作者【迦楼羅】
ジャンル【まぶらほ】


 はじめに

リクをもらったんで書きました。自分にしては珍しく純愛系のお話ですね。 

誤字脱字やさまざまな文句は勘弁してください…まだ修行中の身なんで…。 

しかし…玖里子さん…ちょっちむずかったっす。 

あれでよかったのかなぁ…? 

というかもん太に言われて初めて気づきました。 

『凛→夕菜→舞穂→玖里子』の準で長くなってきてることに。 

ひとえにたんなる文才がないだけと言われたらそれまでなんですがね。 

では、ちょっとかっこいい和樹とちょっと弱気な玖里子のお話を楽しんで(?)、悲しんで読んで下さいまし。 

感想は掲示板に、おねがいしやす。 


BY 迦楼羅


ジャジャ丸&ピッコロ&思ひ出ポロリ

夕菜「なんで凛さんがそんなことまでする必要があるんですかっ!」 

凛「夕菜さんがやると全部ケダモノの行動をとるからです!」 

夕菜「けっ!ケダモノ?!凛さんこそっ!」 


小春日和。 

桜舞散るこの季節。 

起きかけた体は、春のあたたかさでまた駄眠へと導かれる。 

そんな眠気導かれるさなか、どこからか聞こえる鳥達のさえずりは、子守歌のようにも聞こえ、目覚ましのようにも聞こえる。 

今日の式森和樹にとっては、前者だった。 

そんなあたたかな日差しを浴びて花達は、まるで水を得た魚のように咲き乱れている。 

特に目立つのは桜。先に言ったように舞散る桜の花びらは、もう通り過ごした冬に見た雪にも見える。 


あぁ…気持ちいい日だなぁ。 


17才で、優柔不断で、ひ弱で、脆弱で、軟弱で、おそらく世界最凶最悪な魔力を持つ式森和樹が、真っ先に思うことはそれだった。 

…。 


玖里子「で…何を揉めてるわけ、あの二人は?」 


和樹があえて無視しつづけていた地雷を踏んだのは、お金持ちで、お姉さんで、背が高くて、ボインで、ナイスバディーで、式符使いの玖里子。 

舞穂「朝弱い和樹君をお越しにどちらが、行くか決めてるんだって。」 

ガクリとしている和樹の代わりに答えたのは、小さくて、ツルペタて、家事が上手で、ブラックホールのように魔力を吸引する力をもってる舞穂。 

喧嘩しているのは、魔力21万で、おせっかきで、和樹一筋で、かわいくて、こわくて、嫉妬心が強い夕菜と…年下で、剣凱護法使いで、実家が豆腐屋で、実は照れ屋で、眼鏡は似合うかどうかは微妙な、凛。 

