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On the road [02]*

[date:2004/03/29]


 

家に帰って上着を脱いで一息ついてたら、突然震えだした携帯。いつもなら取るのもめんどくさくてシカトするところだけど。着信音が、違ってたから。
今日初めて、登録したばっかの着メロ。思い出したら、なんか頬が熱くなってきちゃって。携帯を手に取ったまま、数秒。大きく深呼吸して、ボタンを押す。


「もっ…もしもし?」
『…亀梨?オレ』
「誰?オレ、オレって名前の人知らないんだけど」
『…………………………じゃぁいい』


嫌味ったらしく言ってやったら、危うく電話を切られそうになって。


「え、ちょ、待ってよ!ゴメンナサイ、上田ってばっ!!」


わかってたよ、上田だって。だけど、やっぱ恥ずかしいって気持ちが上回っちゃって。冷たい言葉を掛けちゃうのは、好きだから。


『よろしい』


なんかオレ、弱いなぁ。上田にだけは、一生勝てないような気がしてきた。


「で、何?」
『んー、別に用はないんだけどさ』
「は?」


意味わかんないんですけど。だってさ、しゃべると疲れるとか言ってる人が、わざわざ用もなく電話なんかかけてきますか?この間まではメールばっかだったのに。


「なんか要あるんでしょ?」
『…別に』


あ、今上田、照れ笑いした。電話だから顔は見えないんだけど、なんかわかる気がして。フフッて笑ったら。


『何笑ってんだよ』
「ん?別にー?」


“可愛いからさ”なんて言ったら、怒るクセに。


『…………………明日』
「ん?」
『オレ、出かけようと思うんだけど』


何、その遠まわしな言い方。もうちょっとマシな誘い方ないワケ?って聞いてやろうと思ったけど、電話の向こうの上田の顔想像して、やめた。
絶対、これが精一杯だろうから。


「オレも、連れてってくれるんでしょ?」
『………』


自分も言葉選んで、誘いにOK返すと。無言で、肯定を表した。せめてそのくらいしゃべってくれてもいいじゃんって思ったけど、嬉しかったからいいや。


『で、どこ行く?』


って折角。喜んであげたのに。…何、イキナリ。


「そんなこといきなり言われてもですね」


行き先くらい、考えてから電話しませんか?普通。まぁ、そこはオレの行きたいところ最優先してくれたのかなってプラス思考で考えて。


「じゃぁ…遊園地」
『うん、わかった。じゃね』
「え、ちょ、まっ…上田!?」


それだけ言うと、さささっと電話切っちゃって。急に大人しくなった携帯放心状態で見つめること、数秒。また携帯が震えだして。上田?って思ったのも束の間、携帯のディスプレイには『聖』って映し出されてて。落ち着いて着メロ聞いてみても、やっぱ違った。


「…もしもし」
『もしもしカメ?オレオレ、聖!』
「わかったから…もうちょっと小さい声でしゃべろうよ」


さっきまで静かな上田と電話してたからか、聖の声がやけにうるさく感じて。


「で…何?」
『カメちゃん…相変わらず冷たいねぇ。まっ、いいや、今日言ってたことなんだけどさー…』
「あぁっ!!!」
『……?』


約束…してたんだ、聖と。なのにオレ、上田と約束しちゃったよ。
そんなこんなで焦っている俺を他所に、聖はワケわからないってふうに無言のままで。


「あー…あの、ね…?」
『ん?』
「ごめん!!!」


オレの言葉に、聖は再び黙って疑問符浮かべちゃって。


「えー…っと」


聖の性格からして、絶対怒るだろうから。順番に言葉選んでたら、何から話せばいいかわかんなくなっちゃって。


「約束…した」


自分でも、よくわかんないコト言っちゃってて。言った本人がわかっていないんだから、聖がわかるはずもなくて。


『…何?酔ってんの?』


…すいません、酔ってません。


「あのー…上田と、約束…しちゃったんですけど」


心の中でなぜか謝りながら言うと、聖は少し黙っちゃって。


『んー、別にいーよ』


いい、って。どうやってとらえるのが適切なの、今の場合。


『上田も一緒にいこっか』


それが正解で。うん、って返事したのはいいけど、なんにも計画の立てようがないんじゃない?またしても心の中で呟くだけ。


『じゃ、明日迎えに行くから。ちゃんと待ってろよ』
「え、ちょ、まっ……聖!!」


オレが返事しない間に、どんどん話は進んでいって。気がついたら、電話は切られてた。…これは、上田に連絡しないとまずい、よね。
そう思って、リダイヤルから上田の番号呼びだしてみる。一番上が聖の番号で、その下が上田。なんか、携帯のディスプレイに『上田 竜也』って表示されてるのを見るだけで、くすぐったくて。クスッて笑って、通話ボタンを押した。
耳に当ててみると、少しの間隔のあとに質素なコール音。…がするかと思いきや、耳に届いたのはプー・プーっていうあまり聞かない音で。


