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落滴 |
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ぽたり、ぽたり。 滴が床に落ちていく。 ぽたり、ぽたり。 それは、何色? がつん、と何かの衝撃を受けて目を覚ました。 ベッドの上であることは間違いがなかったが、目に映るのは天井ではなかった。 月はゆっくりと呼吸を繰り返し、状況を素早く把握する。 「なんのつもりだ?」 自分の上にのしかかる奴を睨み、その肩に腕を伸ばした。 「何、とは?」 Lは月の質問に首を傾げ、肩に触れた手を力ずくで引き離す。 「わからなければいいよ。Lはその程度だと僕が納得するから」 がしゃん、と硝子の割れる音が耳を貫いた。 サイドテーブルの上にあった花瓶が倒れ、砕けている。 割れた破片で傷つけたのか、Lの指先に血が滲む。 花瓶に飾られていた花は散らばり、水が床へと零れ落ちていく。 ぽたり、ぽたり。 透明な水が。 どんどんと、床を赤く染めていく。 違う。 赤い床が濡れていくだけだ。 「素直じゃないですね」 「素直になれるか」 一方的な口付けに挑まれ、両手を拘束される。 隙を突いて口唇に噛み付いた。 口の中に鉄錆の味が広がる。 「私は夜神くんが好きです」 Lが自分の口唇から流れる血を舐めた。 Lはいつもそれだけを口にする。 理由は決して言わない。 ただ呪文のように、繰り返す。 理由を訊くことはないけれど。 無言で訴えかけてみる。 「どうして僕が好きなの?」 ぽたり、ぽたり。 水滴は床を濡らす。 ぽたり、ぽたり。 零れ落ちているのは、何? 「この目に映るものが私だけならいいのに」 表情のない瞳で。 感情のない口調で。 心のない表情で。 Lは逃げる月を射止めようとする。 追い詰められたとき。 月は躊躇いなく刃を向ける。 「僕が欲しいのはお前(の命)だけだ」 Lがこの世に存在しなければ。 もっと簡単だった。 もっと退屈だった。 「あなたになら殺されてもいいと思うときがあります」 対峙したLは、信じられないことを言う。 嘘ばかりを吐き出す奴を信じることなどできない。 月は首を横に振る。 「信じない」 「あなたを殺したいと思うときがあります」 Lは口付けを繰り返す。 それがあまりにも優しくて、月は何も言えなくなった。 「私はそれが怖い」 月の首に両手を絡め、Lは目を閉じた。 「夜神くんをこの手で殺すことなどできないのに」 ぽたり、ぽたり。 零れるのは・・・? ぽたり、ぽたり。 ぽたり・・・。 終 |
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2004/09/14 |
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記念すべき20本目がこれですか・・・? |
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