海外から帰ってきたとメールが来たので余暇がてらみずはの家に遊びに行った。彼はどうやら今はプロジェクトのリーダーになって一人暮らしをしているらしい。
人けの無い山奥の会社の社員住宅。車を走らせながらそこへ行くまでの間には畑と寺しか無く、過疎地をまざまざと見せ付けられる。
チャイムを鳴らしてドアが開いた瞬間に我輩を見ていきなり抱きついてきた。
「会いたかったぁ」
「分かったから中に入れ。それにしても人がいない場所だな」
「うん。夜中とか人攫いに合うんじゃないかと思うよ。神隠しとか」
「三十路男は流石に攫わんだろう」
「あ、ひどっ」
そんな軽口を叩いてから中に入る。寝に帰る場所と言うだけの事はあって、本当に殺風景な部屋だ。以前に見た50箱衣装があるような部屋や、引っ越しの手伝いの時に見た配線だらけの部屋とは違い本当に片付いたと言えば聞こえはいいが、要は本当に何も無い部屋だ。目に付くものは調理器具とノートパソコンに繋がれている携帯電話、敷きっぱなしの布団。そんなものか。
我輩は荷物を床に置いて座った。
「茶」
「無い」
「・・・水でいい」
テーブルに置かれた水を飲むと一息ついた。
「その荷物は?泊まりにしては多いみたいだけど」
「どこかの馬鹿がレンジでカレーを爆発させて、ダースで買い取ったインスタントラーメンばかり食べていると思うと不憫でしょうがないから買ってきた。食材。頭脳は最高クラスだが一般常識に関してはほんとに抜けてるな、貴様は」
「スナック菓子が主食になってる奴に言われたくないけど、貰っておくよ」
スポーツバックの中に入っている食材は殆ど空と言ってもいいぐらいの冷蔵庫と冷凍庫の中に収められ、缶類や乾物は冷蔵庫の横に積み重なった。
「心配してくれたんだ」
「あれだけ海外赴任してて慣れない一人暮らしと見た時は眩暈がしたぞ」
「だってこれだけの田舎じゃ作ってくれる相手見つけられないし」
「現地妻か。男の夢だな」
「覇者りんは?いいじゃん専属シェフがいて。海外勤務も無さそうだし」
「というより、そういう所ばかり選んで行くな。貴様ぐらいの能力があれば幾らでも地元で仕事が見つかるだろう」
「そうだけどね、自分がしてて面白い仕事じゃないとやる気になれないよ。そんなもんでしょ」
「気持ちは分からなくもない」
鳥の鳴き声と30度を超える気温。窓を開けていても虫が入ってこないのはまだこの季節だからだろうか。これがあと2ヶ月ぐらいすると網戸もクーラーも無いこの部屋はとんでもない事になるだろう。最も、この男がここにそんな長い期間滞在しているとも限らないが。
「本ぐらい持ってくれば良かったな」
「俺はいいよ。覇者りんがそこにいるだけで」
「置物か。三十男なんて見てても面白くないだろう」
「そういや三十になったんだね。おめでとう」
「・・・嬉しくないが一応有難うと言っておく」
「みずはと同い年ー」
「何を浮かれているかな」
笑顔のみずはに思わず笑みが浮かぶ。隣にいるみずはに唇を寄せた。
「んっ・・・」
「プレゼント。くれるんだろ?」
「ああもう、好き。凄い好き。大好き」
二人で抱き合って笑う。手放しに好きだと言ってくれる相手はこの先出てこないと思う。
「それにしても俺ら、芸が無いね。何か付き合い出してからずっとこんな調子じゃない?」
「付き合ってたか?」
「うわ、俺の一方通行?だって俺の事好きじゃなかったらここまで来ないでしょ。日帰り旅行じゃないんだし、泊まりは必須でしょ」
軽口は唇で塞ぐ。口内を嘗め尽くすだけで一人でいる時には殆ど起こらない性欲が条件反射で起こる。
相変わらず我輩は鼻で呼吸をするのが下手で、窒息しそうになる。閉じている目を薄く開くと真面目な顔でこっちを見ていた。こんな顔も出来るんだなと密かに関心してまた目を閉じる。
