「…ふむ…ソースにこくはありますが、パティにややもたつきがあり…トッピングの刻みセロリはアクセントになっていますが…」 開店したてのハンバーガーショップ。スタンド席で独り呟くのは、金髪巻毛にそばかすの少年。ほっそりした体をジーンズの上下に包み、時折ずりおちてくる大きめの眼鏡を直しながら、紅く濡れた唇で、誰聞くともないレビューを紡いでいる。 「…では、全体の評価はA-(エーマイナス)としておきましょうか」 結論付けると、ペーパータオルをとって口と指を拭う。次いで腰のベルトにつけたポシェットから四角い電子端末を引き抜いて、左右にキーボードを開くと、猛然とした勢いで打ち込み始める。わずか数秒で某かの文章をしたためるや、ざっと目を通して満足げに頷き、素早く機械を畳んで、ゆっくり席を立つ。空になったトレイをダストボックスまで運び、てきぱきと慣れた動作でごみを片付けると、短くごちそうさま、と告げて、店をあとにした。 鮮やか、といっていい身ごなしだった。小さな背格好に似合わぬ紳士らしい所作。何げないが、思わずカウンターのクルーもにっこりするような、ファストフードへの敬意に満ちた態度だった。 少年は外へ出てしばらく歩くと、またきょろきょろと辺りを眺め、形のよい鼻をうごめかせた。軽くお腹を撫でてから、可愛らしく舌なめずりをする。 「もう一軒、いけますかね」 携帯を取り出して、地図を表示し、浮かび上がるさまざまなアイコンをなぞりながら、やがて一軒の瞬く光点を見つけて指を止める。焦茶のハートに、悪魔を模したぎざぎざの尻尾が生えた、奇妙な図案。 「…ん?知らないチェーンだな…いってみよう」 スニーカーの爪先を目的地の方角へ向けると、黄色い煉瓦の路面を踏む靴音も軽やかに進んでいく。休日の午後、駅から伸びる目抜き通りは家族連れやカップルで賑やかだが、ナビに従って角を折れ、道を二つ、三つと渡ると次第に人も少なくなってくる。 「随分奥まったところにあるんだな」 中々たどりつかない。それどころか、歩くにつれて心臓の形のアイコンは遠ざかっていくようにも思えた。だんだんとおかしな気分になる。まるで店がこちらから逃げているような。ばかばかしいとは分かっていても、ついむきになり、駆け足になった。 やがて目の前に、ダークブラウンとピンクのストライプになった柄の派手なトラックが現れる。コンテナの横が開いて、タラップが降り、上にはカウンターとメニューの表示板があった。 「移動店舗!」 なるほどと頷いて、手を振り、注文の意志を注げる告げる。やはり薄桃と濃褐の縞模様のユニフォームをまとった若い店員が、いらっしゃいませ、と明るい挨拶を返した。 階段を登って、向かい合うと、カウンターに乗った大きな二つの鞠、ならぬ胸が目に飛び込んでくる。少年はちょっと紅くなって視線を逸らすと、大小の写真が入った品書きに集中した。色々と書いてあるが、一番目立つように配置されているのは、 「…チョコレートバーガー?」 微妙なメニューだった。 「チョコレートバーガーですね!ご一緒にショコラポテトはいかがですか?今ならホットココアとセットで500円になります♪」 よどみなくマニュアルどおりの接客をするクルーに、小さな客は軽く後退った。 「いや…ええと。チョコレートバーガーってどういう」 「はい。自家製天然酵母にカカオフレーバーを練りこんで焼いたフワフワバンズに、ゴディバリキュールに漬けて焼いた100%ビーフパティと厚切りトリュフを挟んだ、当店自慢のメニューとなっております」 「え…つまり、まさにチョコレートバーガーって訳ですか」 「はい♪」 「ちなみに…ショコラポテトというのは」 「本場ガーナでチョコソムリエが厳選したカカオパウダーで、有機栽培ポテトのフライをデコした当店自慢のメニューとなっております」 「ホットココアは…いや、いいです…また今度」 くるりと踵を返してタラップを降りようとしたところで、凄まじい勢いでコンテナが閉じ、行く手を遮った。