■背徳より上回るきみに口封じ


真夜中、深く眠りに落ちていた脳を無理矢理引き起こされた。

圧し掛かる体重に肺が圧迫されて。
湿った吐息は意図を持って耳裏を擽る。

――ああ、もう。この人はまた・・・

覚醒し始めたばかりの漠然とした思考の中、いつもの事かと思う。
人を殺す任務の後は必ずと言っていい程彼は俺の部屋へ来る。
そして求める。

喩え夜がどれほど更けようとも、むしろ朝と言うべき時間帯となっても。

――明日がつらいのに・・・

思いながら何処か諦めにも愛情にも似た感情で彼を受け入れる。


彼は俺の意識が表層まで戻っている事に気付いたのだろう、身体を探る手が明確な意思を有(も)って這い回り始めた。

僅かばかり筋肉によって隆起した、それでも充分に平坦な胸を幾度も辿る。
もう片方の手は腹筋の形を辿る様に下り、腰骨の内側を上下に撫でる。
下着の隙間から指先が中へ入るが、肝心な場所には触れてこない。

解りやすい焦らし方。
それでも慣れた身体は確かな感覚を手に入れたくて身悶える。

期待に膨らんだものと腹の隙間を、敢えて昂りには触れないよう撫でられてもどかしさに自分で手を添えようとした。
しかしそれを許す彼ではない。

逆に手を捕えられ、背後で拘束される。

そして今度は後ろから下着の中に手を忍び込ませ、入り口を宥めるように擦る。
その指が冷やりとしたぬめりを伴っていたので、いつの間にか潤滑油を手に塗りこんでいたと知る。
幾度か入り口に擦り付けた後、一本ぬるりと侵入してきた。
充分に濡れていた為、容易く受け入れる。

やはり焦らすように一点を避けて、それでいてその周囲を執拗に愛撫する。

「センセ、腰、揺れてる」
音には出さず唇を耳元へ寄せて息だけで煽る。
それが耳を擽って背筋を甘い痺れが這う。

気がつけば二本も三本も指を銜えさせられ、それでも何一つ的確な愛撫が無く、狂うように彼が欲しいと望む浅ましい自分ばかりになって。

腰骨を掴まれ、一気に彼が内臓を抉る。

「・・・・っ」

衝撃と待ち望んだものに仰け反って上げかけた声は、のびてきた彼の手に阻まれて外には漏れず、吐き出しきれなかった二酸化炭素が、緩い毒素のように全身に回って眩暈がした。

手を外してくれと彼の方を振り向こうとしたその時、ありえないものが視界に入って一気に思考が収束した。


彼の、向こう側。
客用蒲団。


金色の、髪。



混乱と同時に、就寝前の記憶が甦る。
ナルトが来て、夕飯を食べて、そのまま・・・。

俺はやめてくれと必死に彼を見上げたが、彼はそんな俺を見て酷薄の笑みを浮かべた。

「あんまり煩くしたら、起きちゃうからね」

あまりの言葉に呆然とした瞬間、彼が激しく動き始める。
翻弄されるままに揺すられ、それでも声を懸命に押し殺す。
彼の掌も合わさって、吐き出しきれなかった息が全身に充満する。

鈍った頭は快楽しか追えない。


気持ちよすぎて、涙を流しながら幾度も達した。
触れられても居ないのに。

「淫乱」

囁かれ、同時に果てて、意識を失った。





「センセー!朝だってば!」
少し高い子供独特の声に瞼を開けると金髪が朝陽に反射して光り、どきりとする。
昨夜の事を思い出し慌てて辺りを見回すが、何処にも情事の欠片も見出せない。

「・・・夢・・・?まさか・・・」
「センセー、俺、腹減った」
「ああ、すまん。何か作る・・・ッ」
「先生?」

起き上がりかけて下肢の疼痛に阻まれた。
ナルトが不審そうに覗き込んでくる。

「いや、何でもない」

笑顔を作って、今度はそっと慎重に起き上がった。
よく見れば蒲団のシーツは取り替えられてあるし、自分の着ているものも昨夜とは違う。

ナルトを見ると、もうこちらに背を向けて台所へ走りだしている。
らぁめん、らぁめん、と楽しそうに歌いながら。

「ごめん・・・」

「あ!?先生何か言った?」

台所からひょいと顔を覗かせたナルトの手には牛乳パック。

「こらナルト!牛乳をパックから直接飲むな!あと朝からラーメンなんか作らないぞ!!」
「ええー」
「ええじゃない!」
「ちぇーっ」

再びばたばたと台所内へ戻って行く。
それを確認して窓を開けた。
そこには銀髪の上忍。

「ごめーんね」
「悪いと思うならしないで下さいよ」

横目で睨むと、彼は穏やかに笑った。

「あー、無理ね」
「・・・」
「アンタじゃなきゃ駄目って解ってんでしょ」
「でも、あんな・・・」
「嫌ならもうあいつを泊めない事ですよ。イルカ先生?」

そしてすぐに口を塞がれ、余韻を残さず彼は消えた。
瞬間、ナルトの大声に呼ばれる。


俺は彼の理不尽さよりもその裏に感じ取った彼の嫉妬に驚いて、それから酷く可笑しくてナルトに負けない大声で笑った。

だって、彼が、嫉妬だなんて。

しかもナルトに!


「イルカセンセー・・・?何笑ってんだってばよー」

不審がって再び台所から現れたナルトの口の周りに牛乳で白い髭が出来ていて、余計に可笑しくなってそれから暫らく笑い続けた。






(2007/8/24:葉っぱ屋のハヤさんより奪取)









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