「通話中…?」


耳から携帯離して、独り言。なんか最近独り言が多くなったような気がするけど、まぁ、気のせいだろう。
次にまたリダイヤルを開いて上から二つ目。さっき上田にかけたから繰り下げられた、聖の番号。選択して、通話。


「…あれ」


またしても、通話中。これって、もしかして。上田と聖、電話してたりするのかな。
上田のことだから、聖と電話しててもあんましゃべんないだろうし。聖だったら、誰が相手でもテンション高そうだし。それになんか、今日、異常にずば抜けて高かったしね。大声の聖の声を片耳に受けてめんどくさそうにしてる上田の表情。そんな上田にキレてる聖。二人が電話してるシーンを勝手に想像して、笑みを漏らした。
…そういえば今日の電話、いつもよりも多く口を開けてくれたような気がするかも。
プラス思考に考えたら、帰りの上田の横顔思い出しちゃって。口元隠して、思い出し笑い。
笑ったままベッドに倒れこんで、脇に携帯を放り捨てた。だらしない口を直そうと、一回深く深呼吸して。重たくなってきた瞼をそっと下ろす。
そのまま、オレは眠りに落ちた―――













翌朝。
オレが起きたのは、午前7時ちょっと過ぎ。
オレだって、好きでこんな早い時間に起きたわけじゃなくて。寝ていられるほうが不思議、ってほどの雑音に、安らかな眠りを妨げられた。


「…こんな朝早くに、何…?」


窓から顔をのぞかせたら、玄関の前に一台の車が止まっていて。目を細めて中を覗いたら、どうやら乗員は三人。
聖と中丸。――そして、上田。
上田を見た瞬間、昨日の夜の電話の内容がパッと頭の中に飛び込んできて。慌ててイスにかけてあったコーと羽織って、外に出た。


「おいカメ!! 遅ぇぞ!! 早く着替えて来い!!」


朝っぱらだって言うのに、ハイテンション維持の聖。それ見て苦笑いしてる中丸。そして、眠そうに半眼になりつつも俺の存在だけは確認している…だろう、上田。


「早くしろっつってんだろ!!」
「わっ!!」


聖に背中押されて、家の中に叩き込まれる。親とか起きちゃわないかと思ったけど、家の中に入ったら寝息まで聞こえてきて。
フッと息をついて、自分の部屋に入った。慌てて服を引っ張りだしてきて、コーディネートを練っていく。…だって、ね。一部余分なのはいるものの、初デートなわけだし。ちょっとでもいいカッコして行きたいって、思うじゃん?
これでもない、あれでもないってやってたら、ベッドの上に投げ捨てられていた携帯が音を鳴らしながら震えて。


「は・や・く・し・ろ!!!」


ボタン押して耳に当てたら、大きな声が耳に突き刺さる。咄嗟に携帯耳から離して、刺さった方の右耳を抑えた。
しばらく耳擦ってたら、またコール音が鳴り響いて。今度は出ることもしないで、手元にあった服に身を包んだ。未だに呼び出し音が止まない携帯を鞄に突っ込んで、玄関へと走った。


「…ごめっ…」
「いいから、乗れって!!」


謝る隙も与えず、聖が親指で後部座席を指した。しゅんと肩を下ろしながら、後部座席に乗り込む。隣には、必死で目を開けてる上田がいて。咄嗟に出ちゃった笑いは、片手だけじゃ隠し切れなかったみたい。


「…亀梨、笑うな」


完全に開ききってない目で睨まれて、余計にお腹が痛くなる。
…っていうか、何で上田が聖たちといるワケ?昨日上田に誘われたって聖に言ったら、わかったって言われて…それを伝えようと上田に電話をかけたら、繋がらなかった。
なんか、繋がったような気がする。


「聖、なんで三人が一緒にいるの?」
「あー、カメが上田と約束したってっから上田も誘ってやった」


やっぱり。
そうだとしたら、全部つじつまが合うもんね。なんで面倒くさがり屋な上田がわざわざついてきたのかは…わかんないけど。





 ‥NexT‥

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あらら、またしても続いてしまった(-_-;)これもすべて、ムダに乙女なカメちゃんの語りの所為で…(苦) すいません、努力します(滝汗)

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