がちゃがちゃと不穏な音を立ててロックがかかり、一瞬暗くなった店内はすぐに毒々しい照明に満たされる。 「お客様まだ帰らないでくださいな。店長がお会いになりますので」 店員がひらりとカウンターを飛び越えると、すぐ傍らに降りた。腰から十センチもなさそうなミニスカートから伸びた、コンパスのように長い脚が大きく開いて、通せん坊をする。 「あのう…僕に…何の御用でしょう…」 小さな客はごくりと唾を飲んで、しなやかな太腿から視線を引き剥がすと、つとめて平静な口調で尋ねた。だが語尾は若干震えている。手はポケットの携帯をまさぐって、いざという時の非常コールを準備していた。 「助けを呼ぼうとしても無駄だね。このトラックのコンテナは大抵の電波を遮断するようにできてる。観念したまえ”バーガーウォーロック”、いやゴーディ・リカー君というべきかな」 カウンターの奥からハスキーな声が響く。ゴーディと呼ばれた少年が振り返ると、現れたのは、バスケットボール選手も顔負けに背の高い女が立っていた。砂時計型の見事なスタイルをシックなダークブラウンのスーツに包んでいるが、細いレンズの眼鏡も、艶やかなピンクの唇や口元の小さなほくろとあいまって、どこか徒な風情がある。 「えーと。どうして僕の名前を」 おずおずとゴーディが尋ねると、店長とおぼしき人物は嫣然と応えた。 「とぼけるのはやめたまえ。君のオンライン上での文芸活動も、ミニブログ”Whisper”での活躍も我々は先刻調査済みだ…バーガーウォーロックの”ささやき”一つでその週のチェーンの売り上げが十五―二十パーセントは変わる…業界では注目していないものはいない」 「…は、はぁ…僕はただ、好きになったハンバーガーの話をしてるだけで」 ひきつった笑みとともに逃げ道を探す少年を、いつのまにか背後にまわったクルーがしっかりと抱き締める。後頭部に当たる柔らかな感触に、ゴーディは身を強張らせ、続いて弱々しくもがいたが、相手は外見に似合わぬ腕力でしっかりと捕えて離さなかった。 店長は眼鏡の奥で豹を思わせる双眸を煌めかせながら、ゆっくりと近付いてくる。 「恨むなら君の文才を恨みたまえ…いや…むしろその天稟には感謝すべきかな…それはこれからとる君の行動次第だが」 「…いったい…あの…なにを」 「君には我々チョコレートバーガーの専属レビュワーになって欲しい。君にこれ以上競合ブランドのレビューを投稿されるのも困るな。あのピエロの店のぼったくりメニューに君が書いた過剰な賞賛…我々がどれほど苦々しかったか…想像もつくまいな…」 「あはは、私も店長けっきょく買っちゃいましたもんね。食べたくなって」 「あれほどの屈辱を受けたのは、この業界に入ってから始めてだよ」 レンズごしに瞳から冷たい光を放つと、スーツの女は素早くしゃがみこみ、標的と視線を合わせた。ふっくらした唇は怒りからか、昂ぶりからか、わずかに震えている。 「ふ…我々ハンバーガーチェーンにとって、天使とも悪魔とも例えられるあのバーガーウォーロックが…こんなちっぽけな…じゃりだとはね…」 「でも美形ですよぉ…ふふ…この髪も柔らかくて、いい匂い…声もすてき…とっても可愛く鳴いてくれそう」 「…まぁ待て。まだ返事を聞いていない。どうだね」 大人たちの艶めかしくも無気味なやりとりを聞きながら、ゴーディは心臓が早鐘を打ち始めるのを覚えて、携帯を握っていた手を離すと、ゆっくりと深呼吸した。 「…ええと。僕がレビューを書いて、皆ハンバーガーを食べに来たとしても、結局ひとりひとり評価は違うので…リピーターがつくかどうかは…なんていうかチョコレートバーガーというメニューは人を選ぶというか…」 「ああ。