『えいぼんの書〜なつかしいあなたへ〜』

前の話

第7話

「とりあえずぅ……エッチしましょうかねぇ」
「は?」
 あまりにも唐突で的外れな“つぁとぅぐあ”さんの提案に、僕の焦燥はどこかに飛んで行ってしまった。
 暗黒世界ン・カイへの出入り口、押入れの奥の黒い靄が薄れている――この異常事態に慌てた僕は、“しょごす”さんに“てぃんだろす”、ついでに“いたくぁ”さんも連れて“つぁとぅぐあ”さんの元に緊急報告に向かったんだけど……彼女は全く慌てる様子を見せなかったんだ。
 “つぁとぅぐあ”さんは僕達に会えなくなっても何とも思わないから……なんて不安な事を一瞬考えたりもしたけど、そんな事は無いらしい。僕がいなくなると、供物を捧げる相手もいなくなるしね。
 ひょっとして、単に靄が薄くなる程度では行き来には何も問題が無いからかな? 現にこうしてン・カイには無事に行けたんだし。
 そこで飛び出したのが、“つぁとぅぐあ”さんの『エッチしましょう』発言だった。その前後の繋がりが全く意味不明な提案に、一瞬呆然とした僕の目の前に――
「だってぇ、最近ボクはひでぼんさんに抱いてもらってないじゃないですかぁ」
 ――あの『にへら〜』としたほんわかな笑顔ではなく、見る者全ての精気を吸い尽くす妖艶な魔王の美貌があった。
「あ、いや、その、あの、ええと、最近色々ありましたし……それに、“つぁとぅぐあ”さんとセックスすると数週間動けなくなるから、そう頻繁には――」
 むにょん
 しどろもどろな僕の顔が、あの空前絶後な爆乳に包まれた瞬間――僕の理性はあっさり消滅してしまった。トホホ……我ながら情けない。
 甘く、暖かく、すべすべで、重量感たっぷりなのにマシュマロのように軽く、柔らかいのに張りのある、ボリューム満点な“つぁとぅぐあ”さんの乳房に顔を埋め、思う存分に頬擦りしながら、白い肌を舐めまわす。それだけで、僕の脳味噌はどんな麻薬よりも甘く激しく蕩けてしまうんだ。

「あぁん……やっぱりひでぼんさんはぁ、ボクのおっぱいが大好きなんですねぇ」
 甘い声が僕の獣性を刺激する。爆乳の谷間から顔を離した僕は、その先端にある薄紅色の乳首にむしゃぶりついた。乳輪がぷっくり膨らんだ少し大きめの乳首はしっかり勃起していて、彼女も感じてくれているのを教えてくれる。コリコリとした乳首を甘噛みしては、乳輪を舌先でくすぐったり、赤ん坊みたいにちゅうちゅう音を立てて吸ってみたりする。その間にも、空いた乳房に手を這わせて、乳首を摘んだり乳肉の中に押し潰したりして刺激を与えるのは忘れない。ああ、やっぱり“つぁとぅぐあ”さんのおっぱいは、どんな甘露よりも甘い最高の果実だ……
「なんだカ、我々の事は忘れられているようですネ」
「わぅん……」
「……それ以前に……何の為に……ここに来たのやら……」
「まァ、こういう事は楽しんだ者の勝ちでス」
 後ろの方で“しょごす”さんと“てぃんだろす”と“いたくぁ”さんが何かブツブツ言ってるけど……ゴメンなさい。今の僕は例によって『人外の魅惑』とやらで理性を失っているんです。トホホのホ、また“いたくぁ”さんにぶつくさ言われるんだろうなぁ。
「ではぁ、ひでぼんさんが一番好きな必殺技をぉ」
 ぽふっ
「おうぅ!!」
 いつのまにか仰向けにされていた上、服まで脱がされていた僕の天を向く怒張を、“つぁとぅぐあ”さんの偉大なる爆乳が優しく挟み、そして激しく脈動する。その膨大なボリュームが生み出す圧迫感と、吸い付くように滑らかな艶肌のフィット感。そして自分の乳房を左右から揉み解すように動かす“つぁとぅぐあ”さんの手技が、僕のペニスに無上の快感を与えて――
 むにゅう
「うおぉ!!」
「あらぁ」
 突然、僕のペニスに新たな感触が襲いかかった。

「私も混ぜてくださイ♪」
 僕のペニスを挟んで“つぁとぅぐあ”さんの反対側に、いつのまにか“しょごす”さんが回り込んでいて、“つぁとぅぐあ”さんの爆乳と一緒に自分の乳房をペニスに押し当てて、いわゆるダブルパイズリの状態にあるじゃないか……って、
「“しょごす”さん、その姿は!?」
「今回は私も“つぁとぅぐあ”様仕様デ……この方ガ、御主人様好みでしょウ?」
 エッチの時、“しょごす”さんは三つ編みを解いてロングヘアにして、温厚そうな糸目を見開き、妖艶な虹色の双眸を覗かせる。その点は今回も同じだったんだけど……それ以外が全体的に大人っぽくなっている気がする。髪も長くなっているし、外見年齢が二十歳ぐらいから二十台半ばぐらいに成長したといいますか……
……すっごく色っぽい。また、普段は“つぁとぅぐあ”さんの爆乳に隠れて目立たないけど、“しょごす”さんも96cmの見事な巨乳の持ち主だ。しかし、それが今は“つぁとぅぐあ”さんに匹敵するくらいの凄まじい爆乳にレベルアップしているんだ!!
 妖艶なお色気メイドさんに姿を変えた――外見年齢を変えるなんて、不定形生命体たる彼女にとっては朝飯前なのだろう――“しょごす”さんは、“つぁとぅぐあ”さんに勝るとも劣らない魅力を持っていた。
「でハ、失礼しまス」
 “しょごす”さんは妖しい眼差しを送ると、そのパワーアップした爆乳で僕のペニスを弄んだ。

「うっ!!」
 思わず快楽の声が漏れる。“しょごす”さんは胸元をまろび出さずに、メイド服の上からパイズリを始めたんだ。素肌とは違ったサラサラの感触と布越しに伝わる微妙な刺激に、僕の股間はよりいっそう奮い立った。メイド服パイズリとはまたマニアックな……“しょごす”さん、わかってるじゃないですか。
「ボクも負けませんよぉ」
 再び“つぁとぅぐあ”さんもパイズリを再開する。“つぁとぅぐあ”さんの淫肌の吸い付くような快感に、“しょごす”さんのメイド服のサラサラな快感――左右の異なる快楽のサンドイッチに、僕のペニスは一瞬にして爆発寸前状態に陥った。むにゅむにゅ蠢く乳肉に、2人の勃起した乳首がこすれあう様など、視覚的にもたまらない刺激だ。気持ちいい。とにかくひたすら気持ちいい。もはや僕は呻き声を漏らす事もできずに、快楽の嵐に翻弄されるままだった。
 そして――
「いただきまぁすぅ」
「でハ、私モ」
 爆乳の海から僅かに顔を出している亀頭の先端を、2人の長い舌がぴちゃりと舐め絡んだ――
「ううっ!!」
 次の瞬間、火山の噴火みたいに噴出した僕のザーメンが、闇の世界に高く昇り――
「はあぁ……熱ぅい」
「んッ……美味しィ」
 白濁の雨と化して、“つぁとぅぐあ”さんと“しょごす”さんの妖しい美貌と爆乳を白く染めた……

「いつもよりいっぱい出ましたねぇ」
「御馳走様でしタ」
「あはははは……はぁ」
 一気に全てのザーメンを放出してきって、虚ろに笑うしかできない僕に、爆乳と顔にかかった精液を1滴残さず綺麗に舐め取りながら、“つぁとぅぐあ”さんは蠱惑的な流し目を向けた。
「やっぱりぃ……いつもと違うと新鮮ですかねぇ」
「きゃッ」
 自分と同じくらい大きくなった“しょごす”さんの爆乳を、“つぁとぅぐあ”さんは背後から揉み解す。今にもメイド服が内側から弾けそうだ。
「それではぁ、みんなも少し“変わって”みましょうかぁ」
「え?」
 “つぁとぅぐあ”さんのタレ目に、あの魔王のように恐ろしく、美しい光が宿った――その時、
「わぉん!?」
「……あーれー……」
 周囲に敷き詰められた“つぁとぅぐあ”さんの膨大な髪の毛がざわざわと蠢いて、“てぃんだろす”と“いたくぁ”さんをあっというまに包み込んでしまったんだ。
「つ、“つぁとぅぐあ”さん!?」
「ちょっとお2人を魔改造してみますねぇ……変身は一時的なものだからぁ、心配無用ですよぉ」
 しばらくモゴモゴ内側から動いていた2つの髪の固まりは、やがて大人しくなって、続いて心臓の鼓動みたいな脈動を始めた。その髪の玉の中では、怪しい魔改造が行われているのだろう。
「後は開けてからのお楽しみぃ……しばらくボクも動けないのでぇ、少々お待ちくださいねぇ」
 そう言うと、“つぁとぅぐあ”さんは眠るように――いや、瞑想するように瞳を閉じて動かなくなってしまった。
 だ、大丈夫かな?

「でハ、その間は私がお相手しまス」
「うわっ!?」
 突然、“しょごす”さんが正面から僕に抱き付いてきた。当然、あの色っぽく成長した姿のままだ。甘い香りが胸一杯に広がり、あの虹色に光る幻想的な瞳と目が合うと、たちまち僕の心臓は早鐘と化して、出したばかりのペニスが反応するのがわかる。それは、“しょごす”さんにも伝わったようだ。
「あらあラ……でハ、少々お待ちヲ」
“しょごす”さんは僕の胸の中から離れると、深々と一礼してからトレードマークのメイド服を脱ぎ始めた。自然な動作に見えて、艶かしい肌をちらちら見せながら胸とお尻を強調するように見せ付ける、思わず生唾を飲み込むようなセクシーな脱ぎ方だった。
 数十秒後、ぱさり、と小さな音を立てて最後の上着が落ち、白いレースとガーターベルトが眩しい、スケスケの下着姿な“しょごす”さんが僕の目の前にいた。その淫猥な娼婦のような姿に、清楚なメイドさんの残り香は頭部のヘッドドレスしか残っていない。
「うふふフ……失礼しまス」
 片膝の姿勢で僕の前にしゃがんだ“しょごす”さんは、もうビンビンに勃起している僕のペニスを愛しそうに頬擦りして、
「御立派ですネ。とても美味しそうでス」
 熱い吐息を吹きかけながら、亀頭だけをぱくりと咥えた。
 亀頭から肛門にかけて電流が走ったような快感の衝撃――たっぷり唾を溜めた口の中では、舌先で尿道口をくすぐり、軽くカリに歯を立て、時には口をすぼめて咥内全体で絞め付けて……魔性の舌技が、僕の亀頭を翻弄していた。
「はむゥ…んっんっんっ……ちゅうゥ……美味しいィ」
 あまつさえ、そのパワーアップした爆乳で陰嚢をマッサージするように刺激するのだからたまらない。相変わらず見事な口淫奉仕に、僕はたちまち達して――

「いやいやいや、まてまてまて」
「あむッ……きゃア!」
 こうもやられっぱなしじゃ男が廃る。僕は気力を振り絞って彼女の身体を抱きかかえて、身体の向きを変えながら仰向けに寝転んだ。目の前にはセクシーなガーターベルト付きの下着が上下逆に見える。69の体勢だ。
「ではでは、いただきます」
「きゃぁあン! あア……あぁあああァ……」
 僕は目の前の薄い布切れに猛烈な勢いで顔を埋めた。左右から顔を挟む太ももの感触を楽しみながら、下着の上から舌を這わせて、性器の形を浮かび上がらせ、膣口に舌を刺し、クリトリスを鼻先で押し潰す。
「きゃあふウ!…あああッ! 上…手ゥ……ぅうン!」
 負けじとばかりに“しょごす”さんも、今度は喉の奥まで総動員してフェラチオを再開する。
 しばらく、じゅぶじゅぶぴちゃぴちゃと互いの性器をクンニする卑猥な音が続いたけど――
「んんんン……ぷはァ! モ、もう我慢できませン!」
 肉欲に翻弄される雌獣の貌で、“しょごす”さんは僕の上に跨ってきた。いわゆる騎乗位の体位だ。その股間は下着ごしに愛液が垂れ落ちて、勃起したペニスの先端を濡らしていく。
 よほど欲しかったのだろう。一声も無く“しょごす”さんは腰を落とした。
「んはぁあア!! いいッ! イイですゥ!!」
 ペニス全体を猛烈な絞めつけと、それに伴う快感が襲う。人外の存在とのセックス特有の魔性の快楽は、1度味わったらもう人間の女なんて抱けなくなるくらいの凄まじさだった。
「ああぁ、ボクの分も取っといてくださいねぇ」
 “つぁとぅぐあ”さんの声が妙に遠くに聞こえる。
 時には激しく上下して、時にはゆっくりと前後し、時にはひねりを加えてローリングする“しょごす”さんの腰の動きに合わせて、爆乳が盛大に揺れまくり、それ以上に激しく僕のペニスに快楽が襲って、僕はたちまち精を放ち――

