| 「それじゃ、さっさと準備しないとな 武器も極力いい物を準備しよう、必要な物も揃えてやる」 ミサキに通された部屋には様々な物が置いてあった 剣、斧、弓、短剣… ラグナロクの世界にある物のほとんどが置いてあるんじゃないかと思う程だ 「とりあえず好きなもん選んでくれ、一応全部俺が集めた奴だ、それなりに使えると思う」 その圧倒的な量に僕達4人は声も出なかった 今はイズルートの武器屋で買ったバスタードソードを装備しているのだが ここにある物の大体は僕の持っている武器より強力な物が多かった 手始めにツーハンドソードを手にしてみた バスタードソードよりも幾分か重いが使いこなせないような物では無かった 刀身は僕の剣より少し長く、剣士や騎士が使う剣という雰囲気を出している 本当にこれを使っていいものかと思ってしまうくらだ 「アタシはこれにしよ〜」 弓が山積みにされている場所から梶原が取り出したのはクロスボウ 一般的な弓とはちょっと違い、分類的にはボウガンに分類される弓だろう 引き金を引くだけで矢を発射する事ができ、常に弦を引っ張っておく必要がない為女性でも扱い易い しかも正確な射撃が出来るという優れものだ 「ついでだ、少しくらいカードを分けてやろう」 カード――― モンスターの魂と力を封じ込めた四角い紙媒体の物をカードと言う どういう原理でモンスターがカードを落とすのかは解らない 消えては現れ、倒されては復活する。そんなルーチンを組み込まれたのがラグナロクにおけるモンスターだ 一説によれば現世に留まりたいというモンスターの強い意思や思念が形として残るとも… その場所に生きていたという証を残すとも… 色々な事がラグナロクの世界を考察するようなサイトで語られていた ただのアイテムという事を通り過ぎた何かである、という背景がもしかしたらあるのかもしれない 「で、そっちの二人は決まったのか?」 ミサキは近くにあった箱を漁りながら言った そっちの二人とは備前先生と瀬戸先生の事だろう 見ると二人は様々な武器を前にしながら椅子に座ったりしてリラックスしている 「んな事言われたってなぁ…何選べばいいんだよ? そこにある斧でも振り回すのか?」 備前先生は近くにあった斧を取り、それをまじまじと見つめた 「俺はこれ使いたいな、弾はあるのか?」 瀬戸先生は拳銃なんて物を持っていた ラグナロクの世界に銃なんて武器は存在していないはずだ でもミサキはさっきパソコンの前に座っていたし、もしかしたらミサキが持ってきた物かもしれない ミサキの物、というだけでもどこから入手したのか気になるけど… 「おいおいちょっと待った プリーストは斧なんて装備出来ん、アサシンは銃を使えない そもそもその銃は特別な物で―――」 「うお!?」 「うわぁ!?」 「何!? 何何何!?」 ミサキの言葉を遮るような大きな音が室内に響いた 瀬戸先生の持っている銃の銃口からは白い煙が昇っていた どうやら瀬戸先生の握っていた銃が火を噴いたようだった 「テメ…コラ! いきなり銃ぶっ放してんじゃねぇよ!」 「いやいや、手が滑っただけだ、むしろ弾が入ってるとは思わなくてな」 そんな光景を見てミサキは何やら考え込んでいた カードを探していた手を止め、口元に手を当てている 拳銃がここにあったとかどこから手に入れたとか… そんな考えよりもミサキの表情の方が気になって視線がそっちへ行ってしまう 「…イレギュラーか…」 その言葉とミサキの横顔だけが妙に頭に残って離れなかった 「しまった…」 「…? 何か問題が? 連絡がとれなかったとかか?」 R.G.Sはパソコンの電源を切ると急いで運転席へと戻っていった 俺の質問には答えずに外の様子を伺っている 「影です」 「影? そりゃ街灯もあるし影くらい…」 深夜の駐車場と言えど街灯の一本や二本は立っている というよりも、明かりがない場所の方がこの街には少なかった 海岸沿いとはいえ少し行けば繁華街もあるし目と鼻の先にはシーサイドロードもある 街中よりも数は少ないが、影を作るくらいの光を生成する物はそこら辺にあるものだ 「違います…あそこをよく見てください」 R.G.Sは普段よりも低い声で暗闇を指差しながら言った そこは位置的にも街灯の光が当たる事なく真っ暗な暗闇だった 俺はその暗闇の中を目を凝らしてじっと見つめてみる 「あっ…」 何かがその闇の中で動いた そこは植え込みか何かなのか、二つの赤い点が見え隠れしている 「しかも複数…」 R.G.Sは素早くエンジンを掛けるとシフトを一気に二速まで上げる エンジンの回転数が一気に上がりトレーラーが走り出す 「竹原さん」 「何だ!?」 「後ろに警棒のような物がありますよね」 R.G.Sにそう言われ、俺はすぐさまトレーラーの後部に移動し警棒のような物を探した それは壁にかけられていた 取っ手の部分は鉄で出来ており握ると冷たい そして取っ手から伸びた部分は警棒くらいの長さだった 「グリップにスイッチがあります。オンにしてください」 「あ、あぁ」 俺は言われるがままにスイッチをオンにする モニターに電源を入れた時のような鈍い音を発し、光が伸びていく まるで漫画で見たような魔法剣みたいだった 光が剣の刀身を包むようにして伸びていく、そんなイメージ 必殺技でも放てそうな勢いだ 「いざとなったらそれで戦ってください!」 「いざとなったらって…」 その時だ トレーラーのコンテナ部に何かが当たった音がした ゴン、ゴン、とそれは数回鳴り響いた。いざとなってしまたようだ 「そこからコンテナの上に出れます。 ……なんとか振り切ろうと思いますが…頼みましたよ」 「マジかよっ!!」 俺はコンテナの上部へ続く蓋を見上げながら素っ頓狂な声を上げた 邪魔者が多いってもしかしてこの事なのだろうか 想像以上に…ヤバイ事だ 〜次回へ続く〜 |