舞穂を抜かす女3人の唯一の共通点といえば、名家育ちで、和樹が好きだということ。 

夕菜以外の二人は、子孫に和樹の魔力を残していきたいがために、親に言われしかたなく結婚を申し込んできたが…今ではその理由さえも忘れていた。 

つまりは全員後者の理由でここに残っているわけである。 


さて話をもどそう。 


玖里子「あの二人もあきないわよねぇ…。」 

察するところ、二人にとっては、これが日常なのかもしれない。 

平和な日々が恋しい。 

和樹が切に願うこと。 

4人が来て以来、ろくにのんびりとしていない気がする。 

別に和樹にとって4人が嫌いな訳ではない。むしろ好きな方向に矢印が傾く位だ。 

ただ誰を好きかと言えば、そこは優柔不断で臆病な和樹。恋にも臆病だった。 

というより、『この人こそっ!』という決定的なものがないのも事実。 

頑張っているのは、女の子達だけだというオチであるといえば、それだけの話だった。 


ぷっ… 


と和樹が笑ったのは、そんな喧嘩をしている二人とただ傍観することを楽しんでいる二人を見ていた時。自然にこぼれた笑み。それも一瞬笑っただけ。 

だが…その笑みに気づいたのが一人いた。 

玖里子「どうしたの?そんなに自分を取り合う姿を見るのが楽しい?」 

後ろでは、夕菜と凛から放たれる魔法の雨あられ。 

和樹「ちっ、違いますよ。ただ…いつもと変わらないなぁ、て…」 

玖里子「まぁ、たしかにね。逆にあの二人が喧嘩をしない日の方が少ないものね」 

和樹の意見を素直に肯定へと運ぶ玖里子。 

和樹「なんていうか…夕菜の嫉妬も、凛ちゃんの剣の振り回すことも、舞穂ちゃんのべったりくっついてくることも、玖里子さんが、誘惑することも、はっきり言うと苦手なんですよね。
   でも……それが一つでもかけると…平和じゃない気がするんですよ。
   だから、変な言い方かもしれないけど、舞穂ちゃんにべったりくっつかれて、夕菜と凛ちゃをに嫉妬されて怪我して、玖里子さんに誘惑されて、また夕菜と凛ちゃんに怒られる…
   それが日常で、それが普通なんだよなぁ…って、思ったんですよ」 

やさしい眼で、和樹は夕菜、凛、舞穂をみながら、玖里子にはなした。 

それは普段の和樹から、想像できないような、めずらしく情緒的な発言。 

玖里子もそんな和樹の言葉と、いつのまにこんなに男らしくなったか分からない和樹の横顔に、惹かれて…ただ…ただただ見つめていた。 

RRRR…。 

そんな時だった。夕菜達が喧嘩してる中、誰かの携帯がなったのは。 

玖里子「あっ、私だ。えっと…うわぁ…」 

携帯を開き、ディスプレイを見るなり玖里子はあからさまに嫌だとわかる顔をしていた。 

和樹「どうしたんですか?」 

玖里子「あぁ…うん。なんでもないわ。ちょっと場を離れる。それまでに、あの二人止めときなさいよ」 

和樹「ちょっ!玖里子さんっ!」 

返事も聞かずに玖里子は、その場から去っていった。 

夕菜と凛の方にチラリと目線をむける。 

和樹「どう考えても無理だよなぁ…」 

しかたなしに和樹は、誰もいない空間にその愚痴をはいた。 

だから和樹は知らない。玖里子が、去り際に不安に満ちたようなシリアスな顔をしていたことを…。 



ほどなくして、二人の喧騒も治まってきた。 

結局、和樹の意見の『自分で起きるよう努力する』が妥当だとのことになり、一応幕を下ろした。 

一方、玖里子はというと、あれからまだ帰ってこない。 

随分長い電話だな…。 

特に気にすることはなかったのだが、普段玖里子が携帯を使っているところをあまり…というか全く見たことのない和樹にとっては、違和感を感じていた。 

めずらしいと思う気がないとは言わないが、どちらかというと何か不安のようなものが、先ほどから頭を掠めていた。 

それが、自分の魔力から引き起こされているのか…それとも玖里子に対するなんらかの感情から現れているのか、この時点の和樹には分かるわけがなかった。 

………。 


ちょうど和樹が、そんなことを考えている頃、玖里子は未だ電話の向こうにいる相手との会話中だった。 

玖里子「はい…はい…」 

だが、その声はどこか活力が感じられない。 

玖里子「はい…わかりました」 

口から出てくるのは、肯定を示す言葉と理解を示す言葉のみ。何より玖里子自身の顔から覇気が感じられなかった。 

玖里子「はい…それじゃあ、失礼します」 

ピッ。 

玖里子「ふぅ…」 

電話を切ってはじめにでたのがソレ。 

玖里子「普通かぁ…」 

それは、和樹が話していた言葉。 


クス… 


何を今更…。はじめから自分がココに来た理由なんて決まっていたではないか。 

自分は何を迷っているのだろう? 


そのはずなのに…。 

凛じゃないけど、和樹は、頼りもなくて、情けなくて、優柔不断だ。 

そんな男に自分が惚れる要素なんて少しもないはずなのに。 


なのに…なのに…やっぱり和樹は、優しくて…優しくて。 

頼りないのに、頼りにしたい自分が、胸のどこかにいる。 

玖里子「あ〜ぁ、遺伝子だけでよかったのになぁ…」 

どこか寂しそうな笑顔で玖里子は、つぶやいた。 

風が吹く。同時に花びらも舞い、玖里子の髪も横になびいていった。 

玖里子「ごめん」 

それは、誰に対する謝罪なのだろうか? 

