[注意]この小説には暗示的な性的描写が含まれているため、読む際はご注意ください。なお15歳未満の閲覧を禁じます。
ユリカのラブラブ大作戦/赤銅竜
『ユリカのラブラブ大作戦』
by 赤銅竜( taihei-01@mtc.biglobe.ne.jp )
その日珍しくアキトが寝坊した。目覚めたとき既にユリカは着替えを終え台所に立って朝食の仕度をし終えるところだった。
「アキト、おはよ〜!。もう、お寝坊さんね。(はぁと)」
低血圧な彼女には珍しく朝から上機嫌だった。
「おはよう、ユリカ。今日はずいぶん早起きだな。何かあったのか?」
「ひっどーい、私だってたまには早起きすることぐらいあるんですよーだ。」
「はは、ごめんごめん。」
「もうすぐ朝ご飯お仕度が出来るからお布団畳んで顔洗っちゃってね。」
ユリカはお味噌汁の味見をしなが言う。
「へーい。」
アキトは素直に布団を片付け始める。横目でユリカのエプロンの後姿を見ながら『なんかいいよな、この雰囲気』なんて内心思っていた。顔を洗い卓袱台を出して雑巾で水ぶきしている最中に妙に部屋の中が静かな訳に気付いた。
「なあユリカ、ルリちゃんとラピスはどうしたんだ。姿が見えないけど。」
「二人とも急用があるって、朝早く出かけていったよ。」
「急用って?」
「さぁ詳しいことは教えてくれなかった。」
「ふーん・・・・・・。」
アキトは腑に落ちないようだったが、それ以上尋ねるのをやめた。そうこうしてるうちにユリカが朝食を並べ終えたからだった。ご飯・味噌志汁・アジの開き、そして納豆と沢庵。番茶も有る。正しい日本の朝ご飯といえよう。
「いただきます。」
「いっただきまーす。」
アキトはまず味噌汁を一口啜る。
「うまい!ユリカ、ずいぶん上達したな。」
思わず誉めるアキト。
「えへへ〜。」
アキトの言葉に照れるユリカ。そして和気藹々と食事が進む。
「ユリカ、ほっぺにご飯粒ついてるぞ。」
「えっ?どこどこ?。」
「コ・コ・」
『チュ』ユリカの頬にキスするアキト。
「やだ・・・・アキトったら・・・・(ぽっ)。」
(おいおい納豆のにおい気にならんのか>作者。)
新婚ラブラブモード突入の二人。
その時、ベランダ(鉢植え三つおけば一杯になってしまう程狭いけど)のそとで『がたん』と物音がした。
「ん?何だ?」
顔をそちらに向けるアキト。
「あ、いーのいーの気にしないで。それより・・・・・ね。」
といって瞳を閉じて小首をかしげる、”お願いキスしてポーズ”にはいるユリカ。
「ばっ、バカ。朝っぱらから何考えてるんだ、オマエ。」
と言いつつ顔を近づけるアキト。二人の唇が触れるか触れないかの瞬間、再び窓の外から「ドンドン」と先程より大きな音が聞こえてくる。
「そとに何かいるのかな?」
おもむろに立ち上がり窓の外を覗こうとするアキト。
「あ、駄目!!」
おあずけをくらわされたユリカは後ろから柔道の諸手刈の要領でアキトの足をすくう。
「おわ!」
バランスを崩してこけるアキト。その隙にユリカは傍においてあった熱湯入りのやかんを手に取るとベランダの窓を開け外に熱湯をぶちまけた。「みぎゃ〜!!×2」と押し殺した悲鳴が二つ聞こえてきた。
「・・・・いきなり何なんだよ、ユリカ。」
と転ばされて少し不機嫌なアキトに
「ななな、何でもないの。そとに泥棒猫が二匹いただけなの。それよりアキト、ちゃっちゃっと朝御飯食べちゃいましょう!!!」
少し引きつった笑顔でごまかすユリカ。良く見ればこめかみに血管が浮き出ている。
「・・・お、おう」
その異様な迫力に気圧されるように頷くアキト。
そして食事が終わり食後の番茶をすすっていたアキトにユリカがこう切り出した。
「ねぇ、アキト。今日何の日だか覚えてる?」
