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On the road [01]*

[date:2004/03/07]


 

「好きな女の子のタイプは?」
「外国のコ」


…改めて思うのは。
オレ、何でこんな人選んじゃったんだろうっていう、後悔。
事あるごとに、外人、外人。百歩譲って妖精サン。
どこのどいつだよ。オレとだったら、外国人になれなくてもいいって言ってたのは。…バリバリ外人になりたいんじゃん。


「…はぁ」


バカ上田、って心の中で呟きながら、メンバーにばれないように座ったソファに隠して溜息を漏らした。…つもりだったけど。


「カーメちゃん♪なにため息なんてついてんの」


バレてたみたい。


「何、聖」


つくづく思いどうりにいかなくて、悪態ついて返事したら。


「カメちゃん、冷たい」


上田と同じような返事されて。なんかやけにムカついて、思いっきり睨んでやった。そしたら、聖はハイハイって言いながら頭を掻いて。


「まーま、ソフトにね」


そう言いながら、オレの隣に腰を下ろした。聖の重みでソファの重心が傾く。


「だから、何?」


座ったものの、なかなか口を開かない聖に改めて問うと。聖はオレを横目で見て、ため息をついた。


「…何が言いたいワケ?」


さすがにちょっとキれてきて。もう一度問い掛けると、聖はグルリとオレのほうに向き返った。


「カメにお願いあんだけど!!」


腰から上だけ土下座するような体制で、大声を張り上げてきて。


「は?は?はぁ!?」


キョドってるオレは完全シカトで、聖は頭下げ続けてて。


「聖、顔上げてよ。…視線が痛いんですけど」


その場に居合わせたメンバーは、なんだなんだ?って表情でこっちを見てる。…けど、その中に上田の目線はなくて。
聖は聖で、ごめんごめんってさっきと同じように頭を掻いた。
体制を直して座りなおしてから、聖は再び口を瞑っちゃって。変な沈黙が流れた。


「…で?お願いってなによ」


なんとなく、そんな雰囲気が嫌だったから。周りの視線が散ったのを見て、聖に聞くと。


「んー、明日さ、ヒマ?」


話が、イマイチ繋がらなくて。なんか繋がってるのかな、って考えてみるけど。


「…なんで?」
「いーから」


やっぱわかんなくて。少し時間をあけて問い直したら、答えを促される。


「だいじょーぶ、だけど…?」
「うっしゃ!」
「………?」
「田中くん、撮影はいりまーす」
「ういーっす。…じゃ、カメ、空けといてな!また電話するっ!」


とりあえず答えたら、ガッツポーズをとって。スタッフさんの言葉に返事をして置き言葉を残すと、足早にその場を去っていった。


「結局、なんだったワケ?」


ソファの上に立て膝をして聖の背中見送ったら、普段滅多に言わない独り言が自然に口から漏れてきてて。


「何の話してたの?」


後ろから聞こえてきた上田の声に、度肝を抜かれる。


「ぅ…わっ!」


慌てて自分のおなかの辺りまでしかなかった背もたれに縋ったら、運悪く、ツルって手が滑っちゃって。


「わっ…わわわっ!!」


声を上げながら前に倒れていったら、床に激突寸前で降下が止まって。首の少し下に廻された腕にしがみ付いて、必死に体勢を立て直す。


「亀梨って、どっかぬけてるよなぁ」


…アンタにだけは言われたくなかったけど。なんて思いながらも、チョットだけ感謝してみたり。


「…ぁりがと」


小さい声で言ってやったら、満足そうに微笑みやがった。クッソ、いちいちムカツク!!
ちょっと強く、睨んでみる。俺なりの抵抗なんだけど、上田は笑ったままで。…ホントにムカツクから、この辺でやめとこ。
あからさまに視線そらしてやったら、チョンチョンって肩をつついてきた。最初はシカトしてたけど、それがすっごいしつこくて。


