照れ屋 最近、お前の顔がまともに見れない。 別にお前の顔が前とは違くみえるとか、そういったものじゃないんだ。 ただ、俺がどういう顔をしてお前を見て良いのか分からなくて……。 昔の俺はお前の事どんな顔でみてた? どんな顔して笑いかけていた? 教えてくれ―――。 「ふふ。九郎もそういう所が純情ですよね。」 「馬鹿をいうな!俺は真剣にだな・・・」 「わかってますよ。 つまりは、望美さんがあの温泉のときの望美さんの言葉が頭をよぎるんでしょう?」 「………。」 そうなのだ。 あの時、不意打ちで望美の気持ちを聞いてしまった時から、俺のなかの何かが弾けてしまった。 その時から望美の顔をみると、俺をどういう気持ちで見ているのか気になってしまって 思考が使い物にならない。 あの時のせりふは、いったいどういう気持ちで言ったんだろうか…? 俺は、単なる戦友か? それとも俺と同じ気持ちでいるのか? お前の・・…望美のすべてを知りたい。 「九郎の気持ちを正直に伝えた方が一番効果的なんでしょうが…仕方の無い人ですね。 僕が一肌脱いであげましょう」 不敵な笑みを浮かべ立ちあがる弁慶に俺の直感は何か嫌な予感を感じた。 「おい!弁慶!」 そのまま出ていこうとする弁慶を俺は言葉で制す。 「大丈夫ですよ。九郎。こう見えて僕は友達思いなんですから。」 弁慶は、振り返ってにこりと笑うとそのまま部屋を出ていった。 「九郎、今日の夜は大人しく部屋に一人で居て下さいね。」 という台詞を残して。 「何するきだ…あいつ。」 俺の不安は数時間後、的中する事になった。 「九郎さん!!」 バタン!と大きな物音をさせて望美が俺の部屋の襖を開く。 「なななな・…!?なんだ望美…!」 突然の訪問者であるのと、 その相手が俺の頭を悩ませている望美だということで俺の声は思わず裏返ってしまう。 「聞きたい事がありますっ!!」 凄い剣幕で俺の前に歩み寄ってくる望美。 否応でも見せ付けられる望美の顔に俺は固まってしまう。 しかし、久しぶりに真正面でみた望美の顔は怒りに溢れているようだった。 「弁慶さんから聞きました!」 まさか…!!! 弁慶が俺の気持ちをばらしたのか!? 戦中にそんな事を考えるなと俺を叱りに来たのか!? ぐるぐると俺の中で色んな思考がめぐる。 しかし、俺の考えとは裏腹に望美から出てきた言葉は予想外の物だった。 「私のお風呂覗いたって本当ですか!?」 「はぁ!?」 何言ったんだ!弁慶!!! 「この俺が女の風呂など覗くわけないだろう!ましてや、お前のなんて。」 「ちょっ!お前のなんてってなんですか!!」 「じゃあお前は覗かれたいのか!?」 「そういう問題じゃありません!」 ――――― 間 ――――――
「じゃあ、九郎さんは覗いてなっていうんですね?」 「そうだ。」 なんで、俺が・・・。 そう思っていると、望美がいきなり確信をついてくる。 「じゃあ、なんで最近私のことちゃんと見てくれないんですか?」 「・・・・・・・・・!?」 ドキ ドキ ドキ 心拍数があがる音がする。 一気に静まり返る部屋。 俺は、何をいったらいい? ここは何を言うべきなんだ? 真っ白になる頭の中から一生懸命言葉を出そうと頑張るが、一向に出てくる気配は無い。 こんなの時、使い物にならなくなる自分の頭が憎い。 「ホントはね。九郎さんが覗きなんてすると思ってなかったんだけど、弁慶さんが……。」 「弁慶は何て言ったんだ?」 「……九郎さんが私の顔を見ると、私のはだかが出てくるから見れないんだって言ってて……」 「なっ……!?違うぞ!俺が望美を見れなかったのはお前があんな事言うからだ!」 って、何を言おうとしてるんだ俺!! 体温が一気に上昇した気がした。 顔が熱い。きっと顔も耳も真っ赤になってるだろう。 「あんな事ってどんな事ですか?」 「いや…あの………」 しどろもどろの俺に望美はきっぱりといった。 「はっきり言ってください!」 詰め寄る望美の気迫に、俺の思考回路は白旗をあげた。 無意識に溜息が洩れる。 「お前が、俺の事を気になってるなんて言うからだ。」 「……ッ!聞いてたんですか!?」 「ばッ!!聞こえたんだっ!馬鹿でかい声で喋ってるお前が悪い!」 反論が来るだろうと身構えた俺の目の前には、予想に反して口をキツク結んだ望美がいた。 