僕の顔も全身も絶えず殴られた後がある。


僕の父さんは気に入らないと僕を張り手で殴る。僕が生きているのが気に入らないと言う。僕の存在が気に入らないと言う。なら何故僕はこの世に産まれてきたのですか? 学校でも苛められていたから行くのが酷く憂鬱だった。
僕の居場所は何処にも無い。
トイレで小学校一年の時にぼっこぼこに殴られた事がある。僕が父さんの上司の目の前でその上司の事を「あーお父さんの嫌いな人だー」と言ってしまったからだ。その上司が帰った後、一日中ぶたれて蹴られて説教された。
顔面がひしゃげたじゃがいものような顔。全身が痛くて歩くのさえ辛い。

「おはよう」に「ございます」がついてないだけで殴られた。嫌いな酢豚を食べたくないと言っただけで殴られた。そんな毎日だった。

 

母さんも僕を殴った。でも母さんが殴るのには理由があった。母さんもよく怒鳴ったり叱ったりする。けれど母さんは僕が父さんに理由もなく理不尽に殴られたりした時はきちんと治療してくれた。父さんに首を絞められてサイドボードに背中と頭を何度も叩き付けられて僕が泣いてるときに慰めてくれたから母さんにはなついた。

僕はまだ子供だから親の下でしか生活出来ない。僕は口の中も血まみれになって食事を咀嚼する。母さんはそんな父さんを止めない。何故なら僕には弟がいて、弟の方を可愛がっているからだ。そして僕には美人な妹もいる。父さんは妹の前では猫なで声を出して寵愛している。僕はそれを見るのが凄く気持ち悪い。妹も弟も両親に愛されている。僕だけが愛されていない。

 

僕は母さんが好きだ。母さんがいなければとっくに自殺してる。そして今日も殴られる。蹴られる。どうして僕を殴るの? 悪い事をしたなら謝るから。いい子になるから。

 

だからもう殴らないで。

僕は何度も自殺を考えた。でも出来なかった。僕には母さんがいるから。だから・・・


けれど一度実行に移しかけた事がある。小学生の時ずっと苛められて、家にも学校にも居場所がなくて、その体験を課題作文にしてコンクールに出品した時賞を貰った。そしてそれは製本されて僕は家に持って帰り、父さんに見せた。すると父さんは笑いながらこう言ったんだ。

「お前いじめられとったんかー知らんかったー」

理解出来なかった。実の娘が何度も自殺を考えた箇所を読んで何故笑うのか。突発的な殺意。けれどそれは僕を分かってくれない悲しみに代わり、僕は自殺未遂をした。学校で3階から飛び降りようとしてあと片足一歩踏み出せば落ちる所で思いとどまった。あとはふらふらと信号を無視して車がびゅんびゅんと走っている道路を通った。轢かれたかったんだと思う。けど車にぶつからずにすんだ。


 

そうして年月が過ぎ僕は大人になった。

僕が義務教育を終えた時には僕がある程度大きくなったから反撃が怖くなったらしい。母さんも年を取って厳しさもなくなり、僕は高校にも大学にも父さんに行かせてもらった。だから鬱病になるんじゃないかというぐらい殴られたけど少しは感謝しているし、僕からも何とかコミュニケーションを取ろうと試みた。けれど父さんは僕と会話をしようとはしないようだ。

それでも父さんに聞いてみたところ、僕を殴った事実を覚えていないらしい。覚えていても、それが僕に一番適した育て方だと思ったらしい。・・・だから弟と妹はむしろそういう事が全くなかったから増長しまくっている人生を歩んでいるのかもしれない。

 

 

僕は今は自分が不幸だとは思っていない。むしろサイトを運営して、沢山の友人が出来て、学生生活も楽しいし、幸せだと思う。

 

今でも自殺衝動にはかられるけれど、その時は僕の腕に爪を立てて自傷して痛みをやり過ごしている。でないと押さえきれないから。僕が死ぬと沢山の人が悲しむから、僕はベッドの中で涙を流す事もあるけど生きる事を選択した。だから僕は自殺志願者にもなっていない。

 
色々あったけど、今は生きている事に感謝している。そして母さんが僕を産んでくれた事に最大限に感謝している。

死ななくてよかった。そう思えている今、僕はとても幸せだ。


 

 

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