「いやいやいや、まてまてまて」
 ぱぁん!
「きゃあン!?」
 こうもやられっぱなしじゃ男が廃る――って、前も言ったかな。このセリフ――僕は腰の上で揺れる“しょごす”さんのお尻を、勢いをつけて叩いた。
 ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!
「きゃうゥ! ひゃうン! ああァ!」
 しばらく椅子に座れないくらい激しいスパンキングにもかかわらず、“しょごす”さんは紛れも無く快楽に喘ぎ、膣壁の絞め付けもますます良くなっていく。
「相変わらず、苛められるのが好きなんですね」
「あああッ! はいィ! そうなんですウ! もっと叩いてェ!!」
「このマゾめ! ほら、イきなさい!!」
 僕は渾身の力を込めて、左右のお尻を同時に叩いた。
「ああぐうぅぅぅゥ――!!!」
「ううっ!!」
 ほぼ同時に、彼女のヴァギナが痙攣するように絞め付けて、ぐったりと僕の身体にもたれかかる“しょごす”さんの中に、たっぷりのザーメンを放っていた。
「あはァ……御主人様…好きィ」
 小鳥が啄ばむようにキスの雨を降らせる“しょごす”さんのお尻を、僕はもう1度軽く叩いてあげた……
「きゃあン♪」

「ひでぼんー!!」
 その時、いきなり背後から何者かがフライングボディプレスをカマしてくれた。何か柔らかいものがクッションになってくれたので、全然痛くは無かったけど。
 わけがわからない内にマウントポジションにされてしまい、僕の上に跨るように顔を覗き込んでいるのは――誰?
「見て見てー!! ぼく大きくなれたんだよー!!」
 緑色に輝く長い髪に、同じ色のくりくりとした瞳。顔立ちから見ると二十歳前後かな。元気で活発そうでボーイッシュな素晴らしい美女だ。健康的によく引き締まった身体は、そのくせ出るべき所はしっかり自己主張していて、むちむちのお尻と太ももはホットパンツを内側から弾き飛ばしそうだし、ぴちぴちのシャツは小さ過ぎて下乳が丸見えだ……っていいますか、何ですかこの爆乳は!? 形といい大きさといい、“つぁとぅぐあ”さんレベルじゃないですか!!
 そして、何よりも僕の目を惹いたのは、頭の両脇に垂れる犬耳と、お尻に生えた長くてふさふさの尻尾……って、
「ひょっとして……“てぃんだろす”!?」
「うん! ぼくだよー♪」
 “てぃんだろす”(らしい)美女は、驚愕に固まる僕の顔を、嬉しそうにぺろりと舐めた。
 確かに、よく見れば“つぁとぅぐあ”さんの髪玉の数が1つ減っている。うーん、さすが“つぁとぅぐあ”さんの魔改造……一部の人から大ブーイングが来るくらいの成長っぷりだ。
「それにしても……本当に大きくなったね」
「でしょー? これでぼくも立派なレディーだよ!」
 最大級の親愛を込めて“てぃんだろす”が頬擦りする度に、その見事な爆乳が僕の胸板をマッサージするように刺激する。シャツの表面にしっかりと形が浮かんでいる乳首は、ほんのりと薄桃色に透けていた。その刺激的な光景は、僕の理性を破壊するに十分だった。

「きゃうん!?」
 ゴロゴロと犬というより猫みたいに甘える“てぃんだろす”の顎を片手で支えて、不意打ちのキス――突然の攻撃に一瞬目を丸くした“てぃんだろす”も、すぐに瞳を蕩かせて、自分から舌を絡めてきた。うんうん、精神的にも大人に成長しているかな。
 ぴちゃぴちゃと淫猥な音を立てながら、僕達は熱い舌を絡めあい、甘い唾液をたっぷりと交換する。大人になっても“てぃんだろす”は舐めるのが上手くて、ディープキスだけで脳味噌が爆発しそうな快感を与えてくれた。
「あはぁ…んちゅ……ひでぼんのキス…美味しいよぉ……んひゃう!?」
 “てぃんだろす”の身体がピクンと震えた。今度も不意打ち攻撃で、爆乳を正面から思いっきり揉み解したんだ。
「え、うそぉ……ああうぅ! おっぱいが……気持ちいいよお!! きゃうぅん!!」
 こんなに大きいのにしっかり感じてくれるなんて、本当に立派なおっぱいだなぁ。“しょごす”さんの爆乳は触れれば溶けてしまいそうなくらいの柔らかさだけど、“てぃんだろす”の爆乳は指で押せばプルンと跳ね返すような弾力があって揉みがいがある。ちなみに、“つぁとぅぐあ”さんのオリジナル爆乳はその両方の特性を兼ねた不思議なおっぱいだ。
 “てぃんだろす”のピンク色の乳首はピンと上を向いていて、シャツを内側から突き破りそうだった。それを指でコリコリと弄ぶと、また楽しい反応を返してくれる。
 「わぅうん!! おっぱい…おっぱいがぁ……きゅうん! 熱くってぇ……切なくてぇ……爆発しちゃうよぉ!!」
 小さい時とはまた違った、成熟した大人の貌で喘ぐ“てぃんだろす”は、生唾をいくら飲んでも滴り落ちそうなくらいの色気に満ちていた。
「きゃうぅん!?」
 今度は下半身の反応を試してみよう。腰を抱きかかえるみたいにお尻に手を這わせると、むちむちの太ももの感触が僕を迎えてくれた。大きなお尻に対してホットパンツは小さ過ぎて、股間の部分なんてラビアが少しはみ出している。
「くうぅん……そこはぁ…ダメだよぉ……」
 “てぃんだろす”も、胸とはまた違った反応を返してくる。僕の胸に顔を埋めて、ぷるぷる震えながら快楽に耐えようとする姿は、僕の獣欲をたまらなくそそらせてくれた。

「ひゃうぅん!」
 ホットパンツの隙間に指を入れて、お尻の割れ目から秘所をつつくように撫でまわすと、たちまち甘い蜜が溢れ出て指先を濡らしてきた。うんうん、いい反応だね。
「きゅうぅん……だめぇ…出ちゃうよぉ……」
「ちょっときついから、脱がしちゃおうね」
「あ、ああっ、ダメだめぇー!!」
 急に慌て始めた“てぃんだろす”のホットパンツに手を当てて、一気に剥ぎ取ると――びんっ!
「わぉおん!!」
「え?」
 僕の臍の辺りに、何か固い物が当たった……って、これはまさか?
「ちょっとゴメン」
「やあ! ダメだよぉー!!」
 動揺する“てぃんだろす”を強引に押さえ付けて、身体をひっくり返すと――見事なイチモツが、僕の目の前に飛び込んできた。
「うわぁ!?」
 さすがに仰天する僕に、
「だからダメだって言ったのにぃ……ひでぼんイジワルー!!」
 股間を押さえるようにちょこんと座り込んで、“てぃんだろす”は涙目で僕を拗ねるように睨んだ。
 ……なるほど、大きく成長したのは女の部分だけじゃなかったんだね。それじゃあ……
「あ、なに? なにするのぉー!?」
「ちょっと、勉強してみようか」
 僕は素早く“てぃんだろす”の後ろに回ると、背後から抱き付きながら、足で彼女(?)の太ももを押さえて大きくかき開いてあげた。
「わぉん!? だ、ダメだよー!!」
「いいからいいから」
 しっとりと濡れた女性器の上に、ビンビンな男性器が直立している。僕は“てぃんだろす”の手を取って、勃起した肉棒に導いた。
「ほら、そっと握り締めてごらん」
「う、うん」
 恐る恐るといった感じで、自分のペニスをゆっくり握ると――

「きゃうぅん!!」
 肉棒をビクン! と震わせて、“てぃんだろす”の身体も小さく跳ねた。
「な、な、なにぃ……これぇー?」
「とりあえず、何も考えずに言う通りにしてごらん」
「う、うんー」
「まずは、握ったまま上下に手を動かして――」
「きゃぉん!! ああぁ……き、気持ちイイかもー」
「スピードや握る強さを変えながら、時々先っぽを撫でたりして――」
「わぅうううう……すごいぃ! “つぁとぅぐあ”様に舐められてるみたいー!!」
 数分後――大きな乳房を盛大に揺り動かしながら、“てぃんだろす”は覚えたてのオナニーに陶酔していた。
 でも、男の方ばかり刺激してはバランスが悪いよね。
「はぁはぁ……わぅん!?」
 僕は“てぃんだろす”の手を離して、今度は女性器と爆乳に手を這わせた。もうビシャビシャに濡れていたヴァギナは指がすんなり入るくらい熟していて、いつでも男のモノを受け入れられそうだ。爆乳も相変わらず揉み応えがあって、思う存分指を這わせる度に、たまらない女の反応を返してくれる。
「きゃおぉん!! あああっ!! ひでぼんんんっ!! ぼく…もうダメだよぉ……」
 もうぼろぼろ涙を流しながら、“てぃんだろす”は身体を丸めるように快楽の嵐に耐えながらも、その指の動きは止まらない。そして、僕の方もそろそろ限界が来た。
「“てぃんだろす”……いいかな?」
「う、うん……痛くてもガマンするから」
 “てぃんだろす”はこくりと頷くと、四つん這いの姿勢になってお尻を少し上げた。美味しそうなお尻の上には、ふさふさの尻尾が誘うように揺れている。
 僕は“てぃんだろす”に覆い被さるように身体を合わせると――ゆっくりと湯気立つヴァギナの中に肉棒を挿入した。

「ひゃあああん!! な、なにこれぇ……!?」
 熱い淫肉がペニスを包み込み、凄まじい快楽が股間から背筋を通り抜けて行く。“てぃんだろす”の中は想像できないくらい具合が良かった。キツいけどキツ過ぎず、微妙な圧力で僕のペニスに至上の快楽を与えてくれる。
「気持ちいい……気持ちイイよぉ!! はぁはぁ…ぁああああっ!! す、すごいよぉー!!」
 今まで何度か“てぃんだろす”とセックスした事があったけど、毎回快楽よりも痛みの方が大きいようだった。男を受け入れるには、“てぃんだろす”の身体は未成熟だったからだ。だから、他の邪神と交わる機会があっても、“てぃんだろす”は男性器の方を主に使っていた。
 でも、今の“てぃんだろす”は立派な大人の女性だ。僕のペニスも十分に受け入れて、純粋な女の喜びに打ち震えている。
 よし、そろそろフィニッシュと行こうかな。
 僕は再び“てぃんだろす”の手を己のペニスに導いた。特に指示するまでも無く、自分から手が動いて男性器を扱き始める。
「きゃううぅん!! ひゃうぅん!!」
 喘ぎ声と一緒に溢れ出た唾液でべチョべチョになった爆乳を揉みまくりながら、僕は勢いよく腰を叩きつけ続けた。
 そして――
「ううっ」
「あぉおおおおおおおんんんッッッ――!!!」
 月夜に吼える狼のような姿勢で絶頂の喘ぎを吼えながら、“てぃんだろす”はペニスから大量の白濁液を噴出して、同時に僕も子宮の奥にまで精を放っていた……
「……あのぉ、最初にエッチしたいって言ったのはボクなのにぃ」

 げしっ
「ぐおっ!?」
 射精の虚脱感を楽しむ間も無く、また僕の身体を横殴りに何かが体当たり(鉄山靠)してきた。
 無様に地面の上を数回転がって、頭を押さえながら顔を上げると――
「……おまたせ……」
 僕はマヌケに口を半開きにして、ぽかんと目の前にいる女性を見つめていた。
 外見年齢は三十代前半ぐらいだろうか。彼女以外の世界の全てが無意味と思えるくらいの、素晴らしい美女だった。解くと長いだろう漆黒の髪は、綺麗に結われて色っぽい後れ毛を覗かせている。切れ長の冷たい眼差しに、白を通り越して灰色の肌。わずかに紅を差した小さな唇は、ぞっとするくらいセクシーだ。喪服を連想させる漆黒の着物は胸元が内側から着崩れていて、熟れきった淑女の肢体を隠しきれずにいた。その爆乳の大きさは、これまた“つぁとぅぐあ”さんに匹敵するんじゃないだろうか? それに正面からでもわかる形の良いヒップラインのボリュームときたら……今すぐそこに顔を埋める事ができるのなら、そのまま窒息死しても悔いは無いだろう。
 髪の先から足のつま先まで、全てが完璧に僕好みの美熟女――ひょっとして彼女は!?
「い、“いたくぁ”さん!?」
「……気付くのが……遅い……」
 美熟女バージョンに魔改造を遂げた“いたくぁ”さんは、相変わらずの無表情のまま、上品な仕草でへたり込む僕の脇に腰を下ろした。成熟した女の甘い体臭が鼻腔をくすぐり、ただそれだけで僕の心臓がハードロックのドラムと化す。
「そ、そ、それにしても……ななななぜそんな姿に!?」
 おおおおお、お、お、お、落ちつけ僕。いくらムチャクチャ僕好みな外見だからといって、中身は『あの』“いたくぁ”さんなんだぞ。またどうせロクでもない事を考えて――
「……この姿は……嫌い?……」
「へ?」
「……この姿なら……あなた好みじゃないかしら……」
 “いたくぁ”さんの透明な美貌には、今まで見た事も無い類の要素が含まれているようだった。
「い、い、“いたくぁ”さん!?」
「……たまには……こんなのも……良いんじゃない?……」
 ああ、その流し目――その瞬間、僕の理性はまた事象の彼方へ消え去っていた。

