幻の華 | ||
初めて出会った時の印象が忘れられない。 以前、夜神局長の家へ松田が呼ばれた時のことだ。 自分の部下だと家族に紹介された、そこに月は居た。 優しげな笑顔と尊敬を滲ませた眼差し。 「僕も将来刑事になるつもりなんです」 そう言った彼が瞼に焼きついた。 淡い茶色の髪に色白の肌は、まだ幼さは残ってはいるものの、月の端麗な容姿を際立たせていた。 上司の息子。 松田はそう思い込むのに必死だった。 印象的な出会いから、どれくらい時が経ったのだろうか。 夜神月は松田の目の前に現れた。 「月くん、お待ちしてました」 捜査本部に初めてやってきた彼を迎えに出たのは、松田だった。 以前会った時よりも幾分か大人びてはいたが、人目を惹く外見はますます鮮やかに華開いたようだ。 松田は一瞬、息を呑んだ。 それと同時に芽生えた感情は、じわじわと松田を侵食していくことになる。 松田が捜査本部のひとつであるホテルの一室に戻ると、誰もいなかった。 室内を見回すとソファからはみ出した足が見える。 ゆっくりと近付くと、そこには月が眠っていた。 どうやら、月を残して他の人員は、別のホテルにある捜査本部へ行ったらしい。 珍しい月の寝顔に数分見惚れていた松田は、正気に戻ると慌てて寝室からブランケットを持ってきた。 それを月に掛けようとした途端、月が目を開いた。 「あ、松井さん」 「ら、月くん、こんなところで寝ていると風邪をひくよ」 松田はちょっと残念そうに、ブランケットを畳む。 「すいません、うっかりしてしまって・・・」 寝起きのせいか、いつもの鋭い光は瞳になく、初めて会った時のように穏やかな笑顔を浮かべた。 「い、いや。月くんは大学に行ってここにも来て、きっと疲れているんだよ」 自分の心臓が高鳴るのを気にして、松田は月から目を逸らす。 「そんな。僕より松井さんを初めとする皆さんの方が大変なのに」 月は起き上がると、大きく伸びをした。 「松井さん、コーヒー飲みますか?」 そう言って、月は返事を聞かぬままコーヒーメーカーの置かれたテーブルに向かう。 慣れた手つきでフィルターをセットし、挽いた豆を多めに入れた。 無防備に自分に背中を向ける月に、松田はその衝動を抑えることができなかった。 「月くんっ」 背後から抱き締めると、月は驚いたようにその動きを止めた。 「ま、松井さん?」 首筋に口唇を押し当て、吸い付くと月が肩を震わせた。 月を抱き締めた腕を腰から上へと移動させ、指先で胸をまさぐるように撫でる。 「なにを、するんですか」 月は松田の突然な行動にどう対処していいのか迷っているようだった。 胸の突起を刺激すると、びくりと反応した。 (もう、どうなってもいい) 松田は月のファスナーを下ろすと、無理矢理手を差し入れ、直接それを握った。 「っ、あ・・・、や、め」 月の手が静止するのも聞かず、松田は擦るように指を動かした。 それは松田の指の刺激で徐々に反応するように、硬く身を起こしていく。 松田自身も自分の硬くなったそれを月の臀部へ押し付けるように腰を揺らす。 「やめて、くださ・・・」 月の呼吸が乱れ始め、自力で立てなくなったのかテーブルに両手をついて体を支えている。 松田の手によって硬くのぼりつめさせられたそれは、指先に力を入れるとあっけなく果てた。 その開放感からか、月の体から力が抜ける。 「どうし・・・」 松田は月のベルトをはずし、下着ごとズボンを引き下ろした。 月の声など耳に届いていないとでも言うように、松田は月の精液で濡れた指を後部の秘部へ挿入する。 「んんっ・・・」 何の前触れも無く、侵入してきた指を月は受け入れられず、入口に力が入る。 「だめだよ、力を抜いて」 松田はあいているほうの手で、先程果てたばかりのそれを扱いた。 前からの刺激に、月の腰が揺れる。 瞬間、松田の指はなんなく奥まで挿し込まれた。 熱い粘膜は松田の指に絡みつき、波打った。 松田は指先で内壁を擦るように動かすと、月があられもない声をあげる。 「あっああ・・・んっ」 その声に誘われるように、松田は同じ場所を強弱をつけながら弄った。 「あっ、やぁ・・・ん、は・・・ぁっ」 刺激に答えるように、月は腰を動かし嬌声を漏らす。 自分が何をされているのか、月にはもう判断できていないようだった。 ただ、下半身から全身へと伝わる快楽に震えている。 松田もまた、月の声に誘われるまま、自分の欲求を満たすべく、その体に触れた。 指を抜くと柔らかくひくつく入口に、勃ちあがった自分のものを一気に突き刺した。 「いっ・・・っ、うぁぁっ・・・」 悲鳴とも呻き声とも付かない声をあげ、月が体勢を崩した。 松田は月のものを前後に扱きながら、自分の腰を激しく動かした。 本能に導かれるまま、松田は自分の欲望だけを追い求めるように、ただ月を犯し続ける。 結合部から漏れる粘液と精液がぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てた。 「あ、あ、ああ・・・んっ・・・」 苦痛と快楽に溺れるように、月は松田の動きに合わせて啼いた。 月の先端から流れる液体が松田の指を濡らす。 自分を奥の奥まで飲み込んだ熱い月の中で、松田もまたその快楽に酔いしれていた。 耳に届く乱れた呼吸と厭らしい声は、今だけの自分のものだ。 もっと泣かせたい。 もっと求められたい。 月の全てを自分のものにしたい。 「あっぁ・・・ふ・・・ぁっ・・・」 「月くん」 その名を呼ぶ。 初めて見たときから、自分はこうしたかったのか。 「月くん」 耳元で囁くと、嫌がるように首を振った。 「あぁ・・・も、・・・やぁ・・・」 哀願するように、月が松田の手に触れる。 松田は先にいかせないようにと、その先端を指で塞いでいたのだ。 限界に近付いていたのは、松田も同じだった。 「・・・っ」 月の中に、松田は己の欲望を解き放つ。 また、同時に月の拘束も解かれ、解放される。 松田が己を抜き取ると、月から白濁した液体がだらだらと流れでた。 このきれいな体を自分が汚したのかと思うと、えもいわれぬ快感が背中を走る。 月は最後に意識を飛ばしてしまったのか、テーブルにもたれるように崩れ落ちた。 松田は慌ててその体を支え、抱き起こす。 月は目を閉じていた。 ゆっくりとその体を抱き締めて、松田はキスをした。 瞳から涙がこぼれる。 穢されてもなお、彼は美しいままだ。 心のどこかで、月は永遠に手に入らない人だと理解していた。 終 |
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2004/07/21 |
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月受激エロフェスティバル用投稿作品。 他の参加者の皆さんが、あまりにもL月ばかりだったので、 こんな機会でもなきゃ書かないと断言できる松月を書いてみたのでした。 なんか、中途半端なえろで不完全燃焼。 |
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