本気で脳内酸素が薄くなった錯覚がして濡れきった唇を離す。
「眼鏡。邪魔」
「何か俺らっていつもこうだよね」
みずはが我輩から離れてパソコンの電源を切り、携帯を充電器に設置した後に眼鏡を取り、そして少し残ったコップの水を口に含んだ。
「何かな」
「何かね」
意味不明な言葉。
「ってかね、何でここまで人を好きになれるのかが自分でもよく分からないんだ。心臓がどきどきして破裂しそうでさ、今にも飛び出しそう」
分かる。・・・同じ気持ちだから。
「まるで動物だな」
「人間だけでしょ。こんなにどきどきしたりすんの。・・・多分ね。男同士なんて子孫繁栄の本能でもないし」
目を細めて笑う。相変わらず掴み所の無い奴だ。
「・・・蛋白質。足りてないんだろ?」
「うわ、直球。そういう奴だったっけ」
「他にする事も無いし。プレゼント、くれるんだろ?」
「気持ちだけじゃ足りない?」
「いいんだぞ。我輩はこのまま帰っても。貴様はそこで一人寂しく欲情を持て余して我輩を想いながらオナニーすれば」
「酷い言い草。覇者りんだってやりたい癖に。今日は帰すつもりは無いから」
「無論、我輩も日帰りする気は無いがな」
「蛋白質。欲しいな」
みずははにじみ寄ると、我輩のジーンズを膝まで下ろしてボクサーパンツの上から既に固くなっているものを舐める。
「焦らすな」
「命令出来る立場?」
「我輩の誕生日だろう」
「顔真っ赤にして何を言ってるかな」
「五月蝿い」
体からどんどん力が抜けて上体が床に沈む。いつも・・・いつもこうだ。
来なければよかったかなとほんの少し後悔した。
「ほんっとに弱いねー。自分からしようって気は無いの?」
「背中痛い」
「はいはい。ベッドまでお連れしますよお姫様」
「誰が姫だ。しかもそれはベッドでなく布団だ。・・・いい、自分で歩く」
「もう腰が砕けてると思ってた」
「・・・」
服を脱ぐのは慣れたもので。情緒もへったくれもない。
「痩せた・・・というかやつれたか?」
「仕事がハードだからね。リーダーとかしたくないよ。下働きが一番。心労も溜まるってもんだよそりゃあ。覇者りんと会うのも数ヶ月ぶりだし」
「何でもこなせるようで、一人では何も出来ないんだな」
「完璧な人間はいないよ」
「貴様は極端なんだ」
「それは言えてるかも」
「歩くイベント製造機」
「否定しないけどね」
くすくすと笑うこいつの手首を一纏めにしてベルトで縛った。
「プレゼント。くれるんだろ?」
「え・・・と、何をする気ですか?」
「ナニ」
「ナニって・・・」
「いいから。蛋白質やる」
「やっと手首骨折したの治ったばかりなのに」
「それぐらいで折れる程やわなものじゃないだろう」
「そりゃそうだけどさ。うわ、思ってもみなかった展開」
「するのか?しないのか?」
「しますします」
全裸の我輩の中心をみずはの顔に寄せる。みずはは勃起しているそれを一生懸命に舐め回す。何処で覚えたのか、やはり上手い。こいつは初めてのセックスの時からフェラが上手かった気がする。搾るように口を窄めて舌で尿道を舐める。
こんな事をされている時だけ多分好きなのかもしれないと思う。普段はそう意識しないけれど。
「いい、もう」
みずはの口から出てきたそれは唾液でてらてらと光っていて。
「いつになったら手首解いてくれるんだよ」
「蛋白質飲ませたら」
「今にも出そうじゃん」
余裕のある顔が少しむかついたので、みずはの両足を開いて菊の門に指をかけた。
「お兄さんマジすか」
「何で敬語なんだ貴様」
「マジもん?本物?」
「今の今まで散々我輩に挿れておいてそう言うか」
「だってそういう立場じゃん」
「どういう立場だ」
「やれるの?ぶっちゃけやれるの?男の穴にチンポぶち込むんだよ?」
