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 どこかで手の早い腕白小僧が,気に入らないクラスメートをぶん殴ると,周りに居た連中が輪を作って,愉しげに囃し立てた.他方では,目立ちたがり屋の体当たりで,パイプ椅子を組み合わせたアンバランスなモダン・アートが倒れ,凄まじいカタストロフィの様相に,感嘆の唱和が起る.

 サバト.

 気の弱い大人なら,斯様な野獣の群の世話をすると想像しただけで胸がむかつき,腹の調子をおかしくしてしまうかもしれない.調理師は,唐揚だのフライドポテトだのが冷めぬよう温蔵庫へ運びながら,カウンター越しに食堂の嵐を眺めては,今回のちび共はまた活きの良いなと半ば諦観の念で苦笑しあうのだった.

 ようやく廊下の向こうから,秩序を保つべき教師が1人,胸にバインダーを抱ええながら,戻ってくる.騒ぎを鎮めるにはうってつけ,中学の鬼軍曹役である生活指導だ.だがどうも様子がおかしい.普段の貫禄はどこへやら,なにやら広い額にまばらな髪の毛がちょろちょろとかかって,瞳は血走り,重心は左右に揺れて,酒でもひっかけたような千鳥足だ.

 柴センはホールに入ると,話し掛けようとする調理師の方へは些かも注意をくれず,濁った視線を辺りに投げ,尚も知らぬ態で其々の遊びに熱中する生徒の方へ良く通る声で言いつけた.

 「お話しがあります」

 半数程が席へ戻ろうとするが,まだしぶとく聞こえぬふりをする者も居る.ベテラン教師は咳払いをして,ピンマイクのスイッチを入れると,ゆっくり呪文のような文句を称えた.

 「学習のすすめ」

 「「「「学習のすすめ」」」」

 忽ち少年少女達が鸚鵡返しに応えると,まるで魔法にかかりでもしたように,きちんと定められた位置に就いた.生活指導が拍子を打つと,すぐに子供等の吟詠が始まる.

 私たちは,先祖が大きな理想のもとで,
 すばらしい日本を作ろうと,働いてきたように,
 奉仕の精神で,心を合わせて,一丸となって頑張ります.

 親孝行し,友だちと助け合い,
 間違った言葉を行動をつつしみ,
 社会の決まりを守ります.

 勉強と奉仕を通じて,人格をみがき,
 立派な日本人として,社会に貢献し,
 どんな時でも,日本の平和と安全を,第一に考え
 皆といっしょに,国を守ります.

 そして美しい伝統を忘れず,
 自分の子供たちにも伝え,
 日本の発展にむかって努力します.

 「着席」

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