「おおお、奥さん!!」
「……誰が……奥さん?……」
 思わず背後から抱きしめる僕だけど、“いたくぁ”さんは全く抵抗する様子を見せなかった。
 後れ毛が揺れる色っぽいうなじを鑑賞しながら、黒い着物の上から彼女の身体をまさぐり、指先と掌への反応を堪能する。まるでお通夜の未亡人を襲っているみたいなシチュエーションに、僕の性癖は激しく燃えあがった。ああ、熟女特有の柔らかな肢体の感触がたまらない……あれ? この美熟女特有の身体の感触を、つい先日にも味わったような……?
「……んっ……ぁあ……」
 ふと脳裏に浮かんだ疑念も、“いたくぁ”さんの甘い声に雲散霧消してしまった。無我夢中で襟の中に手を差し入れて、直に乳房に手を這わせる。膨大な量の爆乳は、どこに手を蠢かせても乳房があるように錯覚させてくれた。サラサラとした体温の低い乳肉が、指の間に広がるのがとても心地良い……
「……くぅ……もっと……優しく……あ……」
 ちょっぴり陥没気味の乳首を探し当てて、指先で念入りにくすぐると、すぐに乳輪ごと乳首がぷっくりと膨らんで、しっかりと立ってくれるのがたまらなく嬉しかった。
「……ぁあ……そこが……感じ……ああっ!……」
 ひたすら爆乳を責められる“いたくぁ”さんの吐息に、甘い声が混じり始めたのを確認した僕は、焦らす意味も込めて愛撫の矛先を変更した。
「……やぁん……」
 礼儀正しく閉じられた足を少し乱暴にかき開いて、裾から手を入れてまずは太ももをゆっくりと撫でる。まろびでた白い太ももは息を飲むくらい色っぽかった。熟女特有のほんの少し垂れ気味の肌が僕の掌に吸い付くようで、いつまでもこうして撫で回したい気分だ。
「……っっくぅ!……」
 太ももを撫でる手がゆっくりと腰の方に伸びて、股間の内側に沈むと、“いたくぁ”さんはピクっと身体を震わせた。当然ながら和服に下着なんて無粋なものを着ていない“いたくぁ”さんの秘所は、早くもしっとりと濡れていて、陰毛と淫肉が指に絡み付くように僕を捕らえて離そうとしない。たまらなくいやらしいアソコだ。ヘアの中に隠れたクリトリスからラビアに尿道口、膣口を通ってアヌスの方に指を進めると、それだけで“いたくぁ”さんの性器はクチュクチュと卑猥な声で歌い続けた。

「……ああうぅ……はぁああ!……ああっ……ぁああああ!!……」
「そろそろ入れてみましょうか?」
「……うん……ああぅ……早く……欲しい……」
「前と後ろ、どちらに入れて欲しいですか?」
 当然、発情しちゃってる“いたくぁ”さんなら、お尻の方かなと思っていたんだけど……
「……お願い……普通に……して欲しいの……」
 うるうると潤んだ瞳で懇願されては、コクコクと自動人形みたいに頷くしかない。
「ボクの番はまだですかぁ……」
 “つぁとぅぐあ”さんの懇願も聞こえたけど……今は応える余裕はなかった。ゴメンナサイ。
 僕は彼女の身体を横向きに寝かせると、片足を持ち上げながら支えるような体位で、挿入を試みた。やっぱり、喪服の未亡人を犯すには、この体勢が一番だね(偏見)。
 “いたくぁ”さんの熟した秘所は、愛液で濡れ火照りながら、むわっと女の匂いを漂わせている。それは何よりも僕の欲情を刺激するフェロモンだ。
「……もぅ……ああぁ……早くぅ……」
 言われるまでもない。僕は声をかける余裕も無く、“いたくぁ”さんのヴァギナに肉棒を叩き込んだ。
「……んっ……くぅ!……」
 柔らかく暖かな濡れた淫肉が僕のペニスを優しく包む。自ら快楽を貪るように脈動する“いたくぁ”さんの中の快楽に陶酔しながら、僕はリズミカルに腰を叩き付けた。
「……ああう……んんっ……くはぁ……あああっ……」
 “いたくぁ”さんも黒い着物の袖を噛んで、快楽の奔流に必死に耐えている。うーん、やっぱり黙っていればすっごく可愛いんだよなぁ。この女神様は……今の彼女はメチャクチャ僕好みな姿だし。
 そんな事を考えていた矢先に――
「……んんんんん――ッ!!……」
 彼女は全身をビクビクっと痙攣させて、くたっと地面に伏してしまったんだ。相変わらず感じやすいんだなぁ。でも、僕はまだ達してないんだよね。じゃあ、お約束の……

「……はあぁああっ……」
 ぐったりと気絶したように横たわっていた“いたくぁ”さんだったけど、裾をぺろんとめくって、白くてツヤツヤので重量感満点のお尻に顔を埋めて頬擦りすると、たちまち甘い声を放ち出した。普段の“いたくぁ”さんのお尻は、形も見事で肉付きの良い美尻なんだけど、小ぶりなのがちょっと僕的に残念だった。でも、今の彼女は形と肉付きに、色艶ボリューム全てが百点満点の最高のお尻を持っているんだ。まるで乳房を揉むみたいに尻たぶを愛撫しながら、お尻の割れ目にペニスを挟む。パイズリならぬ尻ズリを試したり、膣口から流れ落ちる精液を指先ですくって、ココア色のアヌスに塗りつけると、アヌスは物欲しげにパクパク口を開けて、貧欲に僕のペニスを誘っているようだった。
「――じゃあ、行きますよ」
「……もお……お尻ばかりぃ……」
 先程と同じ体位を取りながら、ほんの少し唇を尖らせる“いたくぁ”さんのアヌスに狙いを定めて――
――挿入は本当にスムーズだった。
「……きゃあうぅ!!……あああ……ぁああっ!!……」
 やっぱり“いたくぁ”さんのアナルは最高だ。意思を持つ生ゴムのように僕のペニスを貪り尽くし、下半身がドロドロに蕩けそうな至上の快感を伝えてくれる。突けば亀頭を直腸が絞めて、戻せば皺の一本まで伸びたアヌスが咥え込んで離さない。永遠にこのまま挿入していたいと、心の底から思える最高のアナルだ。

「……ああううっ!!……いやぁ……お尻ぃ……いいのぉ!!……」
 “いたくぁ”さんの乱れ方も、普通のセックスとは比べ物にならないくらい激しい。さっきイったばかりなのに、早くも昇り詰めようとしているようだ。
 そして――
「……あぁあああぅうううう……きゃあぅうううん!!!……」
「うううっ!!」
 直腸の奥の奥まで大量のザーメンを解き放つと同時に、“いたくぁ”さんも肛門をキュっと絞めて絶頂を教えてくれた……
「……はあ……はあ……」
「今日は積極的でしたね……どういう風の吹き回しですか?」
 背中から抱きしめるように絶頂の余韻に浸りながら、ピロートーク代わりに先刻からの疑問を口にしたんだけど、
「……んっ……」
「!?」
 急に身体をこちらに向けて、不意打ちのキス――その甘い唇の感触に、僕の頭の中は真っ白になった。
「い、“いたくぁ”さん?」
「……ふふふ……」
 初恋のキスみたいにドギマギする僕を尻目に、“いたくぁ”さんの無機的な美貌は相変わらず透明なままだった――
「次はやっとボクの番ですねぇ……?」

「……あの」
「はい?」
 背後からのか細い声に、少し嫌な予感を感じながら振り向いた瞬間――
「えいっ」
 案の定、僕はフライングクロスチョップの直撃を受けて“いたくぁ”さんの傍から吹き飛ばされた。くそう、今日はこういうパターンなのか。
 ふらつく頭を押さえて顔を上げると……元祖・反則的な爆乳、一糸纏わぬムチムチの肢体、癖のある焦げ茶色の膨大な髪に、温厚で優しそうな魔王のごとき美貌――そう、“つぁとぅぐあ”さんが僕の目の前に降臨してくれたんだ。
「あ、あのぉ……大丈夫ですか?」
 ……ん? 何だか雰囲気が普段と違うような。口調も違うし、どこかモジモジとした恥ずかしそうな態度を取っている。そもそも、爆乳の先端と股間を髪で隠そうとしているなんて、いつもの“つぁとぅぐあ”さんでは考えられない事だ。
「んんぅ〜んんんんぅ〜」
 その時、“つぁとぅぐあ”さんの奇妙な呻き声が聞こえてきた――僕の目の前とは正反対の方角から。
 愕然と振り返ると、そこには――
「つ、“つぁとぅぐあ”さん!?」
「んんんんんぅ〜〜〜」
 焦げ茶色の髪の毛で、簀巻きみたいに全身を拘束されて地面に転がる“つぁとぅぐあ”さんがいた……
……って、“つぁとぅぐあ”さんが2人!?
 しかも、向こうの“つぁとぅぐあ”さんを拘束している髪の毛は、よく見ると目の前にいる“つぁとぅぐあ”さんの髪と繋がっているじゃないか。
 これは、もしかして……彼女も皆と同じ魔改造だとすれば?
「ひょっとして君は、“おとしご”ちゃん!?」
「は、はい!……です」
 “つぁとぅぐあ”さんそっくりに成長した“おとしご”ちゃんは、顔を真っ赤にしてはにかみながらこくりと頷いた。

「あのぅ、なぜ“つぁとぅぐあ”さんを縛っちゃってるの?」
「“つぁとぅぐあ”様の代わりに……して欲しいんです」
「ええと……つまり、“おとしご”ちゃんも、僕と?」
「はぃ……あの、せっかく大きくなれたので……いいでしょうか」
 モジモジしてる“おとしご”ちゃんのエッチな願い事に、理性が絶賛崩壊中の僕が否と言えるわけがない。
 僕はいつも“つぁとぅぐあ”さんにするように、獣のように襲いかかろうと――はしなかった。
「あっ……」
 僕はそっと彼女の腰を抱えて――本当は肩を抱く場面だけど、身長差があって無理だった――ちょっと膝をついてもらい、彼女のほっぺたを両手で包みながら顔を近づけて、そっと唇を合わせた。以前、“つぁとぅぐあ”さんにした時はとんでもなく恥ずかしがっていたので、“おとしご”ちゃんもそうかと思ったけど、彼女は静かに瞳を閉じて受け入れてくれた。
「んっ……はぁああ」
 初めは小鳥が啄ばむような軽いキス。徐々に唇と舌が触れる時間が延びて、最終的には互いの舌と唾液を混ぜあう濃厚なディープキスと化した。
「んんっ……ぁああ…ああっ」
 キスを続行しながら手を胸元に差し伸ばして、人知を超えた偉大な爆乳に指を沈ませると、“おとしご”ちゃんは恥ずかしそうにイヤイヤしちゃう。でも、大人の色気にあふれた美貌は羞恥とは別の要因で朱に染まり、指の動きに合わせて小さく喘いでくれるんだ。
 それにしても、外見が“つぁとぅぐあ”さんそのまんまなのに、この照れ照れで恥ずかしがり屋さんな仕草の数々……何だかギャップがあって逆にそそられるなぁ。
「あふうぅ……ぅうん! あ、あぁ……きゃうん!」
 指が何処までも沈むくらい柔らかいのに、張りがあって型崩れしない見事な乳房。ツンと立った色艶形味全てがパーフェクトな乳首――“おとしご”ちゃんの爆乳は、“つぁとぅぐあ”さんに勝るとも劣らない素晴らしいものだった。いくら愛撫しても物足りない……
「んんくぅ!!」
 突然、“おとしご”ちゃんが僕の身体を抱きしめてビクビクっと震えると、そのまま地面にしゃがみ込んでしまった。そして、股間からちょろちょろと香ばしい液体が溢れ出て……どうやら、胸だけでイっちゃった上に、イった弾みで失禁しちゃったらしい。

「あ…あぁ……ごめんなさい! ごめんなさい!」
 真っ赤な顔を手で覆い隠してペコペコ誤る“おとしご”ちゃんだけど、僕は無言で彼女の身体を仰向けに横たえて、太ももをゆっくりとM字開脚させた。
「ああぁ……やだぁ…恥ずかしいよぉ……」
 台詞とは裏腹に、抵抗が全く無かったので、僕は少しも遠慮せずに、濃い目の陰毛に隠された、むわっと湯気立つように火照った美しい女陰に、アナルからクリトリスにかけてまで、べろ〜〜〜んと念入りに舌を這わせた。
「きゃうぅん!!」
 たちまち身体を仰け反らせて、爆乳をブルンブルン盛大に揺らしながら喘ぐ“おとしご”ちゃんのアソコは、ちょっぴりオシッコの味がした。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てて性器をしゃぶりまくると、ヴァギナから次から次へと愛液があふれてくる。このまま彼女の股間で溺れちゃうんじゃないかと思ったくらいだ。やっぱり、“おとしご”ちゃんは羞恥心を刺激する方が感じやすいらしい。
「あぁあああううっ!! だめぇ! きゃふぅ! だめだよぉ……ぁあううん!!」
 しばらく、たっぷり十数回はクンニでイかせてあげて、同数の潮とオシッコを顔にかけられた後……
「そろそろ……入れてみようか?」
 放心状態の“おとしご”ちゃんの耳には、ちゃんと聞こえているのか不安だったけど、
「う、うん……私の処女、もらってください……」
 小さくポツリと、しかし明瞭に返答してくれた。
 仰向けに寝かせた姿勢のまま、足を少しだけ開かせて、覆い被さるように身体を乗せる。やはり、初めての時は正上位が基本だろう。そそり立つペニスを“おとしご”ちゃんのヴァギナに押し当てて、狙いを定める。
「じゃあ、いくよ」
「は、はい……あのぅ、お願いがあるの……」

