●すれちがう恋心、ささやかな日常の変化(2)







アカデミーの帰り道、木の葉商店街を歩いている俺は奇妙な生物を発見した。


ペンギンだ。

ペンギンが、雑踏に紛れてちょこんと立っていた。

それは、まるで教育番組の童謡にでてくるようなワンシーンだった。
周囲の人間はまるで、そんなものが見えないかのように歩いてゆく。
いや!もしかしたらただかかわりたくないだけなのかもしれない。

俺だって嫌だ。

というわけで、俺はなにも見なかったことにして家路を急ぐことにした。


「…ま、待って…待ってください〜」

ぺたぺたと足音をさせて、ペンギンが後を追いかけてきた。

恐る恐る振り返ると、ペンギンは足をけつまずかせてあわあわと両手をばたつかせてる。
胸をそらしなんとか持ちこたえようとしたが、その努力も空しくごろんと地面に転んだ。

ペンギンはすぐに起き上がろうと、両手を地面につけ「よいしょ」と起き上がろうとした。
しかし、ずうたいの大きさの割りに腕が短すぎて体の半分も持ち上がらない。
その結果、腹筋をしているような形で、しばらく「うーんうーん」と唸っていたが、それも耐えられなくなったのかぷるぷる震えたかと思うとまたべしゃりと横になった。

「あ、あの…大丈夫ですか、カカシ先生」

「ハイ!全然オッケーです」

そう、元気に答えたペンギンは、カカシ先生だった。
何故こんな格好を、と考えて、そういえば、以前にも似たようなことがあったなと思いついた。
俺に、常に新鮮な姿をみせたいとかいって、うさぎのきぐるみを…

ペンギン姿のカカシ先生はうんうん唸りながら、今度は左右に身体を揺らし始めた。
振り子の原理を利用して勢いをつけて起き上がる気だ。
そしてカカシ先生はようやく立ち上がることに成功した。
えらいえらい…!!俺の生徒だったら頭をなでてあげたいところだ。

「イルカ先生、どうでしょうか、今度の俺は」

カカシ先生はくるりと一回転をしてきめポーズをとった。
…ああ(裏声)…どっと疲れが増してくる。


「コンセプトは?」

「癒しです」

仕事に疲れたイルカ先生を癒してあげたいんです。

と言って、カカシ先生はにこりと笑った。
その根性は認めよう。この人のことだ…ここで俺が帰るまでずっと待っていたのだろう。
だが、これで癒されたかというと全然話が違ってくる。
だって、きぐるみだぞ、きぐるみ。
カカシ先生、あんたいったい何歳だ。
今年で27歳になるんじゃないんですか?
大の大人の男がきぐるみ着て、癒しですと迫られても、全然癒されない。痛い。むしろ不気味だ。
それに、先ほどからきぐるみと話す俺にちくちくと一般人の視線が痛い。

「カカシ先生、すいませんが、俺はこれ以上疲れたくないんです。
ここで失礼させていただきます」

「俺も一緒に…」

「その格好でこないでください…」

「じゃあ今すぐ脱ぎます」

その格好で俺を癒しにきたんじゃなのか?もう脱ぐのか。
カカシ先生はぬぎぬぎしながら「この下なにも着ていないんですけど」と付け加えるように言った。


「ちょっと待ってください。じゃあ、裸で俺の後をついてくるっていうんですか?」

「まずいですか?」

「あたりまえです」

あたりまえのことが分からないのか。
やっぱりこの上忍は変だ。
いや、上忍だから変なのだろうか。
もうどちらでもいい。
本当に不思議な人だ。

早く家に帰って、適当にメシを食って頭から布団をかぶって、眠ってしまいたい。
…しかし、眠る俺の横にはそのときペンギンがいるだろう。
そして眠る俺はぬいぐるみに囲まれたファンシーな夢にうなされているのだ。

その様子を想像して、これは困ったことになってきたなあ、と、どこか遠い目をしながら夕日にたそがれた。




























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