みずはが行ってしまった。
俺に黙って何処か遠くに。
過ぎたことをぐだぐだ言っても仕方ないが、事前に知らせてほしかった。電話でもメール でも…その、せめて1行でも。
俺があいつの旅立ちを知ったのは、俺とあいつのHPの読者からのメールだった。それは構 わない。ただあいつがHPでしっかりネタにしてたクセに俺に黙ってたのがイヤだっただけ だ。
…例えエンマに舌をぬかれそうになろうが、あの事故のオヤジと再び対峙させられるよう なハメになろうが、そんな事は口に出さないが。

しかし、HPを見る限りではまるで昔やってたバラエティ番組のような事になってるな、と 思った。何処かにイベントの神様がツいてるんじゃないのか、アイツは…

「!!」
突如、携帯の着メロがなった。アイツかと思い慌てて出た、が、違う。
バイト先からの業務連絡だった。明日のシフトが変わったとかいう内容。
電話を切り、俺は携帯の蓋を180°回転させて閉め、ベッドへと投げ捨てた。
つまらん。
何故だか非常につまらない―いや原因はわかってるのだが、それが更につまらんっつーか 腹立たしい。だから認めない事にする。
…そうだ。
慌てて携帯を拾いに行く。
もしかしたらあいつからの電話があったかもしれない、先程とは逆をして携帯を開き、履 歴を見た。1ページ目で見つからず、真ん中のキーを下へと回す。スライドしてゆく名前 の中にあいつの本名が見つかる……けだし、日付は一週間前だが。
自分でアイツに電話を――ダメだ、何処に居るかわからないしそんな事が出来るわけない し。
………
……………
…………………

………あーーーーー!
もういい! 寝る、寝ることにする!!
サイドテーブルに携帯を置いて、代わりに薬を数錠摘む、ペットボトルの水と共に一気に 飲み下した。
ベッドの上、俯せに横たわるとやがて目ン玉の奥からゆっくりと訪れる眠気に素直に従 う。
目が覚める頃にはアイツからのメールが届いてるといいな
そんな事を思いつつ、眠りの深淵へと引き込まれて。

♪♪〜
『只今電話に出ることができません。ごようけ…』
「覇者りーん、覇者りんったら!お〜いっ」
『ぴー』
「あ、え〜と…俺、みずは。今ね…」


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