 真っ赤な顔を覆う指の隙間から、“おとしご”ちゃんが本当に小さな声で僕に懇願してきた。
「どうしたの?」
「あの…その……今だけでいいですから……パパって呼んでいい?」
 力強く一回頷くと同時に、僕は腰を前に突き出した。
「……っく!」
 一瞬、僅かな抵抗感があって――
「――っ!!!」
 次の瞬間、ペニスの先端が子宮口に当たるのを、股間が爆発したかのような衝撃的な快感と一緒に感じていた。
「……っぁあああ……ああああっ! いたぁあうううぅ……ぅうう!」
「だ…大丈夫?」
 背中に爪を立てながら処女喪失の痛みに耐える“おとしご”ちゃんに、声をかける僕だけど……情けない事に、当の僕の方が悶絶していたりする。1mmペニスを動かすだけで、最低一回は確実に射精するくらいの猛烈な快感――やはり“おとしご”ちゃんも、“つぁとぅぐあ”さん譲りの魔性の名器の持ち主だったんだ。
「ぅう…うん……あくぅ……だ、大丈夫だから…ぁああ……もっと…動いていいよ……パパ」
 ある意味天国と地獄を兼ねたお願いだけど、パパと呼ばれては聞かないわけにはいかない。僕は頭の中で素数を数えながら、死に物狂いで腰を動かした。
「んきゃううぅ!! ああぁ…あああぁん!! パパぁ、パパぁあ!!」
 さすが“つぁとぅぐあ”さんの“おとしご”。初めてなのにもう感じ始めている。僕は頭が真っ白になりながらノンストップで腰を叩きつけ、同時に射精していた。
 そして――
「きゃうううううぅぅぅ!! ぱぱぁあああああ!!!」
 全身の骨が砕けそうな強さで僕にしがみ付きながら、絶頂を迎える“おとしご”ちゃんの胸の中で、僕も数百回目の射精を迎えていた……

「はぁ…はぁ……ぱぱぁ……すきぃ」
 しばらく、僕と“おとしご”ちゃんは繋がったままぐったりとしていたんだけど――
「ふっふっふっふっふぅ……よくもやってくれましたねぇ」
 突然、にゅぽんと“おとしご”ちゃんのヴァギナから僕の男性自身が引き抜かれた。何事かと思う間も無く、僕の身体に数万本の髪の毛が絡み付いて、“おとしご”ちゃんの元から引き離されてしまったんだ。
「エッチしましょうって最初に言ったのはボクなのにぃ……無視するのはイヤですよぉ」
 僕を背後から抱きかかえる人物の正体は、確認するまでもなかった。この後頭部に当たる至上最強の爆乳の持ち主は、あの御方しか考えられない。
「“おとしご”ちゃんにも抜け駆けされちゃうしぃ……今度こそボクの番ですからねぇ」
 “つぁとぅぐあ”さんの声は、いつものおっとりとした女神様のもので、普段と何も変わりがないように聞こえる。しかし――
「どどどどド、どうゾ!!」
「こ、コワイよー!!」
「……お好きなように……」
「ママ……怖い…」
 そんな僕達を見る“しょごす”さんに“てぃんだろす”に“いたくぁ”さんに“おとしご”ちゃんは、ガタガタ震えながら岩陰に隠れて怯え切っていたりする……い、今の“つぁとぅぐあ”さんって、どんな顔しているのかなぁ――!?
「ひでぼんさぁん」
「は、はいぃ!!」
 ビクつきながら恐る恐る振り向いてみたけど……
「今日はぁ……たっぷり可愛がってくださいねぇ」
 あの『にへら〜』とした眠そうな女神の美貌が僕を迎えてくれた。
「ひでぼんさんをぉ……全部食べちゃおうかなぁ〜」
 そして、そのほんわかと優しい女神様の美貌が、万物を睥睨する妖艶な淫魔の女王の如き魔性に変わって――
「……チェスト!!」
 どげしっ!!
 蒼い光を纏った超光速のライダーキックに、“つぁとぅぐあ”さんが吹っ飛ばされたのは次の瞬間だった。

「……へ?」
 さすがに呆気に取られた僕の目の前に、蒼い輝きと共に降り立ったのは――
「ば、“ばいあくへー”さん!?」
 輝く蒼髪に華奢な裸身を半透明の羽衣で隠した、世にも美しい透明な機械天使――“ばいあくへー”さん以外の何者でもなかった。
「……ごめんなさい。少し着陸に失敗してしまったの」
「い、いやいや、今のはどう見ても飛び蹴り――」
「……そんな事よりも、危ないわ」
「確かに危ないですが……いや、そういう事じゃなくて。チェストとか言ってたし」
 “ばいあくへー”さんは、普段通りの透明な美しさを維持したまま……全く悪びれる様子はなかった。
「……“つぁとぅぐあ”神に精気を吸い取られてしまっては、一歩間違えれば命にかかわるの」
「いやまあ、それは毎度の事で承知してますが」
「……だから……私が先に精気を吸い取れば大丈夫」
 全然大丈夫じゃねぇ!! っていうか性格変わってますよ“ばいあくへー”さん!!
 そんなツッコミを入れる間も無く、僕は“ばいあくへー”さんに押し倒されていた。
「……げに恐ろしきは……女の嫉妬……」
 何だか岩陰で“いたくぁ”さんがブツブツ言ってる気がしたけど、あえて無視する。
 そんな彼女達の超ナイスバディに触発されたのか、“ばいあくへー”さんは自分のスレンダーな身体を撫でて、吐息を漏らした。
「……素の私を愛して欲しいけど……あの方達に対抗するには、こうするしかないわね」
「は?」
 突然、まばゆく透明な蒼い輝きが彼女の身体から迸り、僕の目を焼いた。至近距離だからモロに見ちゃったよ。
「うわっ!?」
 苦痛は無かったけど、視力の回復には数十秒の時間が必要で――それが回復した時には、彼女の『変身』は終了していたんだ。

「ば、“ばいあくへー”さん?」
「……少し恥ずかしいけど、この体格の方が貴方好みでしょう? 私、貴方の為ならどんな姿にもなるわ」
 僕の上に圧し掛かる“ばいあくへー”さんの姿は、今までのスレンダーな彼女とは一変していた。薄めの美乳は“つぁとぅぐあ”さんに匹敵するくらいの爆乳となり、朱鷺色の乳首が今にも僕の顔に触れそうだった。いや、胸だけじゃなくて、プロポーション全体が僕の好みを具現化したようなグラマラスバディへと変貌しているんだ。十代後半ぐらいの外見年齢は二十代後半ぐらいに成長していて、妖艶な色香をこれでもかと放っている。そんな裸身を覆うのは、半透明の羽衣だけなのだからたまらない。ちなみに、背中のメカ部分もパワーアップしていて、身体の数倍もの巨大な機械の翼を鳳のように広げる姿は、まばゆいばかりの威厳と神々しさだ。
 そんな超僕好みの“ばいあくへー”さんが、潤んだ瞳で僕を見つめながら、ペニスにそっと手を伸ばしてくれるのだからたまらない。
「……勘違いしないでね。こんな事をするのは、貴方だけなの」
 言われてる事は男冥利に尽きるけど、念力か邪神パワーで手足の自由を奪われたまま仰向けに転がされて、それでも天に向かって勃起してる肉棒をゴシゴシと両手で擦られていては、情けない事この上ないなぁ……
「……自ら望んだわけじゃないけど……貴方を喜ばせる技術は習得しているわ」
「ううぅ……!!」
 言うだけあって、“ばいあくへー”さんの手淫はムチャクチャ上手かった。あの細い手のどこにそんなテクニックが備わっていたのかと驚くくらい、巧みに性感帯を刺激してくれる。白魚のような、と形容されるだろう指が滑らかにシャフトをこすり、陰嚢を絶妙な強さで揉み解し、カリをくすぐり、亀頭を撫でる――あんなに出しまくったにもかかわらず、たちまち僕のペニスは爆発寸前状態に陥った。

 それにしても、僕に対してだけとはいえ、男性恐怖症とSEX恐怖症を克服したというのは、喜ばしいことだなぁ……
 そんないつもの現実逃避に浸っている内に、僕の股間の上には騎乗位の体勢で“ばいあくへー”さんが跨っていたりする。清純そうな彼女だけど、着ている物といえば半透明の羽衣だけなので、その気になればいつでも挿入可能なんだ。な、何だか妙に焦っているというか、展開が早い気がするけど。
「……はしたない女だと思われてもかまわない。心も身体も、永遠に貴方と結ばれたいの」
 静かで透明な眼差しは、真っ直ぐ僕を見つめていて……その瞳に吸い込まれそうになったその時、
「……ぁああっ」
「うくぅ!」
 そっと腰を下ろした彼女の中に、僕の怒張は挿入されていた。背筋を羽毛で撫でられるようなゾクゾクとした感覚と同時に、呼吸が止まるほどの快感が股間で爆発した。いつのまにか自由になっていた上半身を起こして、対面座位の体勢で彼女をガンガン突きまくる。人外との交わりの例に漏れず、“ばいあくへー”さんとのセックスは至上の快楽を与えてくれた。激しく僕達の身体が脈動する度に、飛び散る汗がきらきら光る。僕は獣のように爆乳に噛み付き、思う存分乳肉の感触を味わいながら、狂ったように腰を動かした。
「……あぅううぁああっ!! んふうぅ!! わたし……わたし…ぁああっ!!」
 僕達は情熱的に唇を貪り合いながら、互いの身体が壊れそうなくらい激しく抱き合い、このまま2人の身体が溶けて一体化しそうな勢いで快楽を求め合って――
「……イクぅうううううう――!!」
「くうっ!」
 そして、同時に絶頂を迎えた。
「……はぁ…はぁ……」
「ぜぇぜぇ……だ、大丈夫ですか?」
 まるで気絶したようにぐったりと僕にもたれかかる“ばいあくへー”さんの髪を指でそっと梳くと、
「……貴方と出会えて…本当に良かった」
 滅多に見せない微笑を浮かべて、“ばいあくへー”さんはもう一度僕の唇に自分の唇を触れさせた――

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふぅ〜〜〜」
 その笑い声を聞いた瞬間、恐怖のあまり僕は即死した。マジで。
 そして、あまりの恐ろしさに、うっかり魂が昇天する場所を間違えて、僕は生き返った。それくらいコワイ笑い声だったんだ。
 ギギギーと音を立てて、恐怖に震えながら人形みたいな動きで首を回すと――
「ボクが最初に『エッチしましょう』って言ったんじゃないですかぁ〜〜〜ふぇえええええええええええぇ〜〜〜」
 子供みたいにびーびー泣く、いつもと変わりない“つぁとぅぐあ”さんの姿があった。いや、“つぁとぅぐあ”さんがマンガみたいな目の幅涙を流して泣くシーンなんて滅多にないけど。この御方、時々こんな風に子供っぽくなるからなぁ。
「ほらほら、泣かないでくださいよ」
 彼女の頭をナデナデしながら、誰かにフォローしてもらおうと後ろを振り向いてみると――
「りりりりり臨時メンテナンスが入りましたので失礼しまス!!」
「きゃいんきゃいん!!」
「……君ならできるよ……ほら、頑張って……そんな状況?……」
(気絶中)
「……お、お、黄金蜂蜜酒よ!! はは早く飲んで!!」
 “つぁとぅぐあ”さん以外の全員が岩陰に隠れて、またガクブル状態に陥っていたりする。いつのまにか魔改造された御方も元の姿に戻っているし。皆どうしたのかな?
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
 ま、まぁ、確かに普段は10mぐらいの長さの“つぁとぅぐあ”さんの髪の毛が、この暗黒世界ン・カイ全体を覆い隠そうなくらいに長く広がって、台風の暴風か巨大津波みたいに盛大なスケールで激しく蠢いているのが気になりますけどー!! まるで世界の終わりみたいな光景といいますかー!!
「つつつ“つぁとぅぐあ”さん!!」
 僕は跳び付くみたいに“つぁとぅぐあ”さんに抱き付いて、
「んんん〜〜〜!?」
 そっと口付けした。舌まで入れる濃厚な奴を。甘く熱い咥内の感触に、僕の頭の中は真っ白になったけど――彼女の反応はその比じゃなかった。

 “つぁとぅぐあ”さんは垂れ目を丸くして、顔を真っ赤にすると、
「ふにゃああああああぁ〜〜〜」
 周囲を蠢く髪の洪水がたちまち彼女の元に収束して、その中に包まって隠れちゃったんだ。
「ひでぼんさんのいじわるぅ〜〜〜乙女にそんな事をしちゃダメダメですよぉ」
 相変わらず“つぁとぅぐあ”さんはキスに弱い。男女の行いとなればどんなプレイもOKなんだけど、キスに関してだけは、純な中学生でもここまで恥ずかしがらないぞってくらいに照れまくってしまう。
「さすが御主人様でス。感服しましタ」
「わぅ、わふーん」
「……ぐっじょ……」
「……少し納得行かないわ」
 もう大丈夫だと思ったのか、岩陰に隠れていた皆さんも“つぁとぅぐあ”さんの周りに集まってきた。
 それにしても……うーん、確かにちょっと“つぁとぅぐあ”さんが可哀想だったかな。僕は髪に包まった“つぁとぅぐあ”さんの肩(だと思う)場所をそっと叩いた。
「ごめんなさい“つぁとぅぐあ”さん。お詫びといっては何ですが、僕にできる事なら望み通りに何でもしますから」
 髪玉の中から、“つぁとぅぐあ”さんの垂れ目だけがちらりと覗く。
「……いっぱいエッチしてくれますかぁ?」
「はい。存分に。足腰立たなくなるまで」
 足腰立たなくなるのは間違いなく僕の方だろうけど。
「それならぁ……たっぷり愛してくださいねぇ」

