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殺意 |
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自分と対等に渡り合える人間に初めて出会ったのは、幸か不幸か。 問われたところで、簡単には答えられない。 幸であるならば、そのまま保てばいい。 不幸であるならば、いつか切り捨てればいい。 姿の知らない相手がじわじわと近付いてくる感覚に、恐怖はなかった。 あるのは、怒り。 もしくは、高揚感。 Lと最初に出会ったのは、テレビ越しだった。 死刑囚を実験に利用したLの容赦のない挑戦状に興奮したのは、まぎれもない事実だ。 できるものならやってみればいい。 死神という、非現実的な力を利用して犯罪者を消去していることを暴かれる確率が限りなくゼロに近いことが、月の自信をより強固とさせていた。 自分が有利な立場であるからこそ、Lという未確認の相手に対して強気で攻撃をすることができた。 まさか、目の前に現れるとも知らずに。 Lは限度を知らない。 それはわかっていた。 月も同じように負けず嫌いだからだ。 ある女に言われたことがある。 「あなたにはLに似たもの・・・近いものを感じました」 Lと自分が似ている? 気にしなかったといえば、嘘になるだろうか。 うすうす感じていた。 その徹底した捜査方法から、相手が何を考えているのかわかってしまうほど、自分と同等の思考を持っていることを。 そして、直接出会ってしまった。 会いたくなかった。 会わなければよかった。 言葉を交わすごとに思いしるのは、同レベルの人間と話すことの充実感。 いままで、ずっと相手に合わせて好感度を下げないように取り繕ってきた月にとって、その凡人以上の知能指数を隠すことなく論じ合える相手の存在は大きかった。 しかも、相手は自分を『キラ』だと疑っている。 下手に相手に合わせれば、ますます怪しまれるだろう。 そう思うのは、自分も同じ事を考えるからだ。 近付けば近付くほど、自分との相違が減っていくように思えてならない。 Lは『殺さなければならない』相手だというのに。 だからこそ。 相手に合わせていることに気が付かれないように合わせる。 その緊張感が月の思考能力を確実に成長させていた。 もう少し話してみたい。 もう少し論じてみたい。 もう少し・・・。 何度も何度も否定するたびに、その思いは強くなる。 同時に、湧き上がるのは『殺意』 自分をじわじわと追い詰める相手の首を絞める夢を見る。 腕の中で冷たく横たわるLをただ抱き締めた。 この気持ちを なんと呼べばいい? 終 |
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2004/08/09 |
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Lを好きな月を書いてみたかったんですが、無理でした。 |
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殺意=恋慕かな? |
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