和樹? 

それとも自分? 

いや、もしかしたらいつのまにか踏んでいた、名も知らない花にかもしれない。 

答えを知るのは、玖里子自身と…左手に付けている時計が示す『モノ』のみ。 

いや…玖里子さえ、この先は、どうなるか分からない。 

また、風が吹いた。 


――――――――――――――――――――


夜。 

和樹は、あまり夜が好きではない。闇が嫌いなのではない。夜が嫌いなのだ。 

ただ、理由を聞かれると困る。誰しもが、嫌いな食べ物のどこが嫌いなのか?と訪ねられたら、すぐには答えられない感じににている。 

夜だから。 

夜が、夜だから嫌いなのだ。 

言葉で表すには、それが一番適当だろう。 

この日の夜も、その理由のためか、どうかは分からないが、うまく寝付けないでいた。 

先ほどから、「うーん、うーん」とうなりながら布団の上をゴロゴロしていた。 

別に暑い訳ではない。単に寝付けないだけだった。 

カチャ…。 

ゆっくりと扉の開く音が聞こえたのは。 

和樹「?」 

布団から顔だけを上げ、和樹は扉へと目を向けた。 

和樹「…玖里子さん?」 

眠れないにしても、多少はぼやけている視界で、和樹が玖里子だと分かったのは普段から見慣れているシルエットだっからだった。 

玖里子「…」 

声を掛けられたにも関わらず玖里子は、無言でたっていた。 

やがて、雲で隠れていた月がその姿をじょじょに表し、差し込む月明かりが暗闇に立つ玖里子をゆっくりと優しく照らし始めた。 

和樹「ちょっ!!玖里子さん!」 

その姿が、露わになり、和樹の視界が玖里子をはっきりと捕らえてから、和樹は仰天した。 

玖里子は、バスタオル一枚で立っていた。 

玖里子「どぉ?驚いた?」 

開口一番にその気の抜けた台詞。 

和樹「どぉ?じゃないです!早くふふふ服を着てください!」 

どもりながら声のトーンを上げながら忠告する和樹。でも、玖里子は、無視した。 

その顔は、今さっきのギャグをかました人物と同一人物とは思えないほどシリアスな顔をしていた。 


玖里子「…思い出をちょうだい…」 


和樹「…えっ?」 

それは、本当に玖里子の台詞だったのであろうか? 

どことなく魅力的で、どこか淫らで…そして、どこか寂しげな声だった。 

玖里子「一度でいい…私に…私に和樹とここにいた思い出をちょうだい…」 

やはり玖里子の声。 

和樹「えっと…その…どうしたんで…んむっ!?」 

戸惑う和樹に、玖里子は強引に口づけをした。 

和樹「んんっ!ん―!」 

玖里子「んむ…んん…」 

あわてる和樹。 

それでも離さない玖里子。 

そのまま、和樹は玖里子を支えきれずに布団に倒れ込んでしまった。 

それでも玖里子はやめない。 

玖里子「ぷはっ…ちゅっ…」 

お世話にも上手いとは言えないキス。 

だけど、和樹には玖里子がどこか切羽詰まっているような感じがした。 

だから…。 

和樹「昼の電話ですか?」 

玖里子が、息継ぎのために口を離した瞬間に、そう訪ねた。 

玖里子は、止まった。 

見上げる和樹。見おろす玖里子。 

再びキスをするのに数センチも離れていない位置で二人は見つめあう。 

だが、二人の目に写るものは明らかに違っていた。 

図星と同時に悲しげな玖里子の表情を写す和樹の瞳と…。 

どこか切なく目を細める和樹の表情を写す玖里子の瞳。 


玖里子「遺伝子だけでよかった…」 


語り始める玖里子。 

玖里子「はじめは嫌だった…。
遺伝子だけとはいえ、好きでもない男と寝て、さらに子供まで作るなんて…。
でも、家系のためだった。私には、家系なんてどうでもよかったけど、私以外の全員が、それを重要視していたからしょうがなかった。
だけど…凛じゃないけど、本当にガクリときたわ。
こんなに冴えない男と寝るなんてってね…」 

