「どどどどどどどうしよう!? びょ、病院!? 救急車!?」

僕はまるで魂の抜けた状態の美香さんを見てパニックに陥っていた
この場合は病院なのか
それとも警察に連絡した方がいいのか
それとも…それとも…

「守、いいから落ち着け、落ち着け…」

竹原君はパニックに陥っている僕を落ち着かせるようにゆっくりと僕に話しかけた
でもそれは竹原君が自分自身を落ち着かせるように言っているようにも見える
竹原君も僕と同じくらい今の状況に驚いている筈だ
ただ何とかしようと思い、冷静でいようとしていた

「落ち着け、落ち着いたか? 落ち着いたら…美香をベッドに移動させるぞ」

「う、うん…」

僕は深呼吸を二回三回と繰り返し呼吸を整えた
その後は落ち着けた
落ち着けたというのか落ち着いたというのか
とりあえず僕は竹原君と一緒に美香さんを椅子から降ろし、ベッドに寝かせる事にした

「お、重い…」

あ、いや、誤解しないで欲しいんだけど
これは美香さんが重いって事じゃなくて、力を抜いてだらんとした人間が重いって訳で
別に美香さんの体重が二人で持っても大変なくらい重いって訳じゃないんで
自分で言ってて自己嫌悪…
いくら美香さんの意識が無いからって女の子に『重い』って言っちゃうなんて

「ったく、少しは痩せろよ」

だけど竹原君はそんな女の子のナイーブな心情は気にしないみたいだ
終始『重い』とか『デブ』だとか言っていた
美香さんの尊厳に関わる事だから一応言っておくけど
別に美香さんは太っているとか思わない
むしろ痩せている方だ、身長が低い事もあるのか体重は軽い、と思う
それにウエストも細い……し…
ウエ…スト…?

「あっ…」

「おっ、おい! 手ぇ放すなって!」

「ご、ごめん!」

僕は美香さんの腰に手を回して引っ張るように運んでいた
どうりでウエストの細さがわかっ……いあ、や、やましい気持ちなんて何にも無く…


何か色々ありながらもどうにか美香さんをベッドに寝かせる
ちゃんと息はしているんだけど意識はない
一体美香さんの身に何が起こったんだろう
もし何かの病気だとしたら早く病院に連れて行かなければ

「…ん? 病気…」

自分で考えてた事に自分で気がついた
今日の朝見たニュースの内容が思い出される
確か市内で意識不明の重態患者が…とかいうニュースだ
もしかして美香さんも

「ん? 何だよパソコン付けっ放しじゃないか」

竹原君は美香さんをベッドに寝かしてから何やら落ち着かない様子だ
多分どうしたらいいかと考えているんだと思う
目に付いた物を手にしてみたり、意味も無く部屋の中を歩き回っていたり
今だって電源が付けっ放しになっているパソコンを見ていた

「お、おい、守、ちょっとこれ見てみろ」

竹原君に呼ばれ、僕は立ち上がりパソコンの画面を覗いた
それは少し違和感のあるものだった
いや、少しなんてものじゃない、物凄く違和感があった
起動しているプログラムは二つ
ひとつはラグナロクオンライン
画面の中ではMIKAというキャップを被った商人が動いていた
ありえない、こんな事はありえない
美香さんはすぐ横で寝ているし、竹原君も僕もマウスに触っていなかった
だけど画面の中のキャラクターはマップ内を移動し、敵を攻撃し、収集品を拾っていた
このパソコンの画面にゲーム画面が表示されているという事は、誰かが美香さんのIDを使って入っているわけじゃない
だけど僕達が操作しているわけでもない
どう考えても不思議だ
BOTツールを使っているのかと思ったが、そうでもないようだ

「ん…あれ、カーソルが動かないな」

竹原君がマウスを移動させるがカーソルがまったく動く様子はなかった
Alt+Tabで切り替えようとするがそれにも反応しなかった

「これ、これなんだろ…どこかのホームページかと思うんだけど」

僕はタスクバーに表示されている文字を指差す
そこには『選ばれし者の楽園』と書かれていた
eのマークが表示されている事からそれはインターネットエクスプローラーだと解る
聞いたことのないホームページだ
ラグナロク関連のサイトなのか

「って、そんな事より美香さんはどうしよう……」

「どうするって言っても…親とかが帰ってくれば何とかなると思うし」

「もし病気とかだったら…」

「昨日はピンピンしてたからな……病気…なのか? 何か病気持ちだったか…?」

二人して眠っている美香さんを見ながら色々な思考を巡らした
考えても解らない、解らないから考える、そんな状態に陥っていた
本当なら今すぐにでも病院に連れて行きたい
そう思っていた




「ここか?」

俺は愛機のCB1300をマンションの前で止める
瀬戸はポケットから取り出した地図を見ていた

「あぁ、間違いない」

「これで最後だろ? 長谷崎の家で」

「いや、ここが終わったら最後に一軒寄っておきたい所がある」

「ん? 何処だ?」

「三那原美香の家だ」

「他のクラスの生徒も…かよ」

「頼まれたんだよ」

「そうですか…仕事熱心ですこと」

俺はCB1300からキーを引き抜きスタンドを下ろす
俺の愛機よ、もう少しの辛抱だから少し待っててくれよ
二人分の体重支えるのは後少しだからな

「何してんだ、さっさと行くぞ」

「へいへい」

俺は急かされるままにマンションの中へと入っていった
長谷崎の部屋は…
うっわ7階か、しかもエレベーターが無いのか
こりゃしんどくなりそうだ


〜次回へ続く〜

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