「こころを奪えないなら、いっそ」 初めて貴女をそういう対象として見るようになったのはいつだったでしょうか? ふとしたきっかけで目に入った貴女の目が とても艶っぽくて 何かを求めるかのような欲求を映し出していて 思わず見入ってしまったのです。 でもすぐに気がつきました。 その目線の先にいたのは私の昔からの友であることを――― 報われない。 そうわかっていてもやめられない。 僕の視線が貴女を捕らえる度に様々な想像が頭をかけめぐる。 そう、僕が好きなのは「九郎を好きな望美さん」なんです。 「弁慶さん…相談があるんですけど……」 貴女が初めてそう僕に告げてきた時は、本当にびっくりしました。 熱っぽい目で九郎について語る望美の姿は私の胸を熱くする。 時折自問自答する望美はとても魅力的で…。 考えを巡らせる暇もなく、僕の黒い部分が表へと現れて―― 気がついた時には望美にそっと囁いていました。 「九郎は女性経験がないですよ?」 望美さんはびっくりしたように僕の顔を見つめ、一気に顔を赤くさせた。 「貴女は本当に可愛い人ですね」 くすっと笑う僕に望美は「からかわないでください!」と反発する。 「からかってはいませんよ。九郎の経験がないのは事実ですから」 望美は恥ずかしいのか、顔を下げてしまう。 しかし僕は言葉を続けた。 まるで悪魔のささやきのように。 「九郎は器用じゃありませんからね。 昔からこれと決めた一つの事しか出来ないのですよ。 例えば、今だと『平家討伐』がよい例ですね……。」 『平家討伐』その言葉を聞いた瞬間、望美の顔はくもった。 きっと、この後の言葉が予想出来ているのでしょう。 けれど、僕は続けた。 僕の欲望の為に―――。 「きっと今、望美さんが九郎に気持ちを伝えても九郎は答えられないでしょう。 九郎はどんなことがあっても一度決めた事は必ずやり遂げる男です。 それが自分を犠牲にしてでも。」 望美の目に涙が浮かぶ。 「しかし、九郎の目的の平家討伐が終われば貴方は帰ってしまうのでしょう? 今の僕に言わせてもらうと、望美さんには九郎を諦めて頂きたいですね。」 僕が言い終わると彼女は頬を濡らしていた。 「……………ン。」 涙を流す彼女をみて思わず抱きしめたい欲望にかられる。 しかし、ぐっと我慢する。 まだ、早い 策士としての本能がそう叫んでいたから。 そっと手を寄せ望美の涙をすくった。 「きつい事を言って申し訳ありません……。 でも僕らはその目標に向かって九郎の元に集まってきているんです。 九郎が道に戸惑ってしまったら何千もの同志に命の危険が出てしまう。 それはなんとしても避けたいのです……。」 「だ、大丈夫ですッ…! わかってるんです。 でもわかってても止められなくて… 弁慶さんにやめろって言って欲しかったのかもしれません。 ありがとうございます……。」 一生懸命涙を止めようと目を擦る望美。 その手を掴み、僕は望美の目にキスをした。 「べッ弁慶さん!?」 「貴方には辛い思いをさせてしまいます。本当にすみません。 もし、望美さんが良ければ…僕を九郎の身代わりにしてくれても構いませんよ」 「え………?」 「僕たちの我侭であなたに辛い思いをさせてしまうんです。 九郎にはなれませんが、貴方の気持ちを紛らわせる事は出来ると思います。 僕はもう経験済みですからね。」 微笑みを浮かべながら言う僕を見て望美は真っ赤になった。 そのまま彼女を引き寄せ、唇を合わせる。 落ちた 僕はニヤリと勝利の笑みを浮かべた。 「べ…弁慶さん。やっぱりこんなこと………」 望美は大切なところを隠す一枚の布のみを纏い、胸を手で覆った姿で弁慶を見つめた。 「不安ですか?