アキトは怪訝そうな面持ちで考え込む。
「ん〜・・・・・・・・・・・・・ああ!!!」
急にアキトは大声を上げた。
「今日はユリカ、お前の誕生日じゃないか!!」
「ぴんぽ〜ん、正解でーす。嬉しいアキト、やっぱり憶えててくれたんだ。」
ユリカの嬉しそうな笑顔にアキトは、冷や汗をたらしながら
「ご免、オレ何の用意もしてないんだ・・・・・。」
「・・・・・いいのよ、アキト・・・・・あなたは私より仕事のほうが大切なんだもんね・・・・・・ユリカ・・・・・判ってた・・・・・・しくしく。」
急に俯いて肩を振るわせるユリカ。
「そんなことない!!ユリカ、ごめんな。オレ決してお前のことないがしろにしてたわけじゃないんだ!ただ・・・ちょっと、このところばたばたしてたもんだから・・・・・・今日一日何でもお前の言うこと聞いてやるから・・・・泣くなよ、ユリカ。」
アキトは慌ててユリカの両肩に手を置き彼女をなだめ始める。
ユリカは俯いたまま『やった!!ひっかかった!!!』と内心思いつつ
「・・・・・・本当?・・・・・ユリカのお願いなんでも聞いてくれる?・・・・・・・・ぐすぐす」
と泣き真似を続ける。
そうとは知らないアキトは真剣な面持ちで
「ああ、なんでもユリカの言う通りにする。男の約束だ。だから、な、機嫌直してくれ。」
ユリカを慰める。ユリカは急に顔を上げるとにっこり笑って
「じゃぁ、ユリカの肩を揉んで」
「はい、はい。」
「御返事は一回で結構です。」
「はーい。」
「うむ、よろしい。」
もみもみもみもみ。何事にも器用なアキトはマッサージもプロ顔負けな腕前だった。
「はぁー、気持ちいー。」
文字どうりツボを得たアキトのマッサージにご満悦なユリカ。
「じゃあ、次は腕。」
「はーい。」
もみもみもみもみ。
「その次は腰。」
「はーい。」
もみもみもみもみ。
「次は脚。」
「はーい。」
もみもみもみもみ。アキトのゴールドフィンガー(笑)に全身を揉みしだかれユリカは徐々に体の奥が熱くなっていく。
「・・・・・ねぇ、アキト・・・・私・・・・なんだか・・・・・感じてきちゃった・・・・・・・(はぁと)。」
アキトはユリカの首筋を甘噛みしながら
「今日はオレ、ユリカの言うことなら何でも聞いちゃうよ。」
耳元で囁く。ユリカは真っ赤にながら
「・・・・・・ユリカの・・・・胸も・・・・・・ごにょごにょ。」
「え、何だって?良く聞こえないな〜。」
「・・・・・もう、アキトの意地悪ぅ・・・・・ユリカの・・・・・・オッパイ・・・・・揉んで下さい。」
「はーい。」
もみもみもみもみ。横座りしているユリカを後ろから抱きかかえるようにしてユリカの胸を揉むアキト。ユリカの白い肌が耳まで桜色に染まっていく。
「どう、ユリカ。気持ちいいかい。」
ユリカの耳に舌を入れながら尋ねるアキト。
「ん・・・・・くぅ・・・・・・あはぁ・・・・・あ・・。」
既に息も絶え絶えなユリカ。
「ねぇ・・・・直に・・・・・・もっと強く・・・・・・ユリカのオッパイ・・・・・虐めて・・・ください・・・・。」
「はーい。」
アキトがユリカの白いブラウスのボタンに指をかけた時、「ガン、ガン、ガン。」と三度ベランダのほうから大きな音がする。一瞬で正気に戻ったユリカはものすごい目つきで窓の外を睨むとどこからともなく取り出すと窓から外へぶちまける。
「ぎゃーす!!」と先程より大きな悲鳴が聞こえてくる。
「ユリカ・・・、生ごみの不法投棄はよくないぞ・・・・・。」
たじろぐアキト。ユリカはアキトの方を振り向くと座った目つきで
「アキト、私デートがしたい!!!」
「で、でーと?」
「嫌なの?」
「別にイーけど、どこ行くんだよ?。」
「それはユリカにお・ま・か・せ。じゃあコレ。」
といってメモ用紙を押し付ける。
