている聖さまをこれ程憎らしく思った事はない。
これじゃ一歩間違えたら犯罪者だよ、聖さま・・・。
そんなこんなで、気付けば祐巳は後部座席に仰向けになって寝転んでいた。
嬉々として後から乗り込んできた聖さまが、ドアにロックをかけて祐巳に覆いかぶさる。
「聖さま、やっぱりやめませんか?私、やっぱりこんな所じゃ落ち着かない・・・。 」
真上にある聖さまの顔は、新しい玩具を買ってもらった子供のようだった。
「やだ、やめない。 」
すかさず口を塞がれる。間を置かず生暖かい舌が祐巳の中まで滑り込んできた。
「んん・・・。 」
乱暴に口膣を舌が這いずり回り、熱いくらいの唾液が流し込まれる。
いつもより激しい口付けに気が遠くなり始めた時、窓の外に人影が見えた。

「んーっ!んん!んが・・・! 」
口を塞がれている事も忘れて、祐巳は聖さまに外に人がいる事を伝えようと躍起になった。
こんな痴態を人に見られてしまったら、もう生きてはいけない。
聖さまの背中を叩いて、聖さまの口へ直接言葉を吐き出す。
「なんなの、もう。雰囲気ぶち壊しだよ。 」
雰囲気も何もあったものか。
聖さまが離れてやっと自由になった口をパクパクさせながらなんとか言葉を紡ぐ。
「い、い、今人が・・・!人が通ったんですってば! 」
「えー。どこぉ? 」
のんびりと、聖さまは体を起こして窓の外を見渡した。
祐巳も上半身を起こしてみるけれど、そこには薄暗い闇が辺りを包んでいるだけだった。

「誰もいないじゃない。 」
「さっきは居たんです!絶対見られましたよ! 」
「通っただけでしょー?エンジンも切ってるし、暗いんだから気付かないよ。 」
「そんなのわかんないじゃないですか、やっぱりもうやめた方が・・・。 」
落ち着かないったらない。またいつ人が通るとも分からないんだから。
すると聖さまは、いつになく真面目な顔をして言った。
「私はね、もっと色んな祐巳ちゃんが見たいの。私だけに見せてくれる祐巳ちゃんが見たい。
だからこういう場所で愛し合って、祐巳ちゃんがどんな顔をしてくれるのか凄く見てみたい。 」
言っている事が滅茶苦茶だ、と思わないわけでもないけれど、聖さまがそんな風に想ってくれているのは
やっぱり嬉しいから、祐巳は聖さまに自分から軽くキスをして微笑んだ。
「・・・一回だけですからね。 」

「んぁ・・・。 」 服の上から柔らかく胸を揉まれると、祐巳から甘い吐息が洩れた。
祐巳の反応を確かめると、聖さまは左手で服の下着の中に手を入れて直に胸に触れた。
聖さまの手はいつも冷たくて、肌に触れる度にぞくぞくする。
全体をゆっくりと揉まれて指の腹で突起を撫でられるともう此処が車の中なんて事は頭から吹っ飛びそうになっていた。
「捲らない方がいい? 」
片方の手で服の裾を摘んで、聖さまが首を傾げる。もしもの事を考えた場合、そっちの方がいいだろう。
「・・・ん、ぁ、はい・・・。 」
「そうよね。祐巳ちゃんの可愛いこれが他人に見られるのも嫌だし。 」
そう言って、聖さまは突起を爪で軽く弾いた。思わず体がびくりと跳ね上がる。
「ひゃぁ! 」
そんな祐巳を無視して、そのまま聖さまの顔がお腹の方へ移動する。
何をするのかと思えば、おヘソの中に突然小指を浅く突っ込んだ。
「な、なに・・・や・・・くすぐったい・・・。 」
控えめに伸びた小指の爪が奥のほうに当たって奇妙な感覚が沸く。
「臍は皮膚が薄いらしいから、傷つけちゃいけないね。 」
微笑みかけられて何をするのかと思えば、今度は舌で臍の穴を舐め始めた。
「あぅ・・・せ、せいさま・・・。 」
昨日のお風呂で臍の手入れをしていて良かったかも、とぼんやり思う。
聖さまはくちくちと音を立てながら、執拗に祐巳の臍を愛撫したまま、祐巳のスカートの中に手を滑り込ませた。

ショーツの上から、指を往復させて撫でられる。
撫でられた部分が肌に張り付いて、そこはもう充分に濡れている事が自分でも分かった。
中指で強く何度も擦りつけられると、ショーツの一部分は既にびしょびしょになってしまっていた。
「祐巳ちゃん、気持ち良い? 」
いつの間にか聖さまは、体を起こして座ったまま祐巳を見下ろしていた。
腕から下はスカートの中へ伸びていて、愛しそうに祐巳の顔を見つめている。
その視線が恥ずかしくて、祐巳は強く目を瞑って頷いた。
やがて人差し指と中指が、ショーツの中へ進入して、そのまま陰唇を揉むようにして弄くられる。
くちゅくちゅと、淫らな音と祐巳の細くて高い声だけが車内に響く。
「あっ、ぁっ・・・あ、ぅん・・・! 」
もう長くは持たないと思ったのか、聖さまは親指で蕾を探り当てると、強く押し込んだ。
「ぁぁっ!聖、さま・・・!も、だめ・・・っ! 」
たったそれだけのことだったけれど、祐巳はすぐに達してしまったのだった。

祐巳は後部座席のシーツに体を完全に預けながら、窓からぼんやりと流れる景色を眺めていた。
終わった後は、いつもこう。頭がぼーっとして、何も考えられない。
「いやぁ。結構興奮したわね。もしかしたら誰かに見られたかもしれないよ。 」
運転席からちらりと覗く聖さまの頭が、さも愉快そうに揺れた。
「もういいです、あの場所には二度と行きませんから。 」
嫌だと言いつつ結局最後までさせてしまった気恥ずかしさで、祐巳はぶっきらぼうに言い放つ。
聖さまに頼まれたら嫌とは言えない性格は、変えていかなければいけないかもしれない。
「・・・。 」
それきり聖さまは黙って運転をしていた。
もしかしていじけたのかな。少しだけ不安になって後ろから運転席に身を乗り出して聖さまを覗き込む。
「何笑っているんですか。 」
思わず拍子抜けする。聖さまは、黙ったままいつもみたいにニヤニヤした笑みを浮かべていたから。
「ん?今度は何処がいいかなぁって考えてたのよ。 」
「・・・・聖さま・・・・。 」
だめだ。この人は全然反省なんてしてない。
祐巳はこの先に待っている悲劇を想像して、泣きたい気持ちになったのだった。


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