あるところにお城がありました。
そこに住んでいる女王ライト様は、それはそれは美しい人でした。
容姿端麗、眉目秀麗、明眸皓歯、・・・見目麗しいことを表現する四字熟語は多々あります。
とにかく、女王ライト様は外見だけは文句のつけようがないほど、美人だったのです。
でもそれ以外に褒められるところがひとつもありません。
趣味はださくて、素敵なお城の内装はとってもダサいです。
そして性格も女王様らしく、偉そうでいばりんぼでわがままで冷酷非情で自分勝手でした。
自分に逆らう人や気に入らない人は全て心臓麻痺で殺してしまいます。
そう、ライト様はデスノートを操る恐ろしい魔女(?)でもあったのです。
だから、だれもライト様に逆らわず、おとなしく暮らしていました。
機嫌をそこねて殺されるのはいやだからです。
ライト様は、毎日鏡を見ては「僕は美しい」と笑っています。
いつも後ろにいる死神のリュークにも「僕はきれいだろう?」と一日に何度も聞きます。
リュークは内心「けっ!」と思っていますが、口には出しません。
前にライト様の機嫌をそこねる発言をしたら、1ヶ月もりんごを食べさせてもらえなかったのです。
身体をひねって逆立ちをして、禁断症状の限界まで我慢させられました。
とても大変だったので、リュークはりんごの為にライト様にはおとなしく仕えています。
でも、いつか自分のデスノートにライト様の名前を書くつもりでいます。
それがいつになるかはわかりません。
ライト様の側にいると「面白っ!」と思うことがたくさんあるからです。
ある日女王様を食べたいといってやってきた命知らずの人がいました。
その人はLといいました。
世界中で噂になっている、すごい人のようです。
Lは黒い目の下にくまのはった疲れた顔をした人でした。
ライト様はとても退屈だったので、条件をだしました。
「僕に触れたいのなら、まずシャワーを浴びて、湯船に10分つかっておいで」
Lは用意されたバスルームでシャワーを浴び、湯船に入りました。
普段から湯船につかる習慣のないLは、10分もつかっていたら全身真っ赤のゆでだこになってしまいました。
真っ赤なゆでだこになったLがライト様の部屋に入ると、ライト様はストライプのひらひらしたベッドの上でくつろいでいました。
「まず、僕の手の甲にキスをするんだ」
Lは言われるままにライト様の手にキスをしました。
その途端、ライト様はみるみる不機嫌になりました。
ライト様は噂に聞いていたLに、屈辱を味あわせてやろうと思っていたのです。
ところが、Lは黙って自分の言うことにしたがってしまいました。
それではほかの者たちとちっとも変わりがなく、ライト様は楽しくもなんともありません。
「なんだよ、おまえは!やっぱり気が変わった。出て行ってくれないか」
Lはどうしてライト様が不機嫌になったかわかりません。
オロオロしながら、なんとか機嫌を直してもらおうと考えます。
「ライトくん、ケーキたべますか?」
自分の持ってきたイチゴのショートケーキを差し出します。
Lは極度の甘党でチョコレートやケーキや羊羹しか持っていませんでした。
「冗談はよしてくれ。甘いものは好きじゃないんだ」
可愛そうなLはゆでだこのまま、お城の外に放り出されてしまいました。
それでもライト様のご機嫌は直りません。
世界中の犯罪者を100人心臓麻痺で殺したのに、まだだめです。
「ライト、どうしたんだ?」
後ろにいたリュークもなかなかりんごがもらえず、腕がぐるぐるになりはじめました。
「うるさい」
ライト様は自分が思うままにお城の内装を変えていきます。
お城の中はどんどんださださになっていきます。
ライト様のダサさを止めるものは誰もいません。
数日後、リュークをたずねて死神のレムがやってきました。
ライト様のご機嫌はどうやら直ったみたいです。
りんごをもらってひねった身体を元に戻したリュークは、レムをライト様に紹介します。
「ライト、ライト。俺と同じ死神のレムが遊びに来たんだ」
「ふーん?」
ライト様はあまり興味がないようです。
レムはお城の中をぐるりと見回します。
「この内装はわざとなのかい?」
あまりの爆弾発言にリュークが固まります。
「ああ、僕の趣味だ」
ライト様は得意そうに答えます。
「お前、自分がどれだけダサいかわかってんのかい?」
それはそれは大きな爆弾でした。
「ら、ライトの趣味はさいこーだぞ!」
リュークが慌ててフォローに入ります。
これでライト様が不機嫌になったら、またりんごがもらえなくなってしまうからです。
心の中ではレムに向かって拍手を送っていました。
けれど、ライト様は怒るどころか、その場に崩れるように膝をついてしまいました。
レムの言葉に傷ついたようです。
「僕が、ダサい・・・?」
それは初めての衝撃でした。
なぜなら、今まで誰もそれを指摘した者がいなかったからです。
ふるふると肩を震わせるライト様に駆け寄る者がいました。
Lです。
いつのまにお城に戻っていたのでしょうか?
深く追求してはいけません。
Lはライト様の肩を抱き、こう言います。
「大丈夫です。ライトくんはダサくなんかありません・・・」
Lの言葉は真実でした。
それはLがライト様の趣味の悪さに興味がないので、ライト様がどれだけダサいのかわからなかったからです。
もちろん、そんなことはライト様が知るわけもありません。
「L・・・」
(やっぱり僕の事をわかってくれるのは、Lだけだ)
ライト様とLはしっかりと抱き合いました。
世界を震撼させる最恐のコンビが誕生した瞬間です。
二人はケンカしながらも末永く一緒に暮らしました。
めでたし、めでたし?
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