「はじまり side H」

  ベットが軋む音がし、隣にあった熱が離れて言った。
 我輩は溜息をつき、掠れた声を必死に出す。
「…何故、だ…」
 どうしても苦しそうな声になってしまう事に、惨めな気分になる。

 返事はなかった。
 それでも我輩は言葉を続ける。
「何故、お前がこんな事を…」
 声が、震えてしまった。
「わかっている癖に、そんなに確証が欲しいの?ねえ、覇者りん」
 奴の――みずはの声は、笑っていた。
 視線の先のみずははやはり笑みを浮かべていて、我輩には唇を噛み締め、みずはを睨む事しか出来なかった。

 それが、みずはの奴を喜ばせるだけだと分かっていても。

「我輩は決してお前を許さんぞ」
 殺意をこめて、言う。

「いいよ。許して欲しいなんて思ってないからさ」
 あっさりと答えが返ってきた。

「…いつか絶対殺してやる」
 ありったけの憎悪を乗せて、我輩は言葉を吐き出した。心の中に一抹の寂しさを隠し。

「出来るんならね」
 悪魔が、笑っていた。

 我輩達は、どこで道を間違えたのだろう。
 ただ、友として一緒にいたかっただけなのに。
 これから、どこにいくのだろう。


 闇の中を、一人歩いてる…

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