 ばっと髪の毛が翻り、中からお姉さん座りの“つぁとぅぐあ”さんが、あの妖艶な魔性の笑みを浮かべて降臨した。
 その闇の中に輝くような美しい肢体。一目で魂が吸い取られそうな美貌。近くにいるだけで射精しそうな色香……やはり“つぁとぅぐあ”さんは、僕にとって最高のセックスシンボルだ。
 理性を彼岸の彼方へ放り捨てて、無我夢中で抱きつこうとした――その時、
「きゃぁん」
 突然、“つぁとぅぐあ”さんの肩に大量の黄色っぽい粘液が浴びせられた。黄金色に輝く透明な粘液は重力に従って一方は肩から背中を伝ってお尻と脹脛を濡らし、もう一方は爆乳を舐めて臍を撫でて小股の中に消えていく……って、これはもしや!?
「蜂蜜でス。“ばいあくへー”様の黄金蜂蜜酒をお借りして成分分離しましタ」
「……はちみつで……ローションプレイ……」
 “つぁとぅぐあ”さんに大量の蜂蜜をぶっかけた犯人は、“しょごす”さんと“いたくぁ”さんだった。
「わん、わんわん!」
「……“つぁとぅぐあ”神にはちょっとだけ意地悪だったから、私達も手伝うわ」
 “つぁとぅぐあ”さんは、ほんの少しだけきょとんとしていたけど、
「うふふふぅ……皆さん可愛がってくださいねぇ」
 再び、あの魔王のような優しい笑みを浮かべてくれたんだ。

「くぅん……」
「きゃぁん……うふふぅ、2人とも甘えん坊さんですねぇ」
 まず、最初に動いたのは“てぃんだろす”と“おとしご”ちゃんだった。一番蜂蜜が溜まっている爆乳の谷間に飛びついて、ぺろぺろ舐めながら乳房全体に蜂蜜を塗り込めていく。2人の小さな手でむにょむにょと形を変えながら黄金色に染まる爆乳は、息を飲むくらいエロチックだった。
「んっ……ボクのおっぱいぃ…あぁん…甘くて美味しいですかぁ」
 乳肉の蜂蜜漬けに軽く歯を立てたり、乳首をちゅうちゅう音を立てて吸う2人の執拗な乳責めに、“つぁとぅぐあ”さんは妖しく微笑みながら身悶えした。ツンと立った乳首に蜂蜜を塗り込めてから口に含んでしゃぶる2人の美少女の姿は、まるでフェラチオしているように背徳的な光景だ。
「ひゃあぁん……ああぅ…気持ち良い……ですよぉ」
 無論、子供達だけに任せるわけにはいかない。僕に“しょごす”さんは当然として、“いたくぁ”さんに“ばいあくへー”さんまでもが、“つぁとぅぐあ”さんの身体中に蜂蜜を垂らしては、全身隅々まで塗り込める。ヌルヌルな“つぁとぅぐあ”さんの柔らかな肌は、触っているだけで射精しかねないくらい気持ち良かった。美肌に甘味が染み込むくらいにたっぷり漬け込んだら、そこを思う存分にしゃぶりまくる。髪の毛、耳、瞼、唇、うなじ、顎の裏、頬、首元、鎖骨、肩、一の腕、二の腕、肘の内側、掌、指の一本一本、腋の下、わき腹、くびれたウエストのライン、腰骨、胸の谷間、爆乳全体、乳輪、乳頭、乳房の影、肋骨の下、上腹、臍、下腹、肩甲骨、背骨のライン、背の肉、お尻の笑窪、尻肉、尻たぶ、アヌス、蟻の巣渡り、陰毛、クリトリスの包茎、クリトリス、大陰唇、小陰唇、ラビア全体、尿道口、ヴァギナ、太ももの付け根、太もも全体、膝の裏、脹脛、足の裏、足指の一本一本……あらゆる個所に、僕達は蜂蜜を塗し、舌を這わせた。

「きゃふうぅ!! あぁああぁぁ……ぁあんっ!! 気持ちぃ……イイですぅ!」
「“つぁとぅぐあ”さんの身体、本当に美味しいですよ」
「きゃん、わぉん!」
(ぺろぺろぺろぺろ……)
「うふフ、食べがいがありまス」
「……上等な料理に……蜂蜜ブチまけたら……もっと美味しかった……」
「……こんな事されて感じるなんて、いやらしい身体……」
 今回は受け身に徹しているのか、全身を蜂蜜漬けにされ、思う存分食べられながら、“つぁとぅぐあ”さんは嬌声をあげて快楽に悶えるだけだった。その姿は肉奴隷に奉仕させる淫魔の女王のようで、飢えた子供達に自らの血肉を与える聖母のようでもあった。ひたすらに華麗で、美しく、神々しい……
 そんな彼女が、自分から要求した事はと言えば、
「はぁはぁ……ねぇ…ボクも蜂蜜舐めたいですねぇ」
 とろけそうな魔性の眼差しで、僕に目配せした事ぐらいだ。すぐに要求を察した僕は、もういつでも臨戦態勢にあるペニスに蜂蜜を塗り付けて、仰向けに空中に浮く“つぁとぅぐあ”さんの頭上に立ち、頬をペニスで軽く突付くと、
「あはぁ……いただきますぅ」
 本当に心の底から嬉しそうに、僕のペニスを咥え込んでくれた。
「おおうっ!」
 思わず腰が砕けそうになる。相変わらず“つぁとぅぐあ”さんのフェラは絶品だった。喉の奥まで絞めつけるデイープスロートで、精液を根こそぎ搾り取られるかと思えば、口の中にたっぷり唾液を溜めては、グジュグジュと卑猥な音を立てて念入りに洗い、絶妙な強さでカリに歯を立てては、亀頭の先端を舌先でくすぐり、時には口からペニスを抜いて、長い舌でシャフトを何度も上下に舐め回し、陰嚢を口に含んだりアナルまで舐めてくれる……数々の舌技の応酬に、僕は秒単位で射精を続けていた。今や、“つぁとぅぐあ”さんの顔は蜂蜜とザーメンでマーブル模様だ。

「はふぅううぅん!!」
 突然、“つぁとぅぐあ”さんは大きく身悶えた。それでも僕のペニスを噛んだりしないのは流石だ。
 何事かと思えば、“ばいあくへー”さんが“つぁとぅぐあ”さんのお腹の上に跨って、彼女の股間を上からじっと観察しているじゃないか。
「……ここで、あの人の精を何度も搾り取ったのね」
「!!」
 自分の顔から血の気が引いていくのがわかる。それはそんな声だった。
「ふひゃん!」
 “つぁとぅぐあ”さんがちょとだけ苦しそうに呻く。
 蜂蜜まみれの濃い陰毛を、“ばいあくへー”さんがまとめて握り、上に引っ張ったんだ。
「……こんなに沢山生やして、恥ずかしくないの?」
 どこか陰鬱な声だ。そういえば、“ばいあくへー”さんってパイパンだったなぁ。
「……クリトリスもこんなに大きくて……はしたない」
 ヘアの中から顔を見せた、大人の親指の先端ぐらいある“つぁとぅぐあ”さんのクリトリスを、まず爪先で皮を剥いた。大玉の紅真珠のように輝くクリトリスに、ゆっくりと顔を近付けて――
 かりっ
「きゃううううぅぅ!!」
 ビクっと“つぁとぅぐあ”さんの身体が跳ねた。見れば、“ばいあくへー”さんが“つぁとぅぐあ”さんのクリトリスに思いっきり歯を立てている……
……っていうか、カリって音がしたよ! カリって!!
 “ばいあくへー”さんは“つぁとぅぐあ”さんの悲鳴を気にする様子も見せず、クリトリスを歯で嬲り続けた。愛撫なんて生易しいものじゃなくて、グミキャンディーを噛み締めるくらいの激しさなんだ。でも――
「あはぁあああぅん!! いいっ!! イイですうぅぅ!!」
 “つぁとぅぐあ”さんは泣きじゃくるように喜びの唄を歌って、全身で快楽をアピールしているんだ。
 “ばいあくへー”さんから、舌打ちのような声が聞こえたのは、幻聴……だといいなぁ。

「……こんな事をされているのに……変態」
 あの普段の“ばいあくへー”さんからは想像もできない言葉責めは、わざとやっているのか本音なのかよくわからない。前者である事を祈ろう。
「んひゃうぅ……」
 “つぁとぅぐあ”さんの性器が左右に広げられた。ヴァギナから尿道口まで丸見えだ。愛液と蜂蜜でドロドロに熟した秘所の淫靡さは、もはや人間の言葉では表現できない。あの中に肉棒をブチ込められるなら、その瞬間地獄に落ちても悔いは無いと、世界中の誰もが思うだろう。
「……ラビアもあまり長くないし、色も綺麗……あんなにたくさん性交しているのに、どうして?」
 “ばいあくへー”さんの瞳に、危険な光が宿った。
 そしてその直後――
「んぐううぅぅぁああああああっっっ!!!」
 白く細い“ばいあくへー”さんの手が、手首まで“つぁとぅぐあ”さんの膣口に突き刺さっていた……
……って、フィストファックですか!?
「……あの人の精を、全部掻き出さなければいけないの」
「ふひゃあああぁん!! 深いぃ……ぁあああっ!! 爪立てちゃダメですよぉ!! あくぅ!!」
 欠片の躊躇も見せずにグリグリと手をねじ入れる“ばいあくへー”さんの透明な美貌は、正直、ちょっと怖い。
 でも――
「ぁああああぁん!! イイっ! それぇ…いいっ!! もっと激しくぅ……ひゃうぅぅん!!」
 たちまち快楽の雄叫びを上げて乱れる“つぁとぅぐあ”さんだったりする。あの御方、乱暴なくらいがちょうど良いらしいからなぁ。フィストファックなんて全然余裕なんだろう。恐るべし。
「……それなら、存分にイきなさい!! この淫欲女神!!」
 “ばいあくへー”さんはより激しく腕を挿入すると、もう一度クリトリスに、今度は犬歯で思いっきり噛み付いた。
「きゃああああぁん――!!」

 “つぁとぅぐあ”さんへの全身愛撫は続く。本人は僕のペニスを咥えて離さないし、“てぃんだろす”と“おとしご”ちゃんはまだ爆乳を食べるのに夢中だ。“ばいあくへー”さんの性器への責めもどんどんエスカレートしていく――
「ふにゃああぁ!?」
 突然、“つぁとぅぐあ”さんの嬌声に奇妙な成分が混じり始めた。
「……ははははは……ひひひひひ……ふふふふふ……へへへへへ……ほほほほほ……」
 見れば、“いたくぁ”さんが“つぁとぅぐあ”さんのお尻の下に潜り込んで、そのボリューム満点のお尻を撫で回しているじゃないか。
 “つぁとぅぐあ”さんのお尻は、胸に負けないくらい大きくて油が乗って柔らかいのに、形が良くてプリプリで色艶肌触りも最高だ。そんな最高のお尻に“いたくぁ”さんはたっぷりの蜂蜜を塗り込めて、マッサージするように尻肉を揉みまくっている。
「……エッチなお尻……いやらしい……」
 ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!
「ひゃふうぅん!! お尻がぁ…ぁああぅ! もっと大きくなっちゃいますよぉ!」
 何か恨みでもあるみたいに、容赦無いスパンキングが炸裂する。たちまちお尻は真っ赤に腫れ上がった。
「……いつも……お尻を……苛められているから……お返し……」
「えぇ〜? それはボクには全然関係無いようなぁ……ぁああっ!!」
 痛々しい尻たぶを掴んで、思いっきり左右に開かれる。皺が見事に等間隔の放射状に広がっているココア色のアヌスが顔を見せた。舐める事に何の抵抗感も無い綺麗なアヌスだ。

「ひゃふぅううううぅん!!」
 そこに“いたくぁ”さんの指が突き刺さる。それも3本も! でも、“つぁとぅぐあ”さんの見事なアナルは、何の愛撫もしていないのに楽々と指三本分を受け入れた。
「……んっ……」
 “いたくぁ”さんが無表情のまま、少し痛そうに指を引いた。アナルフィストすらOKなのに、猛烈に絞め付けてくれるんだ。うんうん、“つぁとぅぐあ”さんはヴァギナもアナルも超優等生だね。
「ひゃはぁうぅうぅぅ……お尻もぉ…ぁううぅ…気持ちイイですねぇ……」
 蜂蜜をローション代わりに、チュプチュプと指を何度も往復させたり、アヌスの皺を一本一本数えるように撫でたり、指で上下左右に限界まで広げたり、直腸に爪を立てて引っ掻いたり、どこから持ち出したのか拡張器で腸壁を観察したり……“いたくぁ”さんのお仕置きは続く。
「きゃふぁ! ぁあああぁん!! そんな所までぇ……ぁあああうっ!! ふわぁああああぁ!!」
 でも、その度に“つぁとぅぐあ”さんは女の喜びを露にして、心の底からアナル責めを楽しんでいるようだった。
「……ならば……とどめ……」
 無感情に“いたくぁ”さんが取り出したモノ――それは、巨大で凶悪な特大サイズの浣腸器だった。軽く4リットルは入りそうなその中に、蜂蜜をたっぷり注入して――先端が、すぼまったアヌスに突き刺さった。
「ひゃう!?……ふにゃああああああああぁぁぁ〜〜〜!!!」
 ゆっくりと、時には早く、強弱をつけて4リットルもの蜂蜜が浣腸される。妊娠初期みたいに“つぁとぅぐあ”さんのお腹が膨らんできた。