「だーもー!! なんなんだよっ!」


振り向いた瞬間に、唇に何かあたって。またかって思った時には離れてた。


「うーえーだー…」
「だって亀梨の唇、甘いんだもん」


だからって、オレの唇は三時のおやつか!言ってやろうとしたけど、疲れるからまた止めて。思いっきり上田の事見て、ため息なんかついてやった。


「…もういーよ。勝手にして、バカ」


最後に一言付け足すのは、あくまで習慣。別に、嫌味なワケじゃないんだけど。明らかに拗ねたような表情をしている上田は、嫌いみたいで。


「バカじゃないから」
「…バカじゃん」
「違う」
「バカ」


くだらない言い合いが、この後五往復分くらい続いて。仕方なくオレが折れてやったら、満足そうに頷いて。
…からかいがいのあるヤツ。そんなんだからみんなからいいようにからかわれてるって、わかんないのかねー。
目線外して、ソファ越しにドア見つめて。溢れる笑みを上田に見えないようにした。


「やっぱバカじゃん」


小さな声で言った言葉。どうか、上田にだけは聞こえていませんように。
心の中で呟いて、口元を隠して笑った。













「カメー」
「なに?」


いつものように、撮影が終わると声をかけてくるのは仁で。


「今日、一緒に帰る?」
「んー、今日はいいや」
「了解」


これは言わば、社交辞令のようなものだから。お互いに断ったりしたとこで、悲しかったりすることはないし。寧ろ、最近では二人共違う人と返る為に断ることが多いくらい。


「お疲れー」


そう言って中丸と出て行った仁を手を振って見送る。いつの間に帰ったのか、楽屋を振り返ってみたら、聖と田口はいなくて。残っているのは、オレが座っていたソファで静かな寝息を立ててる上田と、オレだけ。
鞄を肩にかけたまま、そこまで歩み寄って。


「上田ー」


起きないことを百も承知で、名前を呼んでみる。予想はしていたものの、ピクリとも動いてくれないのは、さすがにショックで。


「うーえーだー」


もう一回名前を呼びながら、ほっぺたを突付いた。


「うわ、ほっぺ柔らかい」


マシュマロ顔負けって感じだね、うん。マシュマロのドコが顔なのかはわかんないけど、そんなカンジ。とにかく、白いし、柔らかい。…流石ナルシスト。お肌の手入れは欠かしません、って?まー、海大っ嫌いな男だしねー。そういうことだけは第一に考えてるんだよね。
笑いながらつんつん突付いてたら、上田がんーとか言いながら寝返りを打った。起きたかな、って思ったのも束の間、次の瞬間にはまた、規則正しい寝息が聞こえてきて。


「なんだよー…バカ」


上田が起きているときは禁句の言葉をふと口にしたら。ピクッて耳が微かに動いて。
…これって、もしかしなくても。


「起きろーバカ。バカバカバカ。大バカ。」
「うるさいっ!」
「あ、起きた」


拗ねたような表情しながら、ガバッて起き上がった。やっぱりね。くそぅ、コイツ、ずっと起きてやがったな。


「バカって言うな」


不機嫌丸出しな顔して、上田がオレを睨んだ。いつからおきてたのか知んないけど、何度か寝返りうってたのか、髪の毛が所々から飛び出してて。思わず笑っちゃったら、上田はなに?ってキョトンとした表情を見せる。


「なんでもない」
「……?」


クスクス笑いながら、手探りで上田の鞄探して。


「ほら、帰ろ?」


ポンって投げて、ドアに手をかけた。未だ疑問符消えない上田はとりあえずほかっておいて、先に外に出る。
後ろからタタタっと走ってきて俺の隣についた上田を見て、あれ?って首を傾げた。