大丈夫ですよ。優しくしますから。 こうみえても、僕うまいですから。」 そう言って鎖骨の凹んだところを舐めると望美はびくっと身体を振るわせた。 「んッちが…!」 「あぁ、罪の意識ですか? 言ったでしょ?僕のことを九郎だと思って良いですから。 九郎って呼んで下さっていいですし。 なんなら目隠しでもしますか?その方が想像しやすいでしょうし。」 そういって、弁慶は自分の腰に巻いていた布で望美の目を覆った。 「弁慶さッあぁ!!」 望美の制止する声も聞かず弁慶はいきなり望美の胸にある手を退かしその突起に噛みついた。 「感覚だけを追ってください。九郎がやっていると思って。」 「あ………ぁ……っ」 まだ、あまり触ってないのにこんなに反応するなんて……。 本当に可愛い人だ。 弁慶はそう思うとますます望美の快感を引き出す事に専念する。 口に含んでない方の胸をわし掴みにすると乱暴にもみしだく。 しかし、反対側は舌を使い突起だけを丁寧に舐める。 「…ぅっ………ぁ……あ………っ」 左右の愛撫の違いに望美の躯は快感を巧く処理できずに頭を振るわせる。 「気持ち良いですか?」 「………っ………」 当然の如く返事はない。 そんな恥ずかしいこと望美は言わないだとうな。と弁慶の想像していたとおりで、思わず笑いが込み上げてしまう。 弁慶はそんな望美をいじめたい欲望にかられた。 「腰動いてますよ?」 「………!!!!」 「下着取りますね」 「えッ!?あッ!」 抵抗をする間なく、望美の下着は剥ぎ取られてしまう。 そして、弁慶の指は望美のそこを上から擦るように上下に動かした。 「はぅ……っ……」 目が見えず感覚しか追えない望美にとって、その快感は暴力にも似ていた。 「っ……ぁん……!」 決して強いとは言えないその快感。 そしてその快感に思考能力は奪われていく。 すると弁慶は濡れた指をそっと離すといきなりソコの突起に吸付いた。 「ああぁぁ………っ!」 弁慶は大きく弓なりに反った望美の腰を押さえつけ、ソコから溢れ出した蜜を舐め挙げる。 「イきましたか?」 そう聞くが望美からの返事が無い。 しかし目隠しの布が濡れていてイッたことを物語っていた。 それに満足感を覚えると、弁慶は半端に着ていた自分の着物を全部脱いだ。 そして、高まった自分のものをそっと望美に押し当てる。 「ひっ………!」 逃げようとする望美の腰をおさえつけ、「いきますよ。」と声を掛けるとそのまま一気に望美を貫いた。 ぬぷっという生々しい音と共に…… 「あッ、あぁ―――ッ……」 悲鳴のような声をあげる望美。 自分を包む生暖かい感触に弁慶は息を飲む。 「あ……あ……」 弁慶がゆっくりと中を掻き回しはじめる。 そのたんびに響く望美の嬌声。 望美の中で自己主張する弁慶のもの。 互いの脈まで感じるその感覚が2人を絶頂へと導く――― 「やだ……あ、あんっ………!イッチャう………!!!!」 「僕ももうすぐです……ッ」 そしてそのまま一番深いところを突く。 「ああぁぁぁ……ッ!!!九郎さッ……ん……」 「!?………くッ」 そうして2人はほぼ同時に高みへとのぼりつめたのだった。 ぽーぽーぽー どこかでフクロウの鳴く声が聞こえる。 望美が寝息をたてている部屋のすぐ前の縁側で弁慶は月を眺めていた。 その目元からは涙が流れ落ちていた。 なにを泣いているんでしょう…僕は。 望んでいた結果を得られたといのに。 でも…最後のあの言葉は結構きたな……。 叶わない恋だけど…それでも叶えたいと思ってしまう自分がいて…… 貴方は他の人を好きで、そんな貴方が僕は好きで。 この先の見えないメビウスの輪の中で僕はさまよう。 愛しています。 |