「……はい……おしまい……」
「あうぅうううぅ……お腹がぁ…切ないですぅ……っくぅ!」
 にゅるっと音を立てて浣腸液が引き抜かれる。排泄の習慣が無い“つぁとぅぐあ”さんにとって、浣腸というのはあまり経験の無い部類のプレイだ。たちまちすぼまったアヌスが綻んで、黄金色の蜂蜜が溢れ出――
 ちゅぷっ
「はぁうぅ!!」
「……だめ……許さない……」
 例によって何処からか取り出したアナルバイブが、お尻の穴に深々と突き刺さった。電動式らしく、微妙なバイブレーションがアヌスを刺激して排泄を促す。でも、アナルバイブ自身に出口を塞がれていては、僅かな隙間から蜂蜜を滲ませるのが精一杯のようだ。
「ふわぁわわわわわわぁぁぁ……くぅ、苦しいぃ…かもぉ……ぁああああっ!!」
「……美味し……」
 滲み出た蜂蜜を、いやバイブの刺さったアヌスを舐める“いたくぁ”さんの舌の動きに合わせて、“つぁとぅぐあ”さんが卑猥で華麗な唄を歌う。
「ふみゃああああぁぁ……あひゃぁああああああぁん!! あふぅんっ!! いぃ……イイですぅ!!」

「でハ、残るは私がトドメでス」
 それまで“つぁとぅぐあ”さんの全身に手と舌を這わせていた“しょごす”さんの背中が、奇妙な脈動を開始した。どうしたのかな? って顔を向けた僕の頬や髪をかすって、数十本の触手が猛スピードで飛び出してきたのは次の瞬間だった!!
「うおわぁ!?」
 腰を抜かして倒れ込んだ弾みで、“つぁとぅぐあ”さんの口からペニスが抜ける。
「んぷぅ……どうかしたのでぇ――はむぅ!?」
 開放された口の中に、すかさず触手が飛び込んだ……いや、全身のあらゆる個所に、うねくる触手が絡みつく。
「はぐぅ……んひゃあぁん!! ぁあああっ……ぅくううぅん!!」
 何本かの触手が絡み合い、極太になったソレが容赦無く“つぁとぅぐあ”さんのヴァギナに突き刺さって、ドリルのように回転しながら捻りを加えたピストン運動を開始した。それよりは細いけど、優に大人の腕ほどもある触手がアナルにも挿入される。浣腸されていた蜂蜜が隙間から噴水のように吹き出す光景は、あまりにシュールで淫らだった。触手が挿入される穴はそれだけじゃない。尿道口や耳の中、臍にまで、極細の触手が潜り込み、絶妙な刺激を与えているようだ。さすがに鼻の穴は“しょごす”さんも遠慮したみたいだけど。
「きゃうぅうぅ!! あぁ、あああぁ! 激しくてぇ……ぁあうっ! イイぃ!!」
 触手が挿入できない個所にも、容赦無く触手が襲う。もはや“つぁとぅぐあ”さんの全身に太い触手が絡みつき、微細な触手がくすぐらない所は存在しなかった。特に、あの偉大な爆乳には十重二十重に触手が巻き付いて、まるで鏡餅のスペシャルバージョンみたいだ。圧迫されてぷっくり膨らんだ乳輪と勃起した乳首が蜜柑って感じかな。

「イクぅうううううぅ!! あああっ!! ひゃふうぅん!! またぁ…ダメですよぉ!! ぁぁぁあああああああっ!!」
 しばらく、そのまま軽く数十回は触手責めでイかされていたんだけど……
「はぁはァ……サ、さすが“つぁとぅぐあ”様……底無しにタフであられますネ……でハ、御主人様どうゾ」
 いくらイっても全く萎えるという事を知らない“つぁとぅぐあ”さんの性欲の前に、先に“しょごす”さんの方が参ってしまったらしい。触手が動きを変え、M字開脚の姿勢で“つぁとぅぐあ”さんを固定し、僕の前に差し出してくれた。
「ええと、その……じゃあ、お願いしますね」
「あはぁ…ひでぼんさぁん……早くぅ」
 今更という気もするけど、とりあえず挨拶してから“つぁとぅぐあ”さんの腰を抱きかかえて、ペニスを触手で広げられたヴァギナに当てて――
「ぁぁああんっ!!」
 ――根元まで一気に挿入した。
「ううぅぅ!!」
 全身の血液が沸騰したような凄まじい衝撃――それが快楽という感触だと気付いた時には、僕はもう十数回は射精していた。神に愛された詩人でも形容できないだろう、まさに人外の快楽。ひょっとして、もうペニスそのものが彼女の中でドロドロに溶けているんじゃないだろうか? あまりの気持ち良さに射精が全く止まらない。イきっぱなしのまま僕は狂ったように腰を動かし続けていた。
「きゃううぅん!! これぇ……あはぁ……これが欲しかったんですぅ……ひゃあぁん!!」
 “つぁとぅぐあ”さんも本当に気持ち良さそうだ。淫欲に身を任せて激しく身悶える度に、目の前であの爆乳も盛大に揺れまくる。僕は震える手で乳房を握り締め、思う存分揉みまくりながら乳首にむしゃぶりついた。その間にも、腰の動きは中断するどころか加速するぐらいだ。
「あはぁあああぁ!! きゃぁうん!! またイクっ! もうダメですよおぉぉ!!」
 無限の快楽が、僕の全てを侵蝕する。
 そして――
「ああああああああああぁぁぁぁぁ―――っっっっ!!!
「うううっっ!!!」
 僕は今までで最高の精を解き放ち――美しく、淫靡な、優しい魔王の胸に抱かれて闇の中に沈んだ……

 ――それから僕達は、全身蜂蜜と精液に塗れながら交わりあった。“つぁとぅぐあ”さんだけじゃなく、“ばいあくへー”さんとも、“いたくぁ”さんとも、“てぃんだろす”とも、“しょごす”さんとも、“おとしご”ちゃんとも、誰が誰ともわからぬまま、ひたすらドロドロに溶け合いながら快楽の宴に溺れていた。
 どれくらい時間過ぎたのか……
 全員、精魂尽き果てて、蜂蜜とあらゆる種類の体液で裸身を彩りながら、互いに抱き合って指一本動かずにいた。神様ですらこうなんだ。人間に過ぎない僕がこうして生きていられるだけでも奇跡に違いない。
 ……ふと、誰かが動く気配があった。
 その誰かが、仰向けになったままピクリとも動けない僕の上に跨ってきたけど、反応する力も気力も残っていなかった。今の僕は誇張抜きで最後の一滴まで精を出し尽くしていたんだ。
 それなのに、なぜ僕の男性自身は力強くそそり立っているのだろう。
 なぜ、彼女が腰を下ろして挿入した後、初体験のように新鮮な心地でセックスできたのだろう。
 なぜ、今までに無いくらい大量に射精できたのだろう。
 なぜ、僕は幸せな気分なんだろう。
 そして、今度こそ意識が闇の中に消える刹那――その声が聞こえた。

「――汝の子種、確かに予が授かった――」

 それから1ヶ月後――九月も半ばを過ぎて、もう夏も終わりを迎えたある日――
「ぐわぁああああ……ダメだ!! 間に合いそうにない!!」
 ようやく起き上がれるようになった僕は、パソコンの前で悲鳴を上げながらキーボードに16連射していた。
「くぅん?」
 膝の上で寝ていた“てぃんだろす”が、僕の叫び声に犬耳をピクンと動かす。
「御主人様、ファイトでス!! とっておきの栄養ドリンクを用意しましタ」
 怪しい紫色の煙を漂わせる虹色の粘液が入ったコップを手渡しながら、“しょごす”さんが糸目を綻ばせる。
「……はっはっは……ざまーみろ……」
 無表情なまま可笑しそうに湯呑を傾ける“いたくぁ”さん。
「……大丈夫? 私の情報処理機構を作動する?」
 機械の翼を展開しながら、心配そうに“ばいあくへー”さんが透明な眼差しを向ける。
(もぞもぞ)
 手首のミサンガに変化している“おとしご”ちゃんまで、動揺が伝わったのか脈動する。
 全ては、普段と何も変わらない日常が展開していた。
 ……いや、締切りをブっちぎりで破りそうな状況を、普段と変わらないと形容するのはマズイけど。
 あの“つぁとぅぐあ”さん達とのドロドロエロエロな乱交プレイの後、いつものようにぶっ倒れた僕は、1ヶ月もの間昏睡状態にあった。やっぱり“つぁとぅぐあ”さんのHは命懸けだ……
 長い眠りから目覚めた僕は、まず真っ先に押入れの奥の靄を調べて、特に何事もなくン・カイへ行き来できる事を確認し、ほっと胸を撫で下ろしてから――仕事の締切りが今日である事に気付いた。
 で、さっきから死に物狂いでパソコンと格闘しているのだけど……
「ダメだ!! もう諦めよう!!」
 ついに、僕はギブアップを宣言した。担当の佐野さん、本当にごめんなさい。
 僕は座椅子に背を預けながら、“しょごす”さんの怪しいドリンクを手に取り――
――手に取っただけで飲んではいない――今までの日々に思いをはせた。無論、これは現実逃避だ。

 ――あの日、押入れの奥で黒い靄を見つけるまで、僕は『その他大勢』の一言で終わるような人生を送っていた。もちろん、平凡な人生に嫌気が差していたわけじゃない。平凡は平凡なりに、平凡な幸せを満喫していたのだから。もしかすると、このまま普通の人生を過ごしていた方が正解だったのかもしれない。
 しかし、“つぁとぅぐあ”さんを初めとした、多くの『邪神』さん達と接触してから、僕の人生は一変したんだ。
 文字通り人知を超えた、奇想天外な驚きの日々……
……エロエロな日々の一言で片付けられそうな気もするけど、忘れよう。
 もちろん、良い事ばかりじゃなかった。死にそうになった体験も一度や二度じゃないし、恐怖に震えて発狂しそうになった事もある。何より、僕が原因で多くの人々に多大な迷惑をかけてしまった。
 でも……それでも、僕はこの人生に後悔していない。
 “つぁとぅぐあ”さんに、“てぃんだろす”に、“しょごす”さんに、“いたくぁ”さんに、“ばいあくへー”さんに、“おとしご”ちゃんに、“あとらっく=なちゃ”さんに、“あぶほーす”さんに、“のーでんす”さんに、そして数多くの神々達に僕は出会い、得難い体験をする事ができたのだから……
……得難い体験じゃなくて、エロい体験がより正確な気もするけど、気にしないで欲しい。
 僕はそんな自分の人生に満足しきっていて……そんな日々が永遠に続くとさえ思っていた。
 そう、僕は間違っていた。
 あまりにも基本的な、そして根源的な事実を忘れていたんだ。
 僕が、単なるちっぽけな人間に過ぎないという事を。
 そして、彼女達が『邪神』である事を。

「うふふふ」
「くすくす」
「あははは」

 そうだ

 それはあまりに唐突で

「わぅん!? きゃぅうん!!」

 残酷なくらい理不尽で

「御主人様ァ!!」

 あらゆる伏線を無視して

「……赤松っ!……いやぁ!!……」

 一片の慈悲も無く

「……そんな……いやぁ!! だめぇ!!」

 それが絶対の法則とばかりに

「――パパぁ!」

 全てが速やかに完了する

 そうだ。偉大なる『邪神』の力は、あまりに唐突で、残酷なくらい理不尽で、あらゆる伏線を無視し、一片の慈悲も無く、それが絶対の法則とばかりに、全てが速やかに完了する。愚かな人間にとっては、そうとしか思えない。

「――え?」
 しばらく、僕は現状を把握できなかった。
「“てぃんだろす”?……“しょごす”さん?」
 一瞬前まで、僕の傍にいた神様達が、
「“いたくぁ”さん?……“ばいあくへー”さん?」
 ビデオをコマ送りするみたいに、
「“おとしご”ちゃんまで……みんな、どこに……え、え、えええ!?」
 突然、跡形も無く消えてしまったんだ。
 静寂――全てが夢だったかのような、残酷な静けさ。
 『まさか、新たな邪神の襲撃が!?』……とは思わなかった。その逆――邪神の気配が、何も感じられないんだ。
 そう、僕の最愛の神様達の気配まで、何も感じられない……
 漠然とした不安が、猛烈な勢いで増殖を始める。
 そして、それでも胸の内に燻るだけだった不安は――

「うふふふ」
「くすくす」
「あははは」

 その嘲笑を聞いた瞬間に、具現する――

「『這い寄る混沌』……“ラト”!?」
 愕然と振り向いた目の前で、三体の黒い少女が、真紅の単眼を嘲笑の形に歪めて――消え去った。
 再び訪れる静寂――どのくらいの時間、部屋の真中で佇んでいたのか……
……僕は夢遊病者のような動作で歩き始めた。
「……“てぃんだろす”……“しょごす”さん……“いたくぁ”さん……“ばいあくへー”さん……“おとしご”ちゃん……」
 呆然と家の中をうろついて、皆の姿を捜し求めたけど、当然見つかるはずが無い。
「……“てぃんだろす”……“しょごす”さん……“いたくぁ”さん……“ばいあくへー”さん……“おとしご”ちゃん……」
 あの嘲笑を見た瞬間、僕は全てを理解した。なぜか絶対の確信を持って真実だと理解できたんだ。
「“てぃんだろす”!! “しょごす”さん!!“いたくぁ”さん!! “ばいあくへー”さん!!“おとしご”ちゃん!!」
 彼女達は、もうこの世界から――!!