そのことなら心配はない。我々のバーガーには習慣性がある成分を入れているから」 平然と答える店長に、少年はあんぐりと顎を落としてから、気を取り直して問い直した。 「でもそれは犯罪じゃ…」 「大丈夫だ。君のレビューを新聞やテレビ広告にも使用する。そうすれば、官憲や権力者にいたるまで一度は口にしてみたくなる。抵抗できるはずがない。そして、食べさせてしまえばこちらのものだ」 「…ええと…」 「チョコレートバーガーとバーガーウォーロック。我々が手を組めば、この国…いや世界が手に入るのだ。どうだね」 「壮大なお話ですねぇ…」 「そうだろう!」 嬉しげに手をとる女に、ゴーディは年に似合わぬ大人びた苦笑を返した。 「…でもお断りします。何かとってもよくないことのような気がしますので」 「そうか…残念だな。では君には別の説得方法を試みるしかないようだ。まずはその舌でチョコレートバーガーの素晴らしさを確かめてもらおう」 店長が指を鳴らすと、奥から紙包みが一つ飛んでくる。長い爪をダークブラウンに塗った手がはっしとそれを受け止めると、中味を取り出して、幼い虜囚の口元へ近づけた。ぷんと漂う甘やかな香り。カカオのストライプが入ったバンズのあいだに、チョコレートリキュールに浸かったパティとトリュフが覗いている。 「さぁ」 「お断りします…こうみえても、僕、食べたくないものは飢えても食べません。チョコレートもハンバーガーも好きですけど、両方一緒はNGです。絶対食べません」 決然とした拒否の台詞に、スーツの女は柳眉を逆立てると、ふんと鼻息をついてから、いきなり自らバーガーをかじると、いきなり少年の唇を奪った。 「むぐっ!!?ん…むっ…ぅ…」 「ん…むちゅ…くちゃ…む…」 おとがいを掴んで顎を閉じさせないようにしながら、恐怖のジャンクフードを舌で捏ね、無理矢理に嚥下させる。目的を遂げたあとも、なおも名残惜しげに接吻は続き、ブリッジの嵌まった歯列の上下をねぶって楽しんでから、ゆっくりと離れた。 「ぅ…ぁ…おぇ…チョコレートの甘みと苦み…パティの肉汁とがからみあって…ハーモニーをかなで…想像を絶するまずさ…」 律儀に感想を述べながら、ゴーディは涙含んでえずく。だがやがて、華奢な姿態はわずかにおののくと、急に脚を擦り合わせて悶え始めた。 「な…ん…」 「今君に食べてもらったのは、特定顧客向けのスペシャルメニュー。”ヒートラヴァー”だ。強烈な洗脳と催淫の効果が売りでね…本来薄めて使うはずのショコラソースを原液のまま入れたから、回りも早いだろう?」 「ふふ。もう髪から男の子の汗の匂いがしますよー。興奮してきちゃったのかな♪」 少年を羽交い絞めにしたままクルーが歌いかける。店長はどこかうっとりした表情で、汗みずくになった獲物のあどけない容貌を覗き込むと、ズボンのベルトに指をかけた。 「やっ…」 「利目を確かめさせてもらおう」 驚くべき手際でジーンズを下げると、下着を引き剥がして、白い秘所を露にする。薄い黄金の茂みのあいだに、幼茎が勃ち返っていた。 ゴーディは朦朧としながらも、そばかすの浮いた鼻から耳のあたりまでを紅くして、弱々しく頭を振った。 「やめ…」 「…ふふ…おいしそうだ」 スーツの女は蕩けた眼差しを屹立に注ぎながら、唇を開いてむしゃぶり付く。少年は身をくの字に折ってあえぐと、両肢をばたつかせた。だがすぐにほっそりした手が伸びて足首を捕える。 性感の芯に注がれる激しい刺激を、躯の動きによって外へ逃がすこともできず、ただ狭い肩が上下し、あえかな唇から悲鳴混じりの嬌声が零れては、小さな背が反り返る。 やがて、瘧のような痙攣の発作があってから、稚い秘具は熱い口腔に精を迸らせる。ぐったりしてうなだれる可憐な客に、店長はちらりと勝ち誇ったような一瞥を投げ、薄い子種を飲み干すと、また口戯を再開する。 