「あまりごちゃごちゃ言うと口の中にタオル入れるぞ」
「・・・すみません。今まで通りみずはの上に覇者りん乗った方が様になると思うんだけどなぁ・・・」
我輩はタオルの代わりにみずはの口に我輩の指を突っ込んだ。蛇が絡みつくように指を舐め回してくる。背筋がぞくぞくしてくる。
何故指を舐められただけでいってしまいそうなぐらい気持ちいいんだ。
亀頭の先端から透明な蜜が出てくるのが分かる。
このままだと達してしまいそうなので指を引き抜いて、唾液塗れの指を後ろの穴に少しずつ入れた。
「違う・・・前立腺もっと奥・・・」
諦めたらしい。微妙にエロいし。みずはの体がびくんと跳ねる。ここか。
「プレゼントはわ・た・し、って凄くお約束」
「喋るな。・・・気が散る」
「どうせなら・・・そのまま気が散ってくれた方が・・・」
入れている指が熱く、中から締め付ける。
「このまま挿れても大丈夫か?」
「やばい・・・かも。洗顔クリームかなんか取ってきて」
汗ばんだ表情で力無く笑っている。流石に余裕が無くなっているようだ。
シェービングクリームを取って再び指で穴を広げていく。
「あ・・・そこ・・・いい・・・」
蕩けるような顔。口から止め処も無く流れる唾液が敷き布団を汚していく。我輩も・・・されている時はこんな顔を見せているのだろうか。
いつもされている経験上、正常位よりはバックの方が楽なのでみずはの体を裏返してやった。
意図を察したのか、進んで腰を上げている。今更のようだが、男に挿れた事など一度も無いし、女相手の場合でもここを使った事は一度も無い。
腰を掴んでゆっくりと挿入する。きつい。こんな所をやって大丈夫なのかと疑問が起こる。
「そのままでいる方が辛いから、一気に、やって」
「痛くないのか?」
「我慢、するから」
一気に貫いたその中は温かかった。
「ああ、あああ」
色艶のある声に理性のタガが外れていく。こいつはこんな声も出せるのかとも思い、初めてこいつをやった奴を憎くもなる。
腰と腰のぶつかりあう音。それから、粘液のぐちゃぐちゃ聞こえる音。
「やだ、痛い、抜いて、外して」
男同士だから中から分泌液が出るわけでもなく、当然乾けば痛くなるだろう。みずはの痛みを紛らわせようと陰茎に手を伸ばして扱いた。
「まじで、それ、反則、出るから」
結構攻めるのは体力を使うんだな。そんな考えが浮かぶ。
「いきたいか?」
「頼むから・・・いかせて」
腰の速度を速めて快感を求める。
「うあ、出る、うぐっ」
体がびくびくと跳ねて放出したようだ。我輩はみずはの体から離れて顔を横向きにさせてその顔に精液を注いだ。重力のままに滴り落ちる精液を舐めながら「苦い」と虚ろな目でみずはは言った。
手首の枷が開放されたみずはは、ティッシュで顔を拭きながら「こんなもので蛋白質補充したくないなぁ」とぼやいている。我輩は笑いながら「すまなかったな」と呟いた。
「本気ですまないと思ってる?」
「そりゃあまぁ・・・」
どうしてこいつは平気な顔をしているんだろうと思う。我輩は何となく照れてしまい、みずはの体を抱きしめた。優しい体温。嗚呼、我輩はこいつを好きなんだと思う。
「さて第二ラウンドいきますか」
「・・・よくそんな体力あるな」
「すまないと思ってるんでしょ?」
「・・・出したばっかりで勃つのか?」
「勃たないよ。実はさ、低温蝋燭買ったんだよね」
我輩はみずはから体を離して「は?」と素っ頓狂な声を出した。
「て・い・お・ん・ろ・う・そ・く」
「そんな一字一字区切らなくても分かる。何でそんなもの」
「みずはが寂しがってるから絶対覇者りん来てくれるだろうなーと思って」
流石に身の危険を感じた我輩は後ずさりした。
「帰る」
「お尻いたーい。手首いたーい。体のあちこちいたーい」
