御鬼道
















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今より昔、数十年昔のお話だ。
他の忍びの襲撃を受けて里を追われた忍びたちがいた。

その数数十。

道の途中で半分は倒れた。深手の傷を負っていたからだ。
そしてとある村にたどり着いた。

山に囲まれた小さな村。
忍びたちは村人に存在を気づかれないように、村を囲う森に姿を隠した。
飢えていた―――。あまりに飢えていた忍びたちは村人を謀って半ば、だまし討ちの形で襲って殺した。
そして、その肉を食らった…

ごく、一部の忍びが…

残りの忍びは、飢えを戦いながらもなんとか人間らしい生活を送ろうと自給自足の生活をしようとした。

そのまともな忍びの中に、まだ幼いカカシはいた。

「カカシ、見ろ、キノコが生えている」

嬉しそうな仲間の声に、側によって見ると、木の根元にキノコが生えていた。食べられる種類だ。
仲間は包帯だらけの頭、唯一見えている右目の下でふふふ、と笑った。カカシも笑った。
カカシは数少ない無傷の忍びだった。
忍びは窮地に追いやられると、助かる可能性の高い方へ流れていくように教わっている。
無傷のカカシが、率先されて、色々な物を食べたり、傷薬を塗ったりすることができた。

「オイ、カカシ」

呼びつけたのはサガリという気性の荒い大男である。
彼も無傷ではあったが、カカシの違って、いつも、ひどく飢えていた。

「そいつをよこせ」

せっかく見つかったキノコをあっというまに摘まれて食われていくのを、格下のカカシはただ黙ってみていることしかできない。

「ああ、腹が減った。もっと実になる物を食べたい」

「オイ、サガリ、もう少し落ち着いたらどうだ」

「そうだよ、お前がこの中で一番食べ物を口にしているんだぜ」

仲間にそう言われても、いきりたつばかりで話にならない。
ばたばたと仲間が死んでゆく中で、サガリの我慢はピークに達する。

「…もう我慢できねえ」

「サガリ…」

「カカシ、俺がこれからすることは黙ってろよ」

最後、サガリを見たのは、恐ろしい形相をして、村に向かって駆けてゆく後ろ姿だった。




「カカシー!」

遠くで、イルカの声がする。

棲家を炎に追われ、炭だらけの姿で逃げ出したカカシの目の前にイルカが現れたのは、そんな遠い記憶を思い出していた時のことだった。

「カカシ!」

「イルカ!」

ようやく落ち合えた。飛びついてきたイルカをカカシは受け止めて、勢いのまま後ろに尻餅をつく。

「良かった…生きていた、カカシ」

「イルカ…どうして…」

「あれくらいで、この俺が落ち込むと思ってたのか」

あれくらい、と言っても、普通しないことをしたのはイルカのまだ痛む腰が知っている。
カカシは腕の中のイルカをすまなそうに見下ろした。

「ごめん、イルカ。あの時は自制が効かなくて。
家をめちゃくちゃにされてカッとなっていたんだ。
それに、あんな媚薬を体中につけていたから…」

「媚薬?」

「そう。お前のつけていた香りはそうとしかいいようがなかったな。遠い昔に嗅いだ匂いだ。
野生に近い生活を送っているオレにあんな匂いは――それもあんな濃い…あれは罪だよ」

「もう、いいよ…でも、ホント、生きていて良かった」

「お前、俺が怖くないのか…?」

「カカシ、お前、本当に鬼なの…?俺には普通の人間にしかみえない」

「!」

「やっぱり…違うんだ、そうだろ?」

俺にはわかるんだ。

そう言ってイルカはまた、ひしとカカシにしがみついた。
近くで見る、赤い目と青い目の差が、綺麗だな、と思いながら…





(2007/9/22書)完結



本当はカカシは鬼ではないというお話。
裏に置いてある、『鬼の棲む島』といい、鬼が大好きです。
カカイルはカカイルでも、他カプの小説に強く影響を受けたお話です。
一晩で仕上げまでしました。

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