「ひぁっ…」 バキュームのような吸引に、少年は半身を弓なりにすると、信じられぬものを見るように股間にうずくまる女を凝視した。だが欲望を解き放ったばかりの牡の印は早くも固さを取り戻しつつあった。 「うそ…なんで…」 「ふふ。チョコレートバーガーの素敵な時間、堪能してくださいね?」 うなじのあたりでクルーが囁いて、息を吐きかけると、いきなり耳に舌を捻じ込んできた。ゴーディが息を詰めると、いきなりシャツの下に滑らかな掌が滑り込んで薄い胸板をまさぐり、乳首を捕えると、すぐさま捻り上げる。 「ぁぅっ…やっ…ああ!!」 敏感な場所を同時に弄られて、少年が切なげに哭くと、女たちは得たりとばかりに痛みと快さをないまぜにした愛撫を強めていく。やがて再びわななきがあって、未熟な体が絶頂に達する。だが責めはさらに激しさを増して、声変わり前の喉から抑制を失った歡喜の叫びが奔り、トラックのコンテナ中に跳ね返るようになっても、止もうとしなかった。 とうとう秘具が空射ちをするようになると、店長はやっと口を離して、ぺろりと舌なめずりをしてから、また指を鳴らした。カウンターの向こうから、尖端が細くなったボトルが二つ飛んでくる。しなやかな左右の腕が宙に躍ってそれぞれを受け止める。 「さてと…下拵えは済んだな。本調理に進もうか」 女がボトルを逆様にすると、濃褐のソースが筋となって桜桃の実のような亀頭に落ちる。 「ふぁぁあ!!」 ゴーディが両眼を見開いて喘ぐと、愉しげな声が尋ねる。 「どうだ…原液は…利くだろう?」 「店長こっちにも下さい♪」 店員はにこやかに小さな客のシャツをまくり上げて、両胸の尖端、欝血して腫れ上がった突起を示した。求めに応じてすぐにも焦茶の粘液が塗りこまれる。 「ひにゃぁっ!!?」 「あは。すっごい反応…ちょっとどうなるか見てみません。記念撮影もしたいし?」 「悪くないな」 クルーは少年のポケットから携帯を抜き取って立ち上がると、店長に寄り添る。女二人が見守るもとで、幼い虜囚は惑い乱れ、無意識のうちに右手で乳首を指で抑えながら、左手で屹立を握って、疼きを押さえ込もうとするようだった。 「そこ、ごしごしってしたらきもちいいよ♪」 「さっきされたみたいに、自分で胸をつねったらいい」 嗜虐の喜びに満ちた促しに、ゴーディは朦朧とつつも忠実に従って、胸をいじりながら性器をしごき始める。店員はくすくす笑いながら、携帯のカメラを起動して次々に愛らしい痴態を記録していった。 「これ、Whisperに投稿しちゃおうかなー。ファンがまたすんごく増えちゃうかもよ♪」 「ぁ…だめ…やだ…やだぁっ…」 「そう言いながら手は止まらないみたいだな…君が魔法の言葉を作り出すそのちっぽけな指が…今はいやらしいものを掴んで弄っている…まったく…たまらないね」 「うぅ…ひっく…止めて…ぁう…止めてぇ…」 泣きじゃくりながら、少年は腰をくねらせ、淫らな戯れを演じ続ける。スーツの女は己の上気した頬に掌を充てて冷やすようにしながら、震え声で嘲りを浴びせた。 「君が勝手にしているんだろう?」 「ひ…ぅ…もぉ…止めたいの…止めたいのに…」 「自分でいじったくらいでは…治まらないさ…そう…楽になりたい?」 「ぅ…ぅう…」 「我々の専属レビュワーになってくれるかな。”バーガーウォーロック”」 「…ぁ…ぅ…なる…なるからぁ…」 「いいだろう」 店長は微笑むと、上着を脱ぎ捨て、次いでブラウズのボタンをひきむしるようにして外す。ブラジャー、スカート、ストッキング、下着。もどかしげに剥ぎ取ると、一糸まとわぬ姿をさらす。次いでポットをらソースを浴びると、チョコレートの液色にてらつく裸身を床に横たえ、左右の腿を割り広げて、手招きする。 「おいで…ゴーディ」 「ぅあ…あぁ…」 少年はふらつきながら、膝立ちになり、しなやかな両脚のあいだに進んでいった。