和樹「すいませんね…」 

話の内容を折らないように和樹は答える。 

玖里子「ふふふ…怒った?でも、あの時は本当にそう思ってたわ。」 

和樹「あの時?」 

玖里子「そう。あの時はね。でも、今は違う」 

和樹「…」 

玖里子「ねぇ、和樹?」 

和樹「?」 

突然の呼びかけ。 

そして、玖里子「私のこと好き?」 

和樹「!?」 

突然の質問。 

和樹の性格からして答えられるはずもない質問。 

だが、玖里子は、それを承知で質問をした。 

むしろ、知っているからこそ、この質問をした。 

和樹「あの…その…」 

玖里子「私は好き。こんな純情物私に合わないんだけどね。でも、好きなんだからしょうがないわ」 

和樹「玖里子さん?」 

その時、和樹は気づいた。玖里子の瞳から流れる涙に…。 

玖里子「好きで…好きで…どうしようもなく好きになって…離れたくなくて…」 

しゃべるたびに流れ落ちる涙。涙は、玖里子の頬を伝い、和樹の頬へと落ちる。 

その一粒一粒が暖かかった。 

和樹「…」 

和樹は何も言わなかった。というよりも何も言えなかった。 

玖里子「こんな気持ちにならなければ、あんたとは、ただ一晩だけの仲になれたのに…何も悲しむことなんてなかったのに…こんな気持ちになることなんてなかったのに…」 

和樹「実家に帰るんですか?」 

玖里子「…」 

玖里子はただ何も言わず、首を縦にふった。 

和樹「…」 

玖里子「だから…私のこと好きじゃなくてもいい…夕菜ちゃんや凛のことが好きでもかなわない。
だから、一晩だけ…一晩だけ思いでをちょうだい…」 

女は、涙を簡単に流すという。 

だけど…和樹には、玖里子が今流している涙は…きっといくらお金をかけても買えない涙だろうなと、不謹慎ながらも、そう思えた…。 


和樹「…」 

そんなことを考えていたせいで、和樹の口からは何も聞こえなかった。 

玖里子「だめ?」 

時は流れる。 

雲は、また月を隠し、そしてまた、月が顔を出し始めた時…和樹は口を開いた。 

和樹「今夜だけです」 

玖里子「和樹?」 

それは、了承の台詞。和樹は、まだ続ける。 

和樹「僕だって…玖里子さんのことは嫌いじゃないから…」 

玖里子「あっ…」 

初めて聞く和樹の好意を表す台詞。 

臆病で…情けなくて…そんな男だと思っていたのに …。 

昼にも感じたが、いつのまにこんなに自分より年上のような顔つきになったのだろう。 

一種の母親のような視線で玖里子は、和樹を今まで見ていた。 

けど、今は…。 


玖里子「私を…和樹…あなたの物にして」 


台詞自体恥ずかしい上に、今ごろになって自分の格好が恥ずかしく感じるようになった玖里子は、目を細め、顔を赤く染める。 

和樹「えっと…どうすれば…」 

さすがは和樹というべきだろうか?玖里子のはにかむ姿に目もくれず雰囲気を壊す。 

ぷっ… 


けどその一言で玖里子の緊張は解けた。 

玖里子「いいわ…私に任せて。あんたは寝てていいわ。あんまり上手くないけど、そこはお互い様ね」 

そういうと玖里子は、和樹の手をつかむと自分の胸へと導いた。 

玖里子「分かる?すごくドキドキしてるの」 

和樹は目を閉じる。 

和樹の手は、たしかにタオル越しの乳房の奥にある心臓の鼓動を感じることができた。 

和樹が目を閉じたスキに玖里子は、またキスをする。 

今度は和樹もいやがらないで受け入れる。 

だから、先ほどの子供みたいなキスじゃなくて… 

玖里子「んん…ちゅ…んむ…」 

大人のキス。 

玖里子の舌は、和樹の口に進入すると和樹の舌に絡みつく。 

同時に唾液が玖里子の舌を伝い和樹の口へと注がれる。 

和樹は、それをゴクリと飲み干した。 

かわりに玖里子も和樹の唾液を吸い取る。 

その時和樹は胸を優しく揉みほぐした。 

玖里子「んっ!んん…」 

しかし、玖里子はそれだけで淫らな声をあげる。 

気持ちいいのかなぁ? 

