「どこをどうしてほしい?」
ぼくは…
「何をしてほしい?」
ぼくは…
「ほら、その口で言ってごらん?」
ぼくは…。
貴方に愛してほしい。
夏の暑い日、ぼくは裸に剥かれてこの人に抱かれている。この人には好きな人がいる。恋人がいる。なのにぼくを誘う。ぼくは拒めない。好きだから。本当に好きだから。だけどこの人の恋人もぼくは好きだから。二人に別れてほしいって望んでいないから。でも…口先だけじゃなく、本当に愛してほしいんだ。無理だって分かっているけど。
ぼくは恥ずかしい言葉を一杯口にして、されるがままになっている。胸に吸い付くようなキスにぼくの体はのけぞる。びくん、びくんと体が反応する。
「三等兵の体、好きだよ」
「ぼくは…ぼくは貴方が…」
泣きそうになった。この人は本当にぼくに優しく接してくれるのに。だけど。“でも”って言葉がどうしても胸の奥をちくちく刺す。
ぼくは貴方の玩具。
火照った体にローションを塗った指が進入する。こんな狭い入り口なのにかき混ぜられると中の空洞がどんどん広がっていって。ぼくの体が出口を求めて反応してしまう。
ぼくが好きなのはこの人じゃなくてこの人にこうされるのが好きなのかもしれない。
誰でもいいって訳じゃない。けど他の人にされても同じ反応をしてしまったら…僕は今はこの人だけのものだけど、この人が飽きたら捨てられてしまう、それだけの……玩具。
「挿れるよ?」
待ち望んでいたもの。全部埋められた時ぼくはこの人の体をぎゅっと抱き締めた。
「あん…あ…あ…あ…あ…」
「ほんと、いい声で鳴くね」
必死で唇を求めるぼくの反応を楽しんでいる。ぼくの体じゃなくてぼくの心を好きになってほしい。ぼくが貴方を好きな10分の1でも。
体内に熱い奔流。そして取り出された…精子が詰まっている白い袋。ぼくはぐったりとそれを見ている。
あの人とする時は体内に精子を残すのかな。
「充分楽しめたよ。あいつも…お前ぐらい素直になればいいのに」
ぼくの体を撫でて言う。心臓がまだどきどき言ってる。ぼくはその体をぎゅっと抱き締める。
「まだし足りないの?」
そうじゃない。側にいてほしいだけなんです。
あの人の残り香。濃密な空気。時間。幸せな筈なのに心にぽっかりと穴が空いているのは何でだろう。
ああ、この恋は実らないからだな。
そう、思った。
END