●三人の…







目がさめたら、イルカ先生が三人いて、びっくりした。

「これは夢?」

「夢じゃありません」

三人並んで正座していて、真ん中のイルカ先生が間なくツッコんできた。

昨日は確か、イルカ先生んちで酒を飲んでいて、二人ともなにか特別なことがあったわけじゃないのにかなり盛り上がって、気がつかない間に寝込むほど泥酔するまで飲んでしまった…らしい。

「昨日の記憶が全然ないんですけど」

真ん中のイルカ先生は額に青筋を浮かべて、部屋の隅をびしりと指差した。

そこには、開かれ、すでに術式が発動した跡のある巻物が転がっていて…

「ど〜ゆ〜ことですかカカシ先生!これはっ!」

「はい?」

「はい?じゃありません。…あんな巻物俺は知りませんよ。
ということはあの巻物はアンタが持ち込んだってことだ!
昨日酔った勢いで、また、なにかしでかしてくれたんでしょう!?
目がさめたら俺が、さ、三人いて本当、びっくりしたんだぞ!」

「おれも今びっくりしてます…」

「だったらなんとかしろ!なんで俺が三人いるのか説明してくださいっ!!」

イルカ先生は俺のネックを掴んでがくがくと揺さぶりながら、「うが〜!!」と叫びわめき散らした。 ううっ…二日酔いの頭にガンガン響く。


・・・・・・・・・・・

「…あんた、禁術モノの巻物懐に隠し持っていたんですか…」

「だってレアなんですもん。任務先でいらないから処分しておいてくれって、依頼人から譲り受けたんですけれど、ただ処分するのももったいないじゃないですか。
他の里の禁術って、…暗部とか、上忍連中とかと、裏取引とかで結構いい値とかするんですよ」

「貴方は、忍としてのまともな心構えにかけています。それはしてはいけないことです」

「はあ〜…イルカ先生ってカタいのねぇ。そんなんだから…」

「そんなんだから…なんです?」

じろり。

「…イエナンデモアリマセン…」

「―――説明!」

「はっ!はいぃ!
…この巻物は自白用のものですね。
普段、人間が心のなかに隠している本音、それすなわち、『善』の自分と『悪』の自分。
それが、この術式によって心の中から解き放たれ具現化するという…」

「つまり、俺の中の天使と悪魔がでてきたんですね」

「…よくわかりましたねぇ」

「この二人をみてわからないでか」

確かに。

真ん中で正座しているイルカ先生の左隣のイルカ先生(ややこしい)は乳白色の異国の服を着て、とても優しいまなざしをしていて、頭にはわっかまでついている。

右隣にはあぐらをかいて、人相の悪いイルカ先生がじっと俺のことを睨みつけている。頭には赤い星を乗せて。
…今まで気がつかなかったけど、イルカ先生って目つき悪くなるとヤクザみたいだ。

いや〜、にしても、イルカ先生が三人もいるなんて…

「今アンタこの状況を楽しんでいるでしょう」

ぎく。

イルカ先生のスルドイつっこみがぐさりと俺のやわなハートを射抜く。


「そんなことありませんよ!」

そんなこと大有りだった。

イルカ先生が三人もいる!

ラッキー!

ハーレム!

なんて思っていた。

「ばればれです…アンタはすべてが顔にでています」

はっ

「…え、えへ」

「えへ、じゃねえ」

「だって、酔っ払ってたし…」

「だっても糞もミソもおたんこなすもありません。
というかしばらく茄子料理は作りませんからね」

「ひ、ひどい…」

「…火影さまにいいます」

「げ」

「火影さまにいいます火影さまにいいます火影さまにいいます!!」

「ひぃ!!!や、やめてください、それだけはご勘弁を!」

「だったら、今すぐこの状況をなんとかしろ!
でなければ、以後俺の家に来るの禁止しますよっ!!!」

怒髪天を突く。

天を貫いたイルカ先生の怒りは文字通り雷となってぴしゃーんと海野家の庭先に落ちた。



























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