「久しぶりー♪」
「……」
 覇者は無言でドアを閉めようとした。
 しかし、一早くそれを察したみずははドアを押さえた。
「1ヶ月振りに会う恋人にこの仕打ちはないでしょ?」
「誰が恋人だ、誰が。何をしに来た」
「たまたまこっちに来たから覇者りんの顔を見に来たんだよ」
 言葉だけは普通に、腕には渾身の力を篭める二人。
 先に体力が尽きたのは覇者の方だった。
「俺の勝ちだね」
 勝ち誇るみずは。
「何でそんなに体力あるんだ、くそ…」
 悔しそうに覇者は唇を噛んだ。
「数多くの衣裳をゲットする為には、体力も必要となってくるんだよ、覇者りん」
 満足気な息を吐き、みずはは家に上がる。
 覇者は仕方なしといった感じに息をつき、その後を追い掛けた。
「何だかんだで喉渇いたな。覇者りん、お茶頂戴?」
「我輩は客人以外には茶を入れない主義だ」
 覇者の言葉にみずはは少し考え込み、そして手を打った。
「そっか、俺は覇者りんの恋人だもんね。それはお茶を入れてくれない訳だ」
「すまん、今すぐ、即行で入れてこよう!それはもう美味しいお茶を!!」
 みずはの言葉に覇者は叫び、台所へ走って向かう。
 その姿にみずははお腹を抱えて笑う。
「やぁっぱ、覇者りんが一番だよ。うん」
 笑いを押し込めながら、みずはは呟いた。
 そしてベットに寄り掛かり、瞼を閉じて覇者の帰りを待つ。

 しばらくして、お茶を入れ終えた覇者が部屋に帰ってくると、みずははベットに寄り掛かかり、健やかな寝息をたてていた。
 その様に、覇者は溜息をつく。
「お茶を入れている間に眠ってしまう程疲れているのなら、さっさと家に帰って休めばいいものを…」
 ボソリと呟き、その身体に毛布を掛けてやる。
 気持ち良さそうな笑顔を浮かべているみずはに、覇者も釣られて笑顔になる。
「あまり無理はするなよ?」
 寝返りをうった拍子に擦れてしまった毛布を掛け直してやりながら、覇者はみずはに囁いた。

 欠伸が、覇者の口から零れる。

 そしていつしか覇者も、みずはの隣で寝息をたてていた。


END




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