そう思った和樹は、タオルをとると両手で左右の胸を揉む。 

形のいい玖里子の胸が和樹の手に併せてさまざまな形に変形していく。 

大きい…。 

和樹は、思った。 

片手で胸全体を隠せない。 

それだけじゃない。握ると指の間から乳房が形を変えて出てくる。 

玖里子「んっ!ごめん…ちょっとつよい…」 

和樹「あっ、すいません」 

和樹は、素直に謝る。 

玖里子「ふふっ…私の胸気に入った?」 

和樹「えっとその…」 

頬を赤くしながら和樹は照れた。 

玖里子「私は、結構揉まれるの好きかな?だから…こっちもこんなになっちゃった…」 

玖里子は、また和樹の腕をつかむと膣へと導いた。 

玖里子「あっ…」 

和樹「濡れてる」 

そこはたしかに濡れていた。 

玖里子の愛液でぐっしょりという擬音語が合うぐらい濡れていた。 

和樹は、指を動かす。左右に広げたり…指を進入させたり…その度に玖里子の喘ぎ声は大きくなる。 

玖里子「ふあっ…あぁ…んん…」 

指を増やす。 

和樹「すごいや。3本も入りましたよ」 

玖里子「いや…ぁん…言わないで…ふぁん…それより、左手が止まってるわ…」 

和樹は、聞くや否や左手でまたも乳房を揉む。 

その時和樹はとあることに気づいた。 

和樹「玖里子さん…ここ…乳首みたいにコリコリしてるここなんですか?」 

玖里子「いやっ!だめ!そこ!あぁん!…感じ…すぎちゃう」 

無知な和樹が憎い。玖里子は思った。 

和樹が、先ほどから右手の指で摘んでいるのは、まぎれもなく世間一般で言うところのクリ〇リスと呼ばれる性感帯。 


やだ…和樹うまい…。 


和樹は絶妙な力加減で玖里子の乳首と一緒に摘んだりはじいたりしてくる。 

玖里子「ひあっ…はぁん…あんぁん…だめ…和樹…私…私」 

それは、玖里子にとって初めての感覚。 

頭の中に霧が、かかったように、白くなり始める。霧が、脳すべてを後少しで覆いそうになったとき…。 

和樹は、玖里子の乳首をそっと甘噛みした。 

それが決定的だった。 

玖里子「ひぁんっ!だめ…だめ…くる…なにか…くる…ひぁああああああんっ…」 

玖里子の脳髄に快楽という名の信号が走る。 

背筋を弓なりにさせたかと思うと、玖里子は、また息を乱しながら、グッタリと和樹の胸に体を預けた。 

玖里子「はぁ…はぁ…」 

和樹「その…大丈夫ですか?」 

余りに乱れる玖里子に和樹は、驚きを隠せないでいた。 

玖里子「だ…大丈夫。それより…はぁ…はぁ…和樹イッてないでしょ?」 

和樹「そりゃあ、そうですけど…」 

現に和樹の男根は、玖里子との行為のせいで勢いよくそそりたっている。 

玖里子「その…えっと…いいわよ…入れても」 

普段使わない台詞のため玖里子の顔は真っ赤になっていた。 

和樹「でも、大丈夫なんですか?」 

それでも玖里子の体を心配する和樹。 

玖里子「私は、いいから…思い出くれるんでしょ?」 

和樹「…なんだか照れる台詞ですよね?」 

玖里子「そんなこといわないの…ロマンチックの魔法が解けるわ」 

和樹「あっ…」 

それはどこかで聞いた台詞。いつだっただろうか? 

