*オレだけの。*
2004年、1月某日――
今日も、俺とアイツの激しい戦いが始まる。
「ギリギリセーフッ!!」
「…じゃねぇよ」
慌てて楽屋に飛び込んだ俺に、聖の厳しい判決が下される。
「えぇ、ウソ!?」
「約17分の遅刻だね」
慌てて時計を覗き込む俺に、雑誌に目を落としていた田口が言った。
「カメェ〜」
楽屋の奥のほうから、甘ったるい声がする。
それはまさしく、わがライバル・赤西仁の声。
「ちょっ、仁、離れてってばぁ」
続いて聞こえてきたのは、愛しい愛しい…
「カメッ!!」
「あっ、中丸っ」
恋人・亀梨和也の声。
荷物をおくのも忘れて、声のするほうに全力疾走。
ゴトン、と音を立てて、持ったままだった荷物が床に落ちた。
「あーかーにーしー…」
そこには、あたりまえのようにカメを抱きかかえている赤西の姿があって。
「カメに手ぇ出すなっつってんだろっ!!」
カメの手を引っ張って赤西から離れさせる。
そして、自分の後ろに隠した。
「んだよカツラっ!! 邪魔すんじゃねーよっ」
「邪魔すんなじゃねー!! カメに触んなっつってんだろ! てか、邪魔なのはお前だ!!」
「折角イイトコロだったのに。ねー、カメ?」
「ぇ、ぁ、」
「人の話を聞けー! カメに話流すんじゃねー!!」
「てめぇら、朝っぱらからうるせぇんだよ!」
こんな言い合いをするのも、毎回のこと。
そして今回も、聖の怒声によって終止符を打たれた。
「カメ、マジあいつにだけは近寄んなよ?」
「うん♪」
満面の笑みで返事を返すカメ。
あー、朝から癒されるねぇ。
なんて親父臭いことを考えていたら。
「田中の二人、撮影入ってー」
スタッフさんからお呼びがかかった。
ゲッ…俺、朝一っすか?
今出てったら、カメの危険は絶対的。
「えー、上田、撮影変わってよ」
「はぁ!? 何で俺がっ…」
「おらぁっ! 中丸、諦めてとっとと来いっ!」
「ちょっ、そんなぁー…」
「あっ、中丸」
嘆いてる俺に、ちょこちょこと近づいてくるカメ。
えっ、何事?
「え、カメ、何?」
「……」
近寄ってきたはいいものの、カメは俯いたまま口を開こうとしない。
「ぁっ…早く帰ってきてね!!」
いきなり顔を上げて早々といい終えると、顔を赤くして楽屋の隅に走っていった。
それを見た赤西が、ニヤニヤしながらカメに歩み寄っていく。
俺はというと、止めに行くこともできず、口をアホみたいに開けるだけ。
「おーい、中丸ー。帰ってこーい」
目の前で振られた聖の手に気づいて我に返ると、またまたカメにちょっかい出してる赤西が目に入って。
「ばっ、バカ西ー! カメから離れろ! 今すぐその場から離れろ!!」
一心不乱に叫びながら走っていく。
「中丸ウルサイ。俺とカメはお取り込み中なの。早く撮影行けば?」
「お前は地獄へ行けぇっ!!」
「しつこいっ!! 早く行くぞ、中丸!」
またしてもけんかが始まりそうな雰囲気を察して、聖が俺の腕を引っ張った。
「カメー! 赤西にだけは近寄んなー」
引きずられながらそれだけ伝えて、楽屋を後にした。
「中丸」
突然声を掛けられて左に視線をやると、あからさまに呆れてるような表情をした聖がいて。
「何ぃ〜?」
緩んだ顔で横を向くと、聖がため息をついて顔をそらした。
「…これから撮影。緩んだ顔直せ」
「え、ぁ、うん」
一応軽い返事をして、足を速めた。
「中丸君、笑顔いいねー。ちょっと横向いてくれる?」
ほらっ、誉められたじゃん。
そんなこと思いながら、カメラマンさんの指示に従って横を向いた…ってえぇっ!?
俺の視線の先で、満面の笑みを浮かべながらピースをするのは…カメ。
「カメッ!?」
取りあえずパパパッと撮影を終わらせて、カメに駆け寄った。
「どどどっ…どーしたの??」
なんかキョドっちゃってて、うまく呂律が廻ってないような気がするけど…そこはあえて気にしない方向で!
「…別に、用はないんだけど…。雄ちゃんが仁に近づくなって言ってたし、ほかのみんな撮影行っちゃったし、暇だったから…。あっ、雄ちゃんトコ行こう、って‥」
‥今更、だけど。
やっぱ可愛いんだよね、このコ。
それにしても赤西、カメが出て行ったのに気付かなかったのか?
じゃなきゃ、赤西がカメから離れるわけないし。
「カメ、赤西は?」
「俺が出てくる前に、撮影入ってった」
そういうことですか。
うん、納得。
「じゃ、カメ、行こっか」
「え?どこっ…わわわっ」
軽い軽いカメちゃんを肩に担いで、いざ、赤西のもとへ。
「赤西クン、ちょっと視線ずらしてみて」
「へーい」
その頃、赤西は忠実にカメラマンの指示に従って撮影を進めていた。
と。次の瞬間、目に飛び込んだのは。
「カメッ!?」
中丸と一緒のリアクションではあるものの、表情には大きな違いが見られた。
赤西の目に入ったのは、まるで見せ付けるかのように絶好のポジションでラブシーンをしている中丸と亀梨。
中丸は口パクで“ザマーミロ”と舌を出して、再び亀梨と共に赤西のもとを後にした。
「あー、楽しかったぁ!!」
二人で楽屋に戻って、ご満悦な俺。
いつも邪魔してくる赤西には見せつけることができたし、楽屋には二人っきりだし、言うことなし。
最高。
「ねぇ、雄ちゃん…?」
まさに幸せの絶頂に浸かっていたら、カメが服の袖口を引っ張ってきた。
「…カメ?」
名前を読んだら、更に強く袖口を引っ張られたから、少し姿勢を低くして。
「カメ?」
もう一度名前を呼んだら、唇に暖かい感触。
「え、‥カメ?」
「ずっと、俺を好きでいてね」
俺の前でだけ見せる、積極的な態度と吸い込まれるような笑みを浮かべて、そう述べた。
「そんなのっ…」
もちろん! …と言おうとしたところで。
「なーかーまーるー!!」
とんだ邪魔が入って、言えなかったけど。
もちろん、君はずっと俺のもの。
永遠に、好きでいてやるから。
赤西と俺のバトルは、これからもしばらく続きそうだけど。
*END*
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これまた[愛の鎖]からの移動モノです。これもリクで書いたものなのですが…何が書きたかったのか。これ書いたとき、酔ってたんですかねぇ?(未成年)とりあえず、感想など頂けたら嬉しいですι