「行き先はコレに書いてあるから、後でコミュニケで連絡するね。」
といってアキトを強引に外へ押し出す。
「お、おい、ユリカ〜」
どんどんどんとドアをたたくが既に返答は無い。仕方なしにアキトはメモを見て歩き出す。
「エーと、まず最初は・・・・・理容室か。」
アキトが立ち去ったのを確認したユリカはベランダの窓を開け身を乗り出す。そこには荒縄でぐるぐる巻きにされたルリとラピスが蓑虫のように吊るされていた。口に』猿轡を噛まされた二人はびしょぬれの上頭に生ごみが乗っかっていた。
「と、言うわけで私コレからアキトと二人っきりでデートしてくるね。今夜は帰らないから二人ともお留守番よろしくね。」
「モガーーーー!!!(ナに言ってんですかユリカさん、ぶっ殺しますよ>ルリ)」
「むぐーーーー!!!(アキトと二人っきりでお出かけなんて許さないんだから、早くおろせこの年増>ラピス)」
ユリカはわざとらしく耳に手を当て
「え〜、なぁに?良く聞こえないなー。・・・・・・ふんふん、やだぁ『頑張ってください』『立派な赤ちゃん生んでくださいね』なんて二人とも気が早すぎるよ〜。」
なんて一人芝居をしたりする。
「ムギーーーー(ユリカさん、絶対妨害してやりますからね。覚悟してくださいよ!!!)。」
「モゴーーーー(コロス、コロス、コロス、必ズ殺ス!!!)。」
「あ、もうこんな時間だわ。お化粧しなくっちゃ、じゃね。」
がらがらぴしゃん、カチャ。
ご丁寧に雨戸まで閉めるユリカ。
暫くそのままで吊るされているとどこからからともなく、雀達がやってきて二人の頭に止まり毛繕いをを始める。
「もごもごもご(さてこの状況をどう打開しましょうか)。」
「もがもがもが(この状態でクールに決めても間抜けなだけよ)。」
「もが(アキトさんに繋がらないんですか)。」
「もご(出来るならとっくにやってる、あの年増何か細工してったんだわ)。」
「もご(肝心な所で使えない人ですね。まぁ所詮アキトさんとあなたの絆なんてその程度のものなんですね)。」
「もがもがもが(ムッカー、ユリカの次はルリ、あなたをぶっ殺すぅ!!!)。」
「もご(まぁ、取り敢えずユリカさんを懲らしめて、ついでにアキトさんにもお仕置きするまでですけど。)」
「もが(えっ、アキトにもお仕置きするの、かわいそうだよ)。」
「もごもご(甘いですね。あんなに簡単にユリカさんの色仕掛けに引っかかるようでは、私の騎士(ナイト)失格です。タップリお仕置きです)。」
「もがー(アキトは私のモノなのに〜!!)。」
端から見ていると二人の美少女が頭から生ごみをかぶったまま軒から吊るされている様は、シュールなことこの上ない。
「もごもごもご(フフフ、こんなこともあろうかと連絡しておいた私の下僕A・Bがそろそろ到着するはずです)。」
「もが(下僕A・B?)。」
その頃アパートの前まで来ていた高杉三郎太とマキビ・ハリはほぼ同時にくしゃみをしていた(笑)。
それから丸半日、ユリカのメモに記してあった色んなお店(理容室・メンズエステ・サウナ等)に順番に足を運び心身ともにリフレッシュ出来たアキトは、とあるブティックに居た。
メモに最後に書かれていたこの店でアキトはユリカが内緒でオーダーしていた黒のタキシード(銀のラメ入り)に着替えていた。着替え終え店の外に出るとそこには』黒塗りのリムジンが止まっていた。運転席から若い銀髪の青年が降りてくるとアキトに向かって一礼すると
「テンカワ・アキト様ですね。奥様が中でお待ちです。」
といって後部座席のドアを開ける。
「あ、ども・・・・」
アキトが乗り込むとそこには黒髪を高く結い上げ、胸と背中が大胆に開いている黒のイブニングドレスを身に纏ったユリカが座っていた。黒いシルクのストッキングに真紅のハイヒール、いつもより濃い目のルージュが妙に艶かしい。