そうたしか… 

玖里子さんの家で… 

玖里子さんとジャガイモと…。 

あのときと状況が似ている。けど、あの時と明らかに違うことが二つあった。 

一つ目は、夕菜達がこないこと。 

そして二つ目は…。 

玖里子「えっ?ちょっ、和樹?」 

和樹は、玖里子との体制を逆にし、自分が上にくるようにした。 

和樹「痛いくても我慢してくださいね?」 

玖里子「…」 

玖里子は、その言葉の意味を捕らえるのに一瞬かかった。 

そして一瞬かかってから和樹に笑顔で、こういった。 


玖里子「思い出は、ちょっとぐらい痛いほうが後に残るのよ。」 


と…。 

和樹は、その言葉を聞くと、ゆっくりと玖里子の濡れた膣へと男根を進めていった。 

玖里子「っ!?」 

玖里子が、激痛に耐えきれず声をあげる。 

和樹「くっ…」 

しかし和樹も玖里子にかまっている余裕などなかった。 

和樹自身も玖里子のしめつけが、あまりに強いせいで痛いのだ。 

それでも和樹は、挿入をやめない。 

これは、一種の契りだ。 

和樹には、そう思えた。 

玖里子との最後になるかもしれない。その考えが、和樹が痛みを我慢するだけの心の支えとなっていた。 

肉棒は何かに突っかかった。 

かまわない。おそらく処女膜であろう。 

和樹は、膜をやぶり、なお進めた。 

その間、玖里子は激痛のため声もだせずにいる。 

愛液が潤滑油のかわりだとしても処女であることにかわりはないのだから当然といえば当然であろう。 

やがて、和樹のモノは全て玖里子の中に埋まった。 

和樹「玖里子さん…全部入りましたよ」 

玖里子「分かる…和樹の大きくて熱いのが入ってる。痛かった…」 

和樹「すいません」 

玖里子「お礼は、キスでいいわ」 

和樹は、そっと玖里子にキスをする。 

玖里子「動くのはまって…まだカナリ痛いから…それまでキスしましょ」 

玖里子は、和樹の首に腕を回すと強引に和樹にキスをする。 

でも、和樹も嫌がらずにそれをうけいれる。 

……。 

…。 

長いキス。 

一体どれほどの時間がたっただろう。 

それでも二人に飽きがくることはなかった。 

玖里子の目からは、また涙が流れる。 

和樹「あっ…」 

やっと口を離した和樹は、涙に気づいた。 

玖里子「あまりに痛かったから、涙が出ちゃった」 

嘘だ。 

そのくらいは、和樹にも分かった。これが最後になるかもしれない思い出作り。 

自分のことを好きと言ってくれる玖里子。 

自分は、彼女に今まで何をしてきただろう?いや、何もしてこなかった。なら…今だけ… 

今だけでも本当にこの人を愛そう。 

それが和樹の決意だった。 

和樹「動いてもいいですか?」 

玖里子「いいわ」 

玖里子は、それだけ告げる。 

返事を聞いた和樹は、腰を前後に動かし始めた。 

玖里子「うっ…ひん…」 

まだ、玖里子の声には、痛みが混じっている。 

気持ちよくさせたい。 

和樹は、右手で胸を揉み、左手でクリをさわり始めた。 

玖里子「ひぃあんっ!…駄目!…ふあっ…駄目だって…あっ…」 

玖里子は嫌がるが、和樹はやめない。玖里子が感じ始めているのが分かったからである。 

明らかに声に喘ぎが混じっている。 

動かしている腰からも…。 

グチョ…グチョ… 

という愛液の混ざる音が聞こえている。 

玖里子「ふあっ…あんっ…あんっ…なんか…変な感じ…」 

和樹「玖里子さん…気持ちいいんですか?」 

息を荒らしながら和樹は、問う。 

玖里子「分からない…はぁん…分からないけど…あんっ…痛いと違う…感覚がくるの…嫌いじゃ…あんっ…なくて…」 

感じ始めてる。 

和樹は、それを理解した瞬間スパートをかけ始めた。 

黙ってはいたが玖里子の締め付けはキツクて、和樹としても限界が近づいていた。 

玖里子「あんっ!ひん…駄目…激しい…ふあん…和樹和樹…」 

譫言のように和樹の名を玖里子は呼ぶ。 

和樹「はぁはぁ…何ですか?」 

玖里子「気持ちいい?気持ちいい?」 

和樹「玖里子さんの中…くっ…キツクて…すごく気持ちいいです」 

玖里子の長い髪が揺れる。 

玖里子「よかった…和樹も気持ちよくて…ひぁん…あんっ…あんっ…」 

和樹「玖里子さん…僕もう…」 

玖里子「いいよ…イこ…私も…はぁん…気持ちよくて…あんっ…さっきみたい…ひぁん… な気分に…駄目!…ひん…またくる…和樹!和樹!…イクッ…私…あんっ!イクッ…イッちゃう…」 

