天国の世界一
1964年に期待の新星と言われ、デビューした男がいた。
彼の名は、ヨッヘン・リント。しかし、周囲の期待とは裏腹に1勝もできない苦難の日々が続くことになる。
そんな彼にも転機がおとずれる。1969年ロータスに移籍、待望の初優勝を手に入れる。2位のデニス・ハルムとは46.996秒の大差をつけて勝利した。ここから彼のビクトリーロードが始まると誰もが思っていた。
1970年に入り、第3戦、第5戦、第6戦、第7戦、第8戦と5勝をマークし、誰の目にもリントのチャンピオンが目前にまで来ていることが、実感できるほど彼は速かった。
それを現実のものにするべく、リントはポイントリーダーとして、第10戦イタリアGPに臨んだ。運命の時が刻一刻と訪れる……。予選初日、パラボリカに差し掛かったリントはマシンのコントロールを失い、ガードレールにクラッシュしてしまう。そのまま、彼は帰らぬ人に…。
F1界が涙に暮れる中、第11戦が開始された。リントの残したポイントを逆転できるのは、ジャッキー・イクスのみであった。そんな中、イクスは第11戦を勝利した。第12戦から、リントの後釜にエマーソン・フィッティパルディがステアリングを握った。
第12戦、エマーソン優勝、イクス4位この結果により、リントは死後ワールドチャンピオンに輝いた。
年末に行われている、FIAの表彰式にはリントの奥さんが出席しトロフィーを授与される。