「はじまり side M」 ギシリとベットを軋ませ、俺は起き上がった。 そして窓辺へと近づいていく。 「…何故、だ…」 苦しげな声。 俺は何も答えず、ただ窓の外を眺め続ける。 「何故、お前がこんな事を…」 泣きそうに震えている声に、俺は唇を歪めた。 「わかっている癖に、そんなに確証が欲しいの?ねえ、覇者りん」 振り返る。 月光の中に、覇者りんの白い裸体が淡く浮かび上がっていた。 覇者りんは唇を噛み締め、悔しそうに俺を睨む。 その姿に俺は笑みを深くした。 (酷く、そそられるね、その姿)「我輩は決してお前を許さんぞ」 「いいよ。許してほしいなんて思ってないからさ」 「…いつか絶対殺してやる」 その言葉の中に、紛れも無い憎悪と、侮蔑と、そして少しの寂しさがあった。 ぞくり、と肌が粟立つ。 今、俺の中は喜びで溢れていた。 「出来るんならね」 そう、それでいい。 俺の事を憎んで。俺に殺意を覚えていて。 それが俺の望み。 覇者りんの中にある炎を、俺だけの為に燃やしていてよ。 それだけでいいんだ――…