誘惑者は黒い叢の奥、たっぷりと潤った泉の縁を指で広げ、もう一方の手で鈴口の尖端をつまんで導く。幼茎が柔襞に埋もれた刹那、蟻地獄の大顎の如くに両足を閉じて、細い腰を抱きとる。 「ひゃぅっ!!」 これまで味わったどんなパティよりも熱く汁気に富んだな肉のあいだに、舌と同じ程敏感な器官を呑み込まれて、ゴーディは華奢な肩をおののかせると、たわわな乳房のあいだに顔を預け、狂ったように性急な抽送へと移った。店長は余裕を持って打ち込みを受け止めながら、相手の絹糸のような金髪を梳いて、あやすように汗ばんだ背を撫でる。 「いい子っ…いい子だっ♪」 クルーはうらやましそうに指を咥えていたが、やがてにっこりしてボトルをとった。 「いいなぁ。店長が柔らかバンズで、ゴーディ君がぷりっぷりのパティですね。…でもまだ味付けが足りてないかな」 憑かれたかの如く忙しく上下する小振りの尻を捉え、無理矢理に押さえ込むと、双丘の谷間を拡げて、隠れた窄まりを露にする。クルーは舌なめずりをすると、未だ排泄しか知らぬそこへ、尖った容器の尖端を当てると、勢いよく中味を絞り込んだ。 「あ…くぅうっ!なっ…にっ…?…ひぁっ…やだぁ…抜いて…抜いてよぉ」 「だめだめ。ちゃーんと潤滑液を入れないと…あとがつらいですから」 「はへ…ぁっ…ぇ?」 たちまち、火がついたような熱が直腸に広がり、ゴーディはいっそうめちゃくちゃに腰を振り立てた。店長は甘い喘ぎを零すと、激しく動いた罰とばかりに、滑らかな胸にしこり立った乳首をつまんで捻り上げた。 「ひぎぃいいいい!!」 「ふふ…いい声…こっちもいい感じ…できあがってきてますねぇ」 背後からクルーが面白そうに告げる。言葉通り、チョコレートソースを注がれた肛門は、くちゅくちゅとひどく卑猥な音をさせて伸縮し出していた。 「あちゅいぉ…あちゅいぃよぉっ」 苦悶と快楽の渦に、脳の芯を痺れさせたゴーディは、幼児のように舌足らずなままやきをこぼす。すると店員は唇を三日月に歪め、ミニスカートの前をめくってレースの下着を降ろすと、ありうべき剛直を解き放った。魁偉な亀頭をひくつく後孔に押し当てると、また獲物の耳元に唇を寄せて訊く。 「どこが熱いんですかぁ?」 「おしりぃ…おしりあちゅいのぉ…」 「よく言えました♪正直なぁゴーディ君には、ご褒美におしりをぐっちゃぐちゃに掻き混ぜてあげます♪」 「ぁ…ぁ」 「でも私のはちょっと大きいんでぇ。ここ壊れちゃうかもしれないですけどぉ。いいですかぁ?」 「ぁ…ぁ?…はい♥」 「じゃ、いきまーす♪」 みしみしと音が伝わってきそうな強引さで、クルーの逸物が括約筋を押し広げていく。内蔵を圧迫する野太い質量に、少年は唇から涎を、両目から滂沱の涙を流し、裏返った悲鳴を迸らせた。震える肢体を抱き締めた店長は、僅かでも苦しみを和らげようとするように唇を重ね、励ましの言葉をかけながら、蜜壺を蠢かせて、ひくつく雛菊に新たなエクスタシーをもたらす。 「ふふ。”バーガーウォーロック”の食いしん坊さんな下の口はぁ…初めてなのに、ぜぇんぶ咥え込んじゃいましたねぇ…さっすがチョコレートバーガーの特製ソースってとこですかね?店長」 「ふふ…ゴーディの素質も…あるんだろ…ん」 女たちは、少年の頭ごしに接吻を交すと、前と後ろから同時に攻め立てにかかる。ちょうど二枚のバンズに挟まったパティのように、美肉のあいだに捕われたほっそりした肢体は、求められるがままにくねり、踊った。未熟な牡の印は、しとどに濡れた牝の穴を抉り、小さな菊座はいっぱいに拡がって、乱暴に粘膜をめくらせながら出入りする巨根を締め付ける。 しばらくして、クルーのユニフォームに包まれた胸が弾むように上下すると、山猫の雄叫びのような声が奔った。 「出ますぅ!