答えに、クレインは思わず苦笑を洩らした。
彼がこの手の質問にまともに答えるはずがないことは、百も承知だった。だが、あえて問うた。当然のごとく、それには理由がある。
今年は、ずっと友として関わってきた二人が、恋人という存在に変わった年なのだ。それを彼はどう思っているのだろう?その答えを聞いてみた
かった。
だが。
「どうせ、あと数分で終わる。今更今年のことを言っても仕方がない」
返ってきたのは、淡い期待をあっさりと砕く冷たい反応。
「……まあ、そうなんだろうけどね」
フェデギアの口から、期待するような言葉を導き出そうとする方が間違っているのかもしれない。クレインは、内心ため息をついた。
言葉を切り、しばらく黙って雪を眺めていた二人であったが、やがてクレインは思い出したように口を開いた。
「ああ、そろそろ帰らないと……」
自分が抜け出したことが分かれば、父はまた喚きたてて大騒ぎをするだろう。執事にも迷惑がかかってしまう。
クレインは、フェデギアを見上げた。まだ、用件を言おうとはしない。いや、もしかしたら用件など初めからなかったのか。
「フェデ……」
名を呼びかけた。
その時。
不意に、街の時計台の鐘が重々しく鳴り響いた。同時に、明かりの灯る家々から、かすかな興奮が外へと洩れ伝わってきた。
思わず周囲を見回す。ざわざわとした興奮と喜びが、街中のいたるところから湧き出てくるのが分かった。
年が明けたのだ。
鐘の音は、雪の合間を縫って大都の隅々まで新たな幕開けを告げていく。そして、きっちりと十二を数えた後、空気を震わせる尾を引いて、少し
ずつ闇に溶けていった。
「CC」
鐘の音が鳴り止むと同時に、フェデギアの静かな声がクレインを呼んだ。
眼が合うと、ほんの少しだけ琥珀色の瞳が細められた。いつもの冷笑ではない。それは、愛しい人にだけ見せる穏やかな眼差しだ。
クレインの心臓がドキリと大きく波打つ。
「新しい年になって、一番初めに……お前の顔が見たかった。それだけだ」
「…………」
頬がカッと熱くなった。まさか、この男の口から、こんな言葉が聞けようとは。
クレインの反応に、フェデギアの顔には何とも言えぬ照れたような表情が浮かんだ。
「そんな顔をしなくてもいいだろう」
クレインは微笑むと、つと一歩踏み出してフェデギアとの距離を詰めた。そして、手を伸ばしコートに包まれた彼の身体に両手を回す。
フェデギアの手がクレインの髪に絡みついた雪を落とすと、その頭を己の胸に押しつけた。
どこかから、子供のはしゃぐ声が聞こえてくる。
「今年は、いい年になるといいね」
頬に温もりと鼓動を感じながらつぶやいたクレインの耳に、ふわりと息がかかった。
「今年も、だ」
クレインは笑った。笑いながら、心の中で祈る。
――――そう。今年も、幸福な年になりますように。
了
クレインクレインのさばさばとした口調が彼女らしくてかっこ良いです。
それでいてフェデギアの言葉を待ったり『今年はいい年だった?』と聞く所が可愛いったら・・・!
フェデギアも殺し文句が素で言える所といいその後結局照れる所といい、良い男ですねー。
二人の程良い距離感としっかりお互いを思っている優しい雰囲気がとっても暖かくて好きです。
mayu-ge様、素敵なお年賀小説ありがとうございました!
どうか今年もよろしくお願い致します。
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