「……無駄だ。あの子達はもうこの世界に存在しない」
 絶対に認めたくなかった解答が、僕の背後から授けられた。
「うわぁあああああああああ――!!!」
 僕は絶叫しながら、無垢なまでに白い女神“のーでんす”さんに掴みかかった。
「滅びたわけじゃない。しかし、この時空間に存在していない事は確実だ。別の惑星に飛ばされたか、過去か未来の世界に追放されたか……」
 襟首を掴まれたまま押し倒されても、“のーでんす”さんは抵抗しなかった。泣きじゃくる子供を慰める慈母のように、辛抱強く、そして優しく語りかける。

「『這い寄る混沌』“ラト”の“混沌化”が、この地域一帯をも侵蝕したのだ。その影響で、あの子達はこの世界から追放された……おそらく、“ラト”は意図的に斯様な処置を施したのであろうな。そなたを苦しめる為に。あざ笑う為に」
 柔らかな胸の中で叫び続ける僕の頭を、“のーでんす”さんは優しく撫でてくれていた。その事に気付いたのは、しばらく後になってからだけど……
「すまぬ。私がもっと強ければ、斯様な事態は回避できたものを……彼奴がここを狙っていると気付いた時にはもう手遅れだった」
 僕は泣いた。赤ん坊みたいに泣いた。両親を無くした時に出し尽くした筈の涙が、とめどなく流れ続けた。自分でも意外だった。
 人は、あまりにも理不尽な事態に遭遇した時、こんな風に泣きじゃくる事しかできないんだ……
「しばらく、“ラト”の活動は収まるだろう。だが、陰謀の種は既に蒔かれている。近い将来、そなたの血を引く少女と、その仲間達が――」
 その後の“のーでんす”さんの非常に重要な情報を、その時の僕はほとんど認識していなかった。思い出したのは、少し後になってからだ。
 どのくらいの時間が経ったのか……それとも、少しも経過していないのか。
 ゆっくりと、“のーでんす”さんは立ち上がった。
「そなたには、これから様々な艱難辛苦が待ち受けているだろう。しかし、自暴自棄になってはならぬ。そなたには、数多くの神々が味方にいるのだからな……私も含めて」
 まだ嗚咽している僕の背中を、“のーでんす”さんの白い手が優しく押した。
「早く行きなさい。もう時間が無いわ」
 時間が無い……時間が無い!?
「“混沌化”の影響だ。暗黒世界ン・カイへの門が、閉じかけておる。永遠に……」

「“つぁとぅぐあ”さん!!!」
 死に物狂いで、僕は押し入れの中に飛び込んだ。頭の中が沸騰しそうなのに、背筋は凍りそうに冷たい。胃袋の中に尖った鉄の塊があるようだ。手足が震えて止まらないんだ。
「“つぁとぅぐあ”さん!!!」
 そして、押入れの奥には……暗黒世界ン・カイへの入り口である、黒い靄は、確かに健在していた。
「“つぁとぅぐあ”さぁぁん!!!」
 針の先よりも小さな、一欠片だけが。
「わああああああああああああああああああ―――!!!」
 最悪の想像が、決して認めたくなかった現実が、目の前にあった。
 もう、ン・カイへは行けない。
 もう、“つぁとぅぐあ”さんに会えない。
 2度と、会えないんだ。
 もし、今、目の前に悪魔が出現して、もう1度“つぁとぅぐあ”さんに会いたければ、世界中の全ての人間を生贄に捧げよと言われたなら、僕は大喜びで実行していたに違いない。
 僕は泣いた。
 泣いた。
 泣いて。
 泣いて。
 ただ、ひたすら泣いて。
 時間の間隔も喪失して。
 それだけが、僕の存在理由であるように。
 泣いて。泣いて。泣きじゃくって――

『そんなに泣いてはぁ、ダメダメさんですよぉ』

 ――その声を、確かに聞いた。
「“つぁとぅぐあ”さん!?」
 愕然と頭を上げた僕の目の前に、少し癖のある焦げ茶色の髪の毛が一本揺れていた。髪の毛の一方の端は、針先ほどの靄の中に消えている。そして、もう一方の端が――
「“つぁとぅぐあ”さん!!!」
 ――額に真っ直ぐ突き刺さった瞬間、僕の意識は闇の中に消えた。

 闇の中に消えたと言っても、意識を失ったわけじゃない。
 文字通り、僕はただ闇が広がるだけの世界にいた。光源は何も無いのに、自分の体だけははっきり認識できる。そして、目の前にいる、闇の中に浮かぶ、女神のように美しく、魔王のように威厳ある、最愛の存在も――
「“つぁとぅぐあ”さん!!」
 僕は歓喜の声をあげて、その場にへたり込もうとした。安堵のあまり、一気に力が抜けたんだ。
「よかった……無事だったんですね」
「“混沌化”はぁ、ひでぼんさんのいる世界を侵蝕しているだけですからねぇ……ン・カイは一種の異世界ですからぁ、大丈夫なんですねぇ」
「それはよかった……って、大変です!! “いたくぁ”さん達が、僕のいる世界から消滅して――」
「もぅ、知ってますからぁ」
 思わずコケそうになるくらい、“つぁとぅぐあ”さんののんびりとした態度は相変わらずだ。
「そ、それなら! “つぁとぅぐあ”さんの力で、何とか救出できないでしょうか!?」
「残念ですがぁ……無理なんですよぉ」
 “つぁとぅぐあ”さんは小さく、短く、しかしはっきりと首を横に振った。そして――

「もう……ひでぼんさんとはお別れしなければいけませんから」

 決定的な一言が、優しく、残酷に告げられた。
「お別れって……そんな、なぜなんです!?」
 再び、頭の中が真っ白に灼熱化する。
「暗黒世界ン・カイへの門は閉じられているのですよ。今こうして会話しているのは、僅かに残された残滓を伝って、ひでぼんさんの精神に直接話しかけているに過ぎません。それももうすぐ消えるでしょう。もう、2度とぼくの世界に行き来する事はできなくなるのです」
 背骨がドライアイスと化したような悪寒――
「残滓があるなら、今ならまだ間に合うんじゃないですか!? お願いします!! 僕をあなたの元に連れていってください!!」
 胃袋に水銀が溜まったように重い――
「それもダメです。だって――」
 手足が瘧のように痙攣する――
「これ以上一緒にいたら、ぼくはひでぼんさんを食べてしまいますから」

 “つぁとぅぐあ”さんは笑った。
「……“つぁとぅぐあ”……さん?」
「ぼくはひでぼんさんが大好きです」
 僕が見たことの無い顔で笑った。
「でも、ぼくは大好きな人間をどうしても食べたくなっちゃうんです。これ以上一緒にいたら、ぼくはもっとひでぼんさんが好きになっちゃって、我慢できなくなると思うんです。だって、今までずっと我慢していたんですから」
 そう、僕はあまりに基本的な事を忘れていた。
 彼女は――“つぁとぅぐあ”さんは――『邪神』なんだ。
「でも、ひでぼんさんを食べちゃったら、みんなとても悲しむと思うんです。ぼくもとっても悲しいです。だから、今回の事はちょうど良いと思うんですね」
 今度こそ、僕はへたり込んだ。
「そんな顔しないで下さい……大丈夫、ひでぼんさんは、また予に会う事ができますから。寂しいのは少しだけじゃ」
「……えっ?」
 “つぁとぅぐあ”さんは笑った。また、さっきとは違う顔で。
「つい先刻、封印されていた記憶を思い出したのじゃ。この時を迎えた際に、自動的にプロテクトが解除されるように、予はメモリーを時限的に封印しておったようじゃな」
 一歩も動けない僕の傍に、“つぁとぅぐあ”さんは闇の中を滑るように近付いてきた。
「昔、汝に送られた言葉を、今、汝に返そうぞ」
 静かに、優しく、限りない慈愛を込めて、僕の頬を両手で挟む。
「“そんなに悲しまないで下さい。僕はもう貴方に会えませんが、貴方はまた僕に会う事ができますから”」

 謎かけのような言葉を残して、再び“つぁとぅぐあ”さんが僕の傍から離れる。
「だから、そんなに悲しむでないぞ。予まで悲しくなってしまいますからぁ」
 “つぁとぅぐあ”さんは笑った。僕のよく知る“つぁとぅぐあ”さんの顔で……でも、
「ボクはもうひでぼんさんに会えませんねぇ……でもぉ、ひでぼんさんからとってもステキなものを2つも貰いましたからぁ」
 ……でも、それは僕の知る『“つぁとぅぐあ”さんの笑顔』じゃなかった。
「1つは『ひでぼんさんとの思い出』……これがあればぁ、無限に続く夢の中でも寂しくありませんからぁ」
 “つぁとぅぐあ”さんは『にへら〜』といつもの様に笑っている。ぽろぽろ涙を流して笑っている。
「もう1つはぁ……えへへぇ、内緒ですねぇ」
 ぽろぽろぽろぽろ、大粒の雨が、“つぁとぅぐあ”さんの下腹部を濡らして――
――愛しそうに、彼女はそこを撫でた。
「それは……まさか……!!」
「もぅ、時間が来ましたねぇ……」
 “つぁとぅぐあ”さんが、ゆっくりと背を向ける。最後に涙の雨が、闇の中で、きらきら、きらきら、輝いた。
「ボクは絶対にひでぼんさんの事を忘れません。ひでぼんさんも、ボクの事を覚えていてくれると嬉しいです」
 それが、別れの言葉だった。
 『さよなら』の一言が無かったのは、彼女なりの思いやりだったのかもしれない。
 遠ざかる“つぁとぅぐあ”さんの背中の両脇に、2つの影が出現した。
「あの子の事は私に任せて下さいな……さようなら赤松様。私も貴方の事を忘れませんわ」
「……子供を頼みます……」
 唐突な出現と同じように、“あとらっく=なちゃ”さんと“あぶほーす”さんの姿は唐突に消えた。後はただ……遠ざかる“つぁとぅぐあ”さんの後姿だけ……遠ざかる……遠ざかる……

「“つぁとぅぐあ”さぁあああああああん!!!」
 僕は走った。光の速さを超えて走った。なんて遅い走りなんだろう。僕は時々無様に転びながら、それでも“つぁとぅぐあ”さんの背中を追って走った。走り続けた。
「“つぁとぅぐあ”さん!!!」
「“つぁとぅぐあ”さん!!!」
「“つぁとぅぐあ”さん!!!」
 ただ、愛しい御方の名前を叫びながら。彼女に少しでも近付けば、彼女の傍にいられるかもしれないと、愚かな期待を背負って。
 1秒でも、一瞬でも、彼女の傍にいられるなら……あの笑顔をもう1度見る事ができるのなら……
 食べられてもかまわない!!!
 愚かな祈りが通じたのか――“つぁとぅぐあ”さんの歩みが止まった。そして、ゆっくりと振り返る。
「“つぁとぅぐあ”さ――」
 『邪神』の貌で――『おぞましきもの』の二つ名を持つ、邪神ツァトゥグアの姿で――!!
 誰かの絶叫が、闇の世界に轟いた――

「ううう……ひっく……ううぁあああ……」
 僕のよく知る――そして何かが足りない部屋の中で、僕はまた“のーでんす”さんの胸の中で泣きじゃくっていた。
「そなたを助けたのは、過ちだったかも知れぬな……あのまま“つぁとぅぐあ”神に囚われる事が、そなたの真の願いだったのかも知れぬ」
 静かに僕の頭を撫でる“のーでんす”さんの腕の中で、僕は必死に首を振っていた。
 ……違う……そうじゃない……そうじゃないんです……
 ……あの時……僕は……“つぁとぅぐあ”さんが差し伸ばした手を……
 ……恐怖のあまり……振り払ってしまったんです……
 それ以外の全ての活動を忘れたかのように、ただひたすら嗚咽する僕の頭を、“のーでんす”さんは静かに撫で続けた……

 ……これで、僕の物語は終わった。
 これから先は、単なるエピローグ――“赤松 英”という男の、青春の残りカスだ。
 そんな話でもよかったら、読んでくれると嬉しいかもしれない。

「――そういうわけだ。以前、君を襲撃して返り討ちにあった退魔師の仲間達が、君に復讐を成そうとしているのだ。我々もできる限り止めようとしているが、正直、全てを押さえられる自信はない」
「――――」
「おい、聞いているのか? 君の命に関わる事だぞ!? もう、君に神の加護は無いのだぞ!!」
「――――」
「……ダメよ。この子、もう抜け殻だわ」
「相手が邪神ではな……立ち直るには、再び神の御慈悲が必要だろう」
「『邪神と接触した者は必ず破滅する』……この子も例外じゃなかったわネ」
「――――」

 ゲルダさん達が言う通り、僕は抜け殻だった。『魔法怪盗団』の皆がお見舞いに来ても、僕の反応は変わらなかった。もし退魔師が復讐に来ても、僕は何の感慨も無く殺されていただろう。むしろ、それを望んでいたのかもしれなかった。
 ――『あれ』が出現するまでは。

「ちわーす、宅急便でーす……はい、ハンコお願いします……はい、どーも」
 それまで何が起こっても無反応だった僕が、その宅急便の配達にだけには応対したのは、やはり何かの力が働いていたのかもしれない。
 僕は再びベッドの上に戻り、受け取った宅急便の包み紙を機械的な動作で破り捨てた。
 その中から現れたのは――
「――――」
 ちゃぶ台の上に、場違いのように乗っている黒い小箱――しばらく僕は、その配達品を無感動に眺めていたんだけど、その蓋に何かボタンのような物体が貼り付いているのを見つけて、思考を停止させたまま押してみると――
『御無事ですカ!? 御主人様ァ!!』
『わぅん、わふーん!!』
 糸目の綺麗な金髪メイドさんと、ボーイッシュな犬耳美少女が、突然黒い箱の上に出現して、はずみで僕はベッドの上から転げ落ちた。
 時間的には数日しか経過していないのに、数十年ぶりに再会したかのような懐かしさと喜びが、僕の魂のエンジンに火を点ける。
「“しょごす”さん!! “てぃんだろす”!!」
 嬉しさのあまり、僕は2人に抱き付こうとして――
 すかっ
「へ?」
 見事にあっさりとすり抜けて、僕はちゃぶ台を挟んだ反対側に、無様に頭から着地した。
『えート、念の為に申し上げますガ、これは立体映像でス。まさかうっかり飛び付いてくるほド、御主人様がおバカではないと思いますガ……』
 すいません。僕はおバカでした。
 僕の事なんか見向きもしないで、“しょごす”さんの立体映像は話を続けている。
『計算が正しけれバ、あの“混沌化”が発生してから数日以内二、この箱が届いているはずでス。何せ40万年前からノ、ラプラスシステムを応用した未来予測計算に基いた配送なのデ、正確な到着時刻までハわかりませんガ』
 40万年前? 未来予測計算? 何の事だ?
 いや、それよりも……ひょっとして、これは!!
『まず御主人様が知りたいだろうと予測できる情報からお伝えしまス。私と“てぃんだろす”ちゃン、“いたくぁ”様に“ばいあくへー”様、それに“おとしご”ちゃんは、全員無事に生還していまス』

