鈴の音

 
     
 


拾い上げた鈴がちりん、と鳴った。

「どうしました?」

立ち止まった月にLが不思議そうな声を出す。

「拾った」

手のひらに在るのは、銀色の小さな鈴。
転がるたびに、ちりん、ちりんと鳴った。

「鈴、ですね」

Lが月の手のひらを覗き込んで、見たままを答える。

「鈴、だね」

月は、その小さな鈴を握り締めて、上着のポケットに入れた。
歩き出すと、微かにちりん、ちりんと音が聞こえた。

「夜神くんは、これから何をするつもりですか?」

Lの曖昧な問いかけに、月は再び立ち止まる。

「なにを?」

聞き返すように問いかける。

(なにをしたいのかなんて、考える余地もない)

月の中で答えは決まっているが、それをLに答えるわけにはいかない。
そんなことができるのなら、世の中はこんなに複雑でつまらないことにはならないだろう。

「僕がなにかをするように見えるのか?」
「そうですね。夜神くんは何かをしたいのではなく、すでに何かをすることを決めているように見えます」

隠している心内を簡単に見破る洞察力には感心するが、それを隠し通すことこそ、真価を発揮できるというものだ。

「僕がしたいことは、キラを捕まえることだよ」

もし、キラが他に存在するならば、月は迷わずキラを確保するために、純粋に父親と警察に協力していただろう。
そう、今となんら変わりがない。

(だから、僕は僕を守ることができる)

目の前の世界一優秀な探偵が月を疑っていたとしても。
証拠もなしに月を裁くことはできない。
それは、誰よりも月自身が一番良く知っていた。

「変わりませんね」
「なにが?」
「最初から、夜神くんはそればかりです」
「それは、竜崎も同じだろ?」
「・・・」

あからさまに不満を露にしたLが、無言で歩き出した。
仕方なく月もその後ろを付いて歩く。

「夜神くん」
「なに?」
「世の中は思い通りにならないから、面白いのですよ」

ちりん、ちりんと、鈴が鳴った。
拾ったそれが鳴らすのは、警鐘か祝鐘か。

「それはその通りだ」

月は、微笑う。

(思い通りにならなくて、つまらないのは、お前のほうだろう?)

Lの後姿を眺め、月は鈴を鳴らした。
ちりん、ちりんと響く音。
それは、祝砲か弔砲か。

「気に入ったようですね」
「ああ、きれいな音がするだろう?」
「私には、耳障りです」
「心が狭いな、竜崎は」
「どうしてそんなに楽しそうなのですか」
「そんな風に見えるのか?」
「そうですね。見えます」

まっすぐと月を捉えた双眸が、心の仲間で見透かすようにゆらめいた。
惑わされぬように、月は微笑う。

「ケーキ、買って帰ろうか?そうすれば竜崎も楽しくなるんじゃないか?」
「・・・、まあ、悪くはない提案ですね」

帰り道、少し遠回りをして寄り道をした。

ちりん、ちりんと鳴る鈴とともに。





 
 

2005/11/22

 
     
 

相変わらず、何を書きたいのかわかりません。
でもLと月が会話をしている時が一番面白いと思います。

 
     
   
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     

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