この子の中にぃ…私のぉ…ホワイトショコラシェイクゥ!!出まぁああす!!」 最前まで排泄しか知らなかった直腸に大量の白濁を注ぎ込みながら、店員は張りのある尻に爪を立てて、歓喜の表情を浮かべ、歯を食い縛る。はらわたを子種に浸されるおぞましさにゴーディは、瞳孔をいっぱいに開き、舌を突き出しておののく。店長は痙攣を繰り返す狭い肩を優しく掻き抱いて、あやすようにしながら、自らも軽い絶頂に達する。 わずかな静寂が訪れたあと、チョコレートバーガーの効能で活力を取り戻したクルーが、獰猛な突き上げを再開すると、すぐにも残る二人の嬌声が甦る。大小の三つの躯は一つの塊と化したかのたように絡み合いながら、いつまでもいつまでも、互いを貪っていた。 日暮の住宅街。少年はふらつきながら家路を辿っていた。 ”そのプモラとやらはオンライン接続機能がなく、自宅に帰らないとレビューをアップできないそうだからな。不便だが、いったん解放してやる…だが逃げられはしない。忘れるなよ” スーツの女が、服を着せながら、口付けのあいまに囁いた警告が脳裏にこびりついていた。肌はまだあのけったいなジャンクフードの影響で火照っている。肛孔の奥には凌辱の証がねっとりと蟠っていた。 ”…また…試食をしてもらう…忘れるなよ。君は…私の…いや我々チョコレートバーガーチェーンのものなのだ” 「ていうかあの味だけは何とかしてもらいたいんですが。あとネーミングも」 疲れきった独白を漏らしながら、道の脇のブロック塀にもたれて一息吐く。ゴーディは、山吹の巻き毛の下、じっとりと汗ばんだ額を掌でぬぐって、切なげな眼差しを地面に落とした。 「これからあのチェーンが新商品を開発するたびに食べるはめに…これははっきり言って拷問です…」 悲哀の泌んだ口調で呟いていると、不意につんざくような急ブレーキが鼓膜に咬みついてきた。視線を上げると、黒塗りのワゴンが十字路の真中に止まっている。 厭な予感を覚えて身構えると、案の定、車両の後部ハッチが開いて、捻り鉢巻にはっぴ姿の筋肉質な男が数人、飛び降り、肩を並べて駆け寄ってきた。 「”バーガーウォーロック”!ゴーディ・リカー殿とお見受けする」 「それがしども、江戸前バーガーの新作!”チーズあんしめさばバーガー”を味見して頂きたい!」 「断るつもりなら、我ら 「いや…むしろ是非!是非ゴーディ殿に漢の絆をお伝えしたい!!今後はそれがしどもの専属味見役となっていただくためにも!」 だがむくつけき店員たちがさらに近付こうとしたところで、いきなり数本の矢が、虚空を引き裂いてコンクリートの舗装に突き刺さり、道を遮った。 「そこまでよ!ゴーディ・リカーは我々エルフィンズが貰う!照葉樹林の恵みたるドングリバーガーこそが世界を冥王の闇より救えるのだ!」 見上げると、電信柱の頂辺に、三角の耳に尖った顎をした少女が、弓を携えて立っていた。森の樹の葉を思わせる緑の胴着はどう考えても時代錯誤の代物ではあったが、胸に名札がある以上は制服の一種なのだろう。 江戸前バーガーの面々とエルフィンズの使者が睨みあっていると、今度は足元はるか下方からごぼごぼと水の湧く音がして、マンホールの蓋が振動したかと思うと、いきなり跳ね飛んで、中からねじれのたうつ蛸の足に似た触手が伸びてきた。 ”イァイァ!クトゥルフ・チェーンは、死せるルルイェの本店で、運命の子、ゴーディ・リカーを待つ!ダゴンの血肉にて作られしディープワンバーガーが深遠なる宇宙の狂気にも等しき絢爛の絶望を齎す佳肴となり、汝を幽明遥かなる時間と空間の高みへ導くであろう” 少年はへたへたと座り込むと、どれ一つとして食欲をそそられないハンバーガーの数々を想像しながら、身を震わせたのだった。 |
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