「やったぁ!!」
 思わず僕はガッツポーズを取って、意味も無く雄叫びを上げた。皆が生きている……何はともあれ、こんなに嬉しい事は無い!!
『ですガ、我々は御主人様のいらっしゃる時代かラ、約40万年前の“サイクラノーシュ”にまで強制的に時間移動されてしまいましタ。現在ハ、そこの現地種族である“いどひーむ族”様方の元に身を寄せていまス』
 サイクラノーシュ?……それって確か、“ふじうるくぉいぐむんずはー”さんのいる、今で言う土星!?
『残念ながラ、“混沌化”の影響によリ、御主人様のいらっしゃる時代への時空間移動ハ、“てぃんだろす”ちゃんの力をもってしても不可能なのでス。それ以外にも様々な方法を試みましたガ、全て失敗に終わりましタ。この箱とその中身を送るので精一杯だったのでス』
 つまり、“しょごす”さん達の方から僕の所に会いに行くのは、不可能って事か……
『そこデ、御主人様にお願いがありまス』
 “しょごす”さんの声が、少し神妙なものになった。思わず僕もメモを片手に正座してしまう。
『“いたくぁ”様の推測が正しいのなラ、暗黒世界ン・カイへの門も閉ざされているはずでス。もシ、また私達や“つぁとぅぐあ”様達にお会いしたいと御主人様が願うのであれバ、もうそちらの世界に未練が無いのならバ――』
 ごくり、と唾を飲む音が、妙に大きく響いた。
『40万年前の世界ニ……私達や“つぁとぅぐあ”様達がいる時代ニ、時間移動して欲しいのでス!!』
 脳味噌が爆発したような衝撃が、僕を襲った。
 じ、時間移動? それって俗に言う……タイムスリップ? いや、そりゃ単にSF用語にしただけか……とにかく、荒唐無稽の極致のような提案に、僕は唖然呆然とするばかりだった。
『その箱の中を見てくださイ。銀の板が入っているはずでス』

 まだ衝撃の醒めぬままに、言われた通りにすると、解説通り板チョコぐらいの大きさの銀製品らしい板が現れた。それは、以前サイクラノーシュに泳ぎに行った際、“つぁとぅぐあ”さんが用意してくれた石版によく似ていた。
『この板に触れて指定のキーワードを唱えれバ、御主人様のおられる時代から40万年前の“ヒューペルボリア”と呼ばれる古代超大陸に辿り着くはずでス。そこで御主人様ハ、何とか魔術師としての修行を積んで欲しいのでス』
 ま、魔術師になれ!? また荒唐無稽な指示を……
『その時代にハ、今の我々と昔の“つぁとぅぐあ”様が御健在でス。魔術師として一人前になれバ、御主人様も“つぁとぅぐあ”様に会う事ができまス。そこで“つぁとぅぐあ”様にお願いすればバ、また私達は再会する事ができるのでス!!』
 闇に包まれた心の中に、光明が差す思いだった。また“つぁとぅぐあ”さんに、“いたくぁ”さんに、“てぃんだろす”に、“しょごす”さんに、“ばいあくへー”さんに、“おとしご”ちゃんに、みんなに再会する事ができるんだ!!
『“いたくぁ”様モ、よく私達の所に遊びに来てハ、少し物足りなさそうにお茶を飲んでいかれまス。“ばいあくへー”様ハ、ずっと“はすたー”様に「御主人様に会いたい」とお祈りしてますシ、“おとしご”ちゃんも寂しそうでス。私も一日千秋の思いデ、御主人様に会える日をお待ちしておりまス。願わくバ、我々の望みが適うことヲ……』
『きゅうぅん……わん、わわん!』
 その言葉を最後に、“しょごす”さんと“てぃんだろす”の姿は、光の粒子と化して消えた……
「……よしっ」
 もう、僕に迷いは無い。また“つぁとぅぐあ”さん達に会えるのなら、今までの自分の人生なんて、いつでも捨て去ってやる!!
 握り締める銀の板が、妙に熱かった……

 まず、僕は身辺整理から始めた。予告無しでいきなり失踪するにしても、とりあえず周囲に迷惑はかけないようにしたいからね。
 仕事の契約先に連絡して、これからの仕事を全てキャンセルする。フリー契約だと、こういう時には楽だ。
 次に、自宅や“つぁとぅぐあ”さんの『恩恵』によって得られた財産を整理して、全てゲルダさん達に預けた。詳しくは後で説明するけど、数年の内に世界に襲いかかるだろう、破滅の危機に対抗する為に役立てて欲しいからだ。
 全ての事情を伝えると、ゲルダさんとボブロフ氏は、
「面倒なことを押し付けてくれるな」
「全くよねン」
 口ではブツブツ文句を言っていたけど、少し寂しそうに了承してくれた。

 最後に、ある意味一番重要な話――
 僕は“津田トウカ”ちゃん、“那智屋アズサ”ちゃん、“井坂・ウェンディー・ゴールドブラム”ちゃん、“阿部ホノカ”ちゃんの4人――『魔法怪盗団』のメンバーを呼んで、“のーでんす”さんが教えてくれた『這い寄る混沌』の陰謀の話を伝えた。
 『僕と“あぶほーす”さんの間に生まれた、“ばいあくへー”さんの生まれ変わりの赤ん坊……今は、阿部ホノカちゃんの親戚に養子として育てられている女の子……“灰谷アキ”ちゃんと、その“仲間達”――『魔法少女隊』が、『這い寄る混沌』の陰謀の為に、数年後に狙われる事になる』

 僕は、『魔法怪盗団』のみんなに、灰谷アキちゃんを……僕の娘を守ってくれるように頼んだ。その願い自体は快く引き受けてくれたんだけど、相手があの『這い寄る混沌』だと聞いて、少し尻込みしているようだった……あの、明朗活発な魔法怪盗団の皆が。
 もう一度僕は、今度は“はすたー”さんの中で“つぁとぅぐあ”さんに教えられた『這い寄る混沌』への対抗策を伝えた。
 『這い寄る混沌』は、確かにあらゆる『邪神』の中でも究極の力を持つ最強存在の1つだろう。しかし、この邪神の本質は“混沌”――あらゆる意味で、通常の邪神にとって例外的存在(アウトサイダー)なんだ。それゆえに、ある『絶対的な世界の法則』に対しても、例外的に当てはまらない存在となる。
 絶対的な世界の法則――『人は神に勝てない』という法則が、この邪神には該当しない。
 そう、『這い寄る混沌』は、最強の力を持っているにもかかわらず――
――あるいは、最強の力を持っているが故に――人間が勝てる可能性がある唯一の邪神なんだ。
 あの時“ラト”は、自分のかつての陰謀は全て大いなる計画の為の下準備に過ぎず、失敗するのも計画の内だと言っていたけど……ひょっとして、この事が陰謀が頓挫する本当の理由なのかもしれない。
「それなら大丈夫ですねぇ! がんばりますよぉ!」
 根拠があるとはとても言えない僕の話に、トウカちゃん達は元気良く頷いてくれた……

 そして、全ての身辺整理が終わり、この時代でやるべき事を全て終えた僕は――
――銀の板を胸元に構え、指定されたキーワードをゆっくりと詠唱した。
 優しい光が、僕の身体を包む。
 どこか懐かしいぬくもりを感じて、思わず自分の身体を抱きしめた瞬間――
――僕は見知らぬ荒野の只中に佇んでいた。
常に雪混じりの冷風が吹き、人外の魔物や魔道の脅威が跳梁跋扈する、常冬の古代超大陸――ヒューペルボリアに。
 その後の僕については、詳しく話す必要は無いだろう。
 僕はそれなりの艱難辛苦の果てに、ヒューペルボリア大陸の北端、ムー・トゥーラン半島に辿り着き、そこの都で魔法使いとしての修行を始めた。この時、後を追って来てくれた“のーでんす”さんが、一時的に僕の『接触神』になってくれなかったら、たぶん僕はあっさり野垂れ死にしていたと思うけど……それはまぁ、別の話という事で。
 幸い、僕には魔道師としての素質があった。以前ゲルダさん達が言っていた、『邪神と交わった者には後天的に魔法の素質が宿る』というのは正しかったわけだ。“のーでんす”さんや“よぐ=そとーす”君――時空間を超越しているこの神様は、過去の存在にも関わらず、僕の事を覚えていてくれた――という、超優秀な教師が直接手解きしてくれた事もあり、それほど時間をかける事無く、僕は魔道の奥義を極め、魔術師としての位階も最高位を超えて、ヒューペルボリアに並ぶ者無しと称される大魔道師となった……まぁ、全部神様のおかげなので、全然自慢できないけどね。トホホ……
 その後、僕は都の下町で小さな魔法屋を経営して、細々と平凡な日々――あくまで、この世界の魔術師における平凡――を過ごしながら、この時代の“つぁとぅぐあ”さんについての情報を集めた。“いほうんでー”さんの信仰が国教だったこの時代、“つぁとぅぐあ”さんへの信仰は重犯罪に当たるので、とにかく大変だったけど、“つぁとぅぐあ”さんに再会したい一心で、何とかそれなりに形となった情報を入手する事ができた。この時代の“つぁとぅぐあ”さんは、ヒューペルボリア大陸の西部に聳え立つエイグロフ山脈の最高峰、ヴーアミタドレス山の地下世界にいるらしい。

 ちなみに、そうして“つぁとぅぐあ”さんの情報を集めている過程で友達もできた。まぁ、向こうは僕を友人じゃなくてライバルだと考えてるらしいけど……彼は“いほうんでー”さんを信仰する神官で、名前は――言う必要はないかな。とにかく、彼と知り合った事で、僕はかつての自分と今の自分との繋がりを――
――そして、逃れられない宿命を悟り、今の自分が名乗るべき名前を知ったんだ。
 そして、全ての準備が整った時――

「……ぜぇぜぇ……なんでバカ高い山を登った後に……延々と地下世界を降りなきゃいけないんだろう……
……麓に入り口を作ればいいのに……山中では変な呪術師に因縁ふっかけられるし……」
 こんな事なら魔法の修行だけじゃなくて体も鍛えておけばよかったと少し後悔しながら、僕は闇の世界の下り坂をよたよたと降りていた。
 この奥に、“つぁとぅぐあ”さんがいる……僕にとっては最愛の存在の、そして僕を知らない“つぁとぅぐあ”さんが。
 もしかして、今の彼女は僕の知る“つぁとぅぐあ”さんでは無いのかもしれない。ようやく待ち望んだ彼女に出会っても、そこには絶望と破滅の運命しかないのかもしれない。
 でも、今の僕にはどうでもいい事だった。
 『お前も男なら、自分の女の為に生きてみろ』
 脆木氏の臨終の言葉が、今ならよく理解できる。
 もう、2度と彼女の手を離さない。あんな経験はもう御免だ。
 僕の全てを、なつかしいあなたへ捧げよう……
 例によって、歩きながら考え事するという、悪い癖を発揮していたその時――

 ふにっ
「え?」
 何か柔らかいものに蹴つまづいて、僕は派手に転倒した。
 固い岩が僕の顔面に激突――はしなかった。柔らかく、暖かく、すべすべした何かが、僕の身体を優しく受け止めてくれたんだ。
「……ん〜……だれぇ?」
 身震いするくらい美しい、しかし眠そうにおっとりとした女性の声が、僕の耳元に響いた。
「あ、あなたは……!」
「んにぃ……おはよぉ……」
「ど、ど、どこにいるんですか!?」
「……あ、光が無いと見えないんだね〜」
 突然、周囲が光に満たされた。ごつごつした黒い岩盤の所々に白い水晶の柱が立って、それが電灯みたいに光を放っている。
 そして、僕の体の下に『彼女』がいたんだ。

 『にへら〜』と眠そうに微笑む優しい邪神に、万感の思いを込めて言葉を紡ぐ。

 それが“赤松 英”という書物に記載された最後の言葉であり――

 ――新たな男の書物に書かれた最初の言葉だった。

「初めまして“つぁとぅぐあ”様……魔道師エイボンと申します」

『えいぼんの書 〜なつかしいあなたへ〜』


番外編、とりあえず完結しました。御愛読?ありがとうございました。
さて、今回の作品は、某所の魔法少女への伏線と、作者の妄想を垂れ流す為に書いたものであり、あくまでも『ひでぼんの書』の番外編と考えてください。オチが気に入らない方は「IF」と考えても全く問題ありません。
ひでぼん=エイボンという設定も、一応は初めから考えていたのですが、さすがにちとアレなので、当初は正式採用するつもりはありませんでした。
その為、本編と番外編ではキャラクターの行動や反応に矛盾点があったりします。御了承下さい。

えいぼんの書〜なつかしいあなたへ〜作者


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