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鬼ごっこ |
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触れた先から消えていく。 それは、幻。 夜半から降り始めた雨は時が経つにつれ激しさを増し、窓ガラスを打ちつけ続けている。 ばらばらと、がたがたと、やまない音はどんどん大きくなっていく。 まるで・・・。 光るモニターの前で、小さくかぶりを振った。 追いついたと思うと、するりと遠くまで行ってしまう。 追いかけっこは、均等した力でするべきものであり、差があってはならないのだ。 初めは、正体が不明であるが為に、その力の差さえ計り知れなかった。 しかし、今は違う。 追いかけて追い詰めて時には尊い犠牲を出した上で、手に入れた全てのものを分析し、解析したのだ。 力の差は、僅かであると、現時点では判断している。 けれど、『キラ』(仮名)に、どれ程の価値があるのか、わからない。 それは、『L』(仮名)に、どれ程の価値があるのか、わからないと同等である。 力の差は、僅かだ。 だからこそ。 近づいたと思った矢先に、するりと逃げられてしまう。 追い詰めると逃げられ、油断すると姿を現す。 幻よりも性質が悪いのは、相手が『存在する』ということだ。 幻なら害はない。 こちらが触れられないのなら、むこうからも触ることなど出来ないのだ。 こちらが触れられないというのに、むこうは堂々と触れてくる。 鬼ごっこのつもりなのか? 稲光が空を割り、地響きをもたらすと、突然窓の外が暗闇に包まれた。 送電線に落雷したのだろうか。 都会に生まれた、珍しい闇の世界が眼下に広がる。 再び、暗闇に包まれた街を横切るように、稲妻が走った。 轟き渡る雷鳴に、窓ガラスが震えた。 どちらが、鬼か? どちらが、悪か? 逃げるのは、 追い詰めるのは、 捕らえられるのは、 捕らわれるのは、 正義とは、 それこそが触れることの出来ない、幻なのかもしれない。 終 |
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2005/06/28 |
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Lを書きたいな〜とぼけ〜っと思っていたら、 |
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