あなたのいなくなった日、私の手首から血が流れた。

あなたのいなくなった日、私の手首から血が流れた。

少しずつ緩やかにそれはバスタブの中で静かにゆらゆらと揺らめくように。

血が。私の血が。

バスタブの底に血が沈殿していく。それを見ながらあなたを想う。

もう、いなくなってしまったあなたを。

あなたは他の人を選んだ。そして私は緩やかな死を選んだ。透明な水に血の塊が浮き上がってくる。

くすくす、くすくす。

私は笑う。

なんて、綺麗なんだろう。

醜い私。醜い心。だけど、血は綺麗だ。

どんなに外見が違ったとしても血の色だけは私を裏切らない。

血が、教えてくれる。

血の色だけは人間、変わらないと。

私は笑みを浮かべて血を見つめる。

深く刻まれ、ぱっくりと裂けた手首。ピンク色の肉襞。

バスタブから溢れる血が浴槽を彩って。

私の心も流されてしまえばいい。

誰も助けないで。一人にして。私を選ばないなら。



ふやけた肉はあまり綺麗じゃない。そして黒ずんだ血液もあまり綺麗じゃない。

浴槽の中から腕を取り出し、私はそう呟いた。

目の中には水滴を孕んだ天井だけが映っていた。



ENDLESS



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