Dororo

山寺に巣食っていた妖怪、四化入道を斃した晩だ。

あやかし退治の名人にして異形の剣客、百鬼丸はうんうんと苦しみ出した。といって、大きな戦いのあとは大抵そうなるのだが。生まれる前に魔物にとられた体の四十八の部分を取り返すため、宿縁の敵を一匹、また一匹と仕留める毎に、高熱に襲われ、作り物の手や足や耳や目なんかの代わりに、本物の血と肉でできた器官が現れるのだ。此度片付けたのは特に手強い奴で、戻ってきたのも重要な個所、胴の芯、へその下にある、つまり摩羅だった。

「あにきぃっ!苦しいのかい?」

「うるせぇっ!!!…っ…あっちへいってろっ…」

打ち捨てられた水車小屋の奥。無頼の少年はもがきながら、懸命に疼痛と譫妄とに耐えていた。傍らにいる男児、とみえて実のところ童女のこそ泥、どろろは、相棒の苦しみよう胸の潰れる思いだが、なだけ顔には出さず、ただ助けになれればと側に控えていた。

やがて百鬼丸はむくりと起き上がると、どこか焦点の合わない、酒に酔ったような眼差しで、幼い連れを眺めやった。

「…みお…」

「お、なおったのかい?おさまったのかよう?」

嬉ししげに首ったまに飛びつこうとしたちびの盗人を、剣胼胝のできた手が捕えて、いきなり地べたに押し倒した。

「ってぇ!やい!ちからの加減てもんをしら…ちょっ…」

「みお…」

少年の、いや若い雄の荒い吐息が、埃と垢でよろった童女の首筋をくすぐる。どろろは不意に怯えたようすで相棒見つめると、いつも凛々しい容貌に、別人のように情欲とほかの誰かへの思慕が横溢しているのを悟った。

「あにき!いいかげんにしろぃっ…!おいらぁ、みおさんとやらじゃねえん…んぐ…」

食いつくような接吻。舌で幼い口腔を貪りながら、太刀を振るうのに慣れた腕で、ぼろの胴着を剥ぎ取って、引き千切るように脱がす。あれよあれよという間に生まれたままの姿になったこそ泥を、若者は力任せに組み敷いたまま、もどかしげに着流しをくつろげ、下帯をゆるめる。続いて、めったやたらにばたつく細い脚を割り広げると、細い筋に生えたばかりの屹立をあてがった。

「ぷはっ…ふざけんなっ!あんぽんたんっ!いくらあにきだって、あぐううう!!!!」

ようやく唇をもぎはなした童女は、抗議をのぼせかけたところで、瞳孔を一杯に開き、四肢を痙攣させると、破瓜の衝撃に悲鳴を迸らせた。小さな獲物に紅い雫を零させながら、雄狼のような少年の痩躯が激しく上下する。杭の一打ち一打ちが、拓かれたばかりの雌肉を穿り返し、狭すぎる腟道を削って強引に押し広げていった。

「ぁぅっ…あぐうぅ!!ぃぎぃいい!!…あにっ…!!ぎゃふっ!…っぐ…ひっく…ひっく…ぎう!!」

どろろが、止めて、というように頭を振る。勝気な盗人娘が、相棒の前で、初めて見せる女らしい仕草だったかもしれない。だが百鬼丸はまるで聞いていないようすで、華奢な連れを抱き起すと、対面座位で逃れられぬように捕えて、さらに猛烈な抽送を始めた。青春の盛りにある肉体が、相手への配慮をまったく欠いた場合にだけできるような、狂気じみた、まさに獣の番い方だった。

邪淫に憑かれた少年は、童女の涙が枯れ果て、啜り泣きが途切れるまで、無尽の膂力で蹂躙を続けたのだった。


山端が薄緋に染まり、空が紺から灰へ移ろい始める頃、百鬼丸は快い疲労に身を預けて、眠りに沈んでいた。夢に描くのは、かつて廃寺で恋人と過ごした幸福な日々。いつも固い表情も、束の間とはいえ穏やかになり、微笑みさえ浮かべているようだ。

