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驚いて振り返った顔に徐々に広がる安堵の表情に軽く苦笑
もう一度なにしてるんだと聞くと座る場所がないと言うから自分の空いてる席に誘えば一瞬狼狽していいんですか?とクルリ目を瞬かせて
俺、変なこと言ったっけ
壱茶は首を傾けた
「あの・・お邪魔になりませんか」
あぁそういう事ね
「なんねぇよ元々俺一人だし。それとも坊主、俺との相席は嫌ってか?」
「いえっそんな事ないです!!」
「なら決まりだな」
壱茶は大きく頭を振る大の二の腕を掴んで引き寄せるとそれと同時に堰を切ったように受付へと通り過ぎていく人の流れから体をずらす
胸の下辺りから聞こえる謝罪の声は無視した
「導明寺さんはよく此処に?」
「べつにしょっちゅうって訳でもねぇけどな、昼休みは大体いつもの場所だし」
「そうですよね」
自分がたまに顔を出すときも必ずいつも同じ机の上に座って窓の外を眺めていたことを思い出して頷く大に
お前だって最近じゃ俺と同じくらいかそれ以上に居座ってるだろがとぼそり嘯く
それまでの普通の学生から不良の仲間入りをしたことに対するちょっとした皮肉のつもりだったが明るく笑い流されてしまい
壱茶は軽い脱力感に襲われながらしおりが挟んである分厚い小説を手に取った
しばらくして一番風通しのいい二人の座る席にはページを繰る音とシャープペンシルの走る音だけが静かに響く
普段賑やかな場所になれた大にとってもその沈黙は不快なものでなくレース越しに射し込む柔らかい日差しに目を眇めながら
前の席を伺えば明凌連での集まりや喧嘩の時とは全く違うその一面にほおと息をついた
SINCE2005,6,6
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