玖里子の絶頂もすぐそこまできていた。 

和樹「玖里子さん玖里子さん玖里子さん!」 

和樹の腰のスピードがあがる。 

玖里子「和樹和樹和樹!あっ…あぁぁぁぁぁぁ…」 

玖里子の背筋が弓のようにそれるのと同時に和樹も玖里子お腹に精を放つ。 

玖里子「はぁ…はぁ…これが…和樹の…」 

玖里子は、指で精子をすくうと、自分の口へと運んだ。 

和樹「ちょっ!玖里子さんっ」 

玖里子「んっ…ちゅぱっ…マズ…」 

あからさまにしかめっ面をする玖里子に和樹は、吹き出した。 

和樹「ぷっ…」 

玖里子「何よ…笑わなくてもいいでしょ?」 

そういいながらも玖里子の顔も笑顔だった。 

その後、和樹はティッシュで玖里子の体を拭いてあげた。 

玖里子は恥ずかしがったが、何を今更といったかんじで股の部分を拭いてやると、また玖里子から愛液が溢れはじめていた。 

その場の勢いもあって二人は、また交わった。 

………。 

……。 

…。 

そして、今に至るわけだ。 

二人は、和樹の狭い布団で一緒にくっつきながら寝ている。 

いや、寝ているのは和樹だけだった。 

そうとう疲れたのであろう。和樹は、布団に横になるとすぐに寝た。 

玖里子「本当…これが最後なんて信じられないわよ…」 

和樹「すぅ…すぅ…」 

和樹の寝顔を間近で見つめながら玖里子は呟く。 

その寝顔は、随分と情けなくて、 

子供みたいで… 

でも、好きな顔だった。 

玖里子「帰りたくない…帰りたくない…」 

和樹の寝顔を見た玖里子は、また涙を流しながら…悲痛のようにただその台詞だけを呟く。 

なんと悲しいことだろうか?誰にも聞いてもらえず…誰にも分かってもらえぬこの苦しみ …。 

その嘆きは、朝日が昇るまで続いた。 

朝日が昇った時、玖里子は泣くのを止めた。 

泣くのは、やめよ。私は、こんなキャラじゃないしね。 

和樹に最後のキスをすると玖里子は、部屋をでていった。 


『さよなら…』 


それと処女の証の血痕を布団にのこして…。 

和樹「…」 

その瞬間…和樹は泣いていた… 

和樹「くそっ…」 

何もできない自分と何かをしようとする勇気の無い自分に腹がたった…。 

和樹「眠れるわけないじゃないですか…あんなに泣き声をあげられちゃ…」 

起きて、抱きしめたかった。泣かないでと言ってあげたかった。 

けど、そしたらまた玖里子は辛くなるから。別れが辛くなるから。 

だから何も言えなかった。 

自分にできることは待つだけ。 

玖里子が帰って来るいつの日かを待とう。 

その時は、みんなで言ってあげよう。 


『おかえりなさい』 

って…。 

悔しさは、やがて強くなるための糧になる。 

悲しみは、強くなるための礎となる。 

この日、ここから和樹は強くなるだろう。 

玖里子が笑顔で『ただいま』と言って、笑顔で帰ってくる日まで。 


余談だが…玖里子に踏まれた草は、また力強く太陽に向かって伸びていた。 


季節は、止まることなくうつろいでいく。 

例えそこに忘れたくない過去や時間などがあったとしても………もちろん思い出さえも。 

置き去りにした思いと共に過ぎていく時間は、増える一方でもどってくることはない…。だけど…。 

時間は、すぎても人は待つことはできる。 

それは、もっとも簡単な方法でもっとも苦しい方法。 

時間をとりもどせない分気持ちを忘れないで持ち続ける。 