真っ赤な顔をして、大きな目はいつもの強く意識の持った目ではなく、沢山の涙でうるんでいた。 「………な……っ!のぞ…み?」 初めて見た望美の艶やかなその顔に、俺は思わず息を飲んだ。 「………………ッ」 目に溢れた涙をおとすまいと、顔を下に向け必死に耐えている望美。 きっとこんな形で思いを伝える予定ではなかったのだろう。 そんな顔が妙に健気で、気がついたら九郎は望美の唇を奪っていた。 「く……ろう……さん?」 驚いた様に目を見広げる望美。 「すすすす、スマン!!」 俺は、自分のしてしまった事の重大さに気がつき、パニックに陥った。 身体の血が全部頭に登っていくのが分かった。 やってしまった……! いくら望美が可愛かったからって、接吻なんて……。 「………して。」 俺が自己嫌悪に陥っているとき、望美の口から何か発せられた。 俺は耳をすまして彼女の方をみると、彼女は顔を伏せ耳元を真っ赤にして口を動かしていた。 「もういっかい……して。」 今度ははっきりと聞こえたその言葉。 俺の脳内で何かが弾けた音がした。 「っ、ん……!」 九郎は獣の様に、勢い良く望美に飛びついた。 そのまま押し倒し、噛み付く様に望美の唇を貪る。 その唇からでる声、吐息、唾液、全てを飲み込みたかった。 それはもう、貪欲なほどに……。 「くろ…んぁ、んんっ!」 クチュクチュと舌が絡み合う音が部屋の中に響く。 いやらしいその音が、また九郎を煽っていく。 望美の手が九郎の着物に皺をつける頃、九郎の右腕が動いた。 望美の張りのある太ももをゆっくりと、優しく擦る。 「ヒッ」 ビクッと身体を振るわせた望美の唇から短い悲鳴があがる。 「やさしくする……」 九郎はそれしか言わなかった。 いや、それしか言えなかった。 言葉も出てこなかったし、何を言ったらいいのかも分からなかった。 ただ、目の前にいる女で頭がいっぱいなのは確かだった。 彼女の首筋に赤い花を咲かせ、左手で帯を解いていく。 「アッ、ん……アアッ!」 「のぞみ……望美・……」 まるで、魔法にかかったように行為に夢中になる九郎。 その右手が足の付け根に届く頃、九郎は望美と顔を見合わせた。 頬を紅くし、目をとろんとさせ、口からは絶えず吐息が洩れる望美の顔。 愛しい。 心の底からそう思った。 世界で一番愛しい存在に九郎は鳥の羽のような接吻を送ると耳元に顔を埋めた。 「好きだっ」 「私も、スキ…。」 その台詞に安心したように優しく微笑んだ九郎は、閉ざされた望美の秘所に指を進めた。 「痛ッ……い、あ…ぁ……っ」 望美を引きつるような痛みと、ゾクゾクとした感覚が同時に襲う。 目をギュッと瞑り耐える望美の表情が、この行為が初めてだと言うことを示していた。 「痛いか……?」 第一関節まで入れた指を止め、そう聞くと望美は小さく頷いた。 「やさしくする…」 九郎はもう一度そう呟くと、肩に回っていた望美の腕をそっと解いた。 「く、ろう…さん?」 「大丈夫だ。」 優しい笑みを望美に向けた九郎は、そっとその頭を望美の下肢にずらした。 ぴちゃぴちゃ 艶やかな水音が望美の秘所と九郎の唇から奏でる。 「あぁぁ!んぁっ、あ…ん、やァ」 「我慢しろ…濡らさないとお前が辛いだろ。」 その言葉すら快感になるのか、望美の口からはひっきりなしに喘ぎ声が聞こえる。 そして、その喘ぎが九郎の快感に繋がっていて……。 「もう、平気か?」 九郎が、顔を上げソコに指を入れて確認すると望美は目を瞑ったままこくこくと頷いた。 その合図を受け指を引く抜こうとするとナカは指に吸いつくように収縮し、くちゅ…と湿った音を奏でる。 十分潤ったソコに、九郎は思わず生唾を飲む。 九郎も限界だった。 望美の足を自分の肩に乗せ、熱く昂ぶったもの一気に捻じ込んだ。 「あっ……、んっ、あ…はぁう……っ」 「くっ…」 望美のソコは深く奥まで貫かれ、目の前が白黒に光る。 しかし、九郎は深い結合のまま、抜き差ししてきた。 「望美っ…望美……ッ!!」 「く…ろうさんッ、スキ…好き!」 「俺もだっ……のぞみッ!」 どちらからともなく、深いキスを繰り返していった。 激しいストロークで喘ぎ声も途切れ途切れになったころ、二人は絶頂感を味わい真っ白になった。 翌朝。 先に目覚めた九郎は自分の胸の中で安らかな寝顔を見せる望美を見て優しく微笑んだ。 この幸せをくれた彼女と彼女を自分の元に導いてくれた龍神に感謝しながら。 |