8.
「止めろ.止めてくれグノーフ.私は,それ以上言えば,お前を殺さねばならん.私にお前を憎ませないでくれ…」
「ええ?何言ってるんだい?死ぬのは,君なんだ.その,女性しか,僕の,研究には,役に,立たない,からね,はじめから,そのつもりさ」
ラファーロは顔を引き攣らせながら,ゆっくりと立ち上がった.風が彼の周りで渦を作る.凄まじい気の収束に,近衛の騎士達は青褪め,棹立ちになる馬を必死で抑えねばならなかった.魔導師ではない彼等にも,魔力の凄まじさは感じ取れた.独り平然としているグノーフのみで,他は,エルフの長が放つ殺気だけで,失神してしまいそうになった.
「グノーフ.何がお前を変えたのかは知らぬ.だが,オアシスエルフの聖地を傷つける者は許してはおけぬ.塵に還ってから,狂気の沙汰を悔いよ.焼かれたとしても,ここは私の土地だ.地には,木々の根が残っている.森の守護のある我々の前では,お前の軍勢も炎も無意味だ」
「うん,だろうね,だからさ,面倒なんだよね.リフォル,僕の代りに,義父上を殺しちゃって?」
「はいっ,ぐのーふさまぁっ」
頭巾を被ったままの2人目の魔導師が初めて漏らした声は,若い女のものだった.ラファーロの表情に当惑が広がり,やがて驚愕と共に血の気が失われていく.
「リフォル…?リフォルなのか…?」
「うひっ!ちちうえぇっ,おひさしぶりっ♪でも,も,さようならなのぉ,あはっ,貫いて,木の杖(ウッド・ストック)」
短い詠唱が終ると,大地から槍状になった根が無数に突き出して,エルフの長を刺し殺した.恐らくは侵略者の全軍を屠り去れた筈の破壊呪文を口に載せたまま,"緑の指"のラファーロはあえなく吐血し,果てた.
グノーフはにっこり笑うと,妻の側に馬を寄せる.彼女の長套の裾を捲ると,下から秘文字(ルーン)を刻んだ黒い拘束具と,べっとり脂汗に覆われた白い肌膚が露になる.拘束具は鞍と一体になってしっかりと両腿を開かせ,大人の手首ほどの太さの張型で前後の肉穴を穿っていた.馬の背の揺れに従って,愛液,腸液と血の混ざり物が溢れているが,大きく見開かれた瞳にはもう,痛みを感じる意識は残っていないようだった.
御椀方の両胸は,2つの尖端を1本の鉄串で繋げられている.串の両端からは革紐が伸び,鞍の前に結び付けられ,乳首から血の雫を搾り取っていた.グノーフの篭手が長套を剥ぎ取ると,吹き付ける熱風に白い素肌が快げに震える.
均整のとれた細身の肢体の中で,腹部だけが異常に膨らんでいる.妊娠線のようなものまで浮かび,臍をピアスで縫い止められていなければ,すぐにも破裂してしまいそうに見える.夫が篭手を嵌めた手でそこを揉むと,リフォルは狂ったように悦った.