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夢々 |
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口付ける夢を見た。 普段、深い眠りだからか、浅い眠りすぎるのか、夢など見ることがない。 けれど、それは、非常に現実的な夢だった。 感触と温度、表情。 触れただけの軽いキスだというのに、彼は泣きそうな表情をした。 何故? 離れた瞬間、引き寄せて問質したかったが、身体が動かなかった。 まるで百貨店のショウウィンドウに飾られたマネキン人形のように。 指の先さえも動かなかったのだ。 驚いて、目が覚めた。 「ゆ・・・め?」 あまりにも境界の無い感覚に思わず辺りを見回していた。 手首から金属音が響く。 欲求不満なのか、それとも何かの予兆なのか。 繋がれた手錠。 その先には、背を向けた姿勢の月が、規則正しい寝息を立てている。 (一体、何をどうしたいのか) 湧き水のように止め処なく溢れる予測、想像、想定、推理、仮定、仮想、予想・・・。 その全てに惑わされ続けている。 早く。 急いで。 立ち止まらずに。 時間ばかりが過ぎていく事を恐れているのは、自分だけではないはずだ。 前へ。 一歩も進まない焦燥感を握り締め、ゆっくりと消し去った。 焦るだけでは、敵の(キラの)筋書きにはまってしまうだろう。 それは、面白くないではないか。 眠る月に口付けをした。 触れるだけの軽いキス。 きっと、夢は見ない。 進むべき先は、夢ではなく現実であり、正義なのだから。 終 |
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2005/08/24 |
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えーと。しばらくぶりの新作は、いつもどおりになりました。 |
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