一瞬でも好きになったのを本気で後悔した。こいつはこういう男だ。
「分かった。もういいからさっさとやってさっさと終わらせろ」
「素直な覇者りんだーい好き」
・・・好きにならなくてもいい。
鼻歌を歌いながら本気で赤くて太い蝋燭を持ってきた時はここに来た事を心の底から後悔した。
「どうしていつも貴様は普通に出来ないんだ」
半ばうんざりした顔で言うとみずはは酷く真面目な顔で「普通って何?」とそう言った。
「何って・・・」
「男同士が普通でないぐらいは分かってるよね」
先程まで散々喘いでいた男と同じ口から出ているとは到底思えない言葉。
時間が過ぎて全裸の我輩が少し寒さを感じ始めた所で、窓が閉められた。
「別に声が外に漏れてもいいんだけど」
「なぁ・・・我輩はその気は無いんだが」
蝋燭に火を点す。赤い炎が綺麗だと思った・・・いや、見とれている場合ではない。
「みずはのケツで感じた癖に」
そう言われると黙るしかない。事実だからだ。
「楽しいか?」
「さぁ。楽しいかどうかはやってみないと」
疲れきった顔で我輩は敷布団に横になる。放出した後の気だるさが体に蔓延しているのも事実で。
炎が揺らめく。宗教じみていると馬鹿げた考えまで浮かぶ。
「熱っ」
蝋が落とされた瞬間。体が強張った。かなりの高さから蝋が落とされたからその間に冷えて固まっててもいい筈なのにやはり熱い。
「通販で買ったんだ。低温で人体に使用可能だからそんなに熱くはないと思うけど。俺が持ってて熱くないし」
「熱い。本気で熱い。洒落にならんから止めろ・・・うわっ」
ぽたぽたと蝋燭が体に落とされていく。思わず体を丸めた。
「こ、このサディスト」
「嫌だったら来なければよかったのに」
「誰が蝋燭を用意してると想定したんだこら。熱いから。体火傷する。止めてくれ」
「みずはが止めてって言っても止めなかったよね」
「それとこれとは別だろう。貴様だって感じていた癖に。あのまま止めて欲しかったのか?違うだろ?」
「低温だから火傷しないよ。それに・・・赤い蝋で染まった覇者りんって綺麗。鏡で見せてあげたい」
「別に見たくもな・・・」
やっと蝋が落ちてこなくなった。気持ち悪い。
「じゃあさ、どうしてこんなに後ろべたべたにしてんの?腸汁だらだら出して。感じてもいないのに濡れるなんて女の子みたい」
頭を抱えたくなった。・・・情けない。これだけ開発されてしまったせいか、放っておいても後ろが濡れてくる。
「感じていないのに」
「こんなに乳首尖らしてるのに?」
こういう時に圧倒的に立場が弱いと思う。心の何処かでは認めたくなかったのかもしれない。こんな自分を。
「蝋燭垂らされて感じたんでしょ?素直に言わないといかせてあげないよ?」
「・・・」
「何、泣いてるの」
「・・・いかせてくれ」
絶対勝てないと思った。みずはが我輩を一度受け入れた所で立場関係は何も変わらないんだ。
「両手出して」
逆らえない。つい数時間前に我輩がみずはの両手を縛ったように、ベルトで縛られる。
我輩は寝そべったままでみずはを見ている。蝋燭を片付けに行くのだろうかと思ったら、その使用していた蝋燭にコンドームを被せるのを見て更に血の気が引いた。
「その大きさは流石に無理だ」
「これだけ濡れてたら大丈夫じゃない?」
足をじたばたさせて逃れようとした所を難なく捉えられる。何処からそんな力があるんだ。
異物の感触。先端から入る。
「くあっ」
「力抜かないと中で切れるよ」
そんな事を言われても。我輩は恐ろしいものを見る目でみずはの手つきを見ている。
「ああ、止め、入らなっ」
「腰動いてるよ。貪欲だねぇ」
くすくすと笑っている。悪魔だこいつは。
バイブを扱う手つきで手を回転させたりしながらずぶずぶと奥まで入ってまた抜かれる。