「アキト、お・ま・た・せ。うん、凄くかっこいい、決まってるよ。」
微笑むユリカ。アキトは惚けたようにユリカを見つめていたが、ユリカに促されると真っ赤になってユリカの向かいに座った。
「ユリカ、今日のお前、凄く綺麗だ。なんだか別人みたいだよ。」
ユリカはアキトの手放しの賛辞に頬を染めながら
「ありがとう、でもそんなに見つめられると私なんだか恥ずかしい。(ポ)。」
喜ぶ。
そんな二人を乗せいつのまにか走り出したリムジンの後方にピッタリついてくる二人乗りのスクーターがあった。二人とも一応サングラスなんかかけてるがどう見ても高杉三郎太とマキビ・ハリの二人に他ならなかった。ルリに呼び出された二人は「お願い聞いてくれたらデートしてあげます。」というルリの甘い言葉につられ、アキトとユリカの尾行を行っていた。
(艦長とデートか・・・・ついでに彼女のヴァージンも頂いちゃおうかな!!!)
(艦長とデートか・・・・手をつないで買い物したり映画見たりお茶飲んだりしたいなぁ!!!)
それぞれ邪な思いと純粋な思いを抱いた二人の男は必死でリムジンの後をついていく。
「む!!」
リムジンを運転する銀髪の雇われ執事の青年はユリカから渡された”ユリカとアキトのラブラブ大作戦妨害予定者リスト”に名を連ねている二人が尾行していることに気づくとコンソールに幾つか備えられているボタンの内の一つを押す。
「ポチっとな」。
するとリムジンの後部トランクがパカッと開き中から小型ミサイルランチャーがせり出しミサイルを発射する。
「え、・・・・うそだろ。おい・・・・」
「み、み、ミサイル!!!」
『・・・・・ちゅど〜ん!!!』という爆発音と火球の中に二人は姿を消した(笑)
その一部始終を見守っていたルリは眉一つ動かさず言い放つ。
「あの二人、思ったより使えませんでしたね。次の手を考えなければ・・・・・当然あの二人の今度のボーナスはカットです。」
「ルリ、きびしー」
ラピスは二人に少し同情した。
アキトとユリカを乗せたリムジンはとある超高級ホテルに到着しチェックインを済ませた二人は最上階の展望レストランで夜景を見ながらのディナーを楽しんでいた。フランス料理のフルコースを食べ終え食後のデザートを食べてる時ユリカはアキトの様子が少しおかしい事に気づいた。
「どうしたの、アキト。美味しくなかった?」
「いや、料理は美味しかったけど・・・・・・」
「けど?」
「あのさ・・・・、ユリカ・・・・、お前・・・・本当にオレと結婚したこと後悔してないのかなと思ってさ・・・・。」
アキトはさみしそうに笑う。
「今日のお前・・・・凄く綺麗でさ・・・・なんだか輝いて見えるんだ・・・・・、オレはいつもお前に苦労かけてばっかでさ。」
アキトはユリカの柔らかい手を握り
「ほら・・・・・・指先が少し荒れてる・・・・・お嬢様だったお前に、水仕事ばっかさせてさせてるもんな。」
そう呟く。
「オレの稼ぎじゃドレス一枚買ってやることも出来ないし、こんな良いホテルで夕食だってさせてやれない。今日だって、お義父に出してもらったんだろ・・・・・オレ自分が情けないよ。」
するとユリカはアキトの手をキュッと握り返し
「ちがう・・・・違うのよ、アキト!。私、別にそんなつもりじゃなかったの。ただアキトを喜ばしたかっただけなの・・・・・・。」
見る見るユリカの星空のような瞳が涙で滲んで来る。
「どうしてそんな事言うの・・・・私、一度だって辛いと思ったことない・・・・・・いいえ、ただの一度だけあったわ・・・・・あなたと離れ離れになったあの二年間・・・、あの時わかったの・・・・私はあなた無しでは生きていけないって・・・・もし私が輝いて見えたのなら、それははあなたがそばに居てくれるからなの・・・・・本当よ。」