今も昔も…そしてこの先も…そう…この少年も例外ではない。 


和樹「って、だから!舞穂ちゃんからくっついてきたんだ!」 

夕菜「い――えっ!あれは、肩を寄せ合うカップルみたいでした!どうして…どうして、和樹さんは、こんなに私を裏切るんですかっ!」 

和樹「裏切ってなんかないし!だからっ!火は止めよって!ねっ?熱いって…」 

和樹の叫びは、あたり一体にひびいた。 

凛「大丈夫かっ!式森!これは大変だ!すぐに私の部屋で治療をせねば(棒読み)」 


刻々とすぎる日々を送った和樹。 あまりあの時からかわってないとも思える。 

しかし、彼の心はたしかに強くなっていた。 

それでも、夕菜の魔法は、やはり怖い…。 

慌てる和樹に夕菜は容赦無く魔法をぶっ放つ。 


玖里子がいなくなってから、夕菜達に説明するのが大変だったが、何より和樹の落ち込みぐあいが一番ひどかった。 

連れ戻しましょうと夕菜達が案を上げたが、連れ戻したところで相手のレベルからして即座にまた連れ戻されるし、何より玖里子がそれを望まないと和樹は思った。 

しかし和樹は、ただやる気が起きてこないと言ってその話題を消し去った。 

今のような、状態の和樹に戻るまで相当の時間がかかったのも事実。 

時間と雲の流れと学年だけが過ぎていく中、夕菜と凛と舞穂が元気づけてくれたからである。 

そして今に至る。 

和樹「うをっ!ぬわっ!…ふぐぉっ!!」 

あまり体は強くなったようにはみえない。これも現実。 

そのまま、和樹は林の中に文字どおり転げ落ちていった。 


ゴロゴロゴロ…ドテ… 


和樹「いてて…」 

頭をさする和樹。ふと目の前に人影が…。 

和樹「うわぁっ!夕菜!本当許してっ!」 

男の見栄なんか微塵も感じさせないほど和樹は小ウサギのように小さくなる 

その時、一陣の風が拭いた。 

風は、桜吹雪とともに去っていく。 

?「あぁーあ、ロマンチックの魔法が解けちゃったわよ」 

と、誰かの声が聞こえた。 

和樹「えっ?」 

それは、ずっと前に聞いた声。 

すごく聞きたかった声。 

今も頭の中で聞こえる『さよなら』と言った人と同じ声。 


玖里子「ただいま。和樹」 


そこには、笑顔の玖里子が立っていた。どこもかわってなんかいない玖里子が…。 

不思議と涙は出てこなかった。 

ボーっとする和樹に玖里子は困ったような顔で訪ねる。 

玖里子「ちょっと…まさか私のこと忘れたわけ?」 

そんなはずはない。忘れるはずもなかった。ずっと待ち続けていたのだから。 

そうだ。 

言わなくちゃいけないことがあった。長い間これを言うために待ち続けた言葉。 


『おかえりなさい。玖里子さん』 


笑顔でいえたと思う。その証拠に玖里子もニコリと笑って再び… 


『ただいま。和樹』 


と返してくれたのだから。 

二人の間に吹く風は気持ちよかった。 

また…『普通』が始まる。和樹はそうおもえた。 

時感じたロマンチックの魔法を初めて感じた時との相違点の二つ目は… 


お互いのお互いに対する思い。 


過ぎた時間が戻ってこないのはたしかだが、思い出は、涙と一緒にポロリと戻ってくる時もあるものなのだ。 

夕菜と凛と舞穂と…そして玖里子との思い出作りは、また始まったわけだった。 

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