「何で、こんな、もので」
体の中心が熱い。蝋燭の余熱のせいだけではない。
「止めてほしい?」
「意地悪言うな・・・もう少しで・・・ああ、あああっ」
達してしまった。こんなもので。心臓が太鼓を叩いているようだ。息苦しい。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ごろりとケツから抜け出たコンドームに包まれた赤い蝋燭。ケツの穴がひりひりして落ち着かない。
「これで満足したか?」
「・・・」
どうやら満足したようだ。完全に動かなくなった我輩の横に寝そべって我輩の体に付着している赤い蝋燭をぺりぺりと剥がしている。
「なぁ」
「んー?」
「腹減った・・・」
「みずはが料理すると大惨事その2ぐらいにはなると思うよ」
「貴様な。一番体力使ってないだろ。疲れて動けない我輩に料理作れと?」
「料理の出来る男の人はかっこいいと思いまーす」
ああもう。我輩はこんな奴に関わってしまったのを心底後悔した。
「炒飯でいいか?」
「食えれば何でもいい」
「分かった」
やれやれ。のろのろと体を起こしてボクサーパンツだけを穿いて冷凍庫に入っている冷や飯をレンジで温めて食事を作る事にする。横目で見るとその間、みずはは汚れた敷布団からカバーを外して洗濯機に持って行っていた。
「ほら、出来たぞ」
材料はシメジと海老とソースとご飯。それと塩胡椒。我ながら金をかけてない料理だと思う。
穴の痛みは少し治まったが、セックスした後の表現出来ない下肢の痛みは襲っている。
「熱い、口の中火傷する、はふはふ、美味しい」
「もう少しゆっくり味わえ。貴様も少し火傷しろ。全く、人を何だと」
「水」
「それぐらい自分で持ってこい」
無視して食べる事に専念している。
しょうがないので二人分の水を入れたコップを持ってきた。
「んぐんぐんぐ、ぷはぁ。いやぁさっきまで覇者りんの精液が口の中に残ってたから味が混ざって」
「食事中にそういう事は言わなくていい」
「お代わり」
「もう一皿食べきったのか。本気で動く気無いな、貴様」
中華鍋の中から残りの炒飯を全部こいつの皿の上に乗せる。普段まともな食生活おくってないんじゃなかろうか。
「ご馳走様」
もう食べたのか。我輩、まだ一皿の半分しか食べてないぞ。
「っていうかさぁ、炒飯ぐらい誰でも作れるよね」
「カレーをレンジで爆発させた男が何を言ってますか」
「そういや、半年同い年なんだよね」
「・・・まぁな」
「何か幸せだなぁ」
返答に困るような事を言われても。食べ終わった皿二つはキッチンにある桶に水を入れてそのまま放置しておいた。
「食欲と性欲が満たされたら後は睡眠欲か。疲れた。我輩は寝る」
「来年の誕生日も一緒にいれたらいいね」
「・・・蝋燭はもう無しな」
「それを言うならみずはに挿れるのも無しね。だって男にされるのは凄い久しぶりだから違和感はあったし」
「腑に落ちない・・・」
「世の中はそういうもんだよ。みずはは仕事があるんで、勝手に寝て下さい」
「本気で友人無くすぞお前」
「覇者りんは友人じゃなくて恋人だから大丈夫」
何でこんな奴と付き合わなければならんのだ。でも、やはり友人でないとすると恋人・・・なんだろうな。
酒に睡眠薬を混ぜて飲んで新しいシーツに包まれて速攻眠る事にする。こいつと付き合う上で深く考えると泥沼に落ちそうだ。もう上がれないのかもしれない。
おやすみ。そんな言葉と頬へのキス。悪くないどころか居心地がとてもいい。
まどろむ意識の中、後悔はしないでおこうと思った。
隣で眠っている体温を感じる。未来は見えなくても、来年も一緒にいられたらいいと思う。抱きしめながらきっと、多分、大丈夫だと確信した。
<END>