大粒の涙が今にも零れ落ちそうだ。
「ユリカ・・・・・・・」
アキトはユリカの涙を優しく拭ってやり、くちづけをする。
「ありがとう、ユリカ。オレ、きっとお前を幸せにしてやる。約束・・・・・。」
その言葉を途中で遮るように今度はユリカからアキトにくちづけをし、こう囁く。
「ばかね・・・・・私もう・・・・幸せなんだから・・・・・・・。」
キャンドルに照らされて映し出された二人の影はいつまでも寄り添ったまま離れませんでした。
おしまい。
「・・・・・・なんて綺麗に終わってもらっては困ります。アキトさんは私の大切な人だから・・・・。」
「ちがう、アキトはわたしのものなの〜!」
というわけでルリとラピスは二人の泊まっているホテルの屋上に立っていた。
あの後、ネルガル本社に押しかけた二人は、(ハッキングで入手した)ネルガルのトップシークレットをライバル会社に売り渡すとにとアカツキ会長を強請り、最新鋭のステルスヘリと夜間進入工作用の特殊装備一式を供出させアキト奪還に乗り出したのだった。途中アキトとユリカがレストランでキスしているのを発見したルリはそこへミサイルをぶち込むようアカツキに命令したが、「アキトが怪我しちゃう。」と泣いて懇願するラピスによってその命令を撤回しホテルの屋上に乗り移ったのだった。ちなみにステルスヘリとアカツキは屋上に潜んでいた銀髪執事の放ったSAMにより大破炎上しお空の星となった(笑)。
「コレからどうするの、ルリ?」
そう尋ねるラピスにルリはアキト奪還作戦の詳細を説明する。
「まず第一に屋上より垂直懸架でターゲットのいるスイートルームまで外壁を伝って降下。第二に集音マイクを使い内部の情報収集。第三に二重構造の防弾ガラスを切り取ります。第四に催涙弾及びスタングレネードでターゲット二人を無力化します。その後はC4を使用、窓から室内に突入した後、ターゲットを確保します。」
「そんなに手間かけなくても良いんじゃない?」
ラピスはルリの綿密な作戦に呆れ顔だ。
「それに地上からここまで百数十メートル以上あるのよ?」
ルリは首を横に振る。
「ラピス、相手は二人ともA級ジャンパーなんですよ。下手をすればすぐボソン・ジャンプで逃げられてしまいます。念には念を入れなければいけません。それに二人のスイートルームは屋上からたった三階分下なだけですから、問題ありません。アキトさんを取り戻したくないんですか?取り戻したらアキトさんと一緒にユーチャリスで旅行にでも行って来たらどうです?一週間ぐらい。邪魔はしませんよ。」
ルリのその言葉を聞いてラピスはにまっと笑う。
「アキトと二人っきりか〜。えへへへ・・。解った、あたしやる!アキトと私の新婚旅行の為に!!」
やる気まんまんで張りきるラピス。二人はアキト達の部屋がある側の金網をバーナーで焼き切るとワイヤーを固定して壁面を垂直降下し始める。三分もかからずアキト達の部屋の外まで来ると、集音マイクをガラスに張りつけ内部を探る。二人が耳にしたのはユリカのすすり泣くような甘い嬌声とアキトの荒々しい息使いだった。
「く・・・・・・ん・・・・・・・あ、あっ・・・・・・・・アキト・・・・・アキ・・・・ね・・・・・ぇ・・・・・そんなとこ・・・・舐めちゃ・・いや・・・・。」「なんだよ、ユリカ・・・・ほんとに止めてもいいのかよ・・・・・・。」「・・・・・だ・・・・、だめ〜、・・・・やめちゃ・・・・・いや・・・・。」「何だよ、わがままな奴だな。そういう悪い子は・・・・・・・こうだ!」「あぁ!・・・・・そんなトコ噛んじゃいやー!!イタイ、イタイよアキトーっ・・・・・」「駄目だ、次は・・・・・ここをこうして・・・・。」「いや・・・・・そんなとこに・・・指入れちゃ・・・・・いやぁ。」「なんだよユリカ、我慢がたりないぞ。」「・・・だって・・・・ホントっとにいたいのぉ・・・・・・今日のアキト・・・・・なんだか・・・・すっごくいじわるぅー・・・・・。」「ご免ご免、なんだか今日のユリカ、すっげえかわいいから・・・・つい虐めたくなっちゃってさ。」
