この目にうつるもの



 

 

初めてあなたの素顔を見た時、思わず見とれたっけ。

いつもは隠されている紅い目や、口布の下の整った顔があんまりに綺麗で。

左右で色の違う目がよく似合うと思った。

 

 

 

「カカシ先生って本当に、綺麗な顔してますね。」

イルカはカカシの顔を愛しげに見つめながら言った。

すごく優しい声で。

「そうですかね〜。」

カカシはちょっと照れたように、目をそらして頭をがしがしと掻いた。

その、照れた顔も、とてもかわいい。

「ええ、俺、カカシ先生の顔、すごく好きです。」

 

素直な気持ちでさらりとそんな言葉が出た。

言った後に、すごく恥ずかしいことを言ったと気付き、イルカは真っ赤になった。

 

そんなイルカを見て、カカシは目じりにしわを寄せて笑った。

 

 

「あのね、イルカせんせ。」

カカシは後ろからそっとイルカを抱きしめ、耳元にそっと語りかけた。

「目と脳って繋がってるんですよ〜。」

「たしか、視神経が直接、脳の視覚中枢と繋がってる・・・んでしたっけ。」

「そうです。だからね〜オレ思うんですよ。」

ちょっと言葉を切り、カカシはイルカの肩に自分の顎を乗せた。

 

「物事って、自分が見たいように見えるんじゃないかな〜って。」

「?・・・どーいうことです?」

イルカは首をかしげた。

「ええとね〜、目から入った情報は、脳で処理されて、初めて『見える』らしいんです。」

「ええ。」

「だからね。きっと脳の中にある感情も一緒になって、『見てる』んじゃないですかね〜。」

「ああ。そういえばそうですね。その時の気分によって景色とか見え方が違いますからね。」

イルカは妙に納得したように、うんうん頷いた。

 

「さっき、イルカ先生がオレのこと、綺麗って言ったでしょ?

アレだって、きっとイルカ先生の気持ちが混じって『綺麗』に見えてるんですよ。

イルカ先生がオレのこと、綺麗だって思ってくれてる気持ちが。

だってオレ、よく胡散臭いとか言われるけど、綺麗だなんて言われたことないよ?」

 

そうなのかなぁ。

イルカは考えた。

だって、目の前にいるカカシはすごく綺麗で、いつまでも眺めていたいと思うのに。

「でも、やっぱり綺麗だと思うんですけど・・・。」

納得いかない様子でぶつぶつつぶやく。

ほかの人には、カカシ先生が違って見えるのだろうか?

そして、しばらくじっとカカシを見つめたあと、思いついたように言った。

 

「じゃ、じゃあ、俺ってカカシ先生にはどう見えます??」

するとカカシは目を細めて、イルカを後ろから包み込んだ。

「イルカ先生は、かわいい。すごくかわいいです。」

 

「え?か、かわいいって、どこがですか?」

自分が『かわいい』なんて、言われるなんて思ってもみなかった。

思わず聞き返し、後ろを振り向くと、

 

自分を、すごく愛しそうに見つめる、綺麗なカカシの顔があった。

その顔を見て、イルカは気付いた。

 

「全部ですよ〜。」

そう、嬉しそうに囁くこの人の目には、自分は『かわいく』映っているのだろうと。

 

 

そう思うと、あなたのその目が、その心が愛しくなった。

そのまま、カカシの胸に顔をうずめ腕を回す。

「か、顔だけじゃないですよ。カカシ先生の全部が好きなんですからね。」

恥ずかしくて声がかすれる。最後の方は、聞き取れなかったはずだ。

 

カカシはその綺麗な顔を崩して、すごくすごく嬉しそうな顔をした。

そして、ぎゅっとイルカを抱き返し、

「俺もデスヨ。」

と、イルカの目をじっと見つめた。

 

 

 

その目にうつるものは、あなたを思う自分の気持ち。

あなたを好きだという気持ち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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