捕獲

 
     
     
 



本当に捕らわれているのはどちらなのだろうか?

貴方の瞳が嫌いだと塞がれた。
貴方が暴れるからと両手首を縛られた。

「それで、僕をどうするつもりだ」

隠された目で睨んでも効果はない。
身動き取れないことが苦痛だった。

「べつに何も。貴方はただそこにいればいいんです」

繋がれたのは、ベッドの上。

「私がどれだけ貴方を求めていたかわかりますか?」

Lはベッドから離れた位置にいるらしい。
耳に届く声が少し遠い。

「わかるわけないだろう」

そんなことを言われたことはなかった。
一度も。

「ずっと見ていました。貴方の何もかも」

何もかも見ることなど、できなかったはずだよ。
僕は、完璧に隠し通したから。
その証拠にお前はまだ僕をキラと断定できずにいる。

「その誰もを魅了する美貌で、神までもを誘惑するつもりですか?」

それはどうかな。
神の一種である死神は、僕の容姿には興味はないみたいだからね。

頭上で笑い声がする。
目隠しをされている今は見えないけれど、常に死神は僕の側にいるのだ。

「誘惑されたいのかい」

どうせ、自らの力ではもう何もできない。
視力を奪われ、両手の自由を奪われては、今の僕は常人以下だ。

それでもかまわないさ。
お前の道楽に付き合ってやるくらいの余裕はあるよ。

「してみますか?」

Lが近付いてくる。
ベッドが軋む音がすると、耳元に吐息が聞こえた。
寝転がる僕に覆いかぶさるように、Lが圧し掛かる。

「この状態じゃ無理だね」

誘惑してみるのも一興か?

口唇を塞がれた。
二度三度触れるだけの口付けを繰り返す。
息を漏らした隙を突いて侵入してきたLの舌が絡みつく。

ほら、キスしただけでわかるだろう?

お前は僕が好きなんだ。

「ん・・・っ」

さすがに息苦しくなって声とも喘ぎともつかない音がこぼれると、Lが口唇を放す。

口唇の端を液体が流れていく感覚がする。
それをLの指が拭った。

これで捕らえたとは思わない。

お前がいつでも僕の首を切り裂くつもりで、鋭いナイフを心に秘めていることくらい、気がついているよ。

「どうして貴方は夜神月だったのでしょうか」

頬に触れる手が震えている。

「僕が夜神月でなければ出会えなかったよ」

僕らの出会いは、Lの知らない一冊のノートがきっかけだ。
きっと一生そのことを僕以外の誰かが知ることはない。

「出会いたくなかった」

その呟きは、本音か?

「本当に?」

お前に出会えた事で、僕はこんなにも充実した毎日を送ることができているのに。
この状況を楽しまないなんて、もったいないじゃないか。

「出会わなければ、こんな気持ちになることはなかったんです」

もう一度、口付けを交わし、Lは僕から離れた。

「どんな気持ち?」

「それは秘密です」

それにしても。
僕はいつになったらこの状態から解放されるのだろう。


捕らえたのは、捕らわれたのは、どちらが先だった?








終わり






 
 

2004/7/17

 
     
  フィエスタというL月オンリーの投稿小説サイトに投稿したものです。  
  今読むと恥ずかしいですね(笑)  
     
     
     
     
     
     
     
     

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