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触感 |
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「なんのつもりだ?」 ソファに座って本を読んでいた月が顔を上げる。 三人掛けのソファに足を伸ばし、肘掛を背もたれにしてくつろいでいた月の上にまたがるように、Lが乗ってきたのだ。 「触りたくなったので」 正直に答えるLは、月の着ている黒の開襟シャツのボタンを二つほどはずした。 「やめろよ」 その手をさえぎるように掴み、月は読んでいた本を床に落とした。 音を立てて床に広がった本は、読みかけのページを隠してしまう。 「気になりますか?」 Lはじっと月の顔を見た。 「あたりまえだよ」 月は怒ると少し子供じみた表情になる。 きっと、それは誰も知らない。 そんな些細な優越感に欲情することを彼はきっと理解できないだろう。 「じゃあ、相手してください」 Lは月の手を振り解き、首筋に口付けをした。 「ふざけるな」 口唇が触れた瞬間、月の身体に緊張が走る。 それは、Lを意識した瞬間だ。 たったそれだけのことに全身が煽られる。 その、素直とも呼べる反応を自分だけのものにしたい。 「駄目ですか?」 「駄目にきまってる」 Lは月のはだけた胸に耳をつけ、そのまま覆いかぶさった。 抱きしめるように腰に腕を回しても、月からの抵抗はない。 ただ、諦めに似た溜息が漏れた。 「逃げないのですか?」 「逃げても無駄だろ?」 月は腕を伸ばし、床に落ちた本を拾う。 これ以上何もしないなら、このままでもかまわないということなのだろうか。 「月くんの心臓の音が聞こえます」 全身を密着させているだけの行為がなにをもたらすのか、その理由を考えてはいけない。 お互いの体温が同化していく過程に、ほんの少しでも理解しあえたらこの関係も変わると確信している。 「生きているからね」 月が本のページをめくる。 「・・・」 その指先に触れたくて、Lは月の手首を掴んだ。 「何?」 Lは月と指先をからめ、握り締める。 「邪魔をするなら、場所を変える」 上体を起こしかけた月の手の甲にキスをする。 「このままでいてください」 Lは月の手を握ったまま、再び身体を寄せた。 「竜崎?」 月がその手を振り払う前に、Lは目を閉じる。 生きている鼓動と伝わる体温。 こんなにも気持ちがいいことをほかに知らない。 有り得ないことに、そのまま意識を手放した。 「信じられない・・・」 自分の上で眠ってしまったLに月は目を見張る。 繋いだ手は簡単に外れそうもなく、この状態で本を読むことは不可能に近い。 月は仕方なく、自分も目を閉じることにした。 終 |
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2004/06/23 |
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月くん継続中。らぶ過ぎですね・・・。 |
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※↑サイト名変更アリROZE→ZERO |
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