再びアキトとユリカが激しく絡み合うのがカーテンの隙間から垣間見える。スターライトスコープを着けているルリとラピスにはかなりくっきり見える。アキトの細身だが鍛えぬかれている筋肉質の体が月明かりに浮かぶ。意外と広い背中は傷だらけだった。その背中にユリカの両手が回され爪を立てている。よほど力を入れているのか背中から血が滲んでいるのがはっきり解った。アキトの顔はうつ伏せになっているので表情は判らない。ユリカは瞳を閉じ眉根を寄せアキトの左肩に思いっきり歯を立ててイクのを我慢しているようだ。
・・・・・・・・・三十分後、ようやく我に返ったルリはガラスを切る為の工具を取り出す。
「つい魅入ってしまいました。我ながらはしたないことですね。しかし・・・・・ユリカさんがうらやましいです。私もすぐに・・・・・(ポ)。」
そしてガラスを切り始める。隣にいるラピスはぐすぐす泣きながらサイレンサーをつけたイングラムSMGのグリップにゴム弾のマガジンを装填している。
「・・・・アキト・・・ひどいよ・・・ユリカばっか・・・可愛がってさ・・・・ゆるさないんだから・・・・・・・。」
ラピスのインカムにはユリカの喘ぎ声が途切れ途切れに入ってくる。
「ユリカの・・・・・ユリカの・・”ピー”をアキトのおっきいのが・・・・・・かきまわしてるぅ・・・・・・奥に・・・・コツコツあたるよぉ・・・・!!!」
ジャキとコッキングボルトを引いたラピスはインカムをむしりとり握り潰した。
「コロスコロスコロスコロス絶対コロス。」
ブツブツ呟いているラピスをほかったまま、ルリは二重になったガラスを切り終えそこにゴムのシートを張る。そこまで終えると背中に付けていた多目的グレネードランチャーに催涙弾とスタングレネードを装填する。そして張りつけたゴムに切れ目を入れそこから銃口を差し込んだ。ルリは薄く笑うとラピスを促す。ラピスもようやく我に返る。
そのとき『ゴスッ』という鈍い音と共にラピスの頭にナゼか向日葵の咲いた鉢植えが命中し、彼女は白目をむいて気絶してしまった。頭上に殺気を感じたルリが体をかわすともといた空間を鉄アレイがものすごい勢いで落下していく。ルリが頭上を振り仰ぐと屋上に銀髪の青年執事が松の盆栽を抱えて立っていた。
「・・・・・何してるんですか?」
「いえ・・・・あまりに月が綺麗なので、つい・・・・。」
「つい・・・・なんです?事と次第においてはただでは済ましません。」
「つい・・・・・クレイジークライマーごっこなど・・・・・楽しんでみました。」
『ぶちっ』血管のぶちきれる音と共に怒ったルリは銀髪の男に向けガヴァメントをむけ発砲する。それより一瞬速く銀髪の男が手をはなした松の盆栽がルリの顔面にめり込む。『ゴスッ』と鈍い音と共にやはり同じ様に白目をむいたルリは気絶してしまった。銀髪の雇われ執事は懐にしまってあったユリカに渡された妨害予定者の最重要警戒人物の欄に記されているルリとラピスの写真にマジックでぺけを記すとどこへともなく立ち去っていった。
次の日の明け方までタップリとアキトに愛されたゆりかたんは至極ご満悦でした。しかしユリカにせがまれ十二ラウンド計十五発も頑張らされたアキトは二日間腰痛で寝込んでしまいましたとさ、めでたしめでたし。
「めでたくない!!!」
(ルリ&ラピス)
今度こそTHE・END