月夜

 
     
     
 

星も見えない都会のにごった空に、月が昇る。


「あ、」

帰り道、空を見上げたライトが微かに呟いた。
その声を拾って、Lが立ち止まる。

「どうしましたか?」

なんでもないと首を振るライトにLはふと空を見上げた。

「月が、きれいですね」

高層建築物の間に見える月は、ほぼ満月に近い。

「うん」

ライトが頷く。
同じ物を見て、同じように感じる。
それは、あくまで普通の人間と同じだ。
今現実に起こっている常識を超えた事件の当事者同士とは思えないほどの。
そこに流れる時間は穏やかだった。


「でも、夜神君は満月じゃないですよね」
「え?」
「同じ月の名を持っていても三日月のようです」
「どうして?」
「本当の姿が隠れて見えない」
「冗談にしては、笑えないな」
「人間は、誰しも本当の姿を隠しているものです」
「流河もそうだしね」
「はい」
「じゃあ、流河も三日月だな」
「そうかもしれません」



見えない駆け引きの糸は細くて儚い。
ほんの少しの均衡が崩れてしまえば、それで終わる。
ぎりぎりのところで保ち続けるのは、容易な事じゃない。



月は満ち欠けをして正体を隠し続ける。







 
 

2004/06/02

 
     
 

最初はおとなしく。
というか、こんな話が多くなりそうです。

 
     
   
     
 

 

 
 
     
     
     
     
     
     
     
     
     

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