側にはどろろが、痣だらけの裸をさらして突っ伏していた。剥き出しの白い尻とすんなりした両脚を、潰れた蛙のように広げ、ぴくりともしない。厳しい暮らしにも張りを失わぬ瑞々しい肌のそこかしこに、深い咬み跡と爪で掻き毟った筋が走り、赤く滲んでいる。一晩で広げられた腟と腸はともに、赤い血をこびりつかせ、たっぷり注ぎ込まれた精液とを滴らせていた。いったい男一人で、これだけの量の子種が放てるのだろうか。あるいは魔物の呪いによって性器を失っていた期間に溜まっていた、すべての欲望を吐き出したのかもしれない。

やがて暁の寒さが、引き裂かれた背を震わせる。童女は微かに手足を痙攣させてから、いつもの俊敏さはどこへやら、ひどく鈍くさく起き上がる。曇った硝子玉のように、光を吸い込んで跳ね返さない双眸で、ぼんやり相棒を見遣ると、やはり歯型だらけになった指を伸ばして、相手の腰に差した刀の柄に触れる。

反応がない。野に伏す狼の如く警戒心の強い剣客にしては、異常な無防備さだった。傷だらけのこそ泥は、そのまま重たい刃を引き抜くと、ふらつきながら逆手に持って、眼下でゆるやかに上下する胸板へ切先を向ける。

「みお…そばに…いてくれ…」

「…う…う…うぅ…」

涙を零して、武器を鞘へ押し込むと、忍び足で傍らを離れ、服を抱えて外へ出る。一足ごとに股間に走る激痛に、歯を食い縛りながら、近くを流れるせせらぎへ降り、流れへざぶざぶと入って、氷のように冷たい水に腰まで浸かり、疼く双つの孔に詰まった中味を掻き出す。

「へ…へへへのへ…いぬにかまれたより、いたかねぇや…とうへんぼくの…すっとこどっこいの…おたんこなすの…どてかぼちゃめ…おいらは…怪盗どろろさまだい…」

服をゆすいで顔を洗い、川から上がって廃屋へ戻ると、焚火あとの灰を全身にこすりつけて、凌辱の痕跡を隠す。濡れた一張羅を着たまま乾かして、燠を起こすと、しゃがみ込んで火に見入る。

「おっかちゃん…」

倦みきっているのに、うたた寝さえできなかった。昨夜の情景が繰り返し蘇ってくる。叫んでも罵っても、暴れても、助けを求めても、決して止まらなかった行為。意識が飛ぶたびに、歯が食い込み、爪が立って、現へ還った。組み打ちに秀でた年嵩の少年に、童女が裏渡世で学んできた半端な手管はまるで通じなかった。

接吻をしているあいだだけ、ほんの少し攻めが和らいだ。初めは拒もうとしたけれど、仕舞いには辛さに耐え兼ね、好きなように唇を許していた。胎内と臓腑を穿つ突き上げの勢いを逸らそうと、尻さえ振っていたかもしれない。だが結局、指一本動かせなくなり、どんなあがきもできなくなってからも、強姦は延々と続いた。

「ちぇ…腹減ったぃ…」

強いて思いをよそへ向ける。

「へへ…また魚でも二、三びきとってくるかな…もうろくでもないわなになんか、ひっかかるもんかい…おいら…」

出し抜けに独白は途切れた。背後のぼろ家で、連れが床から起きる気配がしたのだ。やがて、足音が近付いてくる。どろろは深呼吸すると、振り返ってにやっとし、快活に話かけた。

「ようあにき!寝ぼうじゃねぇか!きのうは…」

先が続けられなくなって口籠る。百鬼丸はうなじの辺りろをぼりぼり掻くと欠伸を一つすると、小さな相棒を眺め下ろした。

「よく寝たな。こんなにぐっすり眠ったのはひさしぶりだ…ん…どろろ…お前…」

童女がぎくりと肩を竦めるのへ、少年は首を傾げ、眉を潜めてから、考え込んだように黙りこくった。

「な、なんだってんだよ」

いつもの調子を保とうとしながら擦れがちになる盗人の声に、剣士は心ここにあらずといった風で答える。

「やっぱりな。お前の頭の中が読めない」

どろろが驚いて顔を上げると、百鬼丸はむっつりと見返した。

「ああ」

「そいじゃ、あにきの神通力がなくなっちまったってのかい?」

「ああ…いやまだ死霊の気配なんか、ああいう押しが強い連中のは分かる…だが前々から草とか虫とか、小さいものはぼんやりしていたんだが…とうとうお前のも分からなくなった」