「鏡、見ないの?」


頭上からピョコンと出てる髪の毛が、まだ直っていなくて。消えたはずの笑いが戻ってきて、尖った髪を撫でたら。


「あー、コレ?」


見えるわけないのに、目だけで上を見上げて。俺の手叩き下ろして俯いた。


「別にいいよ。…ま、亀梨だしね」


……えーっと。これは喜んでいい発言なワケ?いや、でも、俺なんかどうでもいいからーってこともあるし…


「とにかく帰りましょうか、未来の奥さん」


何を気取ってるのかは不明だけど、俺の前に跪く?カッコになって、手に下げてた鞄を取ってった。…あぁ、そっちの意味ね。よかった。


「はい」


安心して、満面の笑みを返しながら。上田の言葉に頷いて、差し出された手に右手を絡めた。


















「…そう言えばさー」


暗い家路の途中の静寂が、やけに重くて。普段あんま使わずに生活している頭をフル回転で始動させて、何かしゃべることはないか話題を探した…んだけど。


「俺たちが一緒に帰るのって、初めてじゃない?」
「うん、多分」


…ううっわ。反応かなり薄いですよ、この人。ガクト気取ってるのかなんだか知らないけどさ、無口すぎでしょ。今の、オレが脳みそ振り絞って考えたセリフだったのに。


「上田って、何でそんなにしゃべんないワケ?」


何とか会話を成り立たせようと、無理やりに聞いたら。


「…疲れるし」


終了。
一言ですか、上田サン。って言うかですね、ちょっとくらいの会話なら、よっぽどのことがない限り疲れることはないと思うんですけど。…まぁ、仁とか聖とかとしゃべってれば疲れるのはわからないこともないけど。
それは、思うだけにして。口に出さなかったら、またしても沈黙が戻ってきて。しゃべったら疲れる人と会話を成り立たせようとしたオレがバカだった。
話題を考えるのはもう諦めて、ちょっと前を歩く上田のうしろ姿を見てみる。でも、表情は見えないからちょっと左に移動して。斜め後ろからのアングルで見た、上田の横顔。
きれいな金髪が白い肌に映えてて、みんなが言うようにやっぱ可愛いかも。髪の毛も、見る限りサラサラしてる。どんなシャンプー使ってるのかな、とか。やっぱ毎日お手入れ欠かさないのかな、とか。思ってるコト挙げる度に、自分が乙女っぽく見えてきて。ひとりで頬赤くして、上田から目を逸らした。
うわー、ヤバイ。また顔火照ってきちゃったよ…。恥ずかしくて、顔から火が吹き出そう。


「…亀梨?」
「ぇ…はいっ!!」


いきなり後ろ向いてた上田に気付いて慌てて冷静気取ったつもりだったけど。自分でも分かるくらいに逆に不自然になっちゃって。慌てて顔そらしたら。


「ちょっ…危なっ…」
「わっ……」


つま先にあたった何かに躓いて、重心が前に傾く。途端にバランス崩して、成す術もなくそのまま前に倒れてった…と思ったけど。


「今日何回目?」


呆れたような言葉発しながらも、その腕はしっかりオレを抱き留めててくれてて。
こういうとき。やっぱカッコいいんだって異常に意識しちゃって、目が合わせらんない。


「あ…りがと」


顔を逸らしながらお礼を言うなんて、失礼極まりないって自分でも思ったけど。やっぱ、恥ずかしくて。…いいでしょ?未来の旦那様なんだし。
心の中で言い訳並べて、身体を離した。
そのあとは、話すことなんてもちろん、上田の事見ることも出来なくて。


「…じゃぁ、オレ、こっちだから」
「ん」


微妙な空気が流れたまま、気がつけば分かれ道。“恥ずかしい”なんて思いながらも、“明日会いたい”って思っちゃうのは、矛盾してるのかな。
なんだかんだ言って、結局は別れるのが辛いし。名残惜しむこともなく言われてしまうと淋しくて。でも、そんなこと上田には気付かれたくなかったから。


「…ばい、バイ」


下向いて、手だけは上向けて振った。


「――…亀梨」
「え……っ」


名前呼ばれて、上向いて数秒。唇が重なった後、上田が目を合わせた。未だにドキドキしちゃうのは、片思いのときの名残かな。…まぁ、このドキドキが好きだったりするんだけどね。
なんでか、今までの心のもやもやも、一気に晴れていっちゃう。こんなの、女の子みたいで嫌なんだけど、嬉しいものは嬉しくて。


「Bye」


最後も英語を言い放って、上田はくるりと背を向けた。歩き出しちゃっても、金髪の後ろ姿から目を離せなくて。上田が見えなくなるまで背中見送って、数分後に俺も踵を返した。


 ‥NexT‥

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二回目に挑戦、上カメ☆今度こそは上田さんが仁サマになんないように気をつけつつ…頑張ります。(汗)感想とか頂けたら泣いて喜びますーvV(笑)

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