「ちぇ!おいらを虫だの草だのみたいに言うんだから…だけど…それでだいじょうぶなのかよ?よ、妖怪をやっつけるのにさ」

「なんとかなるさ。たぶん、おれの力は、持ってなかった目だの耳だのの代わりをしてたんだから、そいつらが戻ってくれば用済みなんだろう。さてと飯でも食うか。やけに腹が減った」

少年はどさりと座り込み、巾着から干し飯を取り出して、渡そうとすると、ちびの相棒はひどく狼狽したようすで手を出しかね、ちらちらと不安げな眼差しを投げた。

「べつにくさっちゃいねえぞ」

「う、うん…」

乏しい行糧を分けて、それぞれが頬張ると、水もなしに飲み込んで、口を拭う。あっさりとした朝餉だが、二人には十分だった。

空腹を満たした百鬼丸は、じっと連れの横顔を窺がった。どろろはそわそわと落ち着かぬげに背を揺すってから尋ねかける。

「なんだってんだよ」

「ああ。相手の考えが直に見えないってのも悪くはないもんだな」

「ふべんじゃねえのかい?」

「いや別に。そのうちこの眼を使って、相手の顔から考えをすくい取れるようになるさ。ところでどろろ、お前はおれの考えが読めるか?この顔を見てさ」

「へ、おいらはあにきみたいな、ちからはもとから持ってねえんだ。むりにきまってら」

「そうか?じゃあ聞けよ。じつはきのういい夢を見たんだ」

「…っ…夢?」

「ああ。前に話したっけな。みおって、死んだ娘の夢さ」

童女はぎゅっと肋の継ぎ目あたりを拳でおさえ、僅かに身をいざらせた。だが少年は気付かぬようすで、楽しげに語らいを続ける。

「夢の中でまた会った。みおにさ。そうして、この手でだきしめたんだ」

「…へ…へえええ」

風邪でも引いたみたいにぶるぶるしながら、こそ泥はできるだけ明るく返事をする。剣士は遠く薄朱に色づく稜線に視線を投げながら、憧れと懐かしさの滲む台詞を紡いでいった。

「最初に会ったとき言ったな。みおが死んで、おれの心も死んじまったって…そいつが帰ってきたような気がするんだ」

「そうかい…」

いつになく優しげな若者の面差しに、薄汚れた子供はぼうっと見入ってから、やがてはっと我に返って頭を振った。

「あの…おぼえてるのはそれっきりかい?」

「なんだって?」

「ほかに…なんもおぼえてねえのかよう?」

「ほかだって?」

百鬼丸は急に赤らむと、掌を扇のようにあおいで首をよそへねじ向けた。

「あとはお前に話すような夢じゃねえ」

「へ、かっこつけんない!…あ、あのさ…みおさんは…その…うれしそうだったかい?」

「うん?そうだな。あいつの笑顔は、一度も目で見たことはなかったし、おれはまだ温かいとか柔らかいなんてのは、体じゃ分からないが、心はあいつにさわって…ちゃんとつながってるのが分かったんだ…」

「…ふ…ぅん……」

「しゃべりすぎたな…そろそろいくか」

少年がさっと腰を上げると、ちびの連れも慌てて起つ。だが軽快に道を往く相棒に比べて、童女はひどく難儀したようすで続き、すぐに遅れがちになった。

「おーい。どろろ!だらだらしていると昇った日が沈んじまうぞ」

「うるせえな!分かってらい!…すぐ…んっ…追いついてやらぁ…っ」

剣士はしょうがないなという溜息を吐く。

「おれは先にいってるぞ」

「えー!待ってくれよう!あにきぃ!」

こそ泥の情けない叫びをよそに、着流しの影は坂の向こうへと早足に消えていく。やがて陽射しが東からななめに